弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件を名古屋高等裁判所へ移送する。
         理    由
 記録に徴すると、(1) 名古屋高等裁判所(裁判長)は、申立人の控訴にかかる
同裁判所昭和五三年(ネ)第二二一号建物収去土地明渡請求事件について、昭和五
三年六月一六日、命令送達後七日以内に印紙を追納すべき旨の補正命令を発したこ
と、(2) 同裁判所(裁判長)は、同月二九日、右補正命令は同月一七日に申立人
に送達されたが送達後七日の期間内に補正がされなかつたとの理由で控訴状却下命
令を発し、同命令は同月三〇日に申立人に送達されたこと、(3) 右補正命令の送
達に関しては送達実施機関である郵便集配人作成の送達報告書が存在し、それには、
同月一七日に愛知県稲沢市a町bc番地(申立人の住所)において申立人本人に右
補正命令書を交付した旨記載されていることが明らかである。
 ところで、申立人は、特別抗告申立書と題する書面によつて控訴状却下命令の取
消を求めるものであるところ、その申立の実質は、申立人は右送達報告書記載のよ
うな補正命令の送達をうけておらず、たまたま同月二九日に同市a町de番地の父
D経営の喫茶店に行つた際同所に補正命令書が届けられていることを知つた次第で
あるから、同月一七日に申立人に補正命令が送達されたことを前提とする控訴状却
下命令は違法であり、申立人は同命令を取り消して再審理をすることを求める、と
いうのである。そして、a郵便局長作成の書面及び当庁書記官作成の電話聴取書に
よれば、右送達報告書の記載は誤りであり、補正命令書はde番地のD経営の喫茶
店においてDを申立人と誤信していた郵便集配人によつてDに交付されたものであ
ることがうかがわれるのであつて、申立人について補正命令の送達の効力が生じて
いないとの疑いを抱かざるをえない。そうすると、前記送達報告書の誤つた記載に
基づき申立人に有効な補正命令の送達があつたものと判断した右控訴状却下命令は、
ひつきよう、命令に影響を及ぼすべき重要な事項について判断を遺脱したものであ
るといわなければならない(最高裁昭和四二年(ク)第二七〇号同四四年二月二七
日第一小法廷決定・裁判集民事九四号四八九頁参照)。
 本件申立は、右控訴状却下命令に対し、右の事由をもつて再審申立をしたものと
解すべきところ、名古屋高等裁判所は本件申立を特別抗告の申立と解し、本件を当
裁判所に送付したものであるが、民訴法四二九条、四二二条一項により、再審は不
服申立のある裁判をした裁判所の専属管轄に属するのであるから、本件は、同法三
〇条一項に従い、これを管轄裁判所である名古屋高等裁判所に移送するのが相当で
ある。
 よつて、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
   昭和五四年二月一五日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    戸   田       弘
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    本   山       亨
            裁判官    中   村   治   朗

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