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裁判例


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       主   文
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 原告a、同b、同c、同d、同e、同f、同g、同h、同iを除くその余の原
告らと被告との間の労働契約上の労働時間の起終点は次のとおりであることを確認
する。
(一) 右原告らの所定労働時間は、午前八時に所定控所へ入場することをもつて
起点とし、右控所を午後五時に退場することをもつて終点とする。
(二)右原告らの休憩時間は、正午に右所定控所に入場することをもつて起点と
し、午後一時に右控所を退場することをもつて終点とする。
2 被告は原告らに対し、それぞれ別紙請求金額一覧表中合計欄記載の金員及びこ
れらに対する昭和五〇年四月二二日から完済まで年五分の割合による金員を支払
え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 第2項につき仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
 主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 当事者
(一) 被告は肩書地に本社を、長崎、広島、神戸、横浜など全国各地に事業所を
有し、船舶、航空機、重機械の製造、修理、販売などを行なう会社である。
 被告会社には全造船機械労働組合三菱重工支部(以下三菱支部という。)、全日
本労働総同盟全国造船重機械労働組合連合会三菱重工労働組合(以下同盟三菱とい
う。)、三菱重工長崎労働組合の三つの組合が併存しているが、このうち同盟三菱
が全従業員の九〇パーセント以上を組織している。
(二) 原告らはいずれも昭和四八年三月三一日当時、被告の事業所の一つである
長崎造船所に勤務する従業員であり、かつ、三菱支部の一分会組織である長崎造船
分会(以下長船分会という。)に所属する組合員であつた。
 而して、原告a、同b、同c、同d、同e、同f、同g、同h、同iはいずれも
本訴提起の日である昭和五〇年四月五日以後に被告を退職しているが、その余の原
告らは現在も被告の従業員であり、かつ、長船分会に所属する組合員である。
2 被告会社における労働時間の変遷
(一) 被告は、昭和二二年五月一三日以降、昭和四〇年一二月まで三菱支部との
間に同月以降昭和四六年一二月までは、三菱支部及び同盟三菱との間で、各々労使
の対等交渉により、一日労働時間七時間制を確認し、労働協約上も明文化されてい
た。
 しかし、労働時間の起、終点時刻は各事業所において異なり、これも労使の対等
交渉によつてきめられ、その結果が各事業所ごとに就業規則上も明文化されてい
た。
 例えば長崎造般所の場合、昭和四六年九月発行された社員就業規則類集には「社
員の労働時間及び休憩時間は次のとおりとする。①一般部門労働時間・午前八時か
ら午前一二時まで、午後一時から午後四時まで。休憩時間・午前一二時から午後一
時まで。②その他の部門(略)」とされていた。
 このように就業規則上は、単に労働時間及び休憩時間の起終点時刻を明記するに
とどめ、労働時間起終点の具体的内容確定は、すべて労使の対等交渉とこれにもと
づく労働条件慣行にゆだねられてきた。
(二) 労働時間、休憩時間、起終点の具体的内容
(1) 長崎造船所における労働時間の起点については、職礼制度からタイムレコ
ーダー制度への移行という勤怠把握制度の変遷はあつたが、ともかく就業規則に明
記された始業時刻(一般部門の場合は午前八時)までに職礼をひくか、タイムレコ
ーダーを打刻すれば通常出勤扱いとされてきた。
 したがつて、原告らはもちろん、他の労働者もタイムレコーダーを始業時刻まで
に打刻した後、更衣、安全保護具の着用をすませ、作業場へ向うのが労働時間内の
作業準備行為として確認されていた。したがつてこの点に関する労使間の紛争は発
生したことがない。
(2) 休憩時間についても、その開始は正午とし、その時刻に労働者が食堂また
は控所内に到着し手洗い等をすませ、昼食をとることが出来る状態にあることと
し、それに間に合うように作業場を離れることとなつていた。また午後の始業時刻
午後一時、即ち休憩時間終了は、その時刻に控所等をはなれることとされ、したが
つて作業場へ向うのは休憩時間終了後となつていた。しかして、それらは労使間に
確立された慣行となつていた。
(3) 労働時間の終点は次のとおりである。
 即ち、現場部門では団体交渉などにより、昭和三二年以降、昭和四六年一二月ま
で作業止め時間の慣行として、造般部門においては「終業時刻一〇分前には控所に
到着する」ことを確認し、造機部門も「作業止め時間はおそくとも終業時刻一〇分
前とする」旨の基準を確立していた。
(三) 隔週週休二日制の実施
(1) 昭和四七年一月から実施されるにいたつた隔週週休二日制とは、要旨次の
如きものである。
従前の労働時間を一日三〇分延長して七時間三〇分とし、そのかわり第一、第三、
第五土曜日を休日とする。
さらに右制度を実施するにあたつての諸対策として、
(イ) 時間管理の改善
始業前……始業に間に合うよう更衣などを完了し作業場に到着する。
始業……所定の始業時刻に作業場において実作業を開始する。
午前の終業……所定の終業時刻に実作業を中止し、その後食堂、休憩所へ向う。
午後の始業前……午後の始業に間にあうよう遊戯などをやめて作業場に到着する。
午後の始業……所定の始業時刻に作業場において、実作業を開始する。
終業……所定の終業時刻に実作業を終了する。
終業後……手洗、洗面、入浴、更衣などを行なう。
(ロ) 勤怠把握方法
 自己申告と所属長の確認を基本とする新しい勤怠把握方法の導入をはかる(タイ
ムレコーダーの廃止)。
 具体的には事業所の実状に応じ、可能なところから実施することとし事業所と分
会で協議する。
 右記載以外にも時差出勤の活用、交替制勤務の活用、休日振り替えの活用等、全
面的な合理化の内容が諸対策の中におり込まれていたのである。
(2) この様に被告の隔週週休二日制案は、それを実施するかわりに労働時間の
実質的延長を図りあわせて各種の合理化をおしつけようとするものであつた。
 三菱支部は被告の不当な右合理化案に強く反対しその撤回を求めた。しかし被告
は同盟三菱がすでに右合理化案を認めていたことから全くゆずらず、三菱支部も最
終的には当時の力関係から、昭和四六年一二月二七日一応具体的事項に関する各分
会事業所間の協議成立を条件として、右隔週週休二日制を承認した。そのため、そ
の後長崎造船所と長船分会の間でも始終業基準、勤怠把握方法その他について協議
が行なわれた。
(3) 而して、長崎造船所の造船部門においては、右協定成立後も午前、午後の
終業について、次のような労働慣行を確立してきた。即ち、午前の終業について
は、午前一二時に控所に入り、その後昼食をとるように、午後の終業は終業時間前
五分に控所へ入り、その後手洗、洗面、入浴、更衣をするというのが常態であつ
た。
(4) さらに、タイムレコーダーによる勤怠把握方法がそのまま存続したことに
より、実態上従来通りの始業、終業(それぞれの時間までにタイムレコーダーを打
刻する)のしかたであつても、遅刻、早退扱いとはならなかつた。
3 労働時間の実質的な延長をもたらす被告会社の「完全週休二日制」
(一) 昭和四八年四月から被告会社において、それまでの隔週週休二日制にかわ
つて、完全週休二日制が実施されるに至つた。
 その内容は、(イ)労働時間をさらに三〇分間延長する。(ロ)隔週週休二日制
が実施されるようになつた後も、なお事業所ごとに始終業管理、勤怠把握方法の改
善などの諸対策の実施に差異があつたのを、完全に基準通り実施する。(ハ)新た
に第二、第四土曜日も休日にするというものであつた。
(二) 三菱支部は、これ以上一日の労働時間を延長することや、始終業基準など
をはじめとする諸対策の強化は反対という態度を明確にした。
 そして「現行労働時間を延長することなしに、完全週休二日制とすること。及び
更衣、手洗、入浴は、時間内とし休憩時間は完全に与えよ」という真の時間短縮を
めざす要求を対置し、昭和四七年一〇月三〇日以来被告と協議をかさねた。
 しかし同盟三菱との妥結によつて、昭和四八年四月一日実施を既定の方針とする
被告は、三菱支部の要求にはなんら耳を貸すことなく、右期日より実施を強行し
た。
(三) 被告は、また三菱支部に対して、同年三月三一日で労働協約は失効したと
して、「今後は就業規則に従つてもらうことになる」旨通告してきた。
 そして、同年四月一日付で一方的に就業規則を改訂した。改定の主たる内容は、
三菱支部が同意しない「完全週休二日制」に基づき、労働時間、休日、賃金規則な
どを改定するものであつたが、同時に過去の就業規則では全く明記したことがなか
つた始終業基準を八条四項に明記したものである。
(四) しかし、実質労働時間の大幅延長をもたらす「完全週休二日制」は到底原
告ら組合員を含む三菱支部が認めることができないものであつた。
 したがつて同年三月三一日三菱支部と長船分会は、被告に対し、労働者に不利益
をもたらす就業規則の一方的変更は認めることはできない旨通告した。
(五) 被告は、さらに同年六月一日長船分会の同意を得ることなく、再び就業規
則を一方的に変更した。即ち、同日よりタイムレコーダーを撤去し、従来のタイム
レコーダーによる勤怠把握方法をやめ、「始終業の勤怠は更衣をすませ始業時に体
操をすべく所定の場所にいるか否か、終業時に作業所にいるか否かを基準として判
断する」という面着制による勤怠把握方法を一方的にきめ、その旨勝手に就業規則
上に記載した。
 かくして、被告は、長船分会の反対を無視し、実質的労働時間の大幅延長を内容
とする「完全週休二日制」を一方的に強行実施した。
 もちろん長船分会は、被告に対し、直ちに労働者に不利益をもたらす就業規則の
一方的変更は認められない旨通告した。
(六) 右のように、被告が行なつた始終業基準の変更は、長船分会はもちろん、
原告らの同意を得ることなく一方的に労働条件を改悪した無効な就業規則に基づく
ものであつて違法なものであり、原告らは昭和四八年四月以降も従来通りの慣行を
維持している。
4 労働基準法(以下労基法という。)に違反する被告の始終業基準
(一) 労基法上の「労働時間」の意義
(1) 労基法三二条一項は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一日につい
て八時間、一週間について四八時間を超えて、労働させてはならない。」と定め、
同条二項、三三条にも「労働時間」について規定している。また、同法三四条一項
は、「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少なくとも四五分……
の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定め、同法三六条、三七
条等で時間外・休日労働に関し「労働時間」を規定している。
 更に、労基法八九条一項一号は就業規則の必要的記載事項として「始業及び終業
の時刻、休憩時間……に関する事項」を規定し、同年一五条一項は「使用者は、労
働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しな
ければならない」旨規定し、同法施行規則五条はそれを受けて「明示すべき事項」
として「始業及び終業の時刻、休憩時間……に関する事項」を規定している。
 一方労働基準局は「一般的に、労働時間とは、労働者が、労働するために、使用
者の指揮監督のもとにある時間をいう」と解し(増補改訂解釈通覧労働基準法一九
四頁)、学説の多数も「明示又は黙示の指示により、労働者が使用者の指揮、命令
のもとにおかれる時間」と解している。
(2) しかし、これでは一般的基準を示すだけであつて、具体的な「労働時間」
の起終点が明確でない。そこで、労基法三四条一項の「休憩時間」が「労働時間」
と密着し、しかも同条三項でその「自由利用の原則」が明示されているところか
ら、両者の違いを明確にして、「労働時間」の範囲を具体的に明らかにしてみる。
労働省も「休憩時間」とは「労働者が権利として労働から離れることを保障されて
いる時間の意である」とし、「単に作業に従事しない手待時間は(労働時間であつ
て休憩時間に)含まない」(昭和二二年九月一三日発基一七号)としている。
 また、休憩時間が右の様なものであるから、「休憩時間に来客当番として労働に
従事する時間は、休憩でなく労働時間であり」、したがつて、その時間を含めてそ
の日の労働時間が八時間を超えれば、残業手当を支払われなければならない(昭和
二三年四月七日基収一一九六号)としている。判例も休憩時間の自由利用が出来な
いことを違法とし(「住友化学事件」最高裁三小法廷昭和五四年一一月一三日判
決)、また、勤務時間中の客の途切れた時などを見計らつて、適宜休憩してよいと
されている時間は手待時間(労働時間)であつて休憩時間でない(「すし店杉事
件」大阪地裁昭和五六年三月二四日判決)として、労働省の見解を支持している。
 この様に「労働時間」は現実に労働をしていなくても、待機の時間を含むことは
明らかである。
(3) 労働時間は、労働者が使用者の黙示の指示に基づき行動している場合を含
むことは明らかである。
 労働省通達も使用者による「労働時間」の黙示的指示について明示し(昭和二二
年九月一三日発基一七号、昭和二三年七月一五日基収二四三三号、昭和二五年九月
一四日基収二九八三号)、判例(「翔鸞小学校事件」京都地裁昭和二五年一月九日
別決、「滲透工業事件」大阪高裁昭和四五年一月二七日判決、「静岡県教組事件」
最高裁一小法廷昭和四七年四月六日判決」も同旨の判断を示している。
(4) 右の労働省通達、判例、学説から明らかなように、労働者保護法としての
強行法規性をもつ労基法が、規制の対象としている「労働時間」は、労使、特に使
用者の主観的な意思とはかかわりなく、右の基準によつて客観的に「使用者の明示
又は黙示の指示により、労働者がその指揮、命令の下におかれ始めた時よりそれを
脱するまでの時間」として定まるべきである。したがつて、実際の作業時間はもと
より、かかる作業に従事していない時間や黙示の指示に基づき、実際の作業実施に
不可分の行動が行なわれた場合も「労働時間」に入ることは明らかである。
 そうすると、労基法上の「労働時間」の起点は、少なくとも作業に不可分な準備
着手時刻であり、その終点は作業終了後の後始末完了時刻である。もつとも、不利
益をともなう遅刻認定制が、作業に不可欠な準備開始時刻前に存する場合は、右時
刻をもつて労基法上の「労働時間」の起点とすべきであることは当然の理である。
なぜなら、遅刻認定時刻の設定により、使用者は、自らが欲すれば、その時刻以降
直ちに実際の作業に従事させることをも可能にする状態を手にすることになるから
である。
 そして、作業に不可欠な準備とは、先ず第一に作業を行なうにあたり法令上義務
付けられている為、必ず行なわなければならない作業準備、後始末行為である。例
えば、労働安全衛生法、同規則等により作業を行なう際、着用が義務づけられてい
る保護具、保護帽、保護衣の着脱保管、作業衣の着替や汚染作業後の洗身などであ
る(労働安全衛生規則一一〇条、一一一条、一三六条、三一八条四号、五一六条、
六二五条)。
 第二に、作業追行上不可欠の始業前点検、用具の整備、作業後の後始末、用具の
格納などである。
 第三に就業規則その他の規定により企業上不可欠とされている事項。例えば、作
業服、保護具、保護帽、安全靴の着脱である。
 第四に、企業において慣行上不可欠とされている事項。例えば、清掃、整頓、お
茶の準備、お茶の提供などである。
 労働省労働基準局監督課編著の「労働時間管理の手引」(労働法令協会)も、作
業準備時間、作業後の後始末時間が、使用者の制度的な指揮命令のもとに、または
使用者の明示、黙示の指揮命令のもとに行なわれるかぎり、(労基法上の)労働時
間のなかに入ると指摘し、例として、「金融機関における開店前の金庫の開庫、店
舗内外の清掃、帳簿類の金庫からの搬出、朝礼その他の業務をあげ、これらが営業
開始前の準備業務として認められるので、たとえ具体的な指示がなくても、労働時
間として取り扱う」べきだとしている。
 労働省通達でも「作業の準備又は終業に必要のある整理整頓時間」は労働時間と
してみなし(昭和二三年一〇月三〇日基発一五七五号)、労働安全衛生法に基づ
く、安全衛生教育に要した時間を労働時間とみており(昭和四七年九月一八日基発
六〇二号)、労働安全衛生法に基づく、安全、衛生委員会の会議の出席も労働時間
とみている(昭和四七年九月一八日基発六〇三号)。
 又、社立学校の授業も労働者に義務を課し、就業規則上の制裁等の不利益取扱い
による出席強制があれば、右授業も労働時間である(昭和三七年八月三〇日基収二
九八五号)としている。
 これらの労基法の解釈、行政解釈、行政通達からみて明らかなように、作業上不
可欠の準備、後始末時間は、当然労基法上の「労働時間」の中に入るのである。
(二) 被告会社の始終業基準について
(1) 被告会社では、昭和四六年一二月までは、前記2、(一)、(二)記載の
とおり、原告らをはじめ長崎造船所労働者は、始業時刻までに職札を引くか、タイ
ム・レコーダーを打刻した後、「労働時間」内において、更衣、安全保護具の着用
をすませ、必要工具をもつて作業所に向つていたから、右行為が労基法の「労働時
間」内に行なうべき、作業準備行為として確認されていたし、また、作業終了時も
終業時刻までに作業後始末として、安全保護具の取外し、工具返還、更衣、洗身、
洗顔等を行なつていたから、これら後始末行為も「労働時間」内の行為として確認
されていた。このため、右期間中右に関する労使紛争は発生しなかつた。ただ、被
告が事実上労働時間を延長しようとする意図から、社船の発着時間を労働者に不利
益に変更させようとしたことについて紛争があつたが、労働時間そのものの争いで
はなかつた。
 昼の休憩時間も、その開始時刻である正午には、労働者が食堂または控所に到着
して手洗をすませ、昼食をとることが出来る状態にしていたし、午後の始業時刻午
後一時に食堂、控所を離れることとなつていたから、休憩時間の自由利用は確保さ
れていた。これらを控所基準といつていた。この「労働時間」の起、終点基準の設
定は、労基法上の「労働時間」制からみて、極めて合理的であり正当である。
(2) ところが、昭和四七年一月から実施された隔週週休二日制(第一、第三、
第五土曜日を休日とする)では、前記2、(三)記載のとおり時間管理の改善と称
して、始終業基準を定めた。
 それによると、始業は午前八時として、始業前に更衣などを完了して作業場に到
着し、始業時刻に実作業を開始するというのである。また、午前の終業は、終業時
刻に実作業を中止して、その後食堂、休憩所に向うというのであり、午後の始業は
始業時刻に作業場において実作業を開始するので、食堂、休憩所を午後の始業前に
離れていなければならないというのである。更に、終業は終業時刻に実作業を終了
し、手洗、洗面、入浴、更衣は終業後行なうとしたのである。
 勿論、これらが隔週週休二日制に便乗し、従前の労働時間制を改悪するものであ
ることが明らかであり、特に、本来労基法上の「労働時間」に含まれる作業準備、
後始末を「労働時間」の外に放り出すという暴挙があり、また、遠隔地の業務につ
く従業員について、五分のアローワンス時間を設けているが、右基準どおり行なえ
ば労働条件を劣悪化させることが明らかなので、被告も労基法違反を追求されるの
を避けるため、一方的に強行実施しなかつた。
 例えば、昭和四六年一二月二七日協定書によれば、自己申告制を導入して、始業
管理を行なうことになつていたが、タイムレコーダー制をとつていたため、実際に
行なつておらず、また、タイムレコーダーを更衣後打刻と規定していたが、従前ど
おり更衣前打刻していた。
 即ち、右協定成立後も、午前八時までにタイムレコーダーを打刻して更衣、保護
具を着装して作業所に向い、午前の終業には午前一二時に控所に入り、昼食し、午
後の終業は終業時刻五分前に控所に入り、手洗、洗面、入浴、更衣を行なつて来た
のである。
(3) ところが、被告は三菱支部との団体交渉を打切り、労働協約を期限切れに
よる失効を通告し、昭和四八年四月から完全週休二日制を強行実施した。その内容
は、労働時間を更に三〇分間延長すること、始終業管理、勤怠把握方法などの諸対
策を一方的に強行実施して「時間管理の厳正化」を計るというものである。
 被告は三菱支部に意見を求めることなく、同年四月一日付で一方的に就業規則を
改悪し、一般部門の労働時間を午前八時から午前一二時まで、午後一時から午後五
時までと更に、三〇分延長し、始終業基準なるものを明記した。
 その内容は、
① 始業前……始業に間に合うよう更衣などを完了し、作業場に到着する。
② 始業……所定の始業時刻に作業場において実作業を開始する。
③ 午前の終業……所定の終業時刻に実作業を中止し、その後食堂、休憩所へ向
う。
④ 午後の始業前……午後の始業に間に合うよう遊戯などをやめ作業場に到着す
る。
⑤ 午後の始業……所定の始業時刻に作業場において実作業を開始する。
⑥ 終業……所定の終業時刻に実作業を終了する。
⑦ 終業後……手洗、洗面、入浴、更衣などを行なう。
⑧ 残業時……上記各項に準ずる。
というのである。
 そして、同年六月一日三菱支部との長船分会の同意を得ることなく、一方的にタ
イムレコーダーを撤去し、従来のタイムレコーダーによる勤怠把握方法をやめ、
「始終業の勤怠は更衣をすませ、始業時に体操をすべく所定の場所にいるか否か、
終業時に作業場にいるか否かを基準として判断する」という面着制による勤怠把握
方法を一方的に強行した。
 その為、原告らは従来は午前八時までに控所のタイムレコーダーを打刻すれば、
その後作業衣を着替え、安全保護具を着装しても遅刻にならなかつたものが、面着
制になつてからは作業衣を着替え、安全保護具を完全に着装して、作業現場近くの
所定の体操場所に午前八時までに到着しないと遅刻となることになつたため、一五
分ないし二〇分の時間的損失を受けることになつた。
 また、午前の終業も一二時に作業場を離れるため、控所到着が一二時〇五分ころ
となり、また、午後の始業も午後一時に作業場に到着しなければならないため、控
所を離れるのが一二時五五分ころとなり、自由に使用出来る昼の休憩時間は、五〇
分程度しかなくなり、毎日一〇分程度の時間的損害を被つた。
 また、午後の終業も午後五時に作業場を離れることとなれば、控所に着くのは五
分過ぎであり、作業後始末として必要な洗顔、洗身、更衣はすべて労基法の「労働
時間」外である午後五時以降であり、控所を出るのも午後五時一五分を過ぎること
となつた。その為、従前と比較して毎日一三分程度の時間的損失をこうむつてい
る。
(4) かかる被告会社の始終業基準が、前述の強行法規性をもつ労基法上の「労
働時間」に違反し、違反無効であることは明らかである。即ち、
(イ) 原告らが被告から始業前に完了するよう要求されている、作業服、安全
帽、安全靴、手袋、安全帯、保護メガネ、マスク、保護具(以下作業服などとい
う。)の着装は労働安全衛生規則一一〇条、五三九条、四三五条、五五八条、一一
一条、五二〇条、五六三条、一〇五条、五九七条で義務付けられており、これらの
措置を講じない事業者(被告)は処罰されることとなつている(労働安全衛生法二
〇条ないし二五条、同一一九条、同一二二条)。したがつて、被告は安全心得を作
成し、原告ら従業員に対し右作業服などの着装を明示的に義務付け、それに反する
場合は、懲戒解雇を含む懲戒の対象(就業規則七一条一〇号、同七二条五号、一五
号)としている。
 したがつて、右行為は作業に不可欠の準備行為であるから、労基法上の「労働時
間」の開始後になされる性質のものである。そうすると、右作業準備行為は毎日一
五分ないし二〇分であるが、労基法上の「労働時間」に入り、被告は原告らに対
し、その時間相当の残業手当を毎日支払う義務がある(前出昭和二三年四月七日基
収一一九六号、最高裁一小法廷昭和四七年四月六日判決)。
(ロ) 更に、右の如く着装を義務付けられている作業服などを体から離脱し、控
所の所定の場所に整理整頓しておくことを義務付けられて行なう行為も、作業に不
可欠の後始末行為であることは明らかである。また、それは翌労働日の作業からみ
て、作業前の準備活動にあたることからみても当然であり、労働安全衛生法三条の
事業者の責務からみても明らかである。労働省通達でも、坑内労働の「出坑後のキ
ヤツプランプの返納時間」は労働時間に算入されることを明示している(昭和二三
年一二月一六日基収三九五二号)。
 また、原告らは「著しく身体を汚染する作業場」の労働に従事しているものであ
るから、被告は労働安全衛生規則二一六条により、入浴施設の設置を義務付けら
れ、原告らの入浴のため設置している。かかる場合、原告らは入浴しないうちは人
前に出られず、入浴後にようやく当該労務から解放されることとなるから、社会通
念上相当と認められる必要入浴時間は、「労働時間」に算入されなければならな
い。
 したがつて、原告らの控所における入浴を含む後始末行為は、作業に不可欠なも
のであるから、労基法上の「労働時間」に算入されなければならず、これを「労働
時間」からら除外する被告の就業規則は違法無効である。
(ハ) 昼の休憩時間に関する被告の右基準も、労基法に違反している。即ち、判
例も示す様に、労基法が規定する休憩時間は労働者が権利として労働から離れるこ
とを保障されたものであるから、その自由利用の原則は厳格に守らなければならな
い。被告は労働安全規則六一四条に基づき休憩設備を設置し、従業員らに対し同所
で昼食休憩を一時間行なうように規定し、一方、就業規則の前記基準では、休憩時
間中作業現場との往復約一〇分を義務付けている。これは明らかに右自由利用の原
則に反しているものといわなければならず、無効である。
5 原告らは従来通りの労働慣行を維持する立場から、午後所定終業時に控所へ到
着することができるよう若干早目に所定作業場を離れているが、被告は別紙請求金
額一覧表記載の通り改訂就業規則通りの始終業基準及び勤怠把握基準に照らして不
就業と認められる労働時間を一か月通算して、その合計を三〇分単位(未満は切捨
て)で賃金カツト(以下本件賃金カツトともいう。)を行なつた。
6 被告の行なつた始終業基準の変更は、一方的不利益変更で何等合理性のない違
法なものであり、また労基法にも違反する無効なものであるから、すでに退職して
いる原告a、同b、同c、同d、同e、同f、同g、同h、同iを除くその余の原
告らにつき、労働契約上の労働時間は、午前八時に所定控所に入場することをもつ
て起点とし、右控所を午後五時に退場することをもつて終点とし、休憩時間は、正
午に右控所に入場することをもつて起点とし、午後一時に右控所を退場することを
もつて終点とすることの確認を求めるとともに、原告らに対し、違法に賃金カツト
された別紙請求金額一覧表中合計覧記載の金員及びこれらに対する賃金カツトの日
以後である昭和五〇年四月二二日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延
損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び被告の反論
1 請求原因1の事実は認める。但し、昭和五〇年三月三一日現在の同盟三菱の組
織率は九九パーセント以上である。
2 同2、(一)のうち、労働時間の起終点の具体的内容の確定は、すべて労使の
対等交渉とこれに基づく労働条件慣行にゆだねられてきたとする事実は否認し、そ
の余の事実は認める。
 同(二)のうち、勤怠把握制度の変遷があつた事実は認めるが、その内容は否認
する。
 同(三)、(1)、(2)のうち、被告と三菱支部が隔週週休二日制について始
終業基準及びその経過措置を含めて協定を締結したこと、その後長崎造船所と長船
分会の間で右協定に基づき始終業基準、勤怠把握方法その他について協議したこ
と、(4)のうち、タイムレコーダーによる勤怠把握方法が存続したことの各事実
は認め、その余の事実は否認する。
3 同3、(一)の事実は認める。
 同(二)のうち、昭和四七年一〇月三〇日中央経営協議会において三菱支部より
原告ら主張の要求が出され、それ以来被告と交渉したこと、昭和四八年四月一日か
ら実施した事実は認めその余の事実は否認する。
 同(三)は認める。但し、就業規則八条四項は既に隔週週休二日制を導入した
際、同盟三菱及び三菱支部と協定していた始終業基準を就業規則上明記したものに
すぎない。また、就業規則の変更については、長崎造船所の従業員の過半数をもつ
て組織する同盟三菱長崎造船支部(以下長船支部という。)の意見をきき、その同
意する旨の意見書を付して、同年三月三〇日、長崎労働基準監督署に届出て、同日
受付けられたものである。
 同(四)のうち、同年三月三一日、三菱支部及び長船分会が被告に対し、原告ら
主張の通告をした事実は認め、その余の事実は不知。
 同(五)のうち、同年六月一日から長船分会の同意を得ないで、原告ら主張のよ
うに就業規則を変更したこと、長船分会がこれに反対したことの各事実は認め、そ
の余の事実は否認する。なお、就業規則の変更には長崎造船所の従業員の過半数を
もつて組織する長船支部の意見をきき、その同意する旨の意見書を付して、同年五
月三一日、長崎労働基準監督署に届出て、同日受付けられたものである。
4 同4、(一)は争う。
 同(二)、(1)のうち、勤怠把握方法に変更があつたこと、(2)のうち、昭
和四七年一月から隔週週休二日制が施行され、原告ら主張の始終業基準を定めたこ
と、タイムレコーダーによる勤怠把握方法が存続したこと、(3)のうち、昭和四
八年四月一日から完全週休二日制を実施したこと、三菱支部の同意を得ないで同日
付で就業規則を改正して、原告ら主張の始終業基準を明記したこと、同年六月一
日、三菱支部と長船分会の同意を受けることなく、勤怠把握方法をタイムレコーダ
ーから自己申告制(いわゆる面着制)に変更したことの各事実は認め、その余の事
実は否認する。なお、前記8記載のとおり、本件始終業基準は労基法には違反しな
い適法のものである。
5 同5の事実は別紙正誤表記載部分を除く他は認める。
6 長崎造船所においては、就業規則の改正を行い、昭和四八年四月一日「始終業
基準」を、同6月一日「始終業の勤怠把握基準」をそれぞれ就業規則に明定し、今
日に至るまでこれを実施してきているが、右就業規則の改正は、次に述べる理由に
よりいわゆる不利益変更ではないからいずれも有効である。
(一) 就業規則変更前の労働契約の内容
(1) 被告は、昭和四六年一二月二七日、被告らが所属する長船分会の上部団体
である三菱支部との間において隔週週休二日制に関する労働協約(以下隔週週休二
日制協定という。)を締結した。而して、右協定は、昭和四七年一月一日より施行
され、原告らに対し拘束力を持つに至つた。右協定には始終業管理(含む始終業基
準)及び勤怠把握方法(含む始終業の勤怠把握基準)の改善につき、次のとおり規
定されている。
「7(1) 始終業管理の改善
ア 始業および終業は次の始終業基準によつて行うものとする。
始終業基準
始業前 始業に間に合うよう更衣などを完了し、作業場に到着する。
始業 所定の始業時刻に作業場において実作業を開始する。
午前の終業 所定の終業時刻に実作業を中止し、その後食堂、休憩室へ向かう。
午後の始業前 午後の始業に間に合うよう遊戯などをやめて、作業場に到着する。
午後の始業 所定の始業時刻に作業場において実作業を開始する。
終業 所定の終業時刻に実作業を終了する。
終業後 手洗、洗面、入浴、更衣などを行う。
残業時 上記各項に準ずる。
注1 管理・設計部門等においても、この基準に準じて運営する。
2 船内作業者(沖係留船を除く)については、「船」を作業場とする。したがつ
て、作業場到着とは乗船を完了することをいい、終業時に実作業を終了し作業場を
離れるとは下船を開始することをいう。
3 用語の定義は次のとおりとする。
(1) 実作業
 始業付帯作業、本作業および終業付帯作業
(2) 始業付帯作業
 準備体操、朝礼、動力源・治工具・材料等の段取、図面・作業指示書等の点検、
機械装置の注油・点検およびならし運転等の作業
(3) 本作業
 本来の作業
(4) 終業付帯作業
 製品・部品の整理・防錆その他保全処置、機械・装置・運搬車両等の停止・火止
め、点検整備、治工具・計測具等の整理、残材の回収・整理等の作業
イ 前記アの始終業基準を原則どおり実施するための対策には時日を要するものも
あるので、当面の措置として次のとおり処理する。
(ア) 造船外業の作業については、作業場が極めて遠いのが一般的であるのに鑑
み、各事業所の実情に基づき、必要に応じ午前・午後の終業について各々五分以内
のアローワンス時間を設けることとする。なお、これにより他の作業者に悪影響を
及ぼすおそれのある場合には、必要に応じ予め場所を定め、終業時刻後その場所を
離れる等の措置を講じうるもとする。
(注)造船外業の作業には、艤装修繕船関係の作業は当然含むが、鉄構関係の屋外
作業については、関係事業所の実情に応じ必要な場合は造船外業の作業に準じて取
り扱う。以下同じ。
(イ) 特別の遠隔地(歩行時間約一五分以上)で作業する者に対しては、できる
限りの対策を講ずるが、対策不能の場合には、午前および午後の終業につき特別に
アローワンスを設けることがある。
(ウ) 造船外業の作業に従事している者は、遅くとも午後の所定始業時刻の五分
前に吹鳴する予鈴をもつて控所を出発し、作業場に向うものとする。
ウ 準備体操は作業場近辺の所定の場所で行なうものとし、具体的には事業所ごと
に決める。
エ 汚染作業については、特にアローワンス時間は設けないが、汚染著しく、真に
必要と認められる場合には、そのつど必要な措置を講ずるものとする。
オ 列車ダイヤ等通勤事情については、事情の許す限り労働時間帯の変更、利用交
通機関の変更、バスの増車等の対策を講ずるものとし、具体的には従来どおり事業
所ごとに検討する。
カ 各事業所の実情に応じ、更衣所・控所・食堂・洗身場・工具庫等諸施設の改
善・移設・給食方法の見直し等を時間管理改善の観点にたつて検討し、実現に努力
する。」
「7(2) 勤怠把握方法の改善
 自己申告と所属長の確認を基本とする新しい勤怠把握方法の導入をはかることと
する。具体的には事業所の実情に応じ、可能なところから実施することとし、事業
所と分会で協議する。なお、始終業基準に即応するため、次のとおり措置を講ず
る。
ア 新しい勤怠把握方法を採用する場合の始終業の勤怠は、更衣をすませ始業時に
体操をすべく待機しているか否か、終業時に作業場にいるか否かを基準として判断
することとする。
イ 当面タイムレコーダーを存続する場合も前記アを基本的考え方とし、始業時は
更衣後打刻、終業時は更衣前打刻を基準とする。そのため必要があればタイムレコ
ーダーの移設等を行なう。」
 なお、当時の就業規則においては、始終業基準の規定は登載されず、就業規則の
運用、解釈、細部事項を集録する「勤労関係取扱類集」において、社員就業規則細
部取扱第三項第二号別紙3に登載された。その内容は現在の始終業基準と変わると
ころはない。
(2) したがつて、右協定により、原告らは、前記始終業基準に従つて労務を提
供する義務を負うに至つたのであるが、右始終業基準は労働協約の規範的部分であ
るので、労働協約上の義務としてだけではなく、労働契約上も同様の義務を負うこ
ととなつた。
 一方、「自己申告と所属長の確認を基本とする新しい勤怠把握方法」(いわゆる
自己申告制)は、直ちには導入されず、そのため、「始終業の勤怠は、更衣をすま
せ始業時に体操を開始すべく待機しているか否か、終業時に作業場にいるか否かを
基準として判断する。」という勤怠把握基準も施行されなかつたので、賃金は、タ
イムレコーダーを始業時は所定時刻までに打刻したか否か、終業時は所定時刻以降
に打刻したか否か、によつて判断され支払われていた。しかしながら、右勤怠把握
基準を将来導入するという約束は、当然原告らの労働契約の内容となつた。
 ところで、被告会社の労使間では、まず労働条件のみならず労使間の制度的な事
項をも含んだ包括的な基本になる労働協約を締結し、個々の問題についての個別的
労働協約(殆んどの場合、被告会社の労使間ではこの種の労働協約を「協定」と呼
んでいる。)は、すべてこの基本的労働協約に基づくものとされ、基本の労働協約
が期間満了等で失効すると一切の個別的労働協約をも失効する形をとつていた。
 したがつて、右協定そのものには期間の定めはなかつたが、その後昭和四八年三
月末日をもつて基本的労働協約が期間満了により失効したため、右協定も失効した
が、労働協約の規範的部分であるが故に労働契約の内容となつていた始終業基準
は、右協定失効後も当然存続し、当事者を拘束するものである。
(二) 就業規則変更前後の始終業基準、勤怠把握基準及び賃金の関係
(1) 始終業基準、勤怠把握基準及び勤怠把握方法
雇用契約により、労務者は労務提供義務を負うわけであるが、この義務が何時(始
業時刻)から何時(終業時刻)まで働かねばならない、というように時間で定めら
れる場合は始業時刻にはどんな状態でなくてはならないか、終業時刻にはどんな状
態でなくてはならないかが定まらねばならない。この始終業上の義務を定めた規範
を被告会社では「始終業基準」と呼んでいるが、始終業上の義務を呼ぶときも始終
業基準と言うことがある。
 同じく雇用契約により、使用者は提供された労務に対して賃金支払義務を負うわ
けであるが、これも時間で測つて支払われるから、賃金支払の対象となる時間の起
点終点が定まらなければならない。典型契約としての雇用契約では、賃金支払の対
象となる時間と提供された労務の時間が一致するが、現実の雇用契約では必ずしも
一致していない。労務の提供は作業現場でなされるが、賃金は時間的に作業現場到
着の前段階である工場入門時から支払うなどがその例である。この例の場合は工場
入門から作業場までは労務の提供はないが、賃金が支払われる時間になつている。
被告会社では、この賃金支払上の起点終点で労働者はどんな状態であれば賃金を支
払うか、つまり賃金計算上遅刻早退とするかしないかの尺度を勤怠把握基準」と呼
んでいる。
 このように始終業基準と勤怠把握基準とはそれぞれ異質のものであるから、始終
業基準上は義務違反であるが、勤怠把握基準上は遅刻早退とならない場合が出てく
る。このように始終業基準と勤怠把握基準が即応していない場合は、たとえば始終
業基準上は八時に現場に来ていなければならないが、勤怠把握基準上は八時に控所
に到着しておれば賃金計算上は遅刻とならない、ということが生じる。東京地裁昭
和五二年八月一〇日判決の石川島播磨重工業事件(判例時報八八三号八四頁)や、
公務員に関するものであるが、いわゆる出勤簿整理時間に関する裁判例等がその好
例である(大阪地裁昭和五四年八月三〇日判決判例時報九五二号一一八頁、札幌地
裁昭和五四年一〇月九日判決判例時報九六四号一一九頁、大阪地裁昭和五五年一一
月一二日判決判例時報一〇〇四号一二四頁)。
 この始終業基準と勤怠把握基準の食い違いは、始終業基準が個々の労働者の労務
提供義務の問題であるのに比べ、勤怠把握基準は賃金計算上の遅刻早退の大量的か
つ画一的処理の要請に左右される面が強いため生じるものである。
 この勤怠把握基準に従つて賃金計算上の遅刻早退を定める方法として、被告では
職札制、タイムレコーダー、自己申告制が使われてきたが、これを「勤怠把握方
法」と言つている。勤怠把握方法は労働者が勤怠把握基準から見て、遅刻になるか
否か早退になるか否かをタイムレコーダーの打刻時刻で見るか、職札を返したか否
かで見るかの違いであるから、技術上の問題にすぎず、労働者の権利義務とは無関
係である。したがつて、職札制からタイムレコーダーへ、タイムレコーダーから自
己申告制へ、などの変更は使用者の専権に属するものであり、使用者が労働者の同
意なしに自由になし得るものである。したがつて、隔週週休二日制実施中の勤怠把
握方法をタイムレコーダーから完全週休二日制実施後に自己申告制に改めたとして
も、労働条件の不利益変更を問題にする余地はまつたくない。
(2) 隔週週休二日制実施中及び完全週休二日制実施後の始終業基準
 隔週週休二日制実施中の始終業基準の詳細は、前記(一)で述べたとおり、始業
時は始業に間に合うように更衣などを完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に
作業場において実作業を開始する、終業時は、所定の終業時刻まで実作業をなす、
而して、手洗、洗面、入浴、更衣などを行う場合は所定終業時刻後に行なわなけれ
ばならなくなつた、ということであり、これが労働者の義務として労働協約に規定
され、労働契約の内容となつた。
 完全週休二日制になつてからは、この始終業基準が就業規則中に規定されたが、
その内容は変わつていない。
 原告らは、隔週週休二日制実施中は、勤怠把握の方法としてタイムレコーダーが
存続され、始業時は八時までに打刻、終業時は一六時三〇分以後打刻すれば遅刻早
退とならなかつたこと、タイムレコーダー打刻に際して「始業時は更衣後打刻、終
業時は更衣前打刻」が行なわれなかつたことをもつて、始終業基準が実施されてい
なかつた、という趣旨の主張をしている。
 しかし、前記(1)で述べたように、始終業基準と勤怠把握基準とは異質のもの
であり、始終業基準に勤怠把握基準が即応しているとは限らないのであるから、原
告ら右主張のように勤怠把握基準が施行されていなかつたことから始終業基準が施
行されていなかつたという一般論は成立しない。
 具体的に本件の場合をみると、当該労働協約には、始終業基準についてはその執
行期日を隔週週休二日制実施より後にするとの趣旨の規定はないこと、現実にも遵
守されていること、また隔週週休二日制自体が労働時間の減少、休日の増加及び始
終業基準等の実施が一体となつていたものであり、始終業基準を実施しないで労働
時間短縮のみを実施することはあり得ないこと、隔週週休二日制実施に係る被告と
長船分会との事業所経営協議会において、被告は長船分会に対して「タイムレコー
ダーは勤怠把握の手段に過ぎず、始終業は始終業基準どおりやらなければ違反にな
る。したがつて、たまたまの場合は容赦するが、月に何度もあるとか意図的にやる
場合は何らかの制裁処置を取らざるを得ない。」旨述べていること、また隔週週休
二日制協定締結に際しての長船分会内部の論議を見ても、「妥結後一二時にメシを
食い、帰りは終業四~五分後に打刻して処分されたとき組合はどうするのか。」と
いう質問に対し「初めから会社ー組合間の協議を破るという前提なら、それを守つ
てもらう前提での答弁しか出来ない。」とか「すでに中執の妥結を分会も確認して
いる事実を率直に認めなければならぬ。一月一日から時間変更と諸対策を認めてい
る。」などという同分会書記長の発言から、長船分会も始終業基準に従う義務があ
ると考えていたこと、などから始終業基準が昭和四七年一月一日から施行されたこ
とは明らかである。
 このように、隔週週休二日制実施中も、始終業基準は協定どおり実施され、原告
らもそのとおりの義務を負うこととなつたのである。したがつて、始終業基準に関
する限りは、隔週週休二日制実施中及び完全週休二日制実施後も同様の内容であつ
て、この始終業基準を就業規則に規定しても何ら不利益な変更はない。
(3) 隔週週休二日制実施中及び完全週休二日制実施後の勤怠把握基準
 タイムレコーダーは昭和四八年五月三一日をもつて廃止となり、同年六月一日か
ら自己申告制へ移行した。これに伴い隔週週休二日制実施中は、午前八時にタイム
レコーダーを打刻すれば遅刻にならず、賃金はカツトされなかつたが、自己申告制
になつてからは、控所に午前八時到着では遅刻であり、これは終業時も同様であつ
て、いずれも当然賃金はカツトされるようになつた。
 この意味では、隔週週休二日制実施時と完全週休二日制実施時とを比較すると、
不利益な変更がなされたことになる。
 しかし、以上で述べたとおり、始終業基準上は始業時は定刻に体操場に、終業時
は定刻に作業場にいることが義務付けけられ、隔週週休二日制の協定上も、
「自己申告と所属長の確認を基本とする新しい勤怠把握方法の導入をはかることと
する。具体的には事業所の実情に応じ、可能なところから実施することとし、事業
所と分会で協議する。」
と定めて、「事業所の実情に応じ、可能なところから実施すること」は既定の事実
となつていたのであり、これには長船分会も同意していたのである。この「協議」
とは、被告と三菱支部の間では、協議の結果相手方の同意を得られなくても、一方
が実施できるという意味の用語であり、被告は長船分会と協議をしたのであるから
「事業所の実情に応じ、可能なところから実施すること」が使用者の判断と専権に
まかせられていたものというべきである。したがつて、勤怠把握基準を始終業基準
に合致するようにし、その結果、従来は遅刻でなかつたものが、遅刻として取り扱
われ賃金がカツトされるようになつても、原告らはこれに従わざるを得なかつたの
である。
 右勤怠把握基準の実施は、形式的には就業規則の変更によりなされているが、実
質的には右のように隔週週休二日制に関する労働協約に定まつていたもの(勤怠把
握基準が将来右のように変更されることが労働契約の内容となつていたもの)を実
施したに過ぎない。
(4) 原告らは、長崎造船所においては、隔週週休二日制実施前から終業時は所
定終業時刻前より手洗、洗面、入浴を行う慣行があり、右は隔週週休二日制実施後
も慣行として存在していたところ、完全週休二日制実施により入浴等のすべてが労
働時間外になつてしまつたから、不利益な変更が行なわれたことになる、と主張す
る。
 しかしながら、長崎造船所においては、終業時における入浴などは、隔週週休二
日制実施以前よりすべて労働時間外になすべきものとされてきたのであつて、原告
らの主張するような慣行は存在したことはなかつた。況んや、隔週週休二日制協定
に明定された始終業基準では、「終業後、手洗、洗面、入浴、更衣などを行う」と
あり、右始終業基準は原告らにも適用されたのであるから、隔週週休二日制実施時
に原告ら主張のような慣行が存在できる余地はなかつたのである。
 したがつて、この点においても就業規則の不利益変更ということはない。
(三) 就業規則変更の効力が問題となるときの労働条件の有利不利は、変更され
た労働条件全体からみて論ずるべきであつて、その一部を個々的に取り上げて有利
不利を判断すべきではない。
 本件の場合をみるに、右改正と一体として行なわれた労働時間短縮、即ち、日曜
日と土曜日を休日とし、一日の労働時間を八時間とする完全週休二日制では、従前
の日曜日と第一、第三、第五土曜日を休日とし、一日の労働時間を七・五時間とす
る隔週週休二日制と比較して、一週間の労働日が平均五・五日から五日となり、一
週間の労働時間は四一・二五時間から四〇時間に短縮され、年間では約四八・五時
間の労働時間短縮となるものである。これを賃金の面からみれば、賃金は据え置き
で労働時間が短縮するわけであるから、時間当たりの賃金は自動的に増加すること
となり、右労働時間短縮は、実質的には三パーセントのベースアツプを実施したに
等しいものであつて、その意味でも原告らの利益となるものであり、全体としてみ
た場合不利益変更とはいえない。
7 不利益変更であつても合理的理由がある。
 仮に右改正が原告らに対して何らかの不利益を及ぼす部分があるとしても、次の
とおり合理的理由があるから、右改正は有効である。
(一) 「始終業基準」及び「始終業の勤怠把握基準」は、画一的統一的実施が必
須とされる事項である。
 昭和四六年一二月二七日被告と三菱支部との間に隔週週休二日制協定が締結さ
れ、昭和四七年一月一日よりこれが施行されたが、その後同年秋には、三菱支部を
含む被告に存する各組合から完全週休二日制の要求が提出された。これに対して、
被告は、一日の労働時間を延長して完全週休二日制を実施すること及び始終業基準
を含む隔週週休二日制実施時に協定した事項の完全励行を行うことを骨子とする回
答を行ない、被告の大多数の社員たる組合員をもつて構成する同盟三菱とは、右被
告の回答内容で妥結をみ、完全週休二日制に関する労働協約を締結したが、三菱支
部とは妥結に至らなかつた。被告としては、就業に関して一部の社員のみ別異に取
り扱うことはできないとの判断から、労働時間、休日及び始終業基準について就業
規則を改正し、これを全社員に適用することとしたのである。
 長崎造船所では、主として船舶、原動機等の製造、修理を行なつているが、かか
る生産活動を営むに当たつて、同一職場で同一業務を遂行している社員の一部(例
えば、昭和四八年四月一日現在で船殻工作部ドツク外業課の造船外業作業者は約五
三〇名で、その内原告らは一〇名である)が、他と異なつた始終業基準及び始終業
の勤怠把握基準等によることは、生産管理面、安全管理面において著しく支障があ
り、また、職場規律維持という面からも由々しい問題を招来することは明らかであ
る。
 このように、始終業基準及び始終業の勤怠把握基準は、企業の運営上すぐれて面
一的統一的実施を必要とする事項であるところ、前述のとおり、長船支部所属の組
合員は、右労働協約により改正就業規則と同じ義務を負つて労務を提供しており、
これとの画一的統一的処理をはかるための右改正には、合理的理由がある。
(二) 三菱支部が既に同意した内容である。
 昭和四八年四月一日の改正では、昭和四六年一二月二七日被告が三菱支部との間
に締結した隔週週休二日制協定中の始終業基準を就業規則に定め、また、同年六月
一日の改正でも、右協定に定められていた始終業の勤怠把握基準(「勤怠把握方法
の改善」の中に明記)を定めたに過ぎないのである。
 右協定が失効したとはいえ、始終業基準及び始終業の勤怠把握基準は原告らとの
労働契約の内容になつていたのであるから、変更は当然であり、また仮に労働契約
の内容になつていないとしても、右改正後の就業規則は、右のとおり三菱支部が既
に同意した内容に過ぎないものである。
 なお、勤怠把握方法をタイムレコーダーから自己申告制に変更したことについて
も、「自己申告と所属長の確認を基本とする新しい勤怠把握方法の導入をはかるこ
ととする。具体的には事業所の実情に応じ、可能なところから実施することとし、
事業所と分会で協議する。なお、始終業基準に即応するため、次のとおり措置を講
ずる。」として、変更が予定されていたことを実施したに過ぎないのである。
(三) 原告らの所属している三菱支部と改正に至るまで十分協議を尽くしている
 三菱支部とは、昭和四七年一二月二五日以降精力的に協議が行なわれた。この協
議において、三菱支部は、一日の労働時間を延長するという被告の回答に反対した
ので、被告は、三菱支部傘下の各分会に対して、各事業所において補完説明を行な
うなど三菱支部の了承を得べく努力を重ねたのであるが、遂に合意を見るに至らな
かつた。
 かようにして、右就業規則の改正に至るまでに、被告は、三菱支部と十分な協議
を尽くしてきたのである。
(四) 「始終業基準」及び「始終業の勤怠把握基準」は長崎造船所における規範
意識に反していない
 昭和四六年一二月二七日三菱支部も合意し、労働協約化された始終業基準及び始
終業の勤怠把握基準は、その後現在に至るまで長崎造船所における殆んどの社員が
これを遵守してきており、これらはいずれも、既に社員の規範意識となつているの
である。
(五) 「始終業基準」及び「始終業の勤怠把握基準」は労働時間短縮と不可分一
体である
 被告は、隔週週休二日制に関する労使交渉において、労働時間短縮と始終業基準
等が不可分一体のものであることを明らかにして各組合との交渉を行ない、原告ら
の所属する三菱支部も、その趣旨を十分納得のうえ妥結したのであつた。即ち、賃
金を据え置いたまま休日を増加することにより労働時間を短縮することは、被告に
とつて生産時間の減少、製品のコストアツプによる競争力の低下等経営上重大な問
題を招来するものであつたことから、始終業管理の改善を含む各種の生産対策なく
しては踏み切り得ないものであつた。
 ところが、三菱支部は、完全週休二日制の交渉において、一日の労働時間を延長
しないこと及び隔週週休二日制実施の際、既に妥結済みの始終業基準等の変更を要
求して譲らず、完全週休二日制について妥結に至らず(昭和四八年三月における交
渉においては、専ら一日の労働時間の延長に論点があつた。)、その後、昭和四八
年七月二三日に至つて毎週土曜日を休日とすること及び一日の労働時間を七時間三
〇分から八時間にすることは了承する旨一方的に表明したものの、始終業基準など
を含む各種の生産対策には反対であるとして現在に至つている。
 しかしながら、前述のとおり、始終業基準などと労働時間短縮は、不可分一体の
ものであるから、始終業基準などを遵守している他の社員との間の公平を保つため
にも、原告ら三菱支部所属の組合員にその内の労働時間短縮の利益のみを享受させ
ることは、いわば有利な部分だけつまみ喰いを許す結果ともなり不合理である。
(六) 社会通念に照らし合理的である。
 被告が本件の始終業基準や始終業の勤怠把握基準を採用したのは、いわゆる週休
二日制を導入するためであつたが、本件始終業基準などは、造船重機械産業の他社
の時間管理においても、採用されており、右他社の就業規則が有効に成立している
ことは、少なくとも造船重機械産業にあつては、右始終業基準などが採つている
「時間から時間まで実作業を行う」という考え方が社会通念として一般的であるこ
とを示しているのである。
 また、諸外国の例として、西独の大企業をみても、本件始終業基準などと同様の
時間管理が採用されている。
8 始終業基準と労働基準法との関係
 本件始終業基準は、始業時刻前に更衣をすませ、始業時刻に所定の場所に到着し
ていること、また、終業時刻まで作業場におり、その後、手洗、洗面、入浴、更衣
をなすものとし、また法令で義務づけられた安全保護具のうち、その着脱を始業時
刻前又は終業時刻後にさせているものもある。
 ところが、被告会社の労働時間は始業時刻から終業時刻までが八時間であるか
ら、更衣、安全保護具の着脱、手洗、洗面、入浴がいわゆる『労働時間』に含まれ
はしないか、言い換えれば、右始終業基準及び安全保護具の着脱についての時間管
理が労基法三二条に反しないかが問題となる。
 なお、休憩時間は、労働時間が六時間を超え八時間までの場合は四五分で足りる
のに、長崎造船所では一時間与えているから、右更衣などが労働時間に算入され一
日八時間を超えないかぎり、労働基準法三四条の問題は起きない。しかしながら、
原告らは、作業場から控所までの歩行時間を除いたものを休憩時間とし、それが一
時間とすべきだと主張しているので、休憩時間の概念についても触れることとす
る。
(一) 労基法三二条一項の「労働させ」の概念
 労基法三二条一項は「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一日について八時
間、…………を超えて労働させてはならない。」と定めており、更衣、入浴等及び
安全保護具の着脱が右「労働させ」たことに当たるかについては、一般に「労働時
間」の概念として論じられている。
(1) 指揮命令下説
 多数説あるいは通説とされるものは「労働時間とは、明示又は黙示の指示によ
り、労働者が使用者の指揮命令の下におかれる時間である。」とし、その中で作業
前の更衣、安全保護具の着用に触れる者は、使用者が義務づけしたり、法令により
義務付けられている場合は、使用者の指揮命令下におかれたものと見て、労働時間
である、としている(以下仮に指揮命令下説という)。しかし労基法三二条は、長
時間労働から労働者を保護することに眼目があつたのであり、また、八時間を超え
た労働をさせた場合、これを処罰する刑罰法規でもあるから、罪刑法定主義の上か
らも、「労働させ」という言葉に重きをおいて解釈されねばならない。雇用契約
は、使用者の指図(指揮命令)に従つて労務を給付することが中心の義務になり、
労働時間中は、労務者は使用者の指揮命令の下に労務に服することを要する。つま
り、単に労働者を使用者の指揮命令の下に置くだけを雇用契約というのではなく、
指揮命令の下に使用者に対する労務に服し、あるいは使用者に労務を提供すること
が雇用契約なのである。したがつて、右「指揮命令下に置く」という表現が「使用
者に対する労務に服し、あるいは使用者に労務を提供する」と同義語であるなら異
義はないが、もし「使用者に対する労務の提供」をしなくても雇用契約である、と
いうことになれば、何故労務提供が不要なのか説明がない。
 このような指揮命令下説をとる理由として、ある説は、使用者の具体的指揮命令
を待つて待機している時間、いわゆる「手待ち時間」が労働時間であることを説明
するには右の命題が必要である、という。しかし手待ち時間以外の問題の解決にそ
の命題が適用されるかは証明されていない。手待ち時間については、後記のように
労働力は提供されているのであつて、使用者がこれを使用していないだけとみれば
説明できる。
 またILOの「商業及び事務所における労働時間の規律に関する条約(三〇号条
約)」三条に「本条約において『労働時間』と称するは、使用せらるる者が使用者
の指揮に服する時間をいう。右は使用せらるる者が使用者の指揮に服せざる休憩時
間を包含せず。」としていることをもつて右の考え方を採る理由として援用する説
もある。しかしながら、この条約の「労働時間」という文言については、「なお、
ILO条約もこの点必ずしも厳格には明定していない。」と評されており、一九三
五年のILO「労働時間短縮条約」(四七号条約であつて、週四〇時間制をうたつ
たもの)の採択にあたつて「各国ノ規律中労働時間ノ定義ヲ明記スルモノナシ、然
レトモ何処ニ於テモ労働時間トハ『実務労働時間』ナル語カ使用セラルルト単ニ
『労働時間』ナル語カ使用セラルルトヲ問ワス労働者カ使用者ノ指揮ニ服スル時間
ヲ意味シ従テ休憩時間ハ之ヲ含マス準備的又ハ補充的作業ノ取扱ニツイテハ不明確
ナリ」(第一九回国際労働総会報告書)という報告がなされていることからみれ
ば、ILO条約の文言から労働時間の定義を引き出すことは正しくない。
(2) 労働提供不可分説
 別の説は「使用者の明示または黙示の指示による何らかの労務提供が開始されれ
ば、その時刻が労基法上の労働時間の起算点となる。『何らかの労働提供』とは、
『本務』としての労務の提供または労働契約により明示または黙示に引受けている
と認められる範囲内の労務が中心となるが、それには限られない。」「使用者の明
示または黙示の指示による何らかの労務提供又はかかる労務提供と不可分の行動の
開始された時点が労働時間の起算点となる。」として、更衣など、安全保護具の着
脱が使用考又は法令により義務付けされている場合は、労務提供と不可分の行為で
あるとみて労働時間である、とする。
 この説が労基法三二条の「労働」という言葉に着目し、雇用契約上の労務提供と
結びつけた点は賛同できる。しかしながら、「労務提供」ではない「労務提供と不
可分の行動」が何故「労働させ」になるのかが説明されていないし、そのうえ「不
可分」といつても、どこからどこまでが不可分と見られるかを決定するのが困難で
ある。
 労働者が朝自宅を出て出勤のため工場へ向かう、工場に着き門を入る、控所に到
着する、安全靴、安行帽を着用し控所を出て体操のため、所定の場所に向かう、体
操を終え作業指示を受ける、という一連の行動のどこからが「労務提供と不可分の
行動」であり、それは何故不可分なのか。
 たとえば、更衣の場合、使用者による義務付けでなされれば不可分というが、出
勤自体が義務のはずであるのに、通勤行動を労働時間内とはみていない。労務提供
には、当該行動が存在しなければ提供できないもの、と言い換えても更衣と通勤行
動との区別はできない。「労務提供と不可分」であるため「労務提供」と看做して
いいもの、というのであれば「労務提供と不可分の行為」即ち「労務提供」となつ
てしまい、「労務提供と不可分」という概念は不要となつてしまう。
(3) 被告の主張
 雇用契約上の労働者の義務が使用者に対する労務の提供であるから、その労務の
内容は雇用契約により定まるものであり「労務の提供」があれば、そこが「労働時
間」の起算点になり、提供以外の行為は、たとえ「労務の提供」行為と不可分の行
為であつても、未だ労働させたことにはならない。債権法的に考えれば、弁済の提
供と提供のための準備行為は截然と区別されるわけであるから、提供と不可分の行
為であつても、提供の準備行為に過ぎない段階では、それが提供になることはな
い。
 このように、労務の提供か、その準備行為かは、問題の行為が何かで客観的に定
まつている。しかしながら、ある行為が準備行為であつても、それを労働時間内の
行為とみることは自由である。その意味で、ある準備行為が労働時間に入るか否か
は、労働協約、就業規則、労働慣行で定まる。たとえば、更衣それ自体は労務の提
供ではなく準備行為であるが、労働協約などで始終業時刻後になすものとしている
ときは、労働時間に含まれる。しかしながら、逆に、労務の提供であるものを、労
働時間外の行為とみることは強行法規違反である。たとえば、機械への注油は、そ
れ自体労務の提供であつて、提供のための準備行為ではないから、労働協約などで
始業時刻前になすものとしても労働時間に含まれる。
(4) 判例
 以上のことから、被告は次の判例が正しいと考える。「一般に労働基準法三二条
の『労働時間』とは、労働者が使用者の指揮、命令の下に拘束されている時間をい
うものと解釈されている。ところで、労働者が現実に労働力を提供する始業時刻の
前段階である入門後職場到着迄の歩行に要する時間や作業服、作業靴への着替え、
履き替えの所要時間をも労働時間に含めるべきか否かは、就業規則の職場慣行など
によつてこれを決するのが相当であると考えられる。けだし、入門後職場到着迄の
歩行や着替え、履き替えは、それが作業開始に不可欠のものであるとしても、労働
力提供のための準備行為であつて、労働力提供そのものではないのみならず、特段
の事情のないかぎり使用者の直接の支配下においてなされるわけではないから、こ
れを一律に労働時間に含めることは使用者に不当の犠牲を強いることになつて相当
とはいい難く、結局これをも労働時間に含めるか否かは、就業規則にその定めがあ
ればこれに従い、その定めがない場合には職場慣行によつてこれを決するのが最も
妥当であると考えられるからである。」(日野自動車事件、東京高裁昭和五六年七
月一六日判決、労民集三二巻三、四号四三七頁)
 なお、この判決は、一審の東京地裁八王子支部(昭和五五年六月一六日判決、労
民集三二巻三、四号四四五頁)が、「労働基準法三二条の労働時間とは、その規定
の文言上使用者が労働者をその指揮監督下に拘束している時間を指すものと解する
のが相当であるが、その『指揮監督下に拘束している時間』には現実に労働されて
いる時間のみならず現実の労働に不可欠な準備行為をその拘束下にし、まはさせて
いる時間も含まれるものと解すべきであるとともに、使用者の指揮監督はそれが明
示のものである場合に限られず、黙示のものである場合も含むものと解するのが相
当である。しかして入門後職場到着までの時間中歩行時間は被告の指揮監督下に拘
束しているものとはいい難いから、右労働時間には含まれないものと解するが、作
業服、作業靴などへの着替え履替えについては、使用者側の指揮監督による拘束下
に行なわれることが必然的な要請であるか否かによつて決するのが相当である。」
と判示していた部分を前記のように変更し、更衣などの準備行為であつても、使用
者の指揮監督下になされるものは、労働時間に含まれるという考えを明確に排斥し
たことに注目すべきである。
(二) 長崎造船所における更衣時間など
 前記(一)で述べた更衣時間などを労働時間に算入すべきかどうかという問題に
ついては、結局、当該更衣時間などが、労務の提供にあたるかどうかをもつて判断
すべきであるが、右更衣時間などのうち、歩行時間については、休憩時間との関連
で後記(三)において述べることとし、本項では、更衣に要する時間、洗面、入浴
に要する時間が労務の提供にあたらないことを述べておく。
(1) 更衣に要する時間
 被告会社においては、作業に就く場合には、作業にふさわしい服装をするように
義務づけているが、作業にふさわしい服装をするという義務は、労務提供に際して
はその状態になりなさいという意味でのものであり、労務提供そのものの中味を指
示しているものではないのである。したがつて、いわゆる業務指揮とは、性質を異
にしている。
 社員は労務提供の義務を負つているが、その履行の開始は、何時でも当該義務を
果たせる状態になつた後に、初めて可能になるものである。そして、右作業にふさ
わしい服装をするという義務付けも、正にその状態になりなさいという指示以上の
ものではないのである。しかも、社員に義務付けられているのは、作業にふさわし
い服装をして、所定始業時刻までに所定の作業場に到着することであり、更衣の時
刻や方法については、全く規制はないのである。
 仮に、更衣に要する時間を労働時間に算入するとしても、各社員の出勤時間は、
居住地及び通勤手段によつてまちまちであることから、現実の更衣時間もまちまち
である。そうすると、午前八時始業に対して、七時三〇分から五分間更衣した者
と、七時五〇分から三分間で更衣した者とで、労働時間をどのように算定すべきで
あろうか。また、作業服のまま出退勤する者も中にはあるが、この場合は労働時間
の算定は不可能であろう(営業マン等は顧客対応にふさわしい服装、通常は背広ネ
クタイ着用が期待されているが、通勤服が通常この服装に該当している。)。かよ
うに、更衣時間は、各社員の任意によるものであり、使用者が、これを特定して命
じる性質のものではないのである。
 ところで、原告らは、労働安全衛生法などの諸法規に装着を義務づけられている
安全保護具については、通常の更衣の範囲を超えており、安全保護具の装着に要す
る時間は労働時間であると主張するかも知れない。しかしながら、安全保護具の装
着といえども、更衣の一部として連続して行なわれるものであり、装着に要する時
間についても、法令には労働時間に含めよという定めはなく、右更衣について述べ
たと同様の性格を有しており、労働時間とはいうことはできない。
(2) 洗面、入浴に要する時間
 洗面、入浴に要する時間については、洗面、入浴が通常、作業に伴つて行なわれ
ているという意味では、更衣時間と共通する面があるが、使用者が義務づけている
かどうかという面では異なつている。すなわち、洗面、入浴に関しては、作業終了
後に一般に行なわれているものの、更衣と異なり、使用者が義務づけているもので
はない。更に、洗面は、一般的に作業終了後に行なわれているものであるが、一
方、入浴については、原告らの従事している作業については、法的に義務づけられ
ているものでもなく、被告として、従業員に対する福利厚生の一環として行なつて
いるものであり、希望する者が、利用しているということに過ぎないのである。原
告らの従事している作業に比べて、明らかにより汚れのひどい坑内作業について
は、行政解釈が示されており、「坑内労働者の入浴時間は坑内労働者の終業に不可
欠の整理整頓時間としてこれをその労働時間に算入すべきものと思料するが」との
問いに対し、「通常労働時間にに算入されない」(昭和二三年一〇月三〇日基発一
五七五号)としている。
(3) 以上述べたとおり、更衣時間などは労基法上労働時間に算入すべきもので
はないが、勿論そのことは、更衣時間などを労働時間に算入することを妨げるもの
ではない。しかしながら、所定時間内に更衣などを行なうことを認める場合には、
それは就業時間中であり、労務提供義務を負つている時間中であるから、更衣など
の行為中であつても、使用者の指揮命令があれば、なお業務に就く義務を負うもの
である。本件始業基準においては、右更衣などの行為は、所定就業時間外に行うこ
ととし、労働時間として扱つていないが、この取扱いが労基法三二条に違反するも
のでないことは右に述べたとおりである。しかしながら、本件始業基準による取扱
いは、例えば、右更衣などの行為を所定就業時間内に行なうケースと比較すれば、
実質的に労働時間自体が、長くなることは否定できない。その意味で、労働者が、
右更衣などの行為を時間内にせよと要求し、労使交渉の結果、使用者が、その要求
を容れることはあり得るものである。しかしながら、これは、労基法上右更衣など
の行為が、労働時間に算入されなければならないと解釈されているものではなく、
単に、労使交渉における力関係において、労働者にとつて有利な労働条件を労働組
合が獲得したということに過ぎないものである。即ち、右更衣などの行為を労働時
間に含めるか否かは、労基法の規制するところではなく、労働条件の問題として、
労使が自由に決定しうるという意味で、法的自由の領域に属するものである。
 判例においても、本件と同様に、造船重機械産業において始終業基準の厳正化を
巡つて争われた石川島播磨重工業東京第二工場事件において、東京地裁は、「出勤
してから所定の実作業に就くまでの間に、入門からロツカー場所までの歩行、更衣
など、ロツカー場所から作業ないし、その準備のために指定された場所までの歩
行、体操ないし作業指示及び器材受渡し等の作業準備行為を要する訳であるが、就
業規則上定められた就業時間の起算点をどこに定めるかは原則として法的自由の領
域に属し、このことは、右更衣などが作業のために欠くべからざる行為かどうかに
かかわらない。」旨判示している(東京地裁昭和五二年八月一〇日判決、判例時報
八八三号八四頁)。
(三) 休憩時間
 本件始終業基準に即してみた場合の、所定就業時間及び休憩時間に係わる一連の
行動の中で、休憩時間の概念との関係において問題となるのは、午前の所定終業時
刻、即ち、午前一二時に作業場において実作業を中止した後、午後の所定始業時
刻、即ち、午後一時に作業場において実作業を再開するまでの一時間をすべて休憩
時間として扱つて良いか否かという問題である。
 即ち、所定の休憩時間の開始も終了も作業場においてと定められているが、原告
らの作業場から控所までは相当の距離があり、控所において「休憩」できる時間は
実質的に一時間を割つているので、所定の休憩時間の開始も終了も控所においてと
すべきだというのが、原告らの主張であると思われる。
 ところで、休憩時間とは、「単に作業に従事していない、いわゆる手待時間は含
まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいう」(昭
和二二年九月一三日発基第一七号)とされている。)したがつて、休憩時間は、労
働者に自由に利用される時間でなければならず、現実に作業はしていないが、使用
者から何時就労の要求があるかも知れない状態で待機している、いわゆる「手待時
間」は、休憩時間ではなく、労働時間である。そこで、右に述べた作業場と控所と
の間の歩行時間についてみるに、その間使用者の指揮下を脱していることは明らか
である。何故ならば、その時間帯においては、明確に休憩時間中と認識されてお
り、使用者から何時就労の要求があるかも知れない状態にはないからである。休憩
時間においては、作業場を直ちに離れようが、暫く作業場に留つてから離れよう
が、また、極端に言えば、そのまま作業場に留つていようが、全く労働者の自由で
あり、したがつて、使用者の介入できるところではない。また、実質的に休息する
か否かも労働者の自由であつて、スポーツなどの趣味に基づく活動、私用による外
出、組合活動などの実質的休息からほど遠い行動も多い、更にまた、控所に赴くこ
となく、これらの行動を直ちに行なうケースも少なくない。したがつて、一般に控
所まで歩行して、食事、休息などを行なう者が多いにしても、その行為自体に選択
の余地があり、使用者の指揮下を脱している以上、その歩行時間は休憩時間に含ま
れ、労基法三四条に違反するか否かというような強行法規上の問題は生じないと言
わざるを得ない。
9 始終業基準及び勤怠把握基準の拘束力
(一) 原告らは、長崎造船所の社員として既に述べた就業規則によるばかりでな
く、隔週週休二日制に関し昭和四七年一月一日より施行の、及び完全週休二日制に
関し昭和四八年四月一日より施行の被告と同盟三菱との間の労働協約、並びに昭和
四八年四月一日より施行の長崎造船所と長船支部との間の労働協約、さらには、原
告らと被告との間の労働契約、即ち、隔週週休二日制に関し、昭和四六年一二月二
七日被告と三菱支部との間に締結された隔週週休二日制協定により内容を定めら
れ、その後、前記労働協約の拡張適用及び前記就業規則の適用を受け、内容を定め
られた労働契約により本件始終業基準及び勤怠把握基準に拘束される。
(二) 労働協約の拡張適用による義務
(1) 被告と同盟三菱及び長崎造船所と長船支部との間に次に記載する内容の始
終業基準及び始終業の勤怠把握基準に関する労働協約が締結され、これが現在に至
るも有効に実施されている。
(1) 被告は、昭和四六年一二月一五日、同盟三菱との間に隔週週休二日制に関
する労働協約を締結し、始終業基準などについて次のとおり定め、昭和四七年一月
一日より施行した。
(a)「8(1)
ア 始業および終業は次の始終業基準によつて行うものとする。
始終業基準
始業前
始業
午前の終業
午後の始業前
午後の始業
終業
終業後
残業時
前記三菱支部との間における隔週週休二日制協定に同じ
(注)1ないし3
イ 前記アの始終業基準を原則どおり実施するための対策には時日を要するものも
あるので、当面の措置として次のとおり処理する。
(ア)
(注)
前同協定に同じ
(イ) 特別の遠隔地(歩行時間約一五分以上)で作業する者に対しては、できる
限りの対策を講ずるが、対策不能の場合には、事業所と支部で協議し、午前および
午後の終業につき特別にアローワンス時間を設けることとする。
ウ 準備体操は作業場近辺の所定の場所で行なうものとし、具体的には事業所と支
部で協議して決める。
エ 汚染作業については、特にアローワンス時間は設けないが、汚染著しく、真に
必要と認められる場合には、そのつど必要な措置を講ずるものとし、具体的には事
業所と支部で協議して決める。
オ 列車ダイヤ等通勤事情については、事情の許す限り労働時間帯の変更、利用交
通機関の変更、バスの増車等の対策を講ずるものとし、具体的には従来どおり事業
所と支部で協議して決める。
カ 各事業所の実情に応じ、更衣所・控所・食堂・洗身場・工具庫等諸施設の改
善・移設・給食方法の見直し等を時間管理改善の観点にたつて検討し、実現に努力
する。」
(b)「8(2)
ア 新しい勤怠把握方法を採用する場合の始終業の勤怠は、更衣をすませ始業時に
体操を開始すべく待機しているか否か、終業時に作業場にいるか否かを基準として
判断することとする。」
(Ⅱ) 被告は、昭和四八年三月七日重工労組との間に完全週休二日制に関する労
働協約を締結し、その中で右隔週週休二日制に関する労働協約を受けて「隔週週休
二日制実施時に協定した事項の完全励行」の題の下に「始終業管理の改善」として
「会社統一の始終業基準の完全励行をはかるため事業所と支部で協議する。なお、
これに関連し、会社は設備面の改善にできる限りの努力をする。」旨、また、「勤
怠把握方法の改善」として「自己申告と所属長の確認に基づく新しい勤怠把握方法
を未だ実施していない事業所はできる限り早期に実施すべく努力し、具体的には事
業所と支部で協議する。」旨規定し、同年四月一日より施行した。
 更に、右労働協約に基づき、被告は昭和四八年四月一日長崎造船所、長船支部間
で事業所協定を締結したが、右協定において始終業基準(含む実施基準)及び勤怠
把握方法(含む始終業の勤怠把握基準)につき次のとおり定めた。
(a) 「第四条 始終業基準は、会社・組合間の協定内容による。
なお、造船外業に従事する者(含む艤装・修繕)については次のとおりとする。
(1) 午前の始業
ア 作業場最寄りの所定の場所で準備体操を行うものとする。なお岸壁作業者等に
ついてもこれに準じてバスの配車を行なう。
イ 修繕部のバス発車については部段階で協議のこととする。
(2) 午前の終業
ア 五分以内にアローワンス時間を設けることとし、具体的にはアローワンスのつ
かない作業者との関係を考慮し、実施基準について部段階で協議のこととする。た
だし、控所との距離が近いところについては、一二時に下船を開始するものとす
る。
イ 岸壁作業者等についても上記に準ずることとする。
(3) 午後の始業
 午後の始業時刻の五分前に吹鳴する予鈴をもつて遅くとも控所を出発し、作業場
に向うものとする。なお岸壁作業者についてもこれに準ずることとする。
(4) 午後の終業
 午前の終業に準ずることとする。」
(b) 「第六条 タイムレコーダーを廃止し、自己申告と所属長の確認を基本と
する勤怠自己申告制を実施する。
2 始終業の勤怠把握の基準については、会社・組合間の協定内容による。」
というものである。なお、長崎造船所では右実施基準については、昭和四八年四月
一日に定め、また新しい勤怠把握方法は同年六月一日より実施した。
(2) ところで、被告の一の工場事業場である長崎造船所に常時使用される同種
の労働者の数は昭和四八年四月一日現在で約一五、八〇〇名、これに対し長船支部
所属の労働者の数は同日現在で約一五、四〇〇名とその四分の三以上を占めてお
り、その後現在に至るも四分の三以上であることに変わりはない。
 しかして、被告と同盟三菱及び長崎造船所と長船支部との間の右各労働協約は、
被告と三菱支部との間の労働協約が昭和四八年三月三一日をもつて有効期間満了に
より失効した後は、労働組合法一七条により、原告らに対しても昭和四八月四月一
日以降拡張適用されるに至つたのである。
 被告は、本件のように少数者が労働組合を組織してはいるが、固有の労働協約を
有していない場合には、労働組合法一七条により多数組合の労働協約が拡張される
ものと解する。このように解することが労働組合法一七条の文理に最も忠実である
からである。
 拡張適用により少数組合の団結権、団体交渉権、争議権を害するから、労働組合
法一七条は少数者が団結しているときは適用されない、との論がある。しかし、拡
張適用があつても少数組合がより以上の労働条件を求めて団体交渉をなし、多数組
合と違つた労働条件を獲得し、またそれを獲得するため争議を行なうことができる
と解すれば、団体交渉権の侵害はない。また拡張適用により少数組合の価値は減じ
るかもしれないが、そうだと言つて、制度的に少数組合の存在を無価値にしあるい
は不可能にするものでもないから、その団結権を害するものでもない。
(三) 労働契約上の義務
 被告は昭和四六年一二月二七日原告らが所属している三菱支部との間に隔週週休
二日制協定を締結し、右協定は昭和四七月一月一日より施行されたが、右協定には
始終業基準及び始終業の勤怠把握基準につき、前記6、(一)(1)記載の規定を
定めていた。なお、造船外業作業者に関する運用として昭和四八年四月一日より実
施基準線が実施されたが、これは右規定中の「必要に応じ予め場所を定め、終業時
刻後その場所を離れる」場合の「その場所」を示すものである。
 しかして、右規定は、労働協約中のいわゆる規範的部分であるから、これを締結
した三菱支部の組合員である原告らにとつては、右協定が施行された昭和四七年一
月一日より右規定が被告との労働契約の内容となつたのである。
 ところで、右協定は、その後昭和四八年三月三一日をもつて有効期間満了となり
失効したが、既に労働契約の内容となつている労働協約の規範的部分は、労働協約
の失効消滅に拘らず被告と原告らとの間の労働契約の内容として存在しているので
ある。
10 原告らの賃金請求について
(一) 長崎造船所においては、社員のうち一〇〇パーセント近くの者が就業規則
に定められた始終業基準を遵守している中で、被告としては、原告らの就業規則違
反の早上がり行為をこのまま放置しておくことは、職場規律維持の面から由々しき
問題であると考え、原告らの所属する長船分会に対しても、念のため、昭和四八年
八月二〇日付の書面をもつて「かかる早上がり者に対しては不就業時間について賃
金カツトを行う。」旨通知し、早上がり者に対しては、昭和四八年七月一日以降の
早上がりによる不就業時間について賃金カツトを行なうことにしたのである。この
早上がりに対する賃金カツトの方法は次のとおりである。
(1) 就業規則における「始終業の勤怠把握基準」中の「終業時に作業場にいる
か否かを基準として判断する」に基づき、日々の早上がりによる不就業時間を把握
する。即ち、原告らについては、終業時刻以降に実施基準線を通過することになつ
ており、したがつて、実施基準線を所定終業時刻より早く通過した分単位の時間を
日々の早上がりによる不就業時間として把握することとしている。
(2) 月単位で不就業時間を累計し、その時間が
a 三〇分未満の場合は賃金カツトを容赦する。
b 三〇分以上六〇分未満の場合は三〇分について賃金をカツトする。
というようにして以下三〇分単位で賃金をカツトする。
(二) この賃金カツトの方法は、本来遅刻、早退あるいは無断離席の場合のカツ
ト方法によるべきであつたが、種々の事情を考慮して宥恕した取扱いを行つている
ものであつて、本件早上がりをストライキまたは適法な組合活動とみた訳でもな
く、就業規則違反ではないと見做した訳でもない。
(三) 以上のとおり被告が原告らの不就業(作業場早上がり)時間につき、その
合計を三〇分単位で(三〇分未満は切り捨て)賃金カツトを行なつていることにつ
いては、争いがないが、既に述べたとおり、原告らに対して適用があることの明ら
かな始終業基準に照らして、原告らに所定労働時間中労務の提供がなされていない
時間があつたのであるから、その時間につき、被告がなした賃金カツトは、労基法
及び長崎造船所社員就業規則の規定に抵触するところはなく、また、公序良俗に反
するところもないのであるから、適法である。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 次の各事実は当事者間に争いがない。
1 請求原因1の事実。
2 被告長崎造船所における現在の労働時間は一日八時間で、始業は午前八時、終
業は午後五時、休憩時間は午前一二時から午後一時までの一時間である。
3 昭和四六年一二月二七日、三菱支部と被告との間で、隔週週休二日制に関する
労働協約(以下本件労働協約という。)が締結され、昭和四七年一月一日から施行
されたが、右協約中には労働時間の始終業基準及び勤怠把握方法が規定された。
 なお、本件労働協約は、昭和四八年三月三一日までは有効に存続したが、同年四
月一日以降失効した。
4 被告長崎造船所においては、昭和四八年四月一日から施行された就業規則にお
いて前記労働協約と同内容の始終業基準(以下本件始終業基準という。)が定めら
れ、また、同年五月三一日まではタイムレコーダーの打刻により従業員の勤怠把握
がなされていたが、同年六月一日から施行された就業規則において前記勤怠把握基
準に定める新たな勤怠把握方法(以下本件勤怠把握方法という。)が定められ、そ
れに基づき、いわゆる面着制による勤怠把握がなされ、以来現在まで被告は本件始
終業基準及び本件勤怠把握方法により、その従業員の始終業を管理し、その勤怠を
把握している。
二 そこで、本件始終業基準及び本件勤怠把握方法が、原告らと被告間において効
力を有するか否かについて判断する(なお、労基法との関係は後述する。)。
1 成立に争いのない乙第一号証によれば、本件労働協約中の始終業基準及び勤怠
把握方法に関する部分は、請求原因に対する認否及び被告の反論6の(1)記載の
とおりであることが認められ右認定に反する証拠はないところ、右部分は労働協約
中のいわゆる規範的部分に該当するから、右始終業基準及び勤怠把握方法は、本件
労働協約が有効に存続しており、かつ、原告らが被告長崎造船所の従業員で長船分
会に在籍していた昭和四八年三月三一日現在において、原告らと被告間の労働契約
の内容となつていたもので、その後本件労働協約が失効したとしても、その内容は
当然には失効しないものと解するのが相当である。
2 ところで、原告らは本件労働協約が有効に存続していた期間においても、始終
業に関しては、右協約中の始終業基準とは異なる労働慣行が確立されていた旨主張
している。しかしながら、本件労働協約が施行された後において、三菱支部が「更
衣、手洗、入浴は時間内とし休憩時間は完全に与えよ。」という要求を掲げて、昭
和四七年一〇月三〇日以降被告と協議したが、結局妥結に至らなかつたことは原告
らの自認するところであり、右要求は右協約中の始終業基準が有効に存在している
ことを前提とするものと認めることができ、その他本件全証拠によるも原告主張の
労働慣行が確立していた事実を認めるに足りない。
 而して、他に始終業基準に関し、同年三月三一日現在原告らと被告間の労働契約
の内容となつていた本件労働協約中の始終業に関する部分と異なる労働契約が成立
した旨の主張、立証はないから、これと同内容の本件始終業基準は、原告らとの関
係で何ら不利益変更とならないものであり、就業規則の変更に関する原告らの同意
の有無に拘らず、原告らとの関係では有効なものと解するのが相当である。
3 ところで、本件労働協約は昭和四八年三月三一日の経過をもつて失効したが、
その後の同年五月三一日まで、被告長崎造船所においてはタイムレコーダーの打刻
による勤怠把握が行なわれ、本件勤怠把握方法は同年六月一日から施行されている
ので、一見すると本件勤怠把握方法の導入が労働条件の不利益変更と見れないわけ
ではない。しかしながら、本件労働協約中の勤怠把握方法に関する部分は、前記の
とおり、「新しい勤怠把握方法の導入に関し、事業所の実情に応じ可能なところか
ら実施することとし、事業所と分会で協議する。当面タイムレコーダーを存続する
場合も、始業時には更衣をすませて体操を開始すべく待機していること、終業時に
は作業場にいることを基本的考え方として、始業時は更衣後打刻、終業時は更衣前
打刻を基準とする。そのため必要があればタイムレコーダーの移設などを行う。」
旨定めている。右文言によれば、本件労働協約施行後のタイムレコーダーによる勤
怠把握は、新しい勤怠把握方法が導入されるまでの経過措置として存在しているも
のに過ぎず、その意味、内容は従前のものとは異なつているから、タイムレコーダ
ーの存続により本件労働協約中の勤怠把握方法に関する部分の効力に影響を及ぼす
ものではないものと解するのが相当である。
 而して、成立に争いのない乙第六一号証の一によれば、三菱支部と被告との間で
は、「協議する。」とは、協議の結果相手方の同意を得なくても、一方が実施でき
ることを意味する用語である事実が認められ、右認定に反する証拠はないところ、
本件労働協約中の勤怠把握方法に関しては三菱支部と被告との間で協議が行なわれ
たことは原告らの自認するところであり、他に、勤怠把握方法に関し、同年三月三
一日現在原告らと被告間の労働契約の内容となつていた本件労働協約中の勤怠把握
方法に関する部分と異なる労働契約が成立した旨の主張、立証はないから、同日現
在、原告らと被告間においては近い将来に新しい勤怠把握方法が導入されることが
予定されていたものと言うべく、本件勤怠把握方法はその予定されていた新しい勤
怠把握方法そのものであるから、原告らとの関係で何ら不利益変更とならないもの
であり、就業規則の変更に関する原告らの同意の有無に拘らず、原告らとの関係で
は有効なものと解するのが相当である。
三 原告らは、本件始終業基準は労基法三二条、三四条に違反する旨主張するので
以下判断する。
1 労基法三二条一項は「使用者は、労働者に……。一日について八時間……を超
えて、労働させてはならない。」と規定しており、その文言に照らせば、同条にい
う労働時間とは、労働者において、使用者に対し、現実に労働力を提供している時
間をいうものと解するのが相当である(なお、使用者がその提供された労働力を現
実に利用するか否かは問題ではなく、この意味でいわゆる手持時間は労働時間に含
まれるものと解される。)。また、斯く解することが、労働者がその労働力を提供
し、使用者がその対価として賃金を支払うという労働契約の性質に添うものと考え
る。もつとも、厳密には現実の労働力の提供に該らない行為につき、使用者が自ら
の意思で、あるいは労使間の合意で労働力の提供と看做し、あるいはこれを労働時
間内に行なうように定めること自体は強行法規に反しない限り自由であるから、こ
の場合の労働時間は右定めに従うことになることとなる。
 而して、作業服などへの更衣は、労働に相応して態勢を整えるという点で労働力
の提供の準備行為とはいえるが、その更衣なくしては現実に労働力が提供できない
ものではないから、それ自体は、労働力の現実の提供とは解されない。同様に、作
業終了後の更衣、洗顔、洗身、入浴もこれなくしては労働力の現実の提供ができな
いものではないから、これらをもつて労働力の現実の提供とは解されない。即ち、
更衣、洗顔、洗身、入浴を労働時間外に行なうように定めたとしても、そのこと自
体からは、同条に違反しないものと解するのが相当である。
2 ところで、原告らは、「労働安全衛生規則一一条、五三九条、四三五条、五五
八条、一一一条、五二〇条、五六三条、一〇五条、五九七条に基づき、安全心得を
作成して、被告は原告らに対し作業服などの着装及び作業終了後控所の所定場所で
の整理整頓を明示的に義務付けている(この事実は被告において明らかに争わない
ところである。)から、作業服などの更衣は労働時間に算入されなければならな
い。また、被告は同規則二一六条に基づき、原告らのための入浴施設の設置を義務
付けられ、これを設置している(この事実は被告において明らかに争わないところ
である。)から、社会通念上相当と認められる必要入浴時間は、労働時間に算入し
なければならない。」旨主張している。
 そこで、この様に義務付けられた作業服の着衣などの着脱の時間を労使いずれの
負担とすべきかについて考えるに、被告が作業服の着装を原告らに対し義務付けて
いるのは、労働安全衛生法、労働安全衛生規則などの法令により、罰則の裏付けの
下に被告が義務付けられている結果であり、被告の自由意思に基づくものではな
く、また、作業服の着装はもつぱら原告ら労働者の安全のために義務付けられてい
るものであり、そのことにより被告は直接的な利益を得ていないことに照らせば、
作業服などの着装は原則として労働者の自由時間内において行なうべきものであ
り、使用者の負担の下、労働時間内に行なうべきことは被告の意思に反して強制で
きないものと解するのが相当である。さらに、作業服などの整理整頓の義務付け
は、自らが義務付けられている原告ら労働者の作業服の着装を確実にするための手
段に過ぎないものと解されるから、前同様、被告の意思に反して労働時間内に行な
わせることを強制することはできないものと解するのが相当である。
 さらに、前同様の理由の他に、被告において法令上入浴施設を設置することが義
務付けられてはいるものの、被告は原告ら労働者に対し、入浴を義務付けていない
ことを併せ考慮すれば、被告の意思に反して入浴時間を労働時間内に設けることを
強制できないものと解するのが相当である。
3 また、本件始終業基準によれば、午前の終業は、所定の終業時間(午後零時)
に実作業を中止し、その後食堂、休憩所へ向かう。午後の始業前に、午後の始業に
間に合うように遊戯などをやめて作業場に到着する。午後の始業は、所定の始業時
刻(午後一時)に作業場において実作業を開始する旨規定されている。ところで、
作業場と休憩所、食堂とは必ずしも近接していないため、休憩所、食堂などで休
憩、食事をしようとする場合にはその往復に要する時間だけ一時間の休憩時間が削
減される結果になつている(この事実は被告において明らかに争わないところであ
る。)が、本件全証拠によるも、右一時間の休憩時間中、被告において原告ら労働
者に対し、特定の休憩所、食堂でのみ休憩時間を過ごすことを強制するなどその自
由利用を妨げている事実は認められないから、本件始終業基準は労基法三四条に違
反しない。
四 本件賃金カツトは、本件始終業基準及び本件勤怠把握方法に基づいて計算され
た不就労時間に相応するものであることは当事者間に争いがない。
五 以上のとおりであるから、その余の点につき判断するまでもなく、原告らの請
求はいずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、
九三条一項本文を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 渕上勤 加藤就一 小宮山茂樹)

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