弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を津地方裁判所四日市支部に差戻す。
         理    由
 弁護人志貴三示の控訴趣意第一点について。
 <要旨第一>原審検察官が冒頭陳述において罪責認定に関する事実の外に「情状と
して被告人には前科のある事実」と述べた事は原審第二回公判調書によ
り明らかである。然しながら我が国の刑事訴訟制度の如く職業的裁判官のみによる
裁判にあつては「情状として被告人には前科のある事実」と述べたことにより予断
を抱かしめるとは考えられないのみならず、現行刑事訴訟法上証拠調べにつき罪責
認定と刑の量定の段階を区別していないのであるから、検察官において若し刑の量
定に関し被告人の情状に関する事実を立証せんとするならばいわゆる冒頭陳述にお
いてその証明すべき事実を明らかにする事は何等違法ではない。論旨は独自の見解
に立つものであつて採用出来ない。
 同第二点について。
 <要旨第二>被告人の前科は所論の通り古いものであつて、刑法第三四条の二によ
り刑の言渡の効力は失われたものであつても、そのために被告人の情状
に関する資料となし得ないわけではないから、検察官が情状に関する事実として右
前科の事実を立証したからとて違法とはいわれない。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 検察官は、被告人側において被告人の性質素行が善良である事を立証された後で
なければ、被告人の悪い性格について立証することは出来ないと云うような規定は
存しない。本件において所論の前科調書は之を証拠とするにつき被告人並に弁護人
は同意しているのみならず、その取調べは検察官の立証の最終として為されたもの
であることは原審公判調書の記載により明らかである。されば原審が右前科調書を
証拠として取調べたのは何等違法ではなく論旨は理由がない。
 同第五点について。
 原判決が罪となるべき事実の第二として判示したところは「被告人はAから甘藷
買付の依頼を受けこれが資金とし昭和二四年一〇月二二日頃から一一月中旬頃まで
に合計金九万一千円を預り保管中その頃内金二万六千九百余円を擅に着服横領し
た」というのであつて、その証拠として被告人の原審公判廷における供述と証人A
の証言を挙示する。仍つて右証拠を検討するに、証人Aの証言によれば同人が被告
人に対し右判示の如く甘藷買入資金を交付した事並にその内甘藷又は現金で返され
た残金二万六千九百十円は他に使い込んでもらつては困る金であるとの事実が認め
られる。而して被告人の原審公判廷における供述は、同人が使い込んだ金は右証言
の通り結局二万六千九百十円であること並にその金は色々な事情から自分の金同様
に振舞い生活費等に使い込んでしまつて申訳ないと云うのであつて、右二万六千九
百十円は被告人がAに返し得なかつたところの計算上の金額に過ぎないのであつ
て、該金員を生活費等に費消した事は明らかであるが、果して之を一つの犯意の下
に着服したかどうかの点は不明である。従つて原判決挙示の証拠では被告人の判示
着服の事実は之を認定し難い。此の点において原判決は証拠によらずして事実を認
定した違法がある。(尚ほ若し本件が費消横領であるとせば、その費消行為は起訴
状によるも一回ではないようであるから、本件横領罪の訴因が一個なりや数個なり
やにつきよろしく検察官に対して釈明を求めなければならない。従つて費消横領と
せば此の点においても原審は審理不尽の違法を免れない)仍て原判決が証拠なくし
て事実を認定した違法かあるという論旨は理由があつて原判決は破棄を免れないか
ら、その余の論旨に対する判断を省略し、本件控訴は理由かあるものとして刑事訴
訟法第三七八条第四号第三九七条に則り原判決を破棄する。
 而して同法第四〇〇条本文に則り本件を原裁判所に差戻すべく主文の通り判決す
る。
 (裁判長裁判官 石塚誠一 裁判官 若山資雄 裁判官 佐藤盛隆)

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