弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 原決定を取り消す。
 相手方らの申立をいずれも却下する。
 訴訟費用は第一、二審とも相手方らの負担とする。
       理   由
 抗告人は、主文同旨の裁判を求めた。抗告人の抗告の理由およびこれに対する相
手方らの主張は各別紙のとおりである。
(当裁判所の判断)
(一) 相手方らがいずれも北海道立江別高等学校の生徒として同校第三学年に在
学していたものであること、抗告人が相手方Aに対して昭和四五年一二月二七日、
相手方Bに対して同月二四日、相手方Cに対して同月二六日各退学処分を行つたこ
と、北海道立高等学校学則第二三条には「懲戒による退学を命ずるのは、左の各号
の一に該当する場合に限る。一、性行不良で改善の見込がないと認められる者、
二、著しく学習を怠り成業の見込がないと認められる者、三、正当の理由がなくて
出席が常でない者、四、学校の秩序を乱しその他生徒としての本分に反した者」と
規定されていることは当事者間に争がなく、疎明資料によれば、抗告人は相手方三
名がいずれも右の第四号に該当するとして前記退学を命じたものであることを認め
得る。
(二) 相手方らは、右第四号に該当する行為をしていないと主張するが、抗告人
提出の資料によれば、相手方らには少くとも次のような行為のあつたことが認めら
れる。
(イ) 昭和四五年六月一三日午前一一時ころ、相手方らは、学校側の説得を無視
して、同校記念館前で、安保粉砕、江高解体等をスローガンとする集会、デモを行
つた。
(ロ) 昭和四五年七月六日相手方らは、第一時限からの授業を放棄し、学校側よ
り不許可の申渡しがあつたのにかかわらず、記念館内で生徒大会即時開催をアピー
ルする集会を行い、かつ、各教室をまわつて右集会に参加方を呼びかけた。
(ハ) 同月八日相手方らは生徒大会即時開催等を要求して、期末試験を放棄し、
学校前庭で、A、Cはハンガー・ストライキに入り、Bはこれに同調して坐込みを
はじめ、学校側の数度にわたる説得も聞きいれず、翌九日にかけてハンスト、坐込
みを行つた。
(ニ) 昭和四五年一二月一九日相手方らは校長室封鎖の計画、実行を謀議し、
B、Cは同日午後六時ころ校長室に侵入して封鎖をはかつた。Aも同日午後七時こ
ろ封鎖に加わる予定であつたが、その前に学校側により封鎖が解除されたので、実
行できなかつた。
(ホ) なお、相手方Aについては、そのほかに、昭和四五年九月一五日札幌市で
出入国管理法反対デモが行われた際、学校に無届けでこれに参加し、公務執行妨害
罪等の容疑で逮捕されたことがあり、同人のたび重なる非行に対して抗告人は同年
一〇月一七日無期自宅謹慎を申渡したが、相手方Aはこれに従わず、同月一九日登
校した。その後、同人は、右デモの無届参加を反省し、今後学校の規則を守る旨を
申出たので、同月二三日自宅謹慎を解いたが、同年一二月一日に開かれた生徒大会
において、Aは右の反省と確約を否定した。また、同人は同月一七日午後九時四〇
分ころ同校放送室屋根裏に侵入した(職員会議の盗聴をはかつたものと推測され
る。)。
 以上のような相手方らの行為、殊に校長室の封鎖というようなことは、正に、学
校の秩序を乱し、生徒としての本分に反する重大な非行というべきである。これに
対し抗告人が前記学則二三条第四号により、相手方らを退学処分にしたことについ
ては、その処置が最善であつたかどうか、例えば、無期停学処分の方がよりよかつ
たのではないかどうか、というような点において論議の余地はありうるとしても、
そうした判断は、教育受責者として懲戒権を与えられた校長の教育専門家としての
裁量の範囲に属するものというべきであり、前記のような重大な非行に対してとら
れた本件退学処分をもつて、裁量の範囲逸脱ないし裁量権の濫用として、違法とい
うことはとうていできないものと解する。
(三) 相手方らは、本件退学処分においては、相手方らに全く弁明の機会を与え
なかつたから、その手続において憲法三一条に違背するという。
 しかし、退学処分は刑罰でないから、これに憲法三一条の適用はないし、本件の
場合、抗告人が相手方らの弁明、防禦権を制限するような仕方で、抜打ち的に処分
したことをうかがわしめる資料もない。かえつて、抗告人提出の資料によれば、前
記昭和四五年一二月一九日夜、校長室封鎖排除の直後、学校側は相手方B、Cにつ
いて事情聴取を行つたが、両名とも、一人ずつの取調べには応じられない旨述べて
弁明を拒否したこと、その後も、同月二四日相手方A、Cについて、翌二五日Aに
ついて説得、指導を試みたが弁明を得られなかつたことが認められ、学校側として
は、本件処分にあたり、相手方らの弁明を聞くべく相当の配慮をしていることがう
かがわれる。したがつて、手続に憲法三一条の違背があるという相手方らの主張は
採用できないし、その他本件処分を違法として取消すべき手続上のかしも認められ
ない。
(四) なお、相手方Aは、「昭和四五年一〇月一七日無期自宅謹慎の処分を受け
ているので、それ以前の同人の行為(原決定別紙一項(一)ないし(四)の行為)
はすべて右処分の理由となつているのに、同行為をもつて再び本件処分の理由とす
ることは、二重処罰の禁止の法理に反し、許されない」という。
 しかし、前に一定の非行を理由として無期自宅謹慎の処分を受けたのに、反省の
色なく、更に非行を重ねた場合、以前の非行と処分の経緯を併せ考え、全体の非行
の総合判断から退学処分を選ぶことを違法とすべきいわれはない。
(五) 以上のとおりで、相手方らに対する本件各退学処分にはいずれも違法のか
どはなく、したがつて、これが執行停止を求める相手方らの申立は、行政事件訴訟
法第二五条第三項にいう「本案について理由がないとみえるとき」にあたるから、
許されないものであり、これを認容した原決定は失当であるから取り消すことと
し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九三条一項本文を適
用し、主文のとおり決定する。
(裁判官 武藤英一 秋吉稔弘 花尻尚)
(別紙)
       抗告の理由
第一点 原決定は行政事件訴訟法第二五条第三項に違反し、「本案について理由が
ないとみえる」にも拘らず、退学処分の効力の執行を停止した違法がある。
一 原決定は判断の第三項において
 「公立高等学校における校長の懲戒処分は、その判断が社会観念上著しく妥当を
欠くものと認められる場合を除いては、原則として校長の裁量にまかされるものと
解されるが、被申立人が本件退学処分の理由としてあげる別紙記載の各行為をどの
ような資料によつて認定した上で右の処分を決定したのかという点について疎明は
何もない。しかも前記のように、申立人らが右行為の趣旨や程度を根本的に争つて
いる本件の現段階では、いまだ本案について理由がないとみえると速断することは
できない」として執行停止を決定した。
二 なるほど、抗告人は原裁判所の求めにより意見書は提出したが、これを疎明す
る資料は提出しなかつた。
 然し行政事件訴訟法第二四条は民事訴訟の原則を排除し、裁判所が職権をもつて
証拠調することができることを規定し、特に同法第二五条及び第三〇条により厳格
な要件を充す場合においてのみ、行政処分の効力の執行を停止しうることを認めて
いるのであるから、抗告人に対し、本件退学処分の理由として掲げられている各行
為についての疎明資料の提出を求めこれを取調べることは、原裁判としては絶対必
要の措置であつた訳である。
 もとより当事者が進んで資料の提出をすれば良いのであるが、訴訟法に無知な抗
告人としては、原裁判所からの求めがあるものと考え、その提出方をまつていたの
である。
 それはともかく原裁判所が右措置を執ることなく疎明がないとして決定したこと
は審理不尽のそしりを免れない。
三 ところで、相手方らの行為については別紙証拠目録中疎乙第四号証ないし第一
五号証の各証拠によつて明白にこれを認めうるのである。
 これを要するに相手方らは学校生徒会の新聞局に入局するを同局の規定によつて
拒否されたことに端を発し、これが抗告人の弾圧であるとして学則、学校内規を無
視し、再三再四に亘る学校及び親権者らの指導を排しあらゆる不法手段をくりかえ
したのである。
四 このように学校の封鎖、占拠を含む行為は、学校内規に反するはもとより犯罪
行為であり、公教育としての高等学校教育を阻害し、公共財産である学校施設に著
しい損害を与え、他の多くの生徒の勉学を妨げたもので到底生徒の本分に反する行
為である。
五 しかも抗告人は相手方らに対し、教育的見地から、全学及び相手方らの親権者
を含めあらゆる指導を尽したが、これら指導を一切拒否し、もはや高等学校教育の
限度を超えるものとして退学処分としたものである。
六 そもそも行政裁量である懲戒処分は公教育の施設としての内部規律を維持し、
教育目的を達成するために認められた自律的作用である。
 従つて学校長である抗告人が生徒の行為に対し、懲戒処分を発動するかどうか、
懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶかは、懲戒権者たる抗告人の裁量に任されてい
るのである。
 そしてその裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合
に限り、裁判所はその処分を取消すことができるのであつて(行政事件訴訟法第三
〇条)懲戒処分は懲戒事由とされる生徒の行為の軽重、態様、行為の他の生徒に与
える影響、等諸般の要素を考慮する必要があるが、これらの判断は学校内の事情に
通暁し、直接教育の衝に当る学校長の裁量に任すのでなければ、適切な結果を期待
することができないのである。
七 このように見て来ると本件執行停止申立については正に行政事件訴訟法第二五
条第三項にいう「本案について理由がないとみえるとき」に該当するといわなけれ
ばならず、原決定は明らかに誤りである。
第二点 原決定は「処分により生ずる回復の困難な損害を避ける緊急の必要がな
い」のに、執行停止を認めた違法がある。
一 原決定は判断の第二項において
 「右のように申立人らが本件退学処分によつて江別高校における在学関係を失
い、ひいては、それぞれの志望大学の今年度の入学試験を受けることもできないと
いう不利益は行政事件訴訟法第二五条の規定にいわゆる「回復の困難な損害」にあ
たるものと解すべきである」
とし、更に
 「申立人らが志望する各大学の今年度の入学願書受付の締切日や、江別高校の卒
業試験が切迫している以上、申立人らには、右の回復の困難な損害を避けるため、
本件退学処分の効力を停止すべき「緊急の必要」があるというべきである」
と判示した。
二 然し右のような不利益は退学処分という懲戒の性質上やむを得ない当然の結果
である。
 若し、大学入学願書の締切日が近いとか、卒業試験が切迫しているだけの理由
で、抗告人のなした懲戒処分の効力の執行が停止されることになれば、常にその時
機における懲戒処分の効力の執行が停止されることになり、高等学校教育の掌に当
る抗告人の行う一切の教育的処分は許されないことになる。
 しかも原判決は判断の第三項において、自ら「社会観念上著しく妥当を欠くもの
と認められる場合を除いては、原則として校長の裁量にまかされる」と判示しなが
ら、執行停止の申立の時機によつて裁量が左右される結果となり、爾後高等学校に
おいては、如何に学則に反する行為があり、他の生徒、或は学校に回復することの
できない損害を与えても、これに対する教育的裁量に基く処断ができないことにな
り、教育的に著しい悪慣例を残し、学校教育の秩序は破壊され、また学校教育法第
一一条、同法施行規則第一三条など関係法令は空文となつてしまうのである。
三 高等学校生徒に対する教育は三年の年月を要し、日々の積み重ねと、教師の指
導によつて達せられる。
 この意味から考えれば、生徒に対する懲戒処分は常に回復困難な損害を生ずるで
あろう。然しこれは教育の性質上当然のことであり、それをふまえての教育的処分
なのである。
 特に相手方らに対する処分は、あらゆる指導にも拘らずこれに応じないのであつ
て、公教育としての高等学校教育の限界を超えるものとして行つたものであるか
ら、試験を受けられないことはもとより当然の措置で、これをもつて緊急性がある
とするのは本末てん倒の論理といわなければならない。
四 しかも相手方らは、相手方らが、原審の執行停止後配布した疎乙第一六号証
(ビラ)によつて明らかなように、今後も従前同様の違反、違法行為を企図してい
るは勿論、更に「反抗から判乱へ転化」させようとしているのであつて、執行停止
によつて生ずる公教育の被害は益々増大する危険が強いのである。
五 以上の次第で原決定は速やかにこれを取消されるべきものである。
第三点 原決定は「公共の福祉に重大な影響を及すおそれがある」にも拘らず、執
行停止を認めた違法がある。
一 相手方らの本件各行為に対し、抗告人のとつた処置は、高等学校生徒に対する
教育的措置である。にも拘らず、若し原決定に従うなら、生徒は爾後如何なる行為
をしても処分の効果を免れうるという保障を得たことになり、ひいては教育の正常
な実施という公益すなわち公共の福祉に重大な影響を及すおそれは大きい。
二 特に本校における相手方らのなした封鎖直前の生徒大会において、相手方らの
学則、内規を無視した行為に対し、抗告人即ち学校のとつた指導処置が正しいと圧
倒的多数で確認されたにも拘らず、これに反し、学校封鎖など不法な行為によつて
その主張を通そうとする相手方らの行為は、学校教育の中で特に重要視されている
生徒会活動を全面的に否定しようとするものである。
 しかも原決定後は生徒の多くは、自主的な生徒会活動に対し絶望感を持ち、生徒
大会の権威に対しても疑問を持ちはじめている現状を見ると、教育的に重大な影響
があるといわなければならず、結局公共の福祉に重大な影響を及すおそれがあるの
である。
 以上
(別紙)
相手方らの主張
第一、即時抗告理由書に対する答弁
一、右理由書第一点は全面的に争う。
(イ) 処罰根拠事実が存在するとの主張について
1 原決定別紙記載の各行為の有無に関する答弁は本書別紙のとおりであり、抗告
人の主張は事実に反する。
2 抗告人は当審に至つてようやく疎明書類を提出しているが、乙第四号証ない
し、九号証、同一二号証ないし一四号証はすべて処罰者側の主観的認識を記載した
ものにすぎず、その客観性は疑問であるうえ反対尋問を経たものでないから、その
証明力は低く、いやしくも、「本案について理由がないと見える」というような決
定的判断の基礎となしうるものでは断じてない。そもそも、このような処罰者側作
成の文書により本案について理由がないと断定され、処分の効力が維持されるなら
ば、処罰者が自己の主張に副う報告文書を恣に作成しておきさえすれば、常にどの
ような処分でも強行し、貫徹できることになり誠に不都合である。
3 乙第二号証の学校内規は、相手方(原審申立人ー以下単に本人と呼ぶ)等の内
規違反の主張の前提として提出されたものと思われるが、これら内規は本人等には
全く知らされていなかつたものである。そもそも、学内の定めであつても、それが
拘束力を持つものであり、生徒の行動を規制し、それに違反した者に処罰を課する
趣旨のものである限り、予め生徒に告知され、もしくは知る機会が与えられていな
ければならない。しかるに、本件内規は生徒手帳にも記されておらず、本人等には
知る機会もなかつたものである。
4 各種ビラと写真について、
 本人等は原決定後はビラ配布やデモなどいわゆる活動は全く行つていないし、各
種ビラについては抗告人が付加している説明は事実に反し信用できない。また、写
真のうち、本人のB、Cが校長室に居る所を写したものについての付加説明を除
き、他の写真に付加された説明は争う。
(ロ) 処罰根拠規定の解釈適用について
1 懲戒規定の解釈と適用
 そもそも懲戒は人に対する制裁であり必然的に人権に対する侵害を内容とする重
大な処分である。従つて刑事法における罪刑法定主義を類推し、懲戒規定は厳格に
解釈されなければならない。また具体的な懲戒規定該当事実に対してなされる処分
は相当なものでなければならず、いやしくも権衡を失するものであつてはならな
い。
右は一般論であるが、本件の場合、規定の掲げる各行為が極めて抽象的であるうえ
(罪刑法定主義の思想からいえば、このような規定自体の効力も疑問である。)そ
れに対する制裁は「退学」という学生にとつては死刑にも等しい重大な処分である
から、その解釈適用に当つては、とりわけ慎重を要する。また、本処分は学校教育
の場において行われるものであるだけに、十分な教育的配慮をもつて適用される必
要があるのである。(特に、高校教育が義務教育化した今日、高校教育の場から追
放される被処分者の受ける社会的経済的不利益はその心理的悪影響とともに十分に
斟酌されなければならない。高校を卒業することは大学進学の前提であるが、一度
退学処分を受けた者が他の高校に編入もしくは入学することは極めて困難な実情に
あることを思えば、本件退学処分は事実上高校教育のみならず、大学教育からも本
人等を排除することを意味すると言つても過言ではない。)してみれば、本件懲戒
規定は、被処分者の非行事実が極めて重大であり、かつ、より軽い処分(たとえば
訓戒や停学等)によつて被処分者の反省を促す等の手段を取ることが無意味であ
り、被処分者に対する教育による改善教化の見込みがなく、その者を学内より排除
しなければ、学校秩序の維持や学校教育の遂行が不可能となる場合にのみ、適用さ
れるべきものと解すべきである。
2 抗告人は学校長が生徒に対し懲戒処分を発動するか否か、またどのような処分
をするかは学校長の裁量に任されていると主張している。しかし、他方本処分の法
律上の根拠として道立高校学則第二三条第四号を挙げている以上、本人等の行為が
右規定に該当するとの判断を要するものであり、右判断は恣意的になすことは許さ
れない。具体的事実が処罰規定に該当するか否かは法律解釈の問題であつて、抗告
人の本件処分は前記法条の解釈を誤つたものである。(ちなみに、本処分の際に職
員会議で退学処分の是非につき論議があり、退学処分をすべきでないとの意見も決
して少くなかつたようである。これは誠に傾聴すべき見解であり教員の間に本件行
為はいまだ右法条に該当しないとの判断があることを示すものである。)
(ハ) 要するに本件処分は、事実上の根拠に基ずかず(抗告人主張の事実中一部
は存在するがそれは右根拠となりうるものではない。)処罰法条の解釈適用を誤
り、かつ社会通念上著しく妥当を欠き裁量権を濫用したものと認められ、いやしく
も、現段階において、「本案につき理由がない」と判断することは到底不可能であ
る。
(ニ) Aの処分について特記すべき事項
 Aは昭和四五年一〇月一七日無期自宅謹慎の処分を受けている。従つて、右処分
以前になされた行為(原決定別紙第一項一ないし四の事実)はすべて右処分の理由
となつており、右行為をもつて再び本件処分の理由となすことは二重処罰の禁止の
法理に反し許されないものといわねばならない。
二、第二点は争う。
 論旨は本人等の受ける不利益は退学処分の性質上やむをえないからこれをもつて
回復困難な損害と解すべきではないというのであるが、これは全く転倒した論理で
あり、法第二五条の趣旨を全く誤解したものである。
 尚、抗告人は乙第一六号証により本人等が違法行為を継続する意思であると主張
するが、右ビラは全く本人等の関与したものでなく、配布行為など断じて行つてい
ない。本人等は原決定後今日まで紛争には一切関係せず、ひたすら授業に出席し、
大学進学を目指して勉強にいそしんできたのであり、学内復帰により、公教育が破
壊されるなど全くありえない。
三、第三点は争う。
第二、緊急の必要性について、
 原決定後、本人等は左記のとおり大学受験手続ずみであり、特に本人Cは入試に
合格し、入学手続ずみである。右の次第であるから、原決定が維持される高度の緊
急の必要性が認められる。
別紙
一、Aについて
原決定別紙第一項(一)は否認する。
同(二)はAが集会申込みしたこと、学校側が許さなかつたこと、集会に参加した
ことは認めるがその余は否認する。
従来、集会については届出制がとられており、集会も、ホームルーム開始(八時四
五分)や授業開始(八時五五分)に支障のないように八時四〇分までに終る予定で
学校に届出をしており、学校側がこれを禁止すべき理由はない。
同(三)はハンスト参加のみ認め、その余は否認する。
同(四)はデモ参加と逮捕の点は認めるがその余は否認する。公務執行妨害や、事
前の文書指導の事実はない。
同(五)は否認する。(一〇月一七日に登校した事実も全くない)。
同(六)は自宅謹慎が解かれたことは認めるが、その余は否認する。
同(七)は論旨不明であるが否認する。試験の答案を早く提出したことを問題とし
ているようであるが、一二月九日の「政経」の試験の時、頭痛のため、答案を試験
終了一〇分前に提出したこと、一二月一一日の化学の試験で終了一〇分前に提出し
たことは事実である。しかし、答案が完成した以上、テスト開始後三〇分すぎれば
提出してもよいと言うのが従前の慣行であり、何等問題とすべき行為ではない。尚
化学の試験は九〇点であり、「政経」も得点不明であるが、優秀な成績であつたか
ら、答案作成上の支障は全くなかつたものである。
同(八)は否認する。
同(九)は否認する。
二、Bについて
同第二項(一)は否認する。
同(二)は集会参加(無届ではない)は認めるが、その余は否認する。(集会を開
いたこともない。)
同(三)は否認する。
同(四)は否認する(集会のアピールをしたことはあるが、集会は開かれていな
い。)
同(五)、(六)は否認する。
同(七)のうち、校長室に立入つたことのみ認め、その余は否認する。
三、Cについて
同第三項(一)は集会、デモの参加のみ認めるがその余は否認する。(届出は必要
と思つていなかつた。)
同(二)は集会に参加したことは認めるが、その余は否認する。(無届でもない)
本集会は全校の四分の一に当る約三〇〇名が参加したもので、Cがこれに参加した
ことをもつて特に同人を処罰すべき理由とはなしえない。
同(三)は否認する。
同(四)、(五)は否認する。
同(六)は校長室に入つた点のみ認めその余は否認する。

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