弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成17年(ネ)第10088号 損害賠償等請求控訴事件
平成17年11月10日判決言渡,平成17年9月8日口頭弁論終結
(原審・東京地方裁判所平成16年(ワ)第12723号,平成17年4月27日
判決)
     判    決
 控訴人(原告) 株式会社ミレーヌ友田
 訴訟代理人弁護士 岩井重一,安田隆彦,平澤慎一,小林真,阿久津真也,高橋隆二
 被控訴人(被告) ラブリークィーン株式会社
 訴訟代理人弁護士 川島和男,芝英則
     主    文
 本件控訴を棄却する。
 控訴費用は控訴人の負担とする。
     事実及び理由
第1 控訴人の求めた裁判
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は,原判決別紙「被告商品目録」記載2及び3の各商品を譲渡し,
貸し渡し,譲渡・貸渡しのため展示し,輸出し,又は輸入してはならない。
 3 被控訴人は,その占有にかかる原判決別紙「被告商品目録」記載2及び3の
各商品を廃棄せよ。
 4 被控訴人は,控訴人に対し,7340万4576円及びこれに対する平成1
6年7月6日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
 5 被控訴人は,原判決別紙「謝罪広告目録」記載の謝罪広告を,朝日新聞,毎
日新聞,読売新聞,産経新聞,日本経済新聞の各全国版社会面に2段抜き15セン
チメートル幅で,繊研新聞及び日本繊維新聞に半5段(5段抜き半頁幅)で,表題
部を16ポイント,宛名及び被控訴人の名を12ポイント,その他の部分を10ポ
イントの各活字をもって,各1回掲載せよ。
第2 事案の概要
 本判決においては,原判決と同様の意味において,「原告商品1」「原告商品
2」「原告商品3」「原告各商品」「被告商品1」「被告商品2」「被告商品3」
「被告各商品」との略称を用いる。
 1 本件は,原告各商品の製造,販売等を行う控訴人(原告)が,被控訴人(被
告)が原告各商品の形態を模倣した被告各商品を製造,販売して,不正競争防止法
2条1項3号に該当する不正競争を行ったとして,被告商品2及び3の譲渡等の差
止め及び廃棄,損害賠償並びに謝罪広告の各請求をした事案である。
 原判決は,被告各商品が原告各商品の形態を模倣した商品であるとは認められな
いとして,控訴人(原告)の請求をいずれも棄却した。控訴人は,これを不服とし
て本件控訴を提起した。
 当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」のとおり
であるから,これを引用した上,「当審における控訴人の主張の要点(控訴理由の
要点)」を次のとおり付加する。
 2 当審における控訴人の主張の要点(控訴理由の要点)
 (1) 原告商品1と被告商品1との対比
 (1-1) 原告商品1についての認定
 原告商品1の形態についての原判決のA,Gの認定は誤りである。また,Bない
しFの認定は,概要は誤ってはいないが,商品形態の特徴点ないしは具体的形態を
逸脱して認定している。
 (a) 構成A(袖ぐり)については,「ノースリーブであり,袖ぐりを,肩が大き
く出るように袖口を前身頃と後身頃の双方においてハの字型にカットしている。」
と認定されるべきである。すなわち,原告商品1の袖ぐりは,肩山部分が存在して
おり,「アメリカンスリーブ」なるものであるか否かは,その概念の意味内容いか
んによるが,肩がむき出しになるような袖ぐりがアメリカンスリーブと呼ばれると
すれば,それに含まれるが,肩山部分がないものがアメリカンスリーブと呼ばれる
ものであるとすれば,それに含まれない。
 (b) 構成Gについては,「襟から腰まで体のラインに沿わせ,腰下は両脚の腿辺
りの位置から下方に向かってわずかに絞られ,裾において開いた,全体として弱い
マーメイドラインのシルエットとなっている。」と認定されるべきである。すなわ
ち,原告商品1においては,脚の下方の絞りは弱くわずかなものにすぎない。
 (c) 構成B(襟部分)についての原判決の認定自体に誤りはないが,花のコサー
ジュや後身頃のリボンの態様の認定が欠落している。構成Bは,「襟は,ロールネ
ックであり,外側に折り返すようになっている襟部分は,前面部分にはぎがなく,
首の後部分でリボンを結ぶことができるように,両端とも,背部のウエスト部分の
下辺りまで幅広の布がマフラー状にたれ下がっている。ロールネックの正面左側に
は表地と同一色の布によって作られた花のコサージュが取り付けられている。」と
認定されるべきである。
 (d) 構成C(スリット)については,原告商品1は,表地のみがスリットになっ
ているのであり,「前身頃の左脇ウエスト位置から裾にかけて左寄りに切替えが入
り,切替え部分の表地下部は,丸みを帯びたスリットになっており,」と認定され
るべきである。
 (e) 原告商品1の形態における特徴点は,全体のシルエット,切替えと裾のスリ
ット及び襟にあり,その限りで原判決の認定に誤りはないが,袖ぐり部分(構成
A)はノースリーブのワンピースとして特にデザイン上の特徴があるというもので
はなく,生地の風合いもフォーマルドレスとして光沢のある生地を用いる点は一般
的であるので,その点は特に特徴点というほどのものではない。また,原告商品1
は,全体のシルエットを脚部分の下方への絞りがわずかなものとするマーメイドラ
インに属する形態を採用しつつ,襟部分の形態(構成B)及び裾部分の形態(構成
C,F)が特徴点となっている。特にコサージュとしての立体花弁を付したロール
ネックと背面がリボン状に結ぶことができる形態,左寄りに入った切替え部分の下
部は,短くした表地のみスリットを入れている点で他の商品には見られない独特の
デザイン上の工夫がある。購入者にフォーマルドレスとして,襟の花弁と花びらを
思わせる裾のデザインによってエレガントなワンピースとしての好印象を与えるも
のとなっている。
 (1-2) 被告商品1についての認定
 被告商品1の形態についての原判決のa,gの認定は誤りである(bないしf,
hの点が原告商品1のBないしF,Hと同一の形態であるとしている点は正しい
が,その具体的な形態は上記(1-1)のとおりとすべきである。)。
 (a) 構成a(袖ぐり)について,原判決が「肩が隠れる」と認定した点は誤りで
ある。肩が隠れるものではなく,原告商品1と同様に,着用した際に肩が出るもの
である。袖口のカットの角度が八の字型ではなく,ほぼ垂直になっているにすぎな
い。したがって,構成aは,「ノースリーブであり,袖ぐりは,肩が出るように袖
口を前身頃と後身頃の双方においてほぼ垂直にカットしている。」と認定されるべ
きである。
 (b) 構成g(シルエット)については,「襟から腰まで体のラインに沿わせ,腰
下は両脚の腿辺りの位置において下向きに向かってわずかに絞られ,裾までの間に
おいて徐々に開いた全体として弱いマーメイドラインのシルエットとなってい
る。」と認定されるべきである。すなわち,原判決は,「Aライン」と認定した
が,Aラインは英文字のAのように上部が小さく裾にいって広がったシルエットを
意味するものであり,被告商品1の全体のシルエットは,Aラインではなく,肩か
らひざ辺りまで体のラインに沿わせ,裾で開いたラインを有する点においてマーメ
イドラインのシルエットであることに変わりはない。被告商品1は,腿辺りの位置
から下方に向かってラインが絞られており(甲26,乙1),Aラインとは全く異
なるシルエットである。
 (1-3) 原告商品1と被告商品1の形態の実質的同一性
 両商品において相違点があるとしても,それらは何の努力も要しないデザイン上
のわずかな改変にすぎず,需要者に与える影響もわずかなものであって,同一性の
判断に影響を与えるものではない。
原告商品1の襟部分の特徴(構成B)は,原告商品1の斬新なデザインに基づく
ものであって,他の商品にはない特有の特徴である。被告商品1はその特徴をそっ
くり利用しつつ,袖ぐり部(構成A)を改変している。しかし,改変といっても,
袖口のカットの角度の違いにすぎず,両商品において着用した際にはいずれも肩が
露出することに変わりはなく,露出の程度が異なるにすぎない。袖口のカット角の
仕様は,被服全体のシルエットないし印象に大きな影響を与えることのない,工夫
を要しない単なるデザイン要素のわずかな変更である。確かに,両商品を着用した
場合の肩の露出の程度の差異はあるが,商品の全体的な特徴点の共通性から見れば
希薄な印象を与えるにすぎない。なお,両商品において,それらを着用する際に
は,いずれも肩口まである下着など着用しない。
 被告商品1のシルエットは,Aラインではなく,両商品はいずれも弱いマーメイ
ドラインであることに変わりはない。両商品の腰下のラインの相違は絞りのライン
がわずか相違するにすぎず,一見して区別することができないほど酷似しており,
全体のシルエットとしては,弱いマーメイドラインを構成しているとの印象を与え
る。両商品の各シルエットにおいて相違する点は,裾の広がりの程度のわずかな違
いにすぎず,着用時の全体の印象に及ぼす影響は小さい。
したがって,両商品の商品形態は,実質的に同一である。
 そして,両商品の形態上の同一性,特に原告商品1の特徴である特異な襟の形
態,切替え部分のスリット,全体のシルエットの共通性を考慮すれば,被告製品1
は原告製品1を参考にしない限り着想は困難であることは明らかであり,両商品の
販売形態,販売時期等に照らし,被告商品1は,原告商品1を模倣する意図に基づ
いて作成されたものであることは明らかである。
 (2) 原告商品2と被告商品2との対比
 (2-1) 原告商品2についての認定
 原判決の原告商品2の形態についての認定に誤りはない。
 (2-2) 被告商品2についての認定
 原判決の被告商品2の形態についての認定は,下記の点を除き誤りはない。
 被告商品2の構成bは,「4か所を肩山に付されたボタンと同一の黒色のビーズ
様のボタンで留められ,その部分も取外しが可能となっており」と認定されている
が,4か所のボタンはいずれも取り外しができる状態になっていない。
 (2-3) 原告商品2と被告商品2の形態の実質的同一性
 原告商品2の特徴は,前身頃の襟ぐりをドレープ仕様(ゆったりした仕様)にし
(構成A),袖を袖山部分が縫い合わされていない状態(肩を露出した状態)で肩
山及び脇の下部分の2か所のボタンによって取り外し可能に留められていること
(構成B)にあり,ブラウスとしてこのような形態のものはなく斬新なデザインで
ある。被告商品2は,この特徴を有する原告商品2の取り外し可能なパーツ(袖)
を単に改変し,あるいはブラウス本体のデザイン要素を改変したものにすぎない。
いずれの改変も,改変の着想は容易であって,当該改変によって原告商品2と形態
上の相違が生ずるとしても,原告商品2が有する特異の形態上の特徴及び効果をそ
のまま維持している。
 被告商品2の袖は,肘から先の部分が切り離された形態で4か所をボタンで留め
ることによって固定している。そして,取り外したパーツである袖自体を比較すれ
ば,形態上の相違は明瞭に区別可能である。しかし,原告商品2の特徴は,袖を肩
から取り外し可能とし,袖のないブラウスとして使用することを可能とする形態的
機能を有しており,この最も特異な形態において被告商品2は共通していること,
被告商品2の袖も袖山部分が縫い合わせない状態で肩山から袖口まで開口して開口
部分をボタン留めしており,両商品を着用した場合,腕の一部が外部に露出する点
では共通していることからすれば,被告商品2の取り外し可能なパーツである袖
を,袖の長手方向に肘先部分を切り離して,切り離し部分の腕を露出する形態を採
用することは改変の着想において何ら困難性はない。需要者に与える印象も,肩口
における取り外し可能な形態と比較すれば,希薄な印象でしかない。
原判決は,両商品の相違点として,後身頃側の襟ぐり,裏地の素材,肩山部分の
各形態,前身頃肩山部分のタックの有無を指摘するが,それらの相違点は周知のデ
ザイン要素の変更にすぎず,原告商品2が有する上記の斬新な形態的特徴を考慮す
れば,ブラウス全体のシルエットが酷似しているとの印象を与えるものである。
 したがって,原告商品2と被告商品2の形態は,実質的に同一である。
 そして,両商品の形態上の同一性,特に原告商品2の特徴である取り外し可能な
袖部分の特異な形態は,原告商品2を参考にしない限り着想困難であること,両商
品の販売形態,販売時期に照らし,被告商品2は原告商品2を模倣する意図に基づ
いて作成されたものであることは明らかである。
 (3) 原告商品3と被告商品3との対比
 (3-1) 原告商品3についての認定
 原判決の原告商品3の形態及び形態上の特徴についての認定に誤りはない。
 (3-2) 被告商品3についての認定
 原判決の被告商品3の形態についての認定に誤りはない。
 (3-3) 原告商品3と被告商品3の形態の実質的同一性
 原告商品3のパレオは,裾が正面左から右に流れるシルエットを有して裾がフレ
ア状となっていること,カール状の布が付いた左脇で取り外し可能にボタン留めさ
れていることに通常のパレオにはない特徴を有している。左脇にカール状の布を付
しているのは通常の使用者のきき手である右手との接触を避けるためなどの実用的
な工夫もあり,全体として特異なデザイン上の工夫がなされている。また,通常の
パーツでは素材にシフォン様のものは使用しないが,原告商品3は,パーティー用
に着用するための特殊用途を考慮して,シフォン様のものを使用している。
 原判決は,両商品の相違点として,被告商品3のパレオが帯状でフレア上の裾部
分が継ぎ足されたものとなっている点を指摘するが,その相違点は,原告商品3の
わずかな改変であって,改変に基づくデザイン上の工夫など一切なく,需要者に与
える印象は極めて希薄である。原判決が相当異なった印象を与えると判断したこと
は事実誤認である。
被告商品3のパレオは,確かに裾部分が継ぎ足されたものとなっている。しか
し,パレオ自体の全体のデザイン・シルエットは原告商品3のパレオと酷似し,パ
レオを展開した特異な形状の状態を見ても両商品のパレオは全く区別ができないほ
ど,その全体形状,裁断,風合い,縫合が共通している。被告商品2を離間的に観
察した場合は,継ぎ足し部分は同一素材,同一色の材料によって継ぎ足されたもの
であるので,よほど注意しなければ気がつかない部分にすぎない。需要者が両商品
を手にとって吟味する場合を想定しても,両商品の全体のシルエット,パーツのフ
レア上のスリット部分,パレオの全体的ライン(シルエット),色・素材等の共通
性に加え,ボタン縫製仕様の細部に至る部分まで共通のものであるので,上記相違
点は印象が希薄となっていることは明らかである。加えて,原告商品3に接した同
業者が,パレオ部分のデザイン上の改変を行うとすれば裾部分に同一素材を用いて
継ぎ足すことは特に工夫を要するものではなく,継ぎ足したことによって特に機能
的又はデザイン上異なった効果が創出されるというものでもない。両商品は,これ
を離隔的に観察すると,形態上全く区別することはできず,両商品を実際に着用し
た場合を考えると,通常人であれば,同一の商品と判断せざるを得ないほど酷似す
るといってよい。
 したがって,原告商品3と被告商品3の形態は,実質的に同一である。
 そして,両商品の形態上の同一性,両商品の販売形態,販売時期に照らし,被告
商品3は原告商品3を模倣する意図に基づいて作成されたものであることは明らか
である。
 (4) 原判決の「商品の形態」に関する判断の誤り
 原判決は,不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」とは,物の外観の態様
であり,外観の態様に影響しない機能を含むものではないと判断し,原告商品2の
袖が取り外し可能な形態となっていることや,原告商品3のパレオが取り外し可能
な形態となっていることはいずれも同号における「商品の形態」に含まれないとし
た。
 しかし,「商品の形態」には,離間的に観察した商品の外観ばかりではなく,商
品の部分が他の部分と一体に構成されているか取り外し可能となっているかの特
徴,また,取り外し機能を実現するための形態等の機能的特徴は「商品の形態」に
含まれると解釈されるべきである。
 また,控訴人は,原審において,原告商品2,3が有する機能そのものが同号に
よって保護を受けるべきであると主張したものではなく,機能を実現するための形
態上の特徴を主張したのに,原判決は,その主張の趣旨を誤った。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,被告商品1が原告商品1の形態を,被告商品2が原告商品2の
形態を,被告商品3が原告商品3の形態をそれぞれ模倣した商品であると認めるこ
とはできず,被控訴人の本件行為が不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行
為に該当するとはいえないから,控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく,これを
棄却すべきものと判断するが,その理由は,以下に付加するほか,原判決が「第3
 争点に対する判断」として判示するとおりである。
 2 控訴人の当審における主張にかんがみ,以下の理由を付加する。
 (1) 原告商品1と被告商品1との対比について
 (a) 控訴人は,原告商品1の構成A(袖ぐり)と被告商品1の構成a(袖ぐり)
についての原判決の認定を非難するが,証拠(検甲1,2,甲3,6,26,乙
1)及び弁論の全趣旨に照らせば,原判決の認定は,是認し得るものである。
 控訴人主張の「アメリカンスリーブ」に当たるか否かという点は,控訴人の主張
においても確定的でない上,本件証拠によっても厳密な定義を認定することはでき
ないところ,本件で問題なのは,どの類型に該当するかということではなく,商品
の具体的な形態いかんであるというべきである。
 そこで,商品の具体的な形態についてみるに,原判決が,原告商品1の構成Aに
おいて「肩が大きく出る(肩山部分がほとんどない)」とし,被告商品1の構成a
において「肩が隠れる(肩山の幅が襟ぐりから腕の付け根辺りまである)」と認定
しているが,この認定は,上記証拠等に照らして相当である。なお,原判決の「肩
が隠れる」との判示は,上記のような括弧内の判示によって具体化・明確化された
ものとして一体的に理解すべきものであって,その認定は,是認し得るものであ
る。
 (b) 控訴人は,原告商品1の構成G(シルエット)と被告商品1の構成g(シル
エット)についての原判決の認定を非難するが,前掲証拠等に照らし,原判決の認
定は相当である。
 控訴人は,原告商品1においては,脚の下方の絞りは弱くわずかなものにすぎな
いとし,被告商品1においては,全体のシルエットは,腿辺りの位置から下方に向
かってラインが絞られており,Aラインではなく,肩からひざ辺りまで体のライン
に沿わせ,裾で開いたラインを有する点においてマーメイドラインのシルエットで
あることに変わりはない,と主張する。
 前記のとおり,本件で問題なのは,どの類型のデザインに分類されるかにあるの
ではなく,商品の具体的な形態である。
 そこで,検討するに,原判決が,原告商品1の構成Gのシルエットにつき,「両
脚の腿辺りの位置から下方に向かって絞られた」とし,被告商品1の構成gのシル
エットにつき,「両脚の腿辺りの位置から下方に向かって絞ることなく」と認定し
た点は,上記証拠等に照らして是認し得るものである。控訴人は,この認定を争う
が,採用することができない。
 (c) 控訴人は,上記の点のほか,前記第2,2(1)(1-1)(c)~(e)の点を指摘し,
これらを前提として,同(1-3)のとおり,原告商品1と被告商品1の形態が実質的
に同一であると主張する。
 しかし,前提とされた両者の相違点についての控訴人の主張が採用し得ないこと
は,前判示のとおりである。そして,原判決が説示するとおり,構成Aとa,構成
Gとgとの違いは,本件商品においては重要な相違点であるというべきであって,
控訴人が原告商品1の構成Bとして付加すべきものと主張する点や,両者の形態の
類似点を考慮しても,原告商品1と被告商品1の各形態が実質的に同一であるとは
認めることができない(模倣の意図の点は,検討するまでもない。)。
 (2) 原告商品2と被告商品2との対比について
 控訴人は,被告商品2の構成bについての原判決の認定を非難した上,前記第
2,2(2)(2-3)のとおり,原告商品2と被告商品2の形態が実質的に同一であると
主張する。
 検討するに,証拠(検甲3,4,甲4,7,26,乙2)及び弁論の全趣旨に照
らせば,原判決の認定は,是認し得るものである。そして,原告商品2と被告商品
2とは,原判決が説示するとおり,後身頃側の襟ぐり,袖,襟ぐり辺りにおいて表
地から透けて見える裏地,両身頃の肩山部分の各形態,前身頃肩山部分のタックの
有無の点において,いずれも相違しており,これらの相違点が需要者・取引者に与
える印象は大きく,需要者・取引者は,原告商品2及び被告商品2を一見して明瞭
に区別することができるものというべきである。そして,控訴人が主張する両者の
形態の類似点を考慮しても,原告商品2と被告商品2の各形態が実質的に同一であ
るとは認めることができない(模倣の意図の点は,検討するまでもない。)。
 (3) 原告商品3と被告商品3との対比について
 控訴人は,前記第2,2(3)(3-3)のとおり,原告商品3と被告商品3の形態が実
質的に同一であると主張する。
 検討するに,証拠(検甲5,6,甲5,8,26,乙3)及び弁論の全趣旨に照
らせば,原判決の認定は,是認し得るものである。そして,原告商品3と被告商品
3とは,原判決が説示するとおり,パレオの形態において相違しており,パレオ付
きパンツの需要者・取引者にとって,パレオの形態は,商品から受ける印象におい
て大きな部分を占めるものと解され,本件におけるパレオの形態の相違は,原告商
品3及び被告商品3について,相当異なった印象を需要者・取引者に与えるもので
あるというべきである。そして,控訴人が主張する両者の形態の類似点を考慮して
も,原告商品3と被告商品3の各形態が実質的に同一であるとは認めることができ
ない(模倣の意図の点は,検討するまでもない。)。
 (4) 原判決の「商品の形態」に関する判断の誤り
 控訴人は,原審において,原告商品2,3が有する機能そのものが保護を受ける
べきであると主張したものではなく,機能を実現するための形態上の特徴を主張し
たのに,原判決は,その主張の趣旨を誤った,と主張するとともに,原告商品2の
袖が取り外し可能な形態となっていることや,原告商品3のパレオが取り外し可能
な形態となっていることに関する原判決の判断を非難する。
 しかし,控訴人(原告)の原審における主張は,「『取り外し式のパレオ』が付
くという点が,デザインの大きな機能的な特徴である。被告は,この機能(原告の
アイデア)を,完全に,模倣しているものである。」とするなど(原告準備書面(2)
2頁),「商品の形態模倣」として,「機能の模倣」を主張していたとしか解され
ない。したがって,原判決の原告の主張の摘示に誤りはなく,原判決は,その主張
に対する判示として,「外観の態様に影響しない機能」は「商品の形態」に含まれ
ないとの判断を示したものであるから,控訴人が主張するような誤りはない。
 なお,控訴人が主張するように,袖やパレオが取り外し可能となっていることに
起因する商品の形態上の特徴を検討しても,実質的同一性についての前判示の認定
判断を変更すべきものとはいえない。
 3 結論
 以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないので,これを棄却す
ることとして,主文のとおり判決する。
  知的財産高等裁判所第4部
        裁判長裁判官
                   塚   原   朋   一
           裁判官
                   田   中   昌   利
           裁判官
                   清   水   知 恵 子

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛