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平成15年(ワ)第28645号商標権侵害差止請求事件
口頭弁論終結日 平成16年3月24日
           判       決
     原      告      株式会社石澤研究所
     訴訟代理人弁護士      安田有三
     同             平林英昭
     被      告      株式会社メイダイ
     訴訟代理人弁護士      三木浩太郎
 主       文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
           事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙商品目録記載の化粧品を販売してはならない。
2 被告は,前項記載の化粧品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,金450万円及びこれに対する平成16年1月9日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,原告が,別紙商品目録記載の化粧品(以下「被告商品」という。)
を販売する被告に対し,被告の販売行為は,①不正競争防止法(以下「不競法」と
いう。)2条1項1号の不正競争行為に当たる,②原告の有する商標権の侵害行為
に該当する,と主張して,被告商品の販売の差止等と損害賠償を求めた事案であ
る。
1 争いのない事実等
(1) 当事者
 原告は,化粧品及び浴剤の製造販売を主たる業務とする株式会社である。
 被告は,化粧品を製造販売している株式会社である。
(2) 原告の有する商標権
 原告は,次の商標権(以下,「原告商標権」といい,その登録商標を「原
告商標」という。)を有している。
登録番号  第4730734号
出願日   平成15年4月17日
登録日   平成15年12月5日
商品及び役務の区分  第3類
指定商品  尿素とヒアルロン酸を配合してなる化粧水
登録商標  別紙商標目録記載のとおり
(3) 原告の商品
 原告は,平成14年2月から,商品名を「Uモイストウォーター」とする
化粧水(以下「原告商品という。)を販売している。原告商品は,尿素とヒアルロ
ン酸の配合された化粧水である。
 原告は,原告商品の透明のビンの側面に,別紙写真目録の上段の写真のと
おりの表示を付している(以下「原告表示」という。)。
(4) 被告の行為
 被告は,平成15年5月ころから,被告商品を販売している。被告商品
は,尿素とヒアルロン酸が配合された化粧水である。
 被告は,被告商品の透明のビンの側面に,別紙写真目録の下段の写真のと
おりの表示を付している(以下「被告表示」という。)。
2 争点
(1) 被告商品の販売行為は,不競法2条1項1号の不正競争行為に該当する
か。
(2)被告商品の販売行為は,原告商標権の侵害行為に該当するか。
(3) 原告の損害額はいくらか。
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(不正競争行為の該当性)について
(原告の主張)
(1) 原告表示の構成
 原告表示の構成は,次のとおりである。
「透明な縦長円筒形状の容器外周面に「尿素」と縦書きし,この文字と平
行に「ヒアルロン酸」を縦書きし,前者の「尿素」の文字の大きさが後者の「ヒア
ルロン酸」より大きい文字の配列であり,また文字の色はベージュ(らくだ色)を
基調にしている。」
(2) 被告表示の構成
 被告表示の構成は,次のとおりである。
「透明な縦長円筒形状の容器外周面に「尿素」と縦書きし,この文字と平
行に「ヒアルロン酸」を縦書きし,前者の「尿素」の文字の大きさが後者の「ヒア
ルロン酸」より大きい文字の配列であり,また文字の色はベージュを基調にしてい
る。」
(3) 被告の不正競争行為
ア 商品等表示
 原告表示の中の「尿素」,「ヒアルロン酸」という文字自体は,化粧水
に含まれる成分を表示したものであり,自他識別機能はないが,「これらの文字を
含み,文字の配列,特殊なレタリング,配色」などからなる原告表示が,商品の新
規性,流通関係,販売量などにより,ある特定人の商品と認識される表示となれ
ば,不競法2条1項1号における「他人の商品等表示」となり,自他商品識別機能
を有することになる。
 そして,原告表示における文字の用法,広告媒体及び雑誌等において原
告表示を原告商品の商品表示として掲載していること,「尿素とヒアルロン酸を商
品表示中に記載した化粧水」を販売したのは原告が初めてであること,原告商品は
平成14年2月に販売開始以来,出荷本数(累積)が平成16年1月まで合計43
万3117本に達し,空前のヒット商品であったこと,流通経路,販売促進実績,
市場での原告商品の知名度が極めて高いこと等から,原告表示は,流通関係者及び
一般消費者から原告の商品表示として認識され,自他商品識別機能を有していると
いえる。
 したがって,原告表示は,不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当
する。
イ 周知性
 原告が平成14年2月に原告商品の販売を開始して以来,原告商品の出
荷本数は,同年12月までに15万3541本,平成15年1年間で25万747
2本,平成16年1月に2万2104本であった。
 原告表示は,原告商品の出荷本数(累積)が合計20万本を達成した平
成15年2月末時点で,また,遅くとも43万本以上となった現時点で,需要者の
間に広く認識されるに至ったといえる。
ウ 類似性及び混同のおそれ
 原告表示と被告表示は,「透明な縦長円筒形状の容器外周面に「尿素」
と縦書きし,この文字と平行に「ヒアルロン酸」を縦書きし,前者の「尿素」の文
字の大きさが後者の「ヒアルロン酸」より大きい文字の配列であり,また文字の色
はベージュ(らくだ色)を基調にしている。」点で共通しているから,類似してお
り,混同のおそれがある。
(4) 適用除外
 被告商品のラベル上の「尿素」及び「ヒアルロン酸」の各文字は,内容物
を示す普通名称としてだけではなく,自他識別力ある原告表示に類似する被告表示
の一要素としても使用されている。
 したがって,上記各文字の使用をもって,被告表示自体の使用を不競法1
2条1項1号の適用除外に当たる行為とすることはできない。
(被告の反論)
(1) 原告表示の構成
 原告表示の構成は,次のとおりである。
「透明な縦長円筒形状の容器外周面に貼付された薄黄色のラベルに,その
最上部に「うるおい成分」との文字列を四角枠で囲んで横書きし,その下部に「尿
素」の文字及び水色円中に白抜き「と」の文字を縦書きし,この文字列と平行に
「ヒアルロン酸の」と「化粧水」の文字列を縦書きし,「尿素」の文字の大きさは
「ヒアルロン酸の」及び「化粧水」の各文字より3倍程度大きいものであり,また
水色円中に白抜き「と」の文字以外の文字(説明文を含む)はベージュ(らくだ
色)である。」
(2) 被告表示の構成
 被告表示の構成は,次のとおりである。
「透明な縦長円筒形状の容器外周面に貼付された薄ピンク色のラベルに,
「尿素」の文字及び金赤色の「+(プラス)」の文字を縦書きし,この文字列と平
行に「ヒアルロン酸」の文字列を縦書きし,両文字列の下に両端を半円とする金赤
色の長方形中に白抜き「化粧水」の文字を横書きし,「尿素」の文字の大きさは
「ヒアルロン酸」及び「化粧水」の各文字より2倍程度大きいものであり,また
「尿素」及び「ヒアルロン酸」の文字はベージュ(らくだ色)であるが,それ以外
の文字(説明文等)は黒色である。」
(3) 不正競争行為の有無
ア 原告表示の商品等表示性
(ア) 原告商品の商品名は「Uモイストウォーター」であり,その商品名
によって他社製品と識別されている。
(イ) 他方,原告表示は,本来的には自他商品識別機能を有しない商品容
器及びラベルの外観(文字の大きさや色)にすぎず,以下のとおり,自他商品識別
機能を有するとはいえない。
 すなわち,原告商品のような一般大衆を対象とした比較的低価格の化
粧品においては,透明な縦長円筒形状の容器を用い,その外周面にラベルを貼った
商品は極めてありふれたものであるから,原告表示のうち「透明な縦長円筒形状の
容器」である点には何ら自他商品識別力はない。また,商品容器の外周に貼付した
ラベルに,当該商品の原材料(原告商品においては「尿素」と「ヒアルロン酸」を
主成分とする化粧水であること)を記載することもまた多くの同種商品に共通する
ことであり,「外周面に「尿素」と縦書きし,この文字と平行に「ヒアルロン酸」
を縦書き」した点も何ら自他商品識別力を有しない。さらに,原告商品のような女
性を対象とするスキンケア商品においては,商品の性質上,女性的な柔らかいデザ
イン,配色等をもって商品を構成することは一般的であるから,原告表示において
文字の色がベージュ(らくだ色)を基調にしている点も,自他商品識別力を有する
とはいえない。
(ウ) 以上のとおり,原告表示は,他の同種商品にはない特別な商品容器
やラベルの外観(文字の大きさ,文字列の表記方法,文字色)を有するものではな
いから,需要者がその表示を見ても特定の出所を識別し得ないものである。
 したがって,原告表示は,不競法2条1項1号所定の「商品等表示」
には該当しない。
イ 周知性
 前記のとおり,原告表示は自他商品識別機能を有しないから,仮に原告
の主張するとおりの出荷本数があったとしても,その程度の販売期間及び販売数量
では,到底,原告表示が自他商品識別機能及び周知性を獲得したとはいえない。
ウ 類似性及び混同のおそれ
(ア) 前記のとおり,原告表示は自他商品識別機能を有しないが,仮に原
告表示に何らかの自他商品識別機能を認めるとすれば,識別力を有する部分は,水
色円中に白抜きの「と」の文字部分である。
 同様に,被告表示の自他商品識別機能を有する部分は,金赤色の「+
(プラス)」の文字及び両端を半円とする金赤色の長方形中の白抜きの「化粧水」
の文字部分である。
 したがって,原告表示と被告表示とは,識別力のある部分において共
通しないので,類似性はない。
(イ) また,各文字の配列においても,原告表示は「尿素」,水色円中に
白抜きの「と」,「ヒアルロン酸の」,「化粧水」をすべて縦書きしているのに対
し,被告表示は「尿素」,金赤色の「+(プラス)」,「ヒアルロン酸」の縦書き
部分と,両端を半円とする金赤色の長方形中に白抜き「化粧水」の文字の横書き部
分とからなり,両者は相違する。
(ウ) 以上のとおり,原告表示と被告表示は,「尿素」,「ヒアルロン
酸」という本来的に識別力を有しない点においては共通するものの,識別力ある部
分において相違するから,類似せず,需要者において原告商品と被告商品を混同す
るおそれはない。
(4) 適用除外
 「尿素+(プラス)ヒアルロン酸 化粧水」なる被告表示は,尿素とヒア
ルロン酸を成分とする化粧水を指称するに際して,もっとも自然で適切な表示であ
り,当該商品が取引される範囲内において,尿素とヒアルロン酸を成分とする商品
群を指称する一般的な普通名称として通用しているものである。
 このように,当該商品の品質,内容等を表現するに当たり,もっとも自然
で適切な表示方法は,特定の者に独占させるべきものではないから,不競法12条
1項1号の「普通名称」に該当すると解すべきである。
 被告表示は,「尿素」の文字が「ヒアルロン酸」の文字より大きいもの
の,通常一般に用いられる字体(明朝体)で,かつ「尿素+(プラス)」,「ヒア
ルロン酸」の各文字を単に平行に縦書きし,「化粧水」なる文字を横書きにしたに
すぎないものであるから,不競法12条1項1号の「普通に用いられる方法で」使
用されているといえる。
 したがって,被告表示の使用は,不競法12条1項1号の適用除外行為に
該当する。
2 争点(2)(商標権侵害行為の有無)について
(原告の主張)
(1) 原告商標の構成
 原告商標の構成は,次のとおりである。
ア 「尿素」の文字が縦書で,その左に平行して「ヒアルロン酸」の文字が
縦書きされている。「尿素」の文字は,「ヒアルロン酸」の文字より大きく書かれ
ている。
イ 「尿素」の文字の下に白抜きで「と」の文字が配されている。
ウ 「ヒアルロン酸」の文字の下に「の」の文字が,「ヒアルロン酸」の文
字の左に「化粧水」の文字が,それぞれ配されている。
エ 「石澤研究所の」の文字が,上部に小さく,横書きされている。
(2) 原告商標の要部
 前記(1)の原告商標の構成のうち,イは「及び」との観念を生ずるだけであ
り,ウは商品の内容を示すものであり,エは商号表示であって,いずれも商品の出
所識別力はない。
 したがって,原告商標の要部は,前記(1)のアの部分である。
(3) 被告の侵害行為
 被告商品は,その容器表面に前記(1)のアの構成を有する被告表示を付して
いる。
 したがって,被告商品を販売する被告の行為は,原告商標権を侵害する。
(被告の反論)
(1) 原告商標の要部
 原告商標のうち,「尿素」,「ヒアルロン酸」,「化粧水」はいずれも普
通名称であり,原材料を記述したものにすぎない。また,これらの文字を組み合わ
せた「尿素とヒアルロン酸の化粧水」なる標章も普通名称であり,需要者において
何人の業務に係る商品であるか認識することができないものである。仮に原告商標
の自他商品識別機能を認める部分があるとすれば,「石澤研究所の」なる文字列,
及び黒色円中に白抜き「と」の文字部分であると解すべきである。
(2) 類似性
 被告表示は,前記1(被告の主張)(2)とおりであり,原告商標の要部であ
る「石澤研究所の」なる文字及び黒色円中に白抜き「と」の文字をいずれも含まな
い。原告商標と被告表示は,要部において共通しないので,両者は相違する。
 したがって,被告表示を使用する被告の行為は,原告商標の侵害行為に当
たらない。
(3) 商標法26条1項2号
 被告表示は,被告商品が尿素及びヒアルロン酸を原材料とすることを,一
般的な明朝体で,「尿素」と「ヒアルロン酸」と縦書きしたものであり,通常の方
法による記述といえる。被告表示は商標法26条1項2号に該当するから,原告商
標権の効力は及ばない。
(4) 商標登録における明らかな無効理由の存在
 仮に,原告商標の要部が,「尿素」と縦書きし,この文字と平行に「ヒア
ルロン酸」を縦書きし,前者の文字の大きさが後者のそれより大きい文字の配列と
なっている点にあるとすれば,以下のとおり原告商標登録は,無効理由を含むこと
が明らかであるから,これに基づく本件請求は権利濫用に当たり許されない。
ア 無効理由1
 「尿素とヒアルロン酸の化粧水」なる標章は,尿素とヒアルロン酸を成
分とする化粧水を表現するに当たり,もっとも自然で適切な名称であり,また,当
該商品が取引される範囲内において,当該商品を指称する一般的な普通名称として
通用しているものであるから,商標法3条1項1号の「普通名称」に該当し,商標
登録の要件を欠く。
イ 無効理由2
 「尿素とヒアルロン酸の化粧水」なる標章は,当該商品の原材料名をそ
のまま記述したものであり,需要者に当該商品に関する情報を伝達するために必要
な表示である。商品や役務の内容に関する単なる記述にすぎない表示について商標
権としての排他的な使用を認めるとすれば,商品や役務を取引する際の意思決定に
必要な情報等の開示が妨げられ,需要者にその欲する商品,役務を行き渡らせると
いう市場の機能がうまく働かなくなる等の弊害が生じるばかりか,本件のような場
合,単に当該標章の使用禁止という範囲を超えて,尿素とヒアルロン酸を組み合わ
せた化粧水そのものを製造ないし販売することができなくなるという結果を招来す
るおそれがある。
 したがって,原材料等の記述的表示たる「尿素とヒアルロン酸の化粧
水」なる標章は商標法3条1項3号に該当し,商標登録の要件を欠く。
ウ 無効理由3
 原告商標の出願当時,尿素とヒアルロン酸の両方又は何れか一方を主成
分とする化粧水など同種商品は,既に市場に数多く出ており,また,需要者におい
ても専ら当該商品に含まれる成分をもって商品を識別していたため,単に「尿素と
ヒアルロン酸の化粧水」と表示されただけでは需要者において当該商品が何人の業
務に係る商品であるかを認識できなかった。
 したがって,「尿素とヒアルロン酸の化粧水」なる標章は,本来的に出
所識別機能を有しないものであるから,商標法3条1項6号の「需要者が何人かの
業務に係る商品または役務であることを認識できない商標」に該当し,商標登録の
要件を欠く。
3 争点(3)(原告の損害額)について
(原告の主張)
(1) 逸失利益
 被告は,被告商品を少なくとも1000本販売した。被告商品1本当たり
の利益は,少なくとも1500円であるから,被告は被告商品の販売により少なく
とも150万円の利益を得た。
 不競法5条1項により,原告は,被告の被告商品の販売により150万円
の損害を被ったものと推定される。
(2) 弁護士費用
 本件のような事案では,被告の侵害行為を防ぐためには弁護士に依頼せざ
るを得ず,原告の被った弁護士費用相当の損害のうち,300万円を損害賠償とし
て請求する。
(被告の認否)
 原告の主張を争う。
 被告は,卸売業者であるから,被告商品の小売価格である1本1500円を
基礎として算定するのは相当でない。
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(不正競争行為の該当性)について
 被告表示が,被告商品の出所を示す表示に当たるか否か,すなわち,不競法
2条1項1号所定の「商品等表示」として使用されていたか否かの点について,他
の争点に先立って検討する。
(1) 事実認定
 前記争いのない事実に証拠(甲12,13,乙1,3の1~4,4の1~
4,検甲1,2)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められ,これを
覆すに足りる証拠はない。
ア 被告は,平成15年2月ころから,被告表示を付した被告商品を販売し
ている。被告商品の販売態様は,カタログ販売及びインターネットのショップサイ
トで販売するという態様である。
イ 被告商品は,尿素及びヒアルロン酸を保湿成分とする化粧水であり,そ
の保湿力をセールスポイントとしていた。
ウ 被告表示は,別紙写真目録の下段の写真のとおりである。すなわち,
(ア) 被告表示は,透明な縦長円筒形状の容器外周面に貼付された薄ピン
クの地色のラベルに,縦書きの「尿素」の文字,「+」の記号及び横書きの「プラ
ス」の文字を縦一列に書き,この縦一列の文字等と平行に「ヒアルロン酸」の文字
を縦書きし,これらの文字の下に両端を半円とする金赤色の長方形中に白抜きで
「化粧水」の文字を横書きしている。
(イ) 被告表示は,「ヒアルロン酸」の文字の左側に平行に「角質層まで
水分を引き上げる「尿素」と肌の水分保持能力に優れた「ヒアルロン酸」を配合し
ているので,みずみずしく潤いのある肌に!」との説明文を3列にわたり縦書きし
ている。
(ウ) 被告表示において,「尿素」の文字は「ヒアルロン酸」の文字より
2倍程度,「化粧水」の文字より3倍程度の大きさであり,また,(イ)の文章の文
字は,「化粧水」の文字の2分の1程度の大きさである。
(エ) 被告表示において,「尿素」及び「ヒアルロン酸」の文字はベージ
ュ(らくだ色),「+」の記号及び「プラス」の文字は金赤色,(イ)の説明文の文
字は黒色である。
エ 被告商品の商品名は「うるおいウォーター」であり,被告は,被告商品
を掲載したカタログに,被告商品の写真とともに「うるおいウォーター」の商品名
を掲載している。また,インターネットのショップサイトでも,被告商品の写真と
ともに「うるおいウォーター」の商品名を掲載している。
オ 原告商品及び被告商品の他にも,容器の外周面に,保湿成分として,
「尿素」,「ヒアルロン酸」と目立つ態様で大きく表示した化粧水が販売されてい
る(乙4の1)。また,一般に化粧品においては,容器外周面に主な成分が大き
く,目立つ態様で表示することが普通に行われている(乙4の2~4)。
(2) 判断
ア 以上認定した事実によれば,被告表示は,被告商品の出所を示す表示,
すなわち,不競法2条1項1号所定の「商品等表示」として使用されていないと解
するのが相当である。その理由は,以下のとおりである。
 前記認定のとおり,①被告商品は,尿素とヒアルロン酸を保湿成分とす
る化粧水であること,②被告表示は,その表示態様に照らすと,前記(ア)の表示部
分が需要者の注意を惹く部分であるといえること,③前記(ア)の部分は,「尿素+
(プラス)ヒアルロン酸 化粧水」という表示部分であるが,同表示に接した需要
者をして,被告商品が「尿素とヒアルロン酸を保湿成分とする化粧水である」であ
ることを理解させる表示といえること,④被告表示には,前記(ウ)の説明文が,前
記(ア)の部分に隣接して付記されていること,⑤「尿素」及び「ヒアルロン酸」の
表示は,他の尿素及びヒアルロン酸入りの化粧水においても,容器外周面に主成分
を示すものとして比較的大きく,目立つ態様で使用されていること,⑥被告表示の
「尿素+(プラス)ヒアルロン酸 化粧水」という表示部分は,被告表示の前記
(ウ),(エ)のとおり,比較的大きな文字で表示されていること,⑦一般に化粧品に
おいては,容器外周面に主成分を大きく,目立つ態様で表示することが普通に行わ
れており,被告商品の上記表示部分の表示態様も,他の化粧品における主成分表示
の表示態様と格別異なる態様ではないこと等の事実に照らすならば,被告商品に接
した需要者は,被告表示の「尿素+(プラス)ヒアルロン酸 化粧水」の表記部分
について,専ら,「尿素とヒアルロン酸を保湿成分とする化粧水である」という被
告商品の品質,内容を示す表示であると認識し,被告商品の出所を示す表示である
と認識することはないと解するのが相当である。
イ したがって,被告表示は被告商品の出所を示す表示,すなわち,不競法
2条1項1号所定の「商品等表示」として使用されていないものと認められるか
ら,被告が被告商品において被告表示を使用する行為は,同号所定の「他人の商品
等表示」を使用する行為には該当しない。
(3) 小括
 よって,その余の点について判断するまでもなく,被告表示の使用が不正
競争行為に該当することを理由とする原告の請求は理由がない。
2 争点(2)(商標権侵害の有無)について
(1) 判断
ア 前記1(2)アで判断したとおり,被告表示のうち需要者の注意を惹く部分
は「尿素+(プラス)ヒアルロン酸 化粧水」の表示部分である。また,この表示
部分は,被告商品に接した需要者が,「尿素とヒアルロン酸を保湿成分とする化粧
水である」という被告商品の品質,内容を示す表示であると認識し,被告商品の出
所を示す表示であると認識することはないと解するのが相当である。
 したがって,被告が被告商品において被告表示を用いた行為は,被告表
示を,被告商品の自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用する行
為,すなわち商標としての使用行為とはいえないから,原告商標権の侵害行為に当
たらない。
イ また,前記1(2)アで判断したとおり,被告表示の表示態様は,他の化粧
品の成分表示の表示態様と同様のものである。
 したがって,被告表示は,商標法26条1項2号に該当するから,原告
商標権の効力は及ばない。
(2) 小括
 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,被告
表示の使用が原告商標権の侵害行為に該当することを理由とする原告の請求は理由
がない。
 3 結語
 よって,主文のとおり判決する。
    東京地方裁判所民事第29部
          裁判長裁判官    飯  村  敏  明
             裁判官榎  戸  道  也
    裁判官佐野信は,填補のため署名押印することができない。
          裁判長裁判官    飯  村  敏  明
(別紙)
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