弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成19年6月4日宣告
平成19年(わ)第65号暴行,公務執行妨害被告事件
主文
被告人を懲役1年に処する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成19年1月6日午後9時14分ころ,神戸市a区bc丁目d番e号所
在のコンビニエンスストア「A店」付近路上において,同店店員B(当時1
7歳)の言動に立腹し,同人に対し,その胸ぐらをつかんでその場に引き倒
し,腹部付近を2回蹴りつけるなどの暴行を加え,
第2同日午後9時20分ころ,同区bc丁目d番f号付近路上において,11
0番通報により駆けつけた兵庫県C警察署地域第1課D交番勤務の巡査Eか
ら上記暴行について職務質問を受けた際,同巡査に対し,そのネクタイの結
び目部分をつかんで胸部を押すなどの暴行を加え,もって,同巡査の職務の
執行を妨害し
たものである。
(累犯前科)
被告人は,平成15年12月5日神戸地方裁判所F支部で覚せい剤取締法違反
の罪により懲役1年6月に処せられ,平成17年5月25日にその刑の執行を受
け終わったものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(乙8)によっ
て認める。
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為は刑法208条に,判示第2の所為は同法95条1項
にそれぞれ該当するところ,各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,被告人には上
記の前科があるので同法56条1項,57条により判示各罪についてそれぞれ再
犯の加重をし,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,1
0条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲
役1年に処することとする。
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は,被告人が本件時,飲酒により心神耗弱の状態にあったと主張し,被
告人も,本件前後の記憶がない旨供述するので,被告人の責任能力の程度につい
て検討する。
1関係各証拠によると,以下の事実が認められる。
()被告人は,平成18年11月末ころ,半ば同棲していた交際相手が逮捕勾1
留されたことなどから,今後の生活等に不安を持ち,また,同女を逮捕した
警察に対してわだかまりを感じていた。そのため,被告人は,そのころから
飲酒量が多くなり,同年12月中旬ころからは,睡眠薬や精神安定剤を服用
するようになった。それ以前,被告人の飲酒量は通常缶ビール3缶程度で,
近時,平素の被告人はおとなしいものの,深酒をすると気が荒く,喧嘩っ早
くなることもあり,本件の約2か月前には,深酒の際に仕事先の親方と口論
し,就寝後にはその詳細を覚えていないということもあった。
()被告人は,平成19年1月6日午後2時ころ,前夜から泊まっていた交際2
相手宅で目覚めると,もう少し寝るために睡眠薬2錠,精神安定剤3錠を飲
んだ。しかし,寝付けなかったため,同日午後3時ころ,交際相手宅近くの
行きつけの飲食店に行き,飲食を始めた。被告人は,同日午後7時30分こ
ろ,途中から同席していた知人とともに,同店から徒歩で3分程度の距離に
ある同知人宅に移動し,更に同所で飲酒した。以上を通じ,被告人の本件前
の飲酒量は,上記飲食店で生ビール2杯及び焼酎の水割り約15杯,知人宅
で焼酎の水割りを約5杯程度であった。被告人は,同日午後9時ころ,知人
宅を出て,一度上記飲食店に戻った。
()一方,上記Bは,同日午後9時14分ころ,上記飲食店から徒歩で10秒3
程度の距離にある上記コンビニエンスストアにおいて,同店外に置いてある
棚が倒れたため,これを起こそうと店外に出た。すると,付近にいた,面識
のない被告人が「何見とんじゃ」などと大声で怒鳴りつけてきたため「何。,
もないですよ」と応じると,更に被告人は「文句あるか」などと怒鳴りつ。。
け,側にあった自転車を蹴りつけて倒した。そこで,Bがその自転車を立て
ようとしたところ,被告人は,いきなりBの胸ぐらを掴み「なめとんか」。
などと怒鳴りつけるなどした上,判示第1の暴行に及んだ。
その後,110番通報により同所に駆けつけた上記E巡査が,Bを追いつ
めるようにしていた被告人に職務質問を始めると,被告人は,同巡査の顔に
自己の顔を近づけながら「お巡りには関係ねえ」などと怒鳴りつけた。そ,。
の後,更に被害者の方に行く素振りを見せた被告人に対し,E巡査が制止し
ようとしたところ,被告人は「うるせい,関係ないやろが」などと怒鳴り。
ながら,判示第2の公務執行妨害に及んだ。そのため,E巡査が,被告人に
対し,公務執行妨害罪の現行犯で逮捕する旨告げると,被告人は「取り消さ
。」,,「。」んかいなどと言いその抵抗を制圧される際にはちょっと待ってえな
などと逮捕を待つように申し向けた。なお,被告人は,本件時,足元がこと
さら不安定であったり,その言葉がB及びE巡査に聞き取れないほどろれつ
が回っていないということはなかった。
2以上のとおり,被告人の本件当日の飲酒量は,それ自体としても,平素の飲
酒量との比較においても,少ないとはいえず,また,警察官を含む面識のない
者に対して行われた本件は,被告人の近時の性格とはそぐわない面もある。そ
うすると,被告人が本件時酩酊状態にあり,これが本件に影響を与えたことは
否定できない。
,,,しかし本件前後において被告人は各被害者と整合的な会話ができており
被告人の言動からは,自己及び各被害者の言動の意味について十分理解してい
ると認められる。また,本件の態様等からは,飲酒により,被告人の行動に特
段の支障がでている様子はうかがえない。そして,本件の動機は,上記認定の
各事実からすれば,被告人が,自己の意に添わない各被害者の言動に立腹した
こと以外には考え難いが,これは,本件時の被告人の生活状況や精神状態,飲
酒時の行動傾向等に鑑みれば一応了解が可能である。加えて,上記の飲酒量は
約6時間にわたる断続的な飲酒の合計であり,短時間に摂取したものではない
上,被告人の上記各薬物の服用時刻からして,これら各薬物とアルコールとの
相互作用が本件時まで続いていたとは認められない。そうすると,被告人は,
本件時及びその前後を通じ,被告人なりの判断に基づき,それなりに合理的に
行動していたものということができ,その酩酊の程度は単純酩酊にとどまって
いるというほかない。以上の認定説示に照らし,被告人に本件前後の記憶がな
いことは,その酩酊程度の判断を左右するものとはいえない。
よって,本件時,被告人の是非弁識能力及び行動制御能力はいずれも若干低下
していたものの,著しく減退してはおらず,完全責任能力を有していたと認めら
れるから,弁護人の主張は採用できない(求刑懲役1年6月)。
平成19年6月4日
神戸地方裁判所第2刑事部
裁判官五十嵐浩介

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛