弁護士法人ITJ法律事務所

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○ 主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 控訴人と被控訴人との和歌山マリーナシテイ埋立地及びその周辺水域における
境界は、原判決別紙図面二のA点を基点として、同図面、A1、B1、C1、D
1、D2の各点(各点の位置は同成果表のとおり)を順次直線で結ぶ線であること
を確定する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文に同じ
第二 当事者の主張
原判決の「第二 当事者の主張」記載のとおりであるから、これを引用する。ただ
し、次のとおり、付加、訂正する。
一 原判決の付加、訂正
1 原判決一三枚目裏一〇行目の「下津港湾」を「下津港港湾」と、同一四枚目裏
六行目の「北西すみ」を「北西角」とそれぞれ改め、同五九枚目表四行目の「3」
の次に「同2の(一)の事実は、前記(被告(被控訴人)の本案前の主張)の一2
の(一)ないし(三)記載の限度で認め、その余の点は争う。」を加え、同行の
「(一)」を「(二)」と、六行目の「(二)」を「(三)」とそれぞれ改める。
2 同六〇枚目表二行目の「編成法」を「編制法」と、同八七枚目表九行目の「中
点連結主義」を「中点連結線主義」とそれぞれ改める。
二 当審での主張
1 控訴人
(一) 被控訴人主張の境界線の基点である原判決別紙図面一(以下「図面一」と
いう。)のイ点は特定されていない。
(二) 被控訴人は、図面一のイ点は、控訴人と被控訴人との間の陸上境界線と水
際線との交点であり、旧第二工区の存する部分では、その北側、西側の水際線が境
界線であると主張するから、図面一のイ、ニ、への各点はいずれも水際線上になけ
ればならないのに、現実には、これらの各点は水際線上にない。したがって、被控
訴人の測量は不正確であり、主張自体信用できない。
すなわち、仮に図面一のイ点が、被控訴人主張の陸上境界線と水際線との交点であ
り、緯度、経度で特定されているとしても、控訴人が三級基準点NO.11ないし
NO.14を用いて、右イ点、ニ点、ヘ点を現地で再現したところ、イ点は、護岸
下部から南西一・五五メートル海側に入った地点であって、満潮時には水没する。
ニ点は、旧第二工区北側の県道上になり、ヘ点は、護岸上部の西端から一・六六メ
ートル東の地点であって、いずれも水際線上にない(甲九六)。
(三) さらに、被控訴人は図面一のホ点について、無用な争いを避けるため、控
訴人主張の図面二のD点と一致させるというが、このこと自体、被控訴人の作図の
不正確性を示し、かつ作図の根拠となっている乙五五及び六四の記載内容の信用性
の低さを物語っている。
2 被控訴人
(一) 控訴人の(一)の主張は争う。図面一の基点イ点は、緯度及び経度で示し
ており、特定に欠けるものではない。
(二) 同(二)も争う。
水際線は潮の干満によって移動することは周知の事実であり、和歌山港における春
分の日の満潮時の潮位は最高一七六センチメートルであり、干潮時の潮位は最低八
センチメートルで、その差は一六八センチメートルもある(乙八〇)。したがっ
て、海底の傾斜が四五度の急傾斜地であっても水際線は一六八センチメートルも違
う結果となる。沿岸部では、通常これより傾斜角度は少ないから、その差は一層大
きくなる。他方、水際線についての我国における通説的解釈は、高潮線をもって水
際線としているが(乙二四)、海図は低潮線をもって水際線とし、国土地理院作成
の図面は東京湾における平均海面を基準としている(乙一二の4、5)。このよう
な潮の干満による水際線の違いや、図面上の水際線の表示方法に差違があることを
考慮すると、図面一の基点イ点も水際線上にあるといえる。
また、二点、ヘ点については、現在の水際線を前提とするものではなく、旧第二工
区埋立前の水際線を前提としたものであるし、二万五〇〇〇分の一の地図で作業し
ても、地図上の僅か〇・一ミリメートルの違いが現地では二・五メートルの違いを
生ずる結果となり、地図を基に境界線を画定するという事柄の性質上、技術的に若
干の誤差は避けられない。このことは、控訴人側の測量(甲九六)についてもいえ
ることで、その測量結果に全く誤差がないとはいえない。したがって、図面一のニ
点、ヘ点の位置については許された誤差の範囲内にあるといえるし、この程度の誤
差は、行政権の行使に何らの不都合もない。
(三) 同(三)も争う。
第三 証拠(省略)
第四 当裁判所の判断
当裁判所も、被控訴人の本案前の主張は理由がなく、本件請求は原判決認定の境界
線をもって、本件埋立地付近における控訴人と被控訴人との境界線であると判断す
るが、その理由は、原判決の「理由」欄記載のとおりであるから、これを引用す
る。ただし、次のとおり付加、訂正する。
一 原判決の付加、訂正
1 原判決九一枚目裏六行目から七行目にかけての「第六号証」の次に「(各枝番
を含む。)」を加え、同九二枚目裏一行目の「文書」を「公文書」と改め、同九四
枚目裏四行目の「前記」を「前記(本案前の主張)」と改める。
2 同一〇二枚目表七行目の「編成法」を「編制法」と、同裏一一行目の「実情」
を「実状」と、同一〇三枚目表一一行目の「下津港湾区域」を「下津港港湾区域」
と、同一〇五枚目表五行目から六行目にかけて及び同裏一一行目の各「二月一六
日」をいずれも「二月二六日」と、同一〇六枚目裏一〇行目及び同一〇七枚目表一
〇行目の各「高岡」をいずれも「高岡」と、同枚目表八行目の「よれば、」を「従
って、」と、同一〇八枚目表五行目の次に行を改めて「右認定、説示の経緯に照ら
すと、本件における公有水面の境界については、歴史的経緯、従来の行政権行使の
実状等特別の事情を勘案しつつ、右等距離主義に基いて確定するのが相当であると
解する。」を加え、同七行目の「広挾」を「広狭」と改め、同一〇九枚目表五行目
の冒頭から同八行目末尾までを削除し、同一一二枚目裏五行目の「一ないし六」を
「2ないし4」と改める。
3 同一一三枚目裏三行目の「修正した線、」から六行目末尾までを次項のとおり
改める。「修正した線と確定するのが相当であるところ、証拠(乙一〇、五五、六
四、六五の1、2、六六、証人A)及び弁論の全趣旨によると、控訴人と被控訴人
との陸上境界線は、温山荘の北西側にある被控訴人の市有道路(琴ノ浦一号線)と
温山荘の敷地が接する線の延長線であると認められるから、基点は、右延長線が水
際線と交わる点、すなわち図面一のイ点であり、これを基点として、等距離線主義
にしたがって導かれた線は、同図面ロ、ハ、ニ、ヲ、ワ、カ、ヨ、タ、レ、ヘ、
ト、チ、リ、ヌ及びルの各点を順次直線で結ぶ線となるが、旧第二工区内を通過す
る部分については、これを外してその北側及び西側の外周、すなわちニ点からホ点
を通ってヘ点を通る直線に修正することになる。その結果、本件境界は、図面一の
イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ及びルの各点を順次直線で結ぶ線である
と確定できる。」
二 当審での控訴人の主張について
図面一のイ点については、同図面に記載されているように、座標変換計算によって
算出された緯度、経度をもって表示されているので、なんら特定に欠けるところは
なく、イ点が特定されていないとの控訴人の主張は理由がない。また、同点が水際
線にないとも主張するが、本件の場合にいう水際線は、春秋の潮位の最高線をいう
と解釈されている(乙二四)のであるから、これによると、イ点が水際線にないと
まで断定できない。
また、控訴人は、図面一のニ点及びへ点が、旧第二工区内に入り込んでいるとも主
張し、甲九六と乙五五、六四によると、ニ点、ヘ点を示す座標点、したがって緯
度、経度の数字や真北方向角が異なることが認められるが、いずれも〇秒以下四桁
のうちの下二桁が相異する程度の僅少な差異であり、これを本件のような広大な地
域に当て嵌めた場合に誤差がでることは避けられないものであり、この程度の誤差
は許容範囲内であると思料され(行政権の行使に著しい支障があるとは考えられな
い。)、またこれらの点が水際線にないとの控訴人の主張が容れられないことは前
示のとおりである。
したがって、控訴人の当審での主張は理由がない。
第五 結論
以上の次第で、原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。
よって、本件控訴を棄却することとし、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決す
る。
(裁判官 田畑 豊 熊谷絢子 小野洋一)

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