弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

令和3年5月13日判決言渡
令和元年(行ケ)第10108号審決取消請求事件
口頭弁論終結日令和3年3月2日
判決
原告ワイヤレスフューチャーテクノロジーズインコーポレイテッド
同訴訟代理人弁護士鈴木秀彦
同河西智之
同訴訟代理人弁理士前川純一10
同高橋佳大
被告ソニー株式会社
同訴訟代理人弁護士岡田誠15
同高梨義幸
同訴訟代理人弁理士大石幸雄
同阪和之
主文
1原告の請求を棄却する。20
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2017-800018号特許無効審判事件について平成31
年3月27日にした審決を取り消す。25
第2事案の概要
1特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)
(1)ノキアシーメンスネットワークスオサケユキチュア(以下「ノキ
ア」という。)は,平成20年5月6日に出願(特願2010-506918
号。優先日平成19年5月7日。優先権主張国欧州特許庁)した発明の一部
を分割して,「通信ネットワークシステムにおけるコントロールチャネル」と5
する発明について,平成24年8月31日を国際出願日とする特許出願(特
願2012-192230号。以下「本件出願」という。)をし,平成25年
9月6日,特許権の設定登録(特許第5355765号。請求項の数16。)
を受けた(以下,この登録を受けた特許を「本件特許」という。)。
(2)ノキアは,原告に対し,本件特許に係る特許権を譲渡し,その旨の移転登10
録(受付日平成27年3月9日)を経由した。
(3)被告は,平成29年2月3日,本件特許について特許無効審判(無効20
17-800018号事件)を請求した。
(4)原告は,平成30年2月9日付けで無効理由の通知を受け,同年4月5日
付けで訂正の請求をしたが,同年6月20日付けで訂正を認めない旨の通知15
を受け,同年10月26日付けで審決の予告を受けたため,平成31年2月
5日付けで,①本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし7,14ないし
16からなる一群の請求項として,請求項1及び5を訂正し,請求項3及び
4を削除し,②本件特許の特許請求の範囲の請求項8ないし10を一群の請
求項として,請求項8を訂正し,③本件特許の特許請求の範囲の請求項1120
ないし13を一群の請求項として,請求項11を訂正し,④本件出願の願書
に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。)について訂
正(以下,①ないし④の訂正を「本件訂正」という。)する旨の訂正請求(以
下「本件訂正請求」という。)をした。
(5)特許庁は,平成31年3月27日,本件訂正の請求は認められないとした25
上で,特許法123条1項4号の規定により,本件訂正前の特許請求の範囲
である「請求項1ないし16に係る発明についての特許を無効とする」旨の
審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年4月9日,原告に
送達された。
(6)原告は,令和元年8月5日,本件審決の取消を求める本件訴訟を提起した。
2特許請求の範囲5
⑴本件訂正前の特許請求の範囲
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし16の記載は,以下のとお
りである。
【請求項1】
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをアロケート10
し,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ
ネルエレメントを表し,
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル15
エレメントの少なくとも一つを有する,方法において,
前記アロケーションは,最高レベルのコントロールチャネルのアロケーシ
ョンを制限することによって実行され,前記最高レベルのコントロールチャ
ネルは,ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,
それにより,比較的低いレベルのコントロールチャネルのアロケーションが20
可能となり,比較的低いレベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の比
較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表される,方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって,
アロケートされたコントロールチャネルをシステムバンド幅にわたりサ25
ブキャリアに分散することによって,アロケートされたコントロールチャネ
ルをユーザイクイップメントに送信する,方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって,
比較的高いレベルのコントロールチャネルは,比較的低いレベルのコント
ロールチャネルと組み合わされる,方法。5
【請求項4】
請求項1記載の方法であって,
ツリー構造の比較的低いレベルにおいてアロケーションがより増大され
る,方法。
【請求項5】10
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをデコーディ
ングすることによって,および,識別子を使用することによって,コントロ
ールチャネルを検索し,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ
ネルエレメントを表し,15
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル
エレメントの少なくとも一つを有する,方法において,
前記検索は,最高レベルのコントロールチャネルに対して制限され,前記
最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の最高レベルにあるツリ20
ー構造のノードによって表され,それにより,比較的低いレベルのコントロ
ールチャネルの検索が可能となり,比較的低いレベルのコントロールチャネ
ルは,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表
される,方法。
【請求項6】25
請求項5記載の方法であって,
コントロールチャネルはネットワークデバイスから受信される,方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の方法であって,
検索は,最低レベルのコントロールチャネルから開始され,
最低レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の最低レベルにあるツ5
リー構造のノードにより表される,方法。
【請求項8】
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをアロケート
するように構成されているアロケーションユニット(22)を備え,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ10
ネルエレメントを表し,
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル
エレメントの少なくとも一つを有する,デバイス(20)において,
前記アロケーションユニット(22)は,最高レベルのコントロールチャ15
ネルのアロケーションを制限するように構成されており,前記最高レベルの
コントロールチャネルは,ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノー
ドによって表され,それにより,比較的低いレベルのコントロールチャネル
のアロケーションが可能となり,比較的低いレベルのコントロールチャネル
は,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表さ20
れる,デバイス(20)。
【請求項9】
請求項8記載のデバイスであって,
アロケートされたコントロールチャネルをシステムバンド幅にわたりサ
ブキャリアに分散することによって,アロケートされたコントロールチャネ25
ルをユーザイクイップメントに送信するように構成されている送信ユニット
(21)を備える,デバイス。
【請求項10】
請求項8または9記載のデバイスであって,
eNBを含む,デバイス。
【請求項11】5
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをデコードす
ることによって,および,識別子を使用することによって,コントロールチ
ャネルを検索するように構成されているデコーディングユニット(12)を
備え,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ10
ネルエレメントを表し,
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル
エレメントの少なくとも一つを有する,デバイス(10)において,
前記デコーディングユニット(12)は,最高レベルのコントロールチャ15
ネルに対する検索を制限するように構成されており,前記最高レベルのコン
トロールチャネルは,ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードに
よって表され,それにより,比較的低いレベルのコントロールチャネルの検
索が可能となり,比較的低いレベルのコントロールチャネルは,ツリー構造
の比較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表される,デバイス20
(10)。
【請求項12】
請求項11記載のデバイスであって,
コントロールチャネルをネットワークデバイス(20)から受信するよう
に構成された受信ユニット(11)を備える,デバイス。25
【請求項13】
請求項11または12記載のデバイスであって,
ユーザイクイップメントを備える,デバイス。
【請求項14】
コンピュータプログラムが処理デバイスで実行されるときに,請求項1か
ら7までのいずれか一項記載のステップを実行するためのソフトウエアコー5
ド部分を有する,処理デバイス用のコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ読
み出し可能媒体。
【請求項16】10
請求項14記載のコンピュータプログラムであって,
コンピュータプログラムは,処理デバイスの内部メモリに直接ロード可能
である,コンピュータプログラム。
(2)本件訂正後の特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし16の記載(下線部は本件15
訂正による箇所を示す。以下同じ。)は,以下のとおりである。
【請求項1】
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをアロケート
し,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ20
ネルエレメントを表し,
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル
エレメントの少なくとも一つを有する,方法において,
ユーザイクイップメントに対するアロケーションは,前記最高レベルにお25
ける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコント
ロールチャネル候補を部分的に制限して実行され,前記最高レベルのコント
ロールチャネルは,ツリー構造の前記最高レベルにあるツリー構造のノード
によって表され,
それにより,前記最高レベルよりも低い各レベルにおける,ユーザイクイ
ップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補5
の割合を,前記最高レベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロ
ケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,
ユーザイクイップメントに対するアロケーションを実行することが可能とな
り,
前記最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチャネルは,ツリー構10
造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造のノードによって表
され,
ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザイクイップメントに対
するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合がより大
きくされる,15
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって,
アロケートされたコントロールチャネルをシステムバンド幅にわたりサ
ブキャリアに分散することによって,アロケートされたコントロールチャネ20
ルをユーザイクイップメントに送信する,方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)25
【請求項5】
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをデコーディ
ングすることによって,および,識別子を使用することによって,コントロ
ールチャネルを検索し,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ
ネルエレメントを表し,5
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル
エレメントの少なくとも一つを有する,方法において,
前記検索は,検索されるべき最高レベルのコントロールチャネル候補を部
分的に制限して実行され,前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリ10
ー構造の前記最高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,それに
より,前記最高レベルよりも低い各レベルにおける検索されるべきコントロ
ールチャネル候補の割合を,前記最高レベルにおける検索されるべきコント
ロールチャネル候補の割合よりも大きくして検索を実行することが可能とな
り,前記最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチャネルは,ツリー15
構造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造のノードによって
表され,
ツリー構造における,より低いレベルほど,検索されるべきコントロール
チャネル候補の割合がより大きくされる,方法。
【請求項6】20
請求項5記載の方法であって,
コントロールチャネルはネットワークデバイスから受信される,方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の方法であって,
検索は,最低レベルのコントロールチャネルから開始され,25
最低レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の最低レベルにあるツ
リー構造のノードにより表される,方法。
【請求項8】
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをアロケート
するように構成されているアロケーションユニット(22)を備え,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ5
ネルエレメントを表し,
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル
エレメントの少なくとも一つを有する,デバイス(20)において,
前記アロケーションユニット(22)は,ユーザイクイップメントに対す10
るアロケーションに使用可能な最高レベルのコントロールチャネル候補を部
分的に制限して,ユーザイクイップメントに対するアロケーションを実行す
るように構成されており,前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリ
ー構造の前記最高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,それに
より,前記最高レベルよりも低い各レベルにおける,ユーザイクイップメン15
トに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を,
前記最高レベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーション
に使用可能なコントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイ
クイップメントに対するアロケーションを実行することが可能となり,前記
最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前20
記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造のノードによって表され,
ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザイクイップメントに対
するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合がより大
きくされる,デバイス(20)。
【請求項9】25
請求項8記載のデバイスであって,
アロケートされたコントロールチャネルをシステムバンド幅にわたりサ
ブキャリアに分散することによって,アロケートされたコントロールチャネ
ルをユーザイクイップメントに送信するように構成されている送信ユニット
(21)を備える,デバイス。
【請求項10】5
請求項8または9記載のデバイスであって,
eNBを含む,デバイス。
【請求項11】
ツリー構造のノードにより表されるコントロールチャネルをデコードす
ることによって,および,識別子を使用することによって,コントロールチ10
ャネルを検索するように構成されているデコーディングユニット(12)を
備え,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードはコントロールチャ
ネルエレメントを表し,
コントロールチャネルの各々は,コントロールチャネルを検知するために15
使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送するコントロールチャネル
エレメントの少なくとも一つを有する,デバイス(10)において,
前記デコーディングユニット(12)は,検索されるべき最高レベルのコ
ントロールチャネル候補を部分的に制限して検索を実行するように構成され
ており,前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高20
レベルにあるツリー構造のノードによって表され,それにより,前記最高レ
ベルよりも低い各レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル候補
の割合を,前記最高レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル候
補の割合よりも大きくして検索を実行することが可能となり,前記最高レベ
ルよりも低い各レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高レ25
ベルよりも低いレベルにあるツリー構造のノードによって表され,
ツリー構造における,より低いレベルほど,検索されるべきコントロール
チャネル候補の割合がより大きくされる,デバイス(10)。
【請求項12】
請求項11記載のデバイスであって,
コントロールチャネルをネットワークデバイス(20)から受信するよう5
に構成された受信ユニット(11)を備える,デバイス。
【請求項13】
請求項11または12記載のデバイスであって,
ユーザイクイップメントを備える,デバイス。
【請求項14】10
コンピュータプログラムが処理デバイスで実行されるときに,請求項1か
ら7までのいずれか一項記載のステップを実行するためのソフトウエアコー
ド部分を有する,処理デバイス用のコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14記載のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ読15
み出し可能媒体。
【請求項16】
請求項14記載のコンピュータプログラムであって,
コンピュータプログラムは,処理デバイスの内部メモリに直接ロード可能
である,コンピュータプログラム。20
3本件審決の要旨
①本件訂正請求における請求項1ないし7及び14ないし16からなる一群
の請求項に係る訂正(訂正事項2,3,8,9,11,14及び16),請求項
8ないし10からなる一群の請求項に係る訂正(訂正事項22,23,11,
14及び16),請求項11ないし13からな一群なる請求項に係る訂正(訂正25
事項26,27,11,14及び16)は,本件明細書,特許請求の範囲又は
図面(以下「特許明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導か
れる技術的事項との関係において新たな技術的事項を追加するものであり,か
つ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであって,特許法134条
の2第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合しないから,本
件訂正は認められない,②本件訂正前の請求項1ないし16に係る発明につい5
ての特許は,同法36条6項1号及び2号又は同条4項1号の要件を満たして
いない特許出願に対してされたものであるから,同法123条1項4号に該当
し,無効とすべきものであるというものである。
原告の主張と関係する訂正事項とこれらの訂正事項に関する本件審決の判断
の要旨は,別紙1のとおりである。10
4取消事由
本件訂正に訂正要件違反があると判断した本件審決の判断の誤り
第3当事者の主張
1請求項1ないし7及び14ないし16からなる一群の請求項における訂正事
項2,3,8,9,11,14及び16に係る訂正事項の判断の誤り15
(1)原告の主張
ア訂正事項2について
(ア)新規事項について
別紙1の1(4)ア(ア)のとおり,本件審決は,①本件明細書の図4に示
される実施例では,45個の潜在的なコントロールチャネル候補に対し20
てどのような観点に基づいて制限した結果,図4に示される15個の使
用可能なコントロールチャネル候補に至ったのかについて記載も示唆も
ないから,少なくとも,使用可能なコントロールチャネル候補に対して
「各レベル」における「割合」に着目し,最高レベルよりも低い各レベ
ルにおける割合を,最高レベルにおける割合よりも大きくして,アロケ25
ーションを実行することが可能となるという技術的事項(訂正事項2に
係る技術的事項)は,新規事項の追加に当たる,②本件明細書の【00
35】における「比較的低いレベルのコントロールチャネルのアロケー
ションを増大することができる。」との記載は,「アロケーション」に関
する何の数量や程度を何に対して「増大すること」を意味するのか明ら
かではないが,少なくとも特定の対象についての指標(数量,程度)が5
ある状態に対して「増大する」ことを意味するものと解されるところ,
訂正事項2に係る技術的事項は,使用可能なコントロールチャネル候補
の「各レベル」における「割合」に着目した上で,最高レベルよりも低
い各レベルにおける割合と,最高レベルにおける割合という異なる対象
についての大小関係を特定したものであって,上記記載と対応しないか10
ら,このような技術的事項を追加する訂正は,新規事項の追加に当たる
旨判断したが,以下のとおり誤りである。
a訂正事項2に係る技術的事項は本件明細書に記載された事項である
こと
(a)特許法134条の2第9項が準用する同法126条5項は,「第15
1項の明細書,特許請求の範囲又は図面の訂正は,願書に添付した
明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内におい
てしなければならない。」と規定しているから,訂正の根拠となる記
載は,明細書,特許請求の範囲,図面のうち少なくとも一つにあれ
ば十分であるというべきである。20
これを前提に検討すると,「ツリー構造」のコントロールチャネル
では,アロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の数
は,最高レベルが最も多く,低レベルになるほど減少していくとこ
ろ,本件明細書の図4の実施例では,アロケーションに使用可能な
コントロールチャネル候補の数は,最高レベルの集合レベル1は225
4,それよりも低いレベルの集合レベル2は12,集合レベル4は
6,集合レベル8は3である。最高レベルにアロケーションできな
いような悪いチャンネル状態を有する端末でも,最も多いコントロ
ールチャネル候補の数を有する最高レベル(集合1)のコントロー
ルチャネルを検索しなければならないため,最高レベルにアロケー
ションできないような悪いチャンネル状態を有する端末は,最高レ5
ベルよりも低いレベルにアロケーションされたコントロールチャ
ネルを検索するまでに時間がかかり,また,より低いレベルにアロ
ケーションされたコントロールチャネルを検索するには更に時間
を要することから,本件明細書の【0035】では,「最高レベルよ
りも低レベルにおけるアロケーションに使用可能なコントロール10
チャネル候補の割合を最高レベルと比較して増大させる」こと,す
なわち,最も多いコントロールチャネル候補の数を有する最高レベ
ルのコントロールチャネル候補の割合を制限することが提案され
ており,【0038】では,「レベルが低くなるほどアロケーション
に使用可能なコントロールチャネル候補の割合を増大させること」15
が提案されている。図4の実施例では,最高レベルよりも低い各レ
ベル2,4,8のそれぞれにおいて,スケジュール(アロケーショ
ン,検索)に使用可能なコントロールチャネル候補の割合,すなわ
ち,アロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合
が,最高レベル1の当該割合と比較して大きくされていることが明20
確に示されており,これにより,各レベルにおいて使用可能なコン
トロールチャネル候補の数のバランスを改善することができ(図4
の実施例では,集合レベル1,2,4はそれぞれ4,集合レベル8
は3),【0007】の「スケジューリングフレキシビリティは維持
される」一方で,【0004】の「統合されたコントロールチャネル25
に対するツリー検索が系統的に低減されるように構成する」という
課題を解決することができる。
こうした図4で示された技術的構成は,上記の【0035】,【0
038】のほか,「本発明の実施例によれば,図4の白と灰色のエリ
アにより示されたコントロールチャネル構造は,白の集合コントロ
ールチャネル候補だけがスケジュールに使用可能であるという制5
限を受ける。」(【0026】),「サーチセクション12は,比較的低
いレベルのコントロールチャネルに対する検索を増大することが
できる。」(【0040】)との記載とも整合する。
したがって,訂正事項2に係る技術的事項は,本件明細書の図4,
【0025】ないし【0027】,【0035】,【0038】に記載10
されている。
⒝これに対し,被告は,後記(2)ア(ア)aのとおり,【0025】,【0
026】及び図4には,「コントロールチャネル候補」の制限に関す
る事項は記載されているが,コントロールチャネルを実際に割り当
てること,すなわち,「アロケーション」については一切触れられて15
いない旨主張する。
しかし,【0025】には「図4は,種々の集合可能性(白と灰色
エリアの両方)に対する潜在的コントロールチャネル候補を示
す。・・・アロケーションごとに45のデコーディング試行となる」と
の記載があり,「デコーディング試行」は検索を通じて実施される動20
作である(【0018】)ことからすると,上記記載は,潜在的コン
トロールチャネル候補を用いてアロケーション及び検索が行われ
ることを意味するものであり,続けて【0025】には,「言い替え
ると,集合レベル1では24のコントロールチャネルエレメントが,
それぞれ一つのコントロールチャネルを形成する。」との記載があ25
り,これは,コントロールチャネル候補を使用してコントロールチ
ャネルのアロケーションを行うことによって,コントロールチャネ
ルを形成することを意味するものであるから,上記記載は,コント
ロールチャネル候補を使用してコントロールチャネルのアロケー
ションを行うことが実質的に記載されているのに等しい事項であ
る。5
また,【0026】には,「白の集合コントロールチャネル候補だ
けがスケジュールに使用可能であるという制限を受ける。」との記
載があるが,スケジュールは,アロケーション及び検索の上位概念
であるから,白の集合コントロールチャネル候補だけがアロケーシ
ョン及び検索に使用可能な制限を受けるとの記載と同義であるし,10
続けて,「この制限により,デコーディング試行の数は15に低減さ
れる(灰色エリアはコントロールチャネル候補の検索のためにデコ
ードされない)。」との記載があり,デコーディング試行とは,実際
にアロケーションが行われた後に実施される動作であり,実際に検
索を行うことを通じて実施される動作であるから,上記記載は実際15
にアロケーション及び検索が行われたことを前提としていること
からすると,【0026】の記載は,制限されたコントロールチャネ
ル候補の構成を使用して実際にアロケーション及び検索が行われ
ることが実質的に記載されているのに等しい事項である。
したがって,被告の上記主張は誤りである。20
⒞また,被告は,後記(2)ア(ア)aのとおり,より多くの個数のコン
トロールチャネル候補を有する,より高いレベルにおいて,より多
くのコントロールチャネル候補の使用を制限する手法を採用した
場合には,最高レベルにおいて使用可能なコントロールチャネル候
補の数が比較的低いレベルの使用可能なコントロールチャネル候25
補の数よりも少なくなってしまい,かえってスケジューリングフレ
キシビリティが低減する状況が発生し得るから,【0007】の課題
を解決することができない旨主張する。
しかし,【0007】,【0027】の記載からも明らかなように,
統合されたコントロールチャネルに対するツリー検索の系統的な
低減,すなわち,デコーディング試行の格段の低減という課題を解5
決するために,スケジューリングフレキシビリティのいかなる低減
も許容しないというものではなく,若干のスケジューリングフレキ
シビリティの低減はトレードオフとして許容されている。そして,
仮に最高レベルで使用可能なコントロールチャネル候補の個数が
不足した場合には,最高レベルよりも低い集合レベル2で使用可能10
なコントロールチャネル候補を代替的にアロケーションすること
により,通信ネットワークの運用に支障を生じさせ得るスケジュー
リングフレキシビリティの低減が発生する可能性を極めて低くす
ることが可能であるから,コントロールチャネル候補に対して「各
レベル」における「割合」に着目して制限する構成において,本件15
発明の課題を解決することができなくなる程度のスケジューリン
グフレキシビリティの低減が発生し得ることはない。
したがって,被告の上記主張は誤りである。
b本件審決の【0035】の「増大」の解釈は誤っていること
「増大」の概念には,単一かつ同一の特定の対象の指標(数量や程20
度)に限らず,同種の複数の客体のうち一つの客体の数量や程度に対
して,他の客体の数量や程度が増している状態も含まれると解される。
上記aのとおり,図4には,最高レベルよりも低い各レベル2,4,
8のそれぞれにおいて,レベルがより低くなるに従って,スケジュー
ル(アロケーション,検索)に使用可能なコントロールチャネル候補25
の割合,すなわち,アロケーションに使用可能なコントロール候補の
割合が,より大きくされていることが明確に示されており,最高レベ
ルよりも低い各レベル2,4,8のそれぞれにおいてアロケーション
に使用可能なコントロールチャネル候補の割合が最高レベル1の当該
割合と比較して大きくされていること,すなわち,数量や程度が増し
ていることから,図4に示された技術的思想ないし構成に関する【05
035】の記載は,「増大」の語義に合致する。
また,【0038】には「アロケーションセクション22は,比較的
低いレベルのツリー構造においてアロケーションをより増大する」と
の記載は,「より増大する」とあるから,【0035】との比較からも,
「低いレベルほどアロケーションを増大する」の意味に解釈されるが,10
【0035】と【0038】の「増大」を統一的に解釈するならば,
「アロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を増
大させること」と解釈されるべきである。すなわち,【0035】には
「図4を参照すると,比較的低いレベルは集合レベル2,4と8によ
り表されている。」との記載があることから,「比較的低いレベルのコ15
ントロールチャネルのアロケーション」に関する何の数量や程度が増
大しているかについては図4を参照することになる。そして,【002
6】にも記載されているとおり,図4では,比較的低いレベルのコン
トロールチャネルのアロケーションに関して,コントロールチャネル
候補の数が4:4:4:3であることが示されており,コントロール20
チャネル候補の数は増大していないが,アロケーションに使用可能な
コントロールチャネル候補の割合は最高レベル1の当該割合よりも増
大していることが理解できる。そうすると,「アロケーションセクショ
ン22は,比較的低いレベルのコントロールチャネルのアロケーショ
ンを増大することができる。」(【0035】)との記載は,比較的低い25
レベルにおいては「アロケーション」に使用可能な「コントロールチ
ャネル候補」の「割合」が最高レベル1の当該割合よりも「増大」し
ていると解釈されるべきであり,こうした解釈によって,同じアロケ
ーションセクション22について【0038】の記載と整合した解釈
をすることができる。
加えて,「アロケーションをより増大する」(【0038】)の「より5
増大」の「より」については,「増大」が単一かつ同一の特定の対象に
ついての指標(数量や程度)を指すものとすれば,増える前の状態と
増えた後の状態とを比較して「より」増えているという同義反復にな
るから,他の対象と比較して「増大」している場合についてのみ,「よ
り」という言葉が意味を持つことになるところ,「比較的低いレベル」10
の「アロケーション」に使用可能な「コントロールチャネル候補」の
「割合」と,それよりも高いレベルにおけるアロケーションに使用可
能な「コントロールチャネル候補」の「割合」とを比較して,「比較的
低いレベル」の「アロケーション」に使用可能な「コントロールチャ
ネル候補」の「割合」が「より」増大していると解釈することによっ15
て,「より」という言葉が意味を持つことになる。そうすると,【00
38】の「より増大する」との記載からも,最高レベルよりも低い各
レベル2,4,8のそれぞれにおいて,スケジュールに使用可能なコ
ントロールチャネル候補の割合,すなわち,アロケーションに使用可
能なコントロールチャネル候補の割合を,最高レベルの当該割合と比20
較して大きくすることを理解することができる。
したがって,本件審決の【0035】の「増大」に関する解釈は誤
りである。
c小括
以上のとおり,訂正事項2に係る技術的事項は,本件特許請求の範25
囲,明細書又は図面に開示されているから,訂正事項2に係る訂正は,
特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項
との関係において,新たな技術的事項を追加するものではなく,特許
法126条5項に適合するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
別紙1の1(4)ア(イ)のとおり,本件審決は,訂正事項2に係る訂正は,5
新たな技術的事項を導入するものであって,その結果,実質上特許請求
の範囲を拡張又は変更するものであるといえる旨判断した。
しかし,上記(ア)のとおり,訂正事項2に係る訂正は,新たな技術的事
項を導入するものではない。また,訂正事項2に係る訂正は,訂正前は,
無条件で比較的低いレベルのコントロールチャネルのアロケーションを10
可能としていたのを,訂正後は,使用可能なコントロールチャネル候補
の割合に関する条件付きでアロケーションを実行することを可能とする
ものであるから,本件訂正は,特許請求の範囲の減縮に該当するもので
ある。
したがって,訂正事項2に係る訂正は,実質上特許請求の範囲の拡張15
又は変更に当たるものではなく,特許法134条の2第9項で準用する
同法126条6項に適合するものであって,本件審決の上記判断は誤り
である。
(ウ)小括
以上によれば,訂正事項2は,特許法134条の2第9項で準用する20
126条5項及び6項に適合するものである。
イ訂正事項3について
(ア)新規事項について
別紙1の1(4)イ(ア)のとおり,本件審決は,訂正事項3は,請求項1
に係る発明に「ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザイク25
イップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネ
ル候補の割合がより大きくされる,」という技術的事項(訂正事項3に係
る技術的事項)を追加する訂正を含むものであるところ,本件明細書に
は,どのような観点に基づいて各レベルの使用可能なコントロールチャ
ネル候補の割合を制限した結果,図4に示される実施例に至ったのかは
記載も示唆もなく,【0038】,訂正前の請求項4及び図4の記載を見5
ても,使用可能なコントロールチャネル候補の「各レベル」における「割
合」という異なる対象についての大小関係に着目して,「ツリー構造にお
ける,より低いレベルほど,ユーザイクイップメントに対するアロケー
ションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合がより大きくされ
る,」とする上記技術的事項は読み取れないから,このような技術的事項10
を含む訂正事項3に係る訂正は,新規事項の追加に当たる旨判断した。
しかし,前記ア(ア)aのとおり,図4には,最高レベルよりも低い各レ
ベル2,4,8のそれぞれにおいて,スケジュール(アロケーション,
検索)に使用可能なコントロールチャネル候補が,最高レベル1の当該
割合と比較して大きくされていることが明確に示されており,こうした15
技術的構成は,本件明細書の【0026】,【0035】,【0038】,【0
040】の記載と整合するものであり,特に,【0038】における「よ
り増大」との記載は,「比較的低いレベル」の「アロケーション」に使用
可能な「コントロールチャネル候補」の「割合」と,それより高いレベ
ルにおけるアロケーションに使用可能な「コントロールチャネル候補」20
の「割合」とを比較して,「比較的低いレベル」の「アロケーション」に
使用可能な「コントロールチャネル候補」の「割合」が「より増大」し
ているという以外の解釈を読み取ることができない。
したがって,訂正事項3に含まれる「ツリー構造における,より低い
レベルほど,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可25
能なコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる」という技術
的事項は,図4,本件明細書の【0025】ないし【0027】,【00
35】,【0038】に記載されているから,上記の技術的構成が本件明
細書に記載も示唆もないとの本件審決の上記判断は誤りである。
以上のとおり,訂正事項3に係る技術的事項は,本件特許請求の範囲,
明細書又は図面に開示されているから,訂正事項3に係る訂正は,特許5
明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関
係において,新たな技術的事項を追加するものではなく,特許法126
条5項に適合するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
別紙1の1(4)イ(イ)のとおり,本件審決は,訂正事項3は,新たな技10
術的事項を導入するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を
拡張又は変更するものである旨判断した。
しかし,上記(ア)のとおり,訂正事項3に係る訂正は,新たな技術的事
項を導入するものではない。
したがって,訂正事項3に係る訂正は,実質上特許請求の範囲の拡張15
又は変更に当たるものではなく,特許法134条の2第9項で準用する
同法126条6項に適合するものであって,本件審決の上記判断は誤り
である。
(ウ)小括
以上によれば,訂正事項3は,特許法134条の2第9項で準用する20
同法126条5項及び6項に適合するものである。
ウ訂正事項8について
(ア)新規事項について
別紙1の1(5)ア(ア)のとおり,本件審決は,①訂正事項8は,ユーザ
イクイップメントにおいて検索されるべきコントロールチャネル候補の25
「各レベル」における「割合」に着目して,最高レベルよりも低い各レ
ベルにおける割合を,最高レベルにおける割合よりも大きくして検索を
実行することが可能となるという技術的事項(訂正事項8に係る技術的
事項)を追加するものであるところ,図4で示される実施例では,「検索」
が「比較的低いレベル」における「コントロールチャネルに対して制限
され」ることを許容していることは明らかであり,かつ,45個のコン5
トロールチャネル候補に対してどのような観点に基づいて制限した結果,
15個の「検索」されるべきコントロールチャネル候補に至ったのかに
ついては,特許明細書等には記載も示唆もなく,少なくとも,訂正事項
8に係る技術的事項のように,検索されるべきコントロールチャネル候
補の「各レベル」の「割合」に着目して検索されるべき候補を制限する10
ことは,新規事項の追加に当たる,②本件明細書の【0040】におけ
る「サーチセクション12は,比較的低いレベルのコントロールチャネ
ルに対する検索を増大することができる。」との記載は,「検索」に関す
る何の数量や程度を何に対して「増大すること」を意味するのか明らか
ではないが,訂正事項8に係る技術的事項は,検索されるべきコントロ15
ールチャネル候補の「各レベル」における「割合」に着目した上で,最
高レベルよりも低い各レベルにおける割合と最高レベルにおける割合と
いう異なる対象についての大小関係を特定したものであって,少なくと
も上記記載と対応しないから,このような技術的事項を追加する訂正は,
新規事項の追加に当たる旨判断したが,以下のとおり誤りである。20
a訂正事項8に係る技術的事項は本件明細書に記載された事項である
こと
図4には,最高レベルよりも低い各レベル2,4,8のそれぞれに
おいて,スケジュール(アロケーション,検索)に使用可能なコント
ロールチャネル候補の割合,すなわち,検索されるべきコントロール25
チャネル候補の割合が,最高レベル1の当該割合と比較して大きくさ
れていることが明確に示されており,こうした技術的構成は,【002
6】,【0035】,【0038】,【0040】の記載に整合するもので
ある。
したがって,訂正事項8に係る技術的事項は,図4,【0025】な
いし【0027】,【0035】,【0038】,【0040】に記載され5
ているから,上記の技術的構成が本件明細書に記載も示唆もないとの
本件審決の上記判断は誤りである。
b本件審決の【0040】の「増大」の解釈は誤っていること
前記ア(ア)bのとおり,「増大」の概念には,単一かつ同一の特定の
対象の指標(数量や程度)に限らず,同種の複数の客体のうち一つの10
客体の数量や程度に対して,他の客体の数量や程度が増している状態
も含まれると解されるところ,上記aのとおり,図4には,最高レベ
ルよりも低い各レベル2,4,8のそれぞれにおいて,スケジュール
(アロケーション,検索)に使用可能なコントロールチャネル候補の
割合,すなわち,検索されるべきコントロールチャネル候補の割合が15
最高レベル1の当該割合と比較して大きくされていることが明確に示
されており,こうした技術的構成ないし思想に関連する【0040】
の記載も,最高レベルよりも低い各レベル2,4,8のそれぞれにお
いて,検索されるべきコントロールチャネル候補の割合が,最高レベ
ルの当該割合と比較して大きくされていること,すなわち,数量や程20
度を増すようにされていることが明確に述べられているから,「増大」
の語義と完全に合致する。
また,【0038】の「アロケーションセクション22は,比較的低
いレベルのツリー構造においてアロケーションをより増大する」との
記載は,【0035】との記載の比較からも,「低いレベルほどアロケ25
ーションを増大する」との意味に解されるが,【0035】,【0040】
と【0038】の「増大」の意味を統一的に解釈すると,【0040】
は,「検索されるべきコントロールチャネル候補の割合を増大させる」
と解釈されるべきである。すなわち,前記ア(ア)bのとおり,【003
5】の記載から図4及び【0026】を参照すると,図4では,「比較
的低いレベルのコントロールチャネルに対する検索」に関して,「コン5
トロールチャネル候補」の「数」が4:4:4:3であることが明記
されているが,「コントロールチャネル候補」の数自体は増大しておら
ず,図4,【0035】,【0040】の記載からは,「検索」されるべ
き「コントロールチャネル候補」の「割合」が最高レベル1の当該割
合よりも「増大」していることが理解でき,【0040】の記載は,比10
較的低いレベルにおいては,「検索」されるべき「コントロールチャネ
ル候補」の「割合」が最高レベル1の当該割合よりも「増大している」
と解釈されるべきである。
加えて,前記ア(ア)bのとおり,【0038】の「より増大」の記載
は,「比較的低いレベル」の「アロケーション」に使用可能な「コント15
ロールチャネル候補」の「割合」と,それより高いレベルにおけるア
ロケーションに使用可能な「コントロールチャネル候補」の「割合」
を比較して「比較的低いレベル」の「アロケーション」に使用可能な
「コントロールチャネル候補」の「割合」が「より増大」していると
解釈されるべきであり,こうした【0038】の記載と比較すること20
によって,【0040】の記載から,訂正事項8に係る技術的事項を読
み取ることができる。
したがって,本件審決の【0040】の「増大」に関する解釈は誤
りである。
c小括25
以上のとおり,訂正事項8に係る技術的事項は,本件特許請求の範
囲,明細書又は図面に開示されているから,訂正事項8に係る訂正は,
特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項
との関係において,新たな技術的事項を追加するものではなく,特許
法126条5項に適合するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について5
別紙1の1(5)ア(イ)のとおり,本件審決は,訂正事項8に係る訂正は,
新たな技術的事項を導入するものであって,その結果,実質上特許請求
の範囲を拡張又は変更するものといえる旨判断した。
しかし,上記(ア)のとおり,訂正事項8に係る訂正は,新規事項を追加
するものではなく,また,訂正前の請求項5に「それにより,比較的低10
いレベルのコントロールチャネルの検索が可能となり,」とあるのを訂正
後の請求項5の「それにより,前記最高レベルよりも比較的低い各レベ
ルにおける検索されるべきコントロールチャネル候補の割合を,前記最
高レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル候補の割合より
も大きくして検索を実行することが可能となり,」に訂正するものであり,15
訂正前は無条件で比較的低いレベルのコントロールチャネルの検索が可
能としていたのを,訂正後は検索されるべきコントロールチャネル候補
の割合に関する条件付きで検索を実行することを可能とするものである
から,特許請求の範囲の減縮に該当する。
したがって,訂正事項8に係る訂正は,実質上特許請求の範囲の拡張20
又は変更に当たるものではなく,特許法134条の2第9項で準用する
同法126条6項に適合するものであって,本件審決の上記判断は誤り
である。
(ウ)小括
以上によれば,訂正事項8は,特許法134条の2第9項で準用する25
同法126条5項及び6項に適合するものである。
エ訂正事項9について
(ア)新規事項について
別紙1の1(5)イ(ア)のとおり,本件審決は,訂正事項9に係る訂正は,
請求項5に係る発明に「ツリー構造における,より低いレベルほど,検
索されるべきコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる,」と5
の技術的事項(訂正事項9に係る技術的事項)を追加する訂正を含むも
のであるところ,別紙1の1(5)ア(ア)のとおり,図4に示される実施例
からは,訂正事項9に係る技術的事項の前提となる,検索されるべきコ
ントロールチャネル候補の「各レベル」における「割合」に着目して,
検索をコントロールに対して制限することは読み取れず,かつ,【00310
9】,【0040】,訂正前の請求項4の記載及び図4をみても,検索され
るべきコントロールチャネル候補の「各レベル」における「割合」とい
う異なる大小関係に着目して,訂正事項9に係る技術的事項を読み取る
ことができないから,訂正事項9に係る技術的事項を含む訂正事項9に
係る訂正は,新規事項の追加に当たる旨判断した。15
しかし,前記ウ(ア)aのとおり,図4には,最高レベルよりも低い各レ
ベル2,4,8のそれぞれにおいて,スケジュール(アロケーション,
検索)に使用可能なコントロールチャネル候補の割合,すなわち,検索
されるべきコントロールチャネル候補の割合が,最高レベル1の当該割
合と比較して大きくされていることが明確に示されており,こうした技20
術的構成は,【0026】,【0035】,【0038】,【0040】の記載
に整合するものである。そして,アロケーションに使用可能なコントロ
ールチャネル候補は,検索の際には検索されるべきコントロールチャネ
ル候補となるのであるから,レベルが低くなるに従って,アロケーショ
ンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合がより大きくされると25
いう技術的構成が開示されていることは,レベルがより低くなるに従っ
て検索されるべきコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる
という技術的構成が開示されていることにもなる。
したがって,訂正事項9に係る技術的事項は,図4,【0025】ない
し【0027】,【0035】,【0038】に記載されているから,上記
の技術的構成が本件明細書に記載も示唆もないとの本件審決の上記判断5
は誤りである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
別紙1の1(5)イ(イ)のとおり,本件審決は,訂正事項9は,新たな技
術的事項を導入するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を
拡張又は変更するものといえる旨判断した。10
しかし,上記(ア)のとおり,訂正事項9に係る訂正は,新たな技術的事
項を導入するものではないから,本件審決の上記判断は誤りである。
(ウ)小括
以上によれば,訂正事項9は,特許法134条の2第9項で準用する
同法126条5項及び6項に適合するものである。15
オ訂正事項11,14及び16に係る明細書の訂正事項について
(ア)訂正事項11について
別紙1の1(6)アのとおり,本件審決は,訂正事項11に係る訂正は,
請求項1に係る訂正事項2に対応する訂正前の【0035】の記載を訂
正するものであるところ,訂正事項2に係る訂正が新規事項の追加に当20
たることを理由として,訂正事項11に係る訂正も新規事項の追加に当
たり,かつ,特許請求の範囲を拡張又は変更するものといえる旨判断し
た。
しかし,訂正事項2に係る訂正が新規事項の追加に当たるものではな
いことは前記ア(ア)のとおりであるから,本件審決の上記判断も誤りで25
ある。
したがって,訂正事項11に係る訂正は,特許法134条の2第9項
で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項14について
別紙1の1(6)イのとおり,本件審決は,訂正事項14に係る訂正は,
請求項1に係る訂正事項3及び請求項5に係る訂正事項9に対応する訂5
正前の【0038】の記載を訂正するものであるところ,訂正事項3に
係る訂正が新規事項の追加に当たることを理由として,訂正事項14に
係る訂正も新規事項の追加に当たり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡
張又は変更するといえる旨判断した。
しかし,訂正事項3に係る訂正が新規事項の追加に当たるものではな10
いことは前記イ(ア)のとおりであるから,本件審決の上記判断も誤りで
ある。
したがって,訂正事項14に係る訂正は,特許法134条の2第9項
で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項16について15
別紙1の1(6)ウのとおり,本件審決は,訂正事項16に係る訂正は,
請求項5に係る訂正事項8に対応する訂正前の【0040】の記載を訂
正するものであるところ,訂正事項8に係る訂正が新規事項の追加に当
たることを理由として,訂正事項16に係る訂正も新規事項の追加に当
たり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するといえる旨判断20
した。
しかし,訂正事項8に係る訂正が新規事項の追加に当たるものではな
いことは前記ウ(ア)のとおりであるから,本件審決の上記判断も誤りで
ある。
したがって,訂正事項16に係る訂正は,特許法134条の2第9項25
で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
カまとめ
以上によれば,請求項1ないし7及び14ないし16からなる一群の請
求項における訂正事項2,3,8,9,11,14及び16に係る訂正の
請求を認めなかった本件審決の判断は誤りであるから,取り消されるべき
である。5
(2)被告の主張
ア訂正事項1ないし3について
(ア)新規事項について
a訂正事項2に係る技術的事項及び訂正事項3に係る技術的事項は新
規事項の追加に当たること10
原告は,前記(1)ア(ア)a及びイ(ア)のとおり主張するが,【0035】
には,「アロケーションセクション22は,比較的低いレベルのコント
ロールチャネルのアロケーションを増大することができる」ことが記
載されているにすぎない。また,本件明細書の【0025】,【002
6】及び図4の記載によると,図4は,種々の集合可能性に対する潜15
在的コントロールチャネル候補を示しており,白色のエリアに対応す
る「コントロールチャネル候補」だけがスケジュールに使用可能であ
るという制限を受けることが記載されているが,コントロールチャネ
ルを実際に割り当てること,すなわち,「アロケーション」については
触れられていない。そして,【0025】,【0026】及び図4に記載20
の「コントロールチャネル候補」の制限と,【0035】の「アロケー
ション」の増大は異なる概念であるから,「コントロールチャネル候補」
の制限について記載された【0025】,【0026】及び図4を参酌
して,「アロケーション」の増大について言及する【0035】につい
て「最も多いコントロールチャネル候補の数を有する最高レベルのコ25
ントロールチャネル候補の割合を制限する」ことを提案するものであ
る旨の原告の上記主張は,「コントロールチャネル候補」の制限と「ア
ロケーションの増大」とを混同するものである。
また,【0004】,【0007】,【0025】,【0026】の記載に
鑑みると,本件発明は,その解決課題として,使用可能なコントロー
ルチャネル候補の個数の低減に着目しているものであるが,こうした5
解決課題は,コントロールチャネル候補に対して「各レベル」におけ
る「割合」に着目して制限するという技術思想とは異なるものである。
さらに,【0007】の記載からすると,本件発明の解決課題として
は,使用可能なコントロールチャネル候補の個数の低減のみならず,
スケジューリングフレキシビリティを維持することにもあるところ,10
仮に,コントロールチャネル候補の使用を制限する方法,すなわち,
「より多くの個数のコントロールチャネル候補を有する,より高いレ
ベルにおいて,より多くの割合のコントロールチャネル候補の使用を
制限する」手法を採用した場合には,最高レベルにおいて使用可能な
コントロールチャネル候補の個数が比較的低いレベルの使用可能なコ15
ントロールチャネル候補の数よりも少なくなってしまい,かえってス
ケジューリングフレキシビリティが低減する状況が発生し得るから,
本件発明の課題を解決することができない。
したがって,本件発明の解決課題として,コントロールチャネル候
補に対して「各レベル」における「割合」に着目して制限することは20
開示されていないから,原告の上記主張は理由がなく,訂正事項2に
係る技術的事項及び訂正事項3に係る技術的事項を追加する訂正は,
新規事項の追加に当たるといえる。
b本件審決の【0035】,【0038】の「増大」の解釈に誤りはな
いこと25
「増大」とは,「特定の対象についての指標(数量や程度)」が,あ
る状態に対して「増大する」(増えて大きくなること,増すこと)こと
を意味するところ,本件明細書には,「アロケーションセクション22
は,比較的低いレベルのコントロールチャネルのアロケーションを増
大することができる。」(【0035】),「アロケーションセクション2
2は,比較的低いレベルのツリー構造においてアロケーションをより5
増大する。」(【0038】)との記載があるが,「アロケーション」に関
して,何を,何に対して「(より)増大する」のか明らかではないから,
「増大」については,上記のとおり通常の意味である「増えて大きく
なること,数量や程度を増すこと」と解するのが妥当である。
この点,原告は,前記(1)ア(ア)bのとおり,【0035】の記載は,10
比較的低いレベルにおいては「アロケーション」に使用可能なコント
ロールチャネル候補の「割合」が最高レベル1の当該割合よりも「増
大」していると解釈されるべきであり,こうした解釈によって【00
38】の記載と整合した解釈をすることができる旨主張するが,【00
35】と【0038】の「増大」の意味が明らかではないにもかかわ15
らず,「増大」の一般的な意味とは異なる解釈をして「アロケーション
に使用可能なコントロールチャネル候補の割合を増大させること」と
解釈する根拠はない。また,原告は,「より増大」の「より」は,「増
大」が単一かつ同一の特定の対象についての指標に限って適用される
とすれば,増える前の状態と増えた後の状態を比較して「より」増え20
ているという単なる同義反復になってしまうから,他の対象と比較し
て「増大」している場合のみ「より」という言葉が意味を持つとも主
張するが,【0038】の「より増大する。」とは,文字どおりに「さ
らに増大する」との意味で解釈するのが自然であって,単に特定対象
の数量や程度の増加量や増加幅が拡大することを示しているにすぎな25
いから,この点に関する原告の主張も理由がない。
そうすると,「使用可能なコントロールチャネル候補」の「各レベル」
における「割合」に着目した上で,「前記最高レベルよりも低い各レベ
ルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用
可能なコントロールチャネル候補の割合」と,「前記最高レベルにおけ
る,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコ5
ントロールチャネル候補の割合」という異なる対象についての大小関
係を特定することは,【0035】の記載と整合しない旨の本件審決の
判断に誤りはない。
c小括
以上によれば,訂正事項2に係る技術的事項及び訂正事項3に係る10
技術的事項を含む訂正事項2及び3に係る訂正は,新たな技術事項を
導入するものといえる。
(イ)実質上特許請求の範囲を変更又は拡張するものであること
前記(ア)のとおり,訂正事項2及び3は,新たな技術的事項を導入す
るものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであ15
ることも明らかであるが,以下の点からも,訂正事項1及び2は,実質
上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
a訂正事項1は,請求項1の「…コントロールチャネルのアロケーシ
ョンを制限する・・・」との記載を「コントロールチャネル候補を・・・制
限して・・・」に訂正するものであり,制限する対象を「コントロールチ20
ャネルのアロケーション」から「コントロールチャネル候補」に変更
するものである。「コントロールチャネルのアロケーション」は,実際
にコントロールチャネルをアロケートする(割り当てる)処理であり,
「コントロールチャネル候補」とは,この割り当て処理に使用される
可能性があるコントロールチャネルである。このように,訂正事項125
は,制限する対象を実際の割当処理からその割当処理の候補に変更す
るものであり,実際の割当処理を「制限」することと,割当処理の候
補を「制限」することとは,技術的内容が異なるから,訂正事項1は,
特許請求の範囲の減縮等に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張又
は変更するものである。
b訂正事項2は,請求項1の「コントロールチャネルの…アロケーシ5
ョンが可能となり・・・」との記載を「…前記最高レベルよりも低い各レ
ベルにおける・・アロケーションに使用可能なコントロールチャネル候
補の割合を,前記最高レベルにおける・・・アロケーションに使用可能な
コントロールチャネル候補の割合よりも大きくして…」に訂正するも
のであるところ,上記aのとおり,アロケーション(割り当て)が可10
能となることと,割当処理の候補を大きくすることとは,技術的内容
は異なるから,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮等には該当せず,
実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(ウ)小括
以上によれば,訂正事項2及び3は新たな技術的事項を導入するもの15
であり,また,訂正事項1及び2は実質上特許請求の範囲を拡張又は変
更するものである。
イ訂正事項6ないし9について
訂正事項6ないし9は,請求項5に係る訂正事項であり,請求項5は,
端末(UE)のような受信機における方法に関する発明を規定する。20
したがって,前記アのとおり,基地局の送信機における方法に関する発
明を規定する請求項1に関する議論が同様に当てはまるから,訂正事項6
ないし9は,新たな技術的事項を導入するものであり,かつ,実質上特許
請求の範囲を拡張又は変更するものである。
ウ訂正事項11,14及び16について25
(ア)訂正事項11に係る訂正は,請求項1に係る訂正事項2に対応して
【0035】の記載を訂正するものであって,前記アのとおり,新たな
技術的事項を導入するものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張
又は変更するものである。
(イ)訂正事項14に係る訂正は,請求項1に係る訂正事項3及び請求項
5に係る訂正事項9に関連する【0038】の記載を訂正するものであ5
って,前記ア及びイのとおり,新たな技術的事項を導入するものであり,
かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(ウ)訂正事項16に係る訂正は,請求項5に係る訂正事項8に対応して
【0040】の記載を訂正するものであって,前記イのとおり,新たな
技術的事項を導入するものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張10
又は変更するものである。
エまとめ
以上によれば,請求項1ないし7及び14ないし16からなる一群の請
求項における訂正事項1ないし3,6ないし9,11,14及び16は,
新たな技術的事項を導入するものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を15
拡張するものである。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
2請求項8ないし10からなる一群の請求項における訂正事項22,23,1
1,14及び16に係る訂正事項の判断の誤り
(1)原告の主張20
ア訂正事項22について
(ア)新規事項について
訂正前の請求項8の「それにより,比較的低いレベルのコントロール
チャネルのアロケーションが可能となり,」との記載を,訂正後の請求項
8の「それにより,前記最高レベルよりも低い各レベルにおける,ユー25
ザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロール
チャネル候補の割合を,前記最高レベルにおける,ユーザイクイップメ
ントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の
割合よりも大きくして,ユーザイクイップメントに対するアロケーショ
ンを実行することが可能となり,」との記載に訂正することは,前記1(1)
ア(ア)と同様の理由により,特許明細書等の全ての記載を総合すること5
により導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入
するものではない。
したがって,訂正事項22に係る訂正は,特許法134条の2第9項
で準用する同法126条5項の規定に適合しないものではない。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について10
本件審決は,訂正事項22に係る訂正は新たな技術的事項を導入する
ものであるから,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する
ものといえる旨判断した。
しかし,訂正事項22に係る訂正が新たな技術的事項を導入するもの
ではないことは上記(ア)のとおりであるから,本件審決の上記判断は誤15
りである。
したがって,訂正事項22に係る訂正は,実質上特許請求の範囲を拡
張又は変更するものではなく,特許法134条の2第9項で準用する同
法126条6項の規定に適合しないものではない。
イ訂正事項23について20
(ア)新規事項について
別紙1の2(3)イ(ア)のとおり,本件審決は,訂正事項23に係る訂正
は,訂正事項3に係る訂正が新規事項の追加に当たることを理由として,
新規事項に当たる旨判断した。
しかし,訂正事項3に係る訂正が新規事項の追加に当たるものではな25
いことは前記1(1)イのとおりであるから,本件審決の上記判断は誤りで
ある。
したがって,訂正事項23に係る訂正は,特許法134条の2第9項
で準用する同法126条5項の規定に適合しないものではない。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
別紙1の2(3)イ(イ)のとおり,本件審決は,訂正事項23が新規事項5
の追加に当たることを理由として,その結果,訂正事項23に係る訂正
が実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものといえる旨判断した。
しかし,訂正事項23が新規事項の追加に当たるものではないことは
上記(ア)のとおりであるから,本件審決の上記判断は誤りである。
したがって,訂正事項23に係る訂正は,特許法134条の2第9項10
で準用する同法126条6項の規定に適合しないものではない。
ウ訂正事項11,14及び16について
訂正事項11は,請求項8に係る訂正事項22に対応して本件明細書の
【0035】の記載を訂正するものであり,訂正事項14に係る訂正は,
請求項8に係る訂正事項23に対応する本件明細書の【0038】の記載15
を訂正するものであり,訂正事項16に係る訂正は,請求項8に係る訂正
事項22に関連する訂正前の本件明細書の【0040】の記載を訂正する
ものであるところ,前記1(1)オと同様の理由により,いずれも明細書等の
記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな
技術的事項を導入するものではなく,また,特許請求の範囲を実質的に拡20
張又は変更するものでもないから,特許法134条の2第9項で準用する
同法126条5項及び6項の規定に適合しないものではない。
エまとめ
以上によれば,請求項8ないし10からなる一群の請求項における訂正
事項22,23,11,14及び16に係る訂正の請求を認めなかった本25
件審決の判断は誤りであるから,取り消されるべきである。
(2)被告の主張
ア訂正事項20ないし23について
訂正事項20ないし23は,請求項8に係る訂正事項であるところ,請
求項8は,基地局のような送信機に関する発明を規定するものである。
そうすると,前記1(2)アのとおり,基地局のような送信機における方法5
に関する発明を規定する請求項1に関する議論が当てはまるから,請求項
8に係る訂正事項20ないし23は,新たな技術的事項を導入するもので
あり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
イ訂正事項11,14及び16について
いずれの訂正についても,前記1(2)ウ(ア)ないし(ウ)と同様の議論が当10
てはまるから,訂正事項11,14及び16は,新たな技術的事項を導入
するものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を変更又は拡張するもので
ある。
ウまとめ
以上によれば,請求項8ないし10からなる一群の請求項における訂正15
事項20ないし23,11,14及び16は,新たな技術的事項を導入す
るものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであ
る。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
3請求項11ないし13からなる一群の請求項における訂正事項26,27,20
11,14及び16に係る訂正事項の判断の誤り
(1)原告の主張
ア訂正事項26について
訂正事項26に係る訂正は,前記1(1)ウ(ア)と同様の理由により,明細
書等の記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において,新25
たな技術的事項を導入するものではなく,また,特許請求の範囲を実質的
に拡張又は変更するものでもないから,訂正事項26は,特許法134条
の2第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合しないも
のではない。
イ訂正事項27について
訂正事項27に係る訂正は,前記1(1)エ(ア)と同様の理由により,明細5
書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,
新たな技術的事項を導入するものではなく,また,特許請求の範囲を実質
的に拡張又は変更するものではないから,訂正事項27は,特許法134
条の2第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合しない
ものではない。10
ウ訂正事項11,14及び16について
訂正事項11は,請求項11に係る訂正事項26に関連する本件明細書
の【0035】の記載を訂正するものであり,訂正事項14に係る訂正は,
請求項11に係る訂正事項27に関連する本件明細書の【0038】の記
載を訂正するものであり,訂正事項16に係る訂正は,請求項11に係る15
訂正事項26に対応する訂正前の本件明細書の【0040】の記載を訂正
するものであるところ,前記1(1)オと同様の理由により,いずれも明細書
等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新
たな技術的事項を導入するものではなく,また,特許請求の範囲を実質的
に拡張又は変更するものでもないから,特許法134条の2第9項で準用20
する同法126条5項及び6項の規定に適合しないものではない。
エまとめ
以上によれば,請求項11ないし13からなる一群の請求項における訂
正事項26,27,11,14及び16に係る訂正の請求を認めなかった
本件審決の判断は誤りであるから,取り消されるべきである。25
(2)被告の主張
ア訂正事項24ないし27について
訂正事項24ないし27は,請求項11に係る訂正事項であり,請求項
11は,端末(UE)のような受信機に関する発明を規定するものである。
そうすると,UEの受信機における方法に関する発明を規定する請求項
5に関する議論が同様に当てはまるから,訂正事項24ないし27は,新5
たな技術的事項を導入するものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を変
更又は拡張するものである。
イ訂正事項11,14及び16について
いずれの訂正についても,前記1(2)ウ(ア)ないし(ウ)と同様の議論が当
てはまるから,訂正事項11,14及び16は,新たな技術的事項を導入10
するものであり,かつ,実質的に特許請求の範囲を変更又は拡張するもの
である。
ウまとめ
以上によれば,請求項11ないし13からなる一群の請求項における訂
正事項24ないし27,11,14及び16は,新たな技術的事項を導入15
するものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を変更又は拡張するもので
ある。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
第4当裁判所の判断
1本件明細書の開示事項について20
本件明細書(甲3)には,別紙2のとおりの記載があり,この記載事項によ
れば,本件明細書には,次の事項が開示されているものと認められる。
(1)「本発明」は,通信ネットワークにおけるコントロールチャネル,とりわ
け3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)LTE(LongTerm
Evolution)ネットワークシステムにおけるコントロールチャネルアロケーシ25
ョン及びデコーディングに関するものであり,「本発明」の課題は,統合され
たコントロールチャネルに対するツリー検索が系統的に低減されるように構
成することにある(【0001】,【0004】)。
(2)「本発明」は,コントロールチャネルのデコーディング複雑性を低減する
方法及び装置を提供し,また,コンピュータプログラム製品として実現され
るものであり,「本発明」によれば,統合されたコントロールチャネルに対す5
るツリー検索が系統的に低減され,これにより,UE(ユーザイクイップメ
ント)側でのデコーディング試行数が格段に低減される一方で,eNB
(evolvedNodeB)でのほとんどのスケジューリングフレキシビリティが維
持されるほか,UEは,ツリー構造を使用して,電力を節約するためにデコ
ーディング複雑性を低減するなどの発明の効果が得られる(【0006】,【010
007】,【0009】)。
2請求項1ないし7及び14ないし16からなる一群の請求項に係る訂正事項
について
(1)訂正事項1ないし3について
ア新規事項について15
特許無効審判における訂正の請求について,特許法134条の2第9項
が準用する同法126条5項は,「第1項の明細書,特許請求の範囲又は図
面の訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載し
た事項の範囲内においてしなければならない。」と規定するところ,同項の
明細書又は図面に記載した事項とは,当業者によって,明細書又は図面の20
全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,訂正がこの
ようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導
入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項
の範囲内においてするものということができると解される(知財高裁平成
20年5月30日判決・判例時報2009号47頁参照)。以下,これを前25
提に判断する。
(ア)訂正事項2は,訂正前の請求項1の「それにより,比較的低いレベル
のコントロールチャネルのアロケーションが可能となり,」とあるのを,
「それにより,前記最高レベルよりも低い各レベルにおける,ユーザイ
クイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャ
ネル候補の割合を,前記最高レベルにおける,ユーザイクイップメント5
に対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合
よりも大きくして,ユーザイクイップメントに対するアロケーションを
実行することが可能となり,」に訂正するものであり,訂正後の請求項1
は,訂正事項2によって,ユーザイクイップメントに対するアロケーシ
ョンに「使用可能なコントロールチャネル候補に対して「各レベル」に10
おける「割合」に着目し,最高レベルよりも低い各レベルにおける割合
を,最高レベルにおける割合よりも大きくして,アロケーションを実行
すること」(訂正事項2に係る技術的事項)を発明特定事項として含むも
のである。
また,訂正事項3は,訂正前の請求項1の「比較的低いレベルのコン15
トロールチャネルは,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー構造
のノードによって表される,」とあるのを,「前記最高レベルよりも低い
各レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高レベルより
も低いレベルにあるツリー構造のノードによって表され,ツリー構造に
おける,より低いレベルほど,ユーザイクイップメントに対するアロケ20
ーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合がより大きくさ
れる,」に訂正するものであり,訂正後の請求項1は,訂正事項3によっ
て,「ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザイクイップメン
トに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割
合がより大きくされる,」という技術的事項(訂正事項3に係る技術的事25
項)を発明特定事項として含むものである。
そこで,訂正事項2に係る技術的事項及び訂正事項3に係る技術的事
項が本件明細書の記載及び図面の全ての記載を総合することにより導か
れる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものと
いえるかについて検討する。
(イ)訂正事項2及び3に関して,本件明細書には,「図4は,図3からの5
平坦なツリー構造の一種を示す。図4は,種々の集合可能性(白と灰色
エリアの両方)に対する潜在的コントロールチャネル候補を示す。図4
から分かるように,全部で24のコントロールチャネルエレメント(C
CE)がある。・・・集合レベル1では24のコントロールチャネルエレメ
ントが,それぞれ一つのコントロールチャネルを形成する。集合レベル10
2では2つのコントロールチャネルエレメントが一つのコントロール
チャネルにまとめられる。集合レベル4では,4つのコントロールチャ
ネルエレメントが一つのコントロールチャネルにまとめられ,集合レベ
ル8では,8つのコントロールチャネルエレメントが一つコントロール
チャネルにまとめられる。」(【0025】),「…図4の白と灰色のエリア15
により示されたコントロールチャネル構造は,白の集合コントロールチ
ャネル候補だけがスケジュールに使用可能であるという制限を受ける。
この制限により,デコーディング試行の数は15に低減される(灰色エ
リアはコントロールチャネル候補の検索のためにデコードされない)。
このことは係数3の低減に相当する。言い替えると,4つのコントロー20
ルチャネル候補が集合レベル1にあり,4つのコントロールチャネル候
補が集合レベル2に,4つのコントロールチャネル候補が集合レベル4
に,そして3つのコントロールチャネル候補が集合レベル8にある。」
(【0026】),「上記の制限をツリー構造に課すことにより,スケジュ
ールフレキシビリティは,以下の論点に基づきさほど低減しない。・ユー25
ザイクイップメントが集合レベル1だけを要求するコントロールチャ
ネルをスケジュールするeNBに近接するユーザエクイップメントが
多数存在すれば,電力の低減された集合レベル2エレメントを,電力平
衡を実行する可能性があるので,より多くのユーザを持つために使用す
ることができる。図4に示された例では,有利に条件付けられた9つの
ユーザをこのアプローチを使用してスケジュールすることができる。言5
い替えると,集合レベル1では4つのコントロールチャネルを,集合レ
ベル2では2つのコントロールチャネルを,集合レベル4では2つのコ
ントロールチャネルを,そして集合レベル8では1つのコントロールチ
ャネルをスケジュールすることができる。・・・・集合レベル間の差は係数
2であるので,電力平衡を使用する場合には,集合と電力の相互間であ10
る程度のトレードフレキシビリティが存在する。」(【0027】)との記
載があり,図4は,以下のとおりである。
(ウ)上記の本件明細書の記載等からすると,本件明細書には,図4で示
された24のコントロールチャネルエレメントについて,最高レベルの15
集合レベル1ではそれぞれが1つのコントロールチャネル(24個)を
形成し,比較的低いレベルである集合レベル2では2つのコントロール
チャネルエレメントが1つのコントロールチャネル(12個)に,集合
レベル4では4つのコントロールチャネルエレメントが1つのコント
ロールチャネル(6個)に,集合レベル8では8つのコントロールチャ20
ネルエレメントが1つのコントロールチャネル(3個)に,それぞれま
とめられた上で,スケジュールに使用可能なコントロールチャネル候補
は,集合レベル1は4つ,集合レベル2は4つ,集合レベル4は4つ,
集合レベル8は3つに制限され,この制限によってデコーディング試行
の数は15に低減されること,このような制限をツリー構造に課すこと5
により,図4の例では,集合レベル1では4つのコントロールチャネル
を,集合レベル2では2つのコントロールチャネルを,集合レベル4で
は2つのコントロールチャネルを,集合レベル8では1つのコントロー
ルチャネルをスケジュールすることができることが開示されている。
また,本件明細書の上記記載に加えて,図4を総合すると,スケジュ10
ールに使用可能なコントロールチャネル候補の制限をツリー構造によ
って課される割合は,図4の実施例では,最高レベルの集合レベル1で
は,24個のコントロールチャネルを4つの候補に(候補の割合6分の
1),比較的低いレベルの集合レベル2では12個のコントロールチャ
ネルを4つの候補に(候補の割合3分の1),集合レベル4では6個のコ15
ントロールチャネルを4つの候補に(候補の割合3分の2)それぞれ制
限し,集合レベル8の3個のコントロールチャネルを制限しない(候補
の割合1分の1)ことが開示されているに等しい事項といえる。
そうすると,本件明細書及び図面には,ユーザイクイップメントに対
するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の各レベ20
ルにおける割合に着目し,最高レベルよりも低い2,4,8の各レベル
におけるユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能
なコントロールチャネル候補の割合は,最高レベルにおける,ユーザイ
クイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチ
ャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイップメントに対する25
アロケーションを含むスケジュールをすることが開示され,又は開示さ
れているに等しい事項であるということができる。また,【0025】の
記載からすると,最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチャネ
ルは,ツリー構造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるノードによ
って表されていることが開示されていることから,この開示事項に上記
事項と合わせると,ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザ5
イクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロール
チャネル候補の割合がより大きくされることも開示され,又は開示され
ているに等しい事項であるといえる。
したがって,訂正事項2に係る技術的事項及び訂正事項3に係る技術
的事項は,いずれも本件明細書の記載及び図面の全ての記載を総合する10
ことにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を
導入するものであるとはいえないから,訂正事項2及び3は,新規事項
の追加に当たるものとはいえない。
イ特許請求の範囲の拡張又は変更について
願書に添付した特許請求の範囲の訂正をすべき旨の審決が確定したとき15
は,訂正の効果は出願時まで遡及する(特許法128条)ところ,特許請
求の範囲の記載に基づいて特許発明の技術的範囲が定められる特許権の
効力は第三者に及ぶものであることに鑑みれば,同法126条6項の「実
質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するもの」であるかは,訂正の前
後の特許請求の範囲の記載を基準として判断されるべきであり,こうした20
解釈によって,特許請求の範囲の記載の訂正によって第三者に不測の不利
益を与えることを防止することができる。以下,これを前提にして判断す
る。
(ア)本件訂正前の請求項1は,「前記アロケーションは,最高レベルのコ
ントロールチャネルのアロケーションを制限することによって実行され,25
前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の最高レベルに
あるツリー構造のノードによって表され,それにより,比較的低いレベ
ルのコントロールチャネルのアロケーションが可能となり,比較的低い
レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の比較的低いレベルにあ
るツリー構造のノードによって表される,方法」との発明特定事項を含
むものであり,この発明特定事項からは,ツリー構造のノードによって5
表されるコントロールチャネルのアロケーションは,最高レベルにある
コントロールチャネルのアロケーションを制限することによって実行さ
れ,それにより比較的低いレベルのコントロールチャネルのアロケーシ
ョンが可能となることと理解される。
これに対し,本件訂正後の請求項1は,訂正事項1ないし3によって,10
「ユーザイクイップメントに対するアロケーションは,前記最高レベル
における,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能
なコントロールチャネル候補を部分的に制限して実行され,前記最高レ
ベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高レベルにあるツ
リー構造のノードによって表され,それにより,前記最高レベルよりも15
低い各レベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーショ
ンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を,前記最高レベルに
おける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能な
コントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイップ
メントに対するアロケーションを実行することが可能となり,前記最高20
レベルよりも低い各レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前
記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造のノードによって表さ
れ,ツリー構造における,より低いレベルほど,ユーザイクイップメン
トに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割
合がより大きくされる,方法」との発明特定事項を含むものであり,こ25
の発明特定事項からは,ユーザイクイップメントに対するアロケーショ
ンは,最高レベルにおけるユーザイクイップメントに対するアロケーシ
ョンに使用可能なコントロールチャネル候補を部分的に制限して実行さ
れ,それにより,最高レベルよりも低い各レベルのユーザイクイップメ
ントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の
割合を最高レベルにおけるユーザイクイップメントに対するアロケーシ5
ョンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合より大きくして,ユ
ーザイクイップメントに対するアロケーションを実行することを可能と
し,かつ,ツリー構造におけるより低いレベルほどユーザイクイップメ
ントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の
割合がより大きくされる方法が含まれるものと理解することができる。10
このように,訂正後の請求項1は,訂正前の請求項にはない,「ユーザ
イクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチ
ャネル候補」という概念を追加した上で,「前記最高レベルよりも低い各
レベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使
用可能なコントロールチャネル候補の割合を,前記最高レベルにおける,15
ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロ
ールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイップメントに
対するアロケーションを実行する」,「ツリー構造における,より低いレ
ベルほど,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能
なコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる」との事項を追20
加し,これによって,訂正前の方法では,ツリー構造で表される比較的
低い各レベルのアロケーションについては特に規定するところがなかっ
た,ツリー構造で示されるより低いレベルほどユーザイクイップメント
に対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合
を大きくすることが発明特定事項に含まれることになったといえる。25
そうすると,訂正事項1ないし3は,特許請求の範囲を実質上変更す
るものであるから,特許法126条5項に適合するものとはいえない。
(イ)これに対し,原告は,前記第3の1(1)ア(イ)及びイ(イ)のとおり,①
訂正事項2及び3は,新たな技術的事項を導入するものではなく,②訂
正事項2は,訂正前は,無条件で比較的低いレベルのコントロールチャ
ネルのアロケーションを可能としていたのを,訂正後は,使用可能なコ5
ントロールチャネル候補の割合に関する条件付きでアロケーションを実
行することを可能とするものであるから,本件訂正は,特許請求の範囲
の減縮に該当する旨主張する。
しかし,特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものであるかに
ついては,特許請求の範囲の記載を基準として判断されるべきことは前10
記のとおりであるところ,発明の詳細な説明に記載された事項からどの
事項を発明特定事項とし,上位概念とするかについては,出願者がその
技術的意義に鑑みて適宜選択して特許請求の範囲とするものであって,
明細書に記載された事項及び図面から導き出される技術的事項との関係
において,新たな技術的事項を導入するものではないからといって,訂15
正の前後で特許請求の範囲の記載が実質的に同一の発明特定事項を有す
るものとはいえない。
そして,前記(ア)のとおり,請求項1は,訂正事項2及び3によって,
訂正前の方法では,ツリー構造で表される比較的低い各レベルのアロケ
ーションについては特に規定するところがなかった,ツリー構造で示さ20
れるより低いレベルほどユーザイクイップメントに対するアロケーショ
ンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を大きくするとの事項
が発明特定事項に含まれることになったものであり,こうした発明特定
事項は,「統合されたコントロールチャネルに対するツリー検索が系統的
に低減される」という課題((【0004】)を解決する発明の構成そのも25
のに関する事項であるから,単に条件付けをしたのにすぎないとはいえ
ず,特許請求の範囲の減縮に該当するものではない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
ウ小括
以上によれば,訂正事項1ないし3は,特許法126条6項の要件に適
合するものとはいえない。5
(2)まとめ
前記のとおり,請求項1に係る訂正事項1ないし3は,特許法126条6
項の要件に適合しないものであるから,一群の請求項である請求項1ないし
7及び14ないし16に係る訂正事項6ないし9及び10ないし19につい
ての同条5項及び6項の要件の適合性について判断するまでもなく,これら10
の一群の請求項に係る本件訂正を認めることはできない。
3請求項8ないし10からなる一群の請求項に係る訂正について
(1)訂正事項20ないし23について
請求項8は,請求項1に記載された方法の発明を実行するアロケーション
ユニットを備えたデバイスを発明特定事項とするものであるから,請求項115
に係る訂正事項2及び3に関する前記2の判断が当てはまるものであり,訂
正事項22及び23は,新規事項の追加に当たるものではないが,訂正事項
20ないし23は,特許請求の範囲を実質上変更するものであるといえる。
したがって,訂正事項20ないし23は,特許法126条6項の要件に適
合するものではない。20
(2)まとめ
上記のとおり,請求項8に係る訂正事項20ないし23は,特許法126
条6項の要件に適合しないものであるから,一群の請求項である請求項8な
いし10に係る訂正事項10ないし19についての同条5項及び6項の要件
の適合性について判断するまでもなく,これらの一群の請求項に係る本件訂25
正を認めることはできない。
4請求項11ないし13からなる一群の請求項に係る訂正について
(1)訂正事項24ないし27について
ア新規事項について
(ア)訂正事項26は,訂正前の請求項11の「それにより,比較的低いレ
ベルのコントロールチャネルの検索が可能となり,」とあるのを,「それ5
により,前記最高レベルよりも低い各レベルにおける検索されるべきコ
ントロールチャネル候補の割合を,前記最高レベルにおける検索される
べきコントロールチャネル候補の割合よりも大きくして検索を実行する
ことが可能となり,」に訂正するものであり,訂正後の請求項11は,訂
正事項26によって,コントロールチャネルを検索するように構成され10
ているデコーディングユニットについて,「検索されるべきコントロール
チャネル候補の各レベルの割合に着目し,最高レベルよりも低い各レベ
ルにおける割合を,最高レベルにおける割合よりも大きくして,検索を
実行すること」を発明特定事項に含むものである。
また,訂正事項27は,訂正前の請求項11の「比較的低いレベルの15
コントロールチャネルは,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー
構造のノードによって表される,」とあるのを,「前記最高レベルよりも
低い各レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高レベル
よりも低いレベルにあるツリー構造のノードによって表され,ツリー構
造における,より低いレベルほど,検索されるべきコントロールチャネ20
ル候補の割合がより大きくされる,」に訂正するものであり,訂正事項2
7によって,「ツリー構造おける,より低いレベルほど,検索されるべき
コンロールチャネル候補の割合がより大きくされる」という技術的事項
を発明特定事項に含むものである。
そこで,訂正事項26及び27に係る上記各技術的事項が本件明細書25
の記載及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項
との関係において,新たな技術的事項を導入するものといえるかについ
て検討する。
(イ)訂正事項26及び27に関して,本件明細書には,前記2(1)ア(イ)で
掲記した【0025】ないし【0027】及び図4のほか,「上記のアプ
ローチにより,各UEに必要とされるデコーディング試行の数を低減す5
ることができる。」(【0031】),「ユーザイクイップメント10のサー
チセクション12はコントロールチャネルを,ツリー構造のノードによ
り表されたコントロールチャネルをデコーディングすることによって検
索する。・・・ここでサーチセクション12は,最高レベルのコントロール
チャネルの検索を制限し,最高レベルのコントロールチャネルは,最高10
レベルにあるツリー構造によって表される。」(【0039】),「サーチセ
クション12は,比較的低いレベルのコントロールチャネルに対する検
索を増大することができる。比較的低いレベルのコントロールチャネル
は,ツリー構造の比較的低いレベルにあるノードによって表される。」
(【0040】)との記載がある。15
上記の本件明細書の記載等からすると,本件明細書には,前記2(1)ア
(ウ)のとおり,図4で示された24のコントロールチャネルエレメント
について,ツリー構造の最高レベルの集合レベル1ではそれぞれが1つ
のコントロールチャネルを形成し,比較低いレベルである集合レベル2
では2つのコントロールチャネルエレメントが1つのコントロールチャ20
ネルに,集合レベル4では4つのコントロールチャネルエレメントが1
つのコントロールチャネルに,集合レベル8では8つのコントロールチ
ャネルエレメントが1つのコントロールチャネルに,それぞれまとめら
れた上で,検索されるべきコントロールチャネル候補は,集合レベル1
は4つ,集合レベル2は4つ,集合レベル4は4つ,集合レベル8は325
つに制限され,この制限によってデコーディング試行の数は15に低減
されることが開示されており,また,本件明細書の上記記載に加えて,
図4を総合すると,検索されるべきコントロールチャネル候補の割合は,
図4の実施例では,最高レベルの集合レベル1では,24のコントロー
ルチャネルを4つの候補に(候補の割合6分の1),比較的低いレベルの
集合レベル2では12のコントロールチャネルを4つの候補に(候補の5
割合3分の1),集合レベル4では6のコントロールチャネルを4つの候
補に(候補の割合3分の2)それぞれ制限し,集合レベル8の3のコン
トロールチャネルを制限しない(候補の割合1分の1)ことが開示され
ているに等しい事項といえる。
そうすると,本件明細書及び図面には,ツリー構造の最高レベルより10
も低い2,4,8の各レベルにおける検索されるべきコントロールチャ
ネル候補の割合は,最高レベルにおける,検索されるべきコントロール
チャネル候補の割合よりも大きくして検索を実行し,ツリー構造おける,
より低いレベルほど,検索されるべきコンロールチャネル候補の割合が
より大きくされる構成が開示又は開示されているに等しい事項である15
ということができるから,訂正事項26及び27に係る前記各技術的事
項に係る構成は,新規事項の追加に当たるものではない。
イ特許請求の範囲の拡張又は変更について
特許法126条6項の「実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する
もの」であるかは,訂正の前後の特許請求の範囲の記載を基準として判断20
されるべきであることは,前記2(1)イのとおりである。
これを前提として検討するに,訂正前の請求項11は,「前記デコーディ
ングユニット(12)は,最高レベルのコントロールチャネルに対する検
索を制限するように構成されており,前記最高レベルのコントロールチャ
ネルは,ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードによって表さ25
れ,それにより,比較的低いレベルのコントロールチャネルの検索が可能
となり,」との発明特定事項を有しており,この発明特定事項から,訂正前
の請求項11では,ツリー構造の最高レベルのノードによって表される最
高レベルのコントロールチャネルに対する検索を制限する構成を有して
おり,この構成によって比較的低いレベルのコントロールチャネルの検索
が可能となるデコーディングユニットを備えたデバイスであると解する5
ことができる。
これに対して,訂正後の請求項11は,「前記デコーディングユニット
(12)は,検索されるべき最高レベルのコントロールチャネル候補を部
分的に制限して検索を実行するように構成されており,前記最高レベルの
コントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高レベルにあるツリー構造10
のノードによって表され,それにより,前記最高レベルよりも低い各レベ
ルにおける検索されるべきコントロールチャネル候補の割合を,前記最高
レベルよりも大きくして検索を実行することが可能となり,・・・ツリー構
造における,より低いレベルほど,検索されるべきコントロールチャネル
候補の割合がより大きくされる,」との発明特定事項を有しており,この発15
明特定事項からは,最高レベルのコントロールチャネル候補を部分的に制
限して検索を実行するという構成に加え,こうした構成によって,最高レ
ベルよりも低い各レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル
候補の割合を,最高レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル
候補の割合よりも大きくして検索を実行することが可能となるデコーデ20
ィングユニットを備えたデバイスの発明特定事項を有するものと解する
ことができる。
このように,訂正前の請求項11では,デコーディングユニットについ
て,比較的低いレベルのコントロールチャネルの検索の構成に関しては特
定されていなかったのに対し,訂正後の請求項11では,検索されるべき25
最高レベルのコントロールチャネル候補の割合と,それよりも低いレベル
における検索されるべきコントロールチャネル候補の割合に着目し,より
低いレベルほど,検索されるべきコントロールチャネル候補の割合がより
大きくされるデコーディングユニットを備えたデバイスに特定されてい
る。
そうすると,訂正事項24ないし27による訂正は,特許請求の範囲を5
実質的に追加又は変更するものであるといえるから,特許法126条6項
の要件に適合するものではない。
前記第3の3(1)ア及びイの原告の主張は,上記で説示したところに照ら
し,採用することができない。
ウ小括10
以上によれば,訂正事項24ないし27は,特許法126条6項の要件
に適合するものとはいえない。
(2)まとめ
前記のとおり,請求項11に係る訂正事項24ないし27は,特許法12
6条6項の要件に適合しないものであるから,一群の請求項である請求項115
1ないし13に係る訂正事項10ないし19についての同条5項及び6項の
要件の適合性について判断するまでもなく,これらの一群の請求項に係る本
件訂正を認めることはできない。
5結論
以上によれば,本件訂正の請求を認めなかった本件審決の判断は結論におい20
て相当であって,原告の取消事由は理由がなく,そうすると,特許法123条
1項4号の規定により,本件訂正前の特許請求の範囲である請求項1ないし1
6に係る発明についての特許を無効とした本件審決にはこれを取り消すべき違
法は認められないから,原告の請求は棄却されるべきである。
よって,主文のとおり判決する。25
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官5
菅野雅之
裁判官10
中村恭
裁判官15
岡山忠広
(別紙1)
1請求項1ないし7,14ないし16からなる一群の請求項における訂正事項と
訂正事項に関する本件審決の判断
(1)訂正事項1ないし3
ア訂正事項15
特許請求の範囲の請求項1に「前記アロケーションは,最高レベルのコン
トロールチャネルのアロケーションを制限することによって実行され,前記
最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の最高レベルにあるツリ
ー構造のノードによって表され,」とあるのを,「ユーザイクイップメントに
対するアロケーションは,前記最高レベルにおける,ユーザイクイップメン10
トに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補を部分的
に制限して実行され,前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構
造の前記最高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,」に訂正す
る。
イ訂正事項215
特許請求の範囲の請求項1に「それにより,比較的低いレベルのコントロ
ールチャネルのアロケーションが可能となり,」とあるのを,「それにより,
前記最高レベルよりも低い各レベルにおける,ユーザイクイップメントに対
するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を,前記
最高レベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使20
用可能なコントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイ
ップメントに対するアロケーションを実行することが可能となり,」に訂正
する。
ウ訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「比較的低いレベルのコントロールチャネル25
は,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表さ
れる,」とあるのを,「前記最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチ
ャネルは,ツリー構造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造
のノードによって表され,ツリー構造における,より低いレベルほど,ユー
ザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャ
ネル候補の割合がより大きくされる,」に訂正する。5
(2)訂正事項6ないし9
ア訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に「検索は,最高レベルのコントロールチャネ
ルに対して制限され,」とあるのを,「検索は,検索されるべき最高レベルの
コントロールチャネル候補を部分的に制限して実行され,」に訂正する。10
イ訂正事項7
特許請求の範囲の請求項5に「前記最高レベルのコントロールチャネルは,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,」とあ
るのを,「前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高
レベルにあるツリー構造のノードによって表され,」に訂正する。15
ウ訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に「それにより,比較的低いレベルのコントロ
ールチャネルの検索が可能となり,」とあるのを,「それにより,前記最高レ
ベルよりも低い各レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル候補
の割合を,前記最高レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル候20
補の割合よりも大きくして検索を実行することが可能となり,」に訂正する。
エ訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5に「比較的低いレベルのコントロールチャネル
は,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表さ
れる,」とあるのを,「前記最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチ25
ャネルは,ツリー構造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造
のノードによって表され,ツリー構造における,より低いレベルほど,検索
されるべきコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる,」に訂正
する。
(3)訂正事項11,14及び16
ア訂正事項115
明細書の【0035】に「アロケーションセクション22は,比較的低い
レベルのコントロールチャネルのアロケーションを増大することができる。」
とあるのを,「アロケーションセクション22は,最高レベルよりも低い各レ
ベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能
なコントロールチャネル候補の割合を,最高レベルにおける,ユーザイクイ10
ップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補
の割合よりも大きくすることができる。」に訂正する。
イ訂正事項14
明細書の【0038】に「アロケーションセクション22は,比較的低い
レベルのツリー構造においてアロケーションをより増大する。」とあるのを,15
「アロケーションセクション22は,ツリー構造における,より低いレベル
ほど,ツリー構造において,ユーザイクイップメントに対するアロケーショ
ンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合をより大きくすることがで
きる。」に訂正する。
ウ訂正事項1620
明細書の【0040】に「サーチセクション12は,比較的低いレベルの
コントロールチャネルに対する検索を増大することができる。」とあるのを,
「サーチセクション12は,最高レベルよりも低い各レベルにおける検索さ
れるべきコントロールチャネル候補の割合を,最高レベルにおける,検索さ
れるべきコントロールチャネル候補の割合よりも大きくすることができる。」25
に訂正する。
(4)訂正事項1ないし3について(請求項1に係る訂正について)の判断
ア訂正事項2
(ア)新規事項について
a訂正事項2に係る「それにより…割合よりも大きくして,ユーザイク
イップメントに対するアロケーションを実行することが可能となり,」と5
の訂正は,アロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の「各
レベル」における「割合」に着目して,最高レベルよりも低い各レベル
における割合を,最高レベルにおける割合よりも大きくして,アロケー
ションを実行することが可能となるという技術的事項(以下「訂正事項
2に係る技術的事項」という。)を追加するものである。10
上記技術に関連して,本件明細書の【0026】及び図4によれば,
図4に示される実施例では,45個の潜在的コントロールチャネル候補
(図4の白及び灰色の候補)のうち15個のコントロールチャネル候補
(図4の白の候補)だけがスケジュールに使用可能であり,集合レベル
(最高レベル1),集合レベル2,集合レベル4,集合レベル8の各レベ15
ルにおいて,それぞれ4個,4個,4個,3個のコントロールチャネル
候補(計15個)が使用可能であることが把握できるが,図4で示され
る実施例は,比較的低いレベル(集合レベル2,4,8)の使用可能な
コントロールチャネル候補についても制限したものであるところ,各レ
ベルの当該候補をどのような観点で制限した結果,図4に示される実施20
例に至ったのかは,本件明細書等に記載も示唆もないから,少なくとも,
使用可能なコントロールチャネル候補に対して「各レベル」における「割
合」に着目し,最高レベルよりも低い各レベルにおける割合を,最高レ
ベルにおける割合よりも大きくして,アロケーションを実行することは,
特許明細書等の全ての事項を記載することにより導かれる技術的事項と25
の関係において新たな技術的事項といえる。
bまた,「増大」とは,「増えて大きくなること。数量や程度を増やすこ
と」を意味するところ,本件明細書の【0035】の,「比較的低いレベ
ルのコントロールチャネルのアロケーションを増大することができる」
との記載は,「アロケーション」に関する何の数量や程度を何に対して「増
大すること」を意味するのか明らかではないが,少なくとも特定の対象5
についての指標(数量や程度)がある状態に対して「増大する」ことを
意味するものと解されるが,訂正事項2に係る技術的事項は,使用可能
なコントロールチャネル候補の「各レベル」における「割合」に着目し
た上で,最高レベルよりも低い各レベルにおける割合と,最高レベルに
おける割合という異なる対象についての大小関係を特定したものであり,10
【0035】の記載と対応しないから,各レベル間の割合の大小関係を
特定した上記技術的事項を追加する訂正は,特許明細書等の全ての記載
を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技
術的事項を導入するものといえる。
cしたがって,訂正事項2に係る技術的事項を含む訂正事項2に係る訂15
正は,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的
事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
(イ)実質上特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記(ア)のとおり,訂正事項2に係る訂正は,新たな技術的事項を導入
するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する20
ものであるといえる。
イ訂正事項3
(ア)新規事項について
訂正事項3は,請求項1に係る発明に「ツリー構造における,より低い
レベルほど,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能25
なコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる,」という技術的
事項(以下「訂正事項3に係る技術的事項」という。)を追加する訂正を含
むものである。
前記ア(ア)aのとおり,本件明細書には,どのような観点に基づいて各
レベルの使用可能なコントロールチャネル候補を制限した結果,図4に示
される実施例に至ったのかは記載も示唆もないから,上記技術的事項の前5
提となる,使用可能なコントロールチャネル候補の「各レベル」における
「割合」に着目して,各レベルに使用可能なコントロールチャネル候補の
割合を制限することは読み取れない。
また,【0038】の「アロケーションセクション22は,比較的低いレ
ベルのツリー構造においてアロケーションをより増大する。」,訂正前の請10
求項4の「ツリー構造の比較的低いレベルにおいてアロケーションがより
増大される」との各記載及び図4をみても,使用可能なコントロールチャ
ネル候補の「各レベル」における「割合」という異なる対象についてのそ
れぞれの大小関係に着目して,「ツリー構造における,より低いレベルほど,
ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロ15
ールチャネル候補の割合がより大きくされる,」という上記技術的事項は
読み取れない。
したがって,訂正事項3に係る技術的事項を含む訂正事項3に係る訂正
は,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項
との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。20
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記(ア)のとおり,訂正事項3に係る訂正は,新たな技術的事項を導入
するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する
ものであるといえる。
ウ請求項1に係る訂正についてのまとめ25
請求項1に係る訂正事項1ないし3を総合的にみても,訂正事項1ないし
3に係る訂正は,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる
技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり,か
つ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(5)訂正事項6ないし9(請求項5の訂正)について
ア訂正事項8について5
(ア)新規事項について
a訂正前の請求項5に係る発明では,最高レベルのコントロールチャネ
ルに対する制限と比較的低いレベルのコントロールチャネルに対する制
限とが特定の関係になるように検索を制限することについては特定がな
いから,訂正事項8に係る「それにより…割合よりも大きくして検索を10
実行することが可能となり,」との訂正は,ユーザイクイップメントにお
いて検索されるべきコントロールチャネル候補の「各レベル」における
「割合」に着目して,最高レベルよりも低い各レベルにおける割合を,
最高レベルにおける割合よりも大きくして検索を実行することが可能と
なるという技術的事項(以下「訂正事項8に係る技術的事項」という。)15
を追加するものである。
そうしたところ,【0026】及び図4によれば,図4に示される実施
例では,45個の潜在的コントロールチャネル候補(図4の白及び灰色
の候補)のうち,15個のコントロールチャネル候補(図4の白の候補)
だけがスケジュールに使用可能であり,ユーザイクイップメントにおけ20
る検索の回数は,集合レベル1(最高レベル),集合レベル2,集合レベ
ル4,集合レベル8の各レベルにおいて,それぞれ4回,4回,4回,
3回(計15回)であることが把握できるが,図4に示される実施例で
は,「検索」が「比較的低いレベル」における「コントロールチャネルに
対して制限され」ることを許容していることは明らかであり,かつ,425
5個のコントロールチャネル候補に対してどのような観点に基づいて制
限した結果,15個の「検索」されるべきコントロールチャネル候補に
至ったのかは,特許明細書等には記載も示唆もない。
そして,少なくとも,本件訂正後の「それにより,前記最高レベルよ
りも低い各レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル候補の
割合を,前記最高レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル5
候補の割合よりも大きくして検索を実行することが可能となり,」のよう
に,検索されるべきコントロールチャネル候補の「各レベル」の「割合」
に着目して検索されるべき候補を制限することは,特許明細書等の全て
の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新
たな技術的事項といえる。10
bまた,「増大」とは,「増えて大きくなること。数量や程度を増やすこ
と」を意味するところ,本件明細書の【0040】には,「サーチセクシ
ョン12は,比較的低いレベルのコントロールチャネルに対する検索を
増大する。」との記載は,「検索」に関する何の数量や程度を何に対して
「増大すること」を意味するのか明らかではなく,【0025】ないし【015
027】及び図4を参照しても比較的低いレベルのコントロールチャネ
ル候補の使用が制限されることはあっても,「増大」することはないから,
検索も「増大」することもなく,【0040】の「検索を増大すること」
が何を意味するのか明らかではない。
そして,訂正事項8に係る技術的事項は,検索されるべきコントロー20
ルチャネル候補の「各レベル」における「割合」に着目した上で,最高
レベルよりも低い各レベルにおける割合と最高レベルにおける割合とい
う異なる対象についての大小関係を特定したものであって,「検索」に関
する何らかの指標が何らかの状態から増大することを特定したものでは
ないから,少なくとも【0040】の「検索を増大すること」に対応し25
ないことは明らかであるから,各レベル間の割合の大小関係を特定した
上記技術的事項を追加する訂正は,特許明細書等の全ての記載を総合す
ることにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を
導入するものといえる。
cしたがって,訂正事項8に係る技術的事項を含む訂正事項8に係る訂
正は,特許明細書等の新たな技術的事項を導入するものである。5
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記(ア)のとおり,訂正事項8に係る訂正は,新たな技術的事項を導入
するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する
ものであるといえる。
イ訂正事項9について10
(ア)新規事項について
訂正事項9に係る訂正は,請求項5に係る発明に「ツリー構造における,
より低いレベルほど,検索されるべきコントロールチャネル候補の割合が
より大きくされる,」という技術的事項(以下「訂正事項9に係る技術的事
項」という。)を追加する訂正を含むものであるところ,前記ア(ア)のとお15
り,図4に示される実施例では,「検索」が,「比較的低いレベル」におけ
る「コントロールチャネルに対して制限され」ることを許容していること
は明らかであり,かつ,45個の潜在的コントロールチャネル候補に対し
てどのような観点に基づいて制限した結果,15個の「検索」されるべき
コントロールチャネル候補に至ったのかは,特許明細書等に記載も示唆も20
ないから,上記技術的事項の前提となる,検索されるべきコントロールチ
ャネル候補の「各レベル」における「割合」に着目して,検索をコントロ
ールに対して制限することは読み取れず,また,【0039】の「サーチセ
クション12は,最高レベルのコントロールチャネル検索を制限し」との
記載,【0040】の「サーチセクション12は,比較的低いレベルのコン25
トロールチャネルに対する検索を増大することができる。」との記載,訂正
前の請求項4の「ツリー構造の比較的低いレベルにおいてアロケーション
を増大される」との記載及び図4をみても,検索されるべきコントロール
チャネル候補の「各レベル」における「割合」という異なる対象間の各大
小関係に着目して,上記技術的事項を読み取ることができないから,訂正
事項9に係る技術的事項を含む訂正事項9に係る訂正は,特許明細書等の5
全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,
新たな技術的事項を導入するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記(ア)のとおり,訂正事項9に係る訂正は,新たな技術的事項を導入
するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更する10
ものといえる。
ウ請求項5に係る訂正についてのまとめ
請求項5に係る訂正事項6ないし9を総合的にみても,訂正事項6ないし
9に係る訂正は,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる
技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり,か15
つ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(6)訂正事項11,14及び16の訂正(明細書の訂正)について
ア訂正事項11について
(ア)新規事項について
訂正事項11に係る訂正は,請求項1に係る訂正事項2に対応する訂正20
前の【0035】の記載を訂正するものであって,前記(4)ア(ア)と同様の
理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技
術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
(イ)特許請求の範囲又は拡張について
訂正事項11に係る訂正は,請求項1に係る訂正事項2に対応する訂正25
前の【0035】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,新た
な技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求の範
囲を拡張又は変更するものといえる。
イ訂正事項14について
(ア)新規事項について
訂正事項14に係る訂正は,請求項1に係る訂正事項3及び請求項5に5
係る訂正事項9に対応する訂正前の【0038】の記載を訂正するもので
あって,前記(4)イ(ア)と同様の理由により,特許明細書等の全ての記載を
総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的
事項を導入するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について10
訂正事項14に係る訂正は,請求項1に係る訂正事項3及び請求項5に
係る訂正事項9に対応する訂正前の【0038】の記載を訂正するもので
あって,上記(ア)のとおり,新たな技術的事項を導入するものであるから,
その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
ウ訂正事項16について15
(ア)新規事項について
訂正事項16に係る訂正は,請求項5に係る訂正事項8に対応する訂正
前の【0040】の記載を訂正するものであって,前記(5)ア(ア)と同様の
理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技
術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。20
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項16に係る訂正は,請求項5に係る訂正事項8に対応する訂正
前の【0040】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,新た
な技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求の範
囲を拡張又は変更するものである。25
(7)小括
請求項1ないし7及び14ないし16からなる一群の請求項における訂正事
項2,3,8,9,11,14及び16に係る訂正の請求は認められない。
2請求項8ないし10からなる一群の請求項に係る訂正事項と訂正事項に関する
本件審決の判断
(1)訂正事項20ないし235
ア訂正事項20
特許請求の範囲の請求項8に「前記アロケーションユニット(22)は,
最高レベルのコントロールチャネルのアロケーションを制限するように構成
されており,」とあるのを,「前記アロケーションユニット(22)は,ユー
ザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能な最高レベルのコン10
トロールチャネル候補を部分的に制限して,ユーザイクイップメントに対す
るアロケーションを実行するように構成されており,」に訂正する。
イ訂正事項21
特許請求の範囲の請求項8に「前記最高レベルのコントロールチャネルは,
ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,」とあ15
るのを,「前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最高
レベルにあるツリー構造のノードによって表され,」に訂正する。
ウ訂正事項22
特許請求の範囲の請求項8に「それにより,比較的低いレベルのコントロ
ールチャネルのアロケーションが可能となり,」とあるのを,「それにより,20
前記最高レベルよりも低い各レベルにおける,ユーザイクイップメントに対
するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合を,前記
最高レベルにおける,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使
用可能なコントロールチャネル候補の割合よりも大きくして,ユーザイクイ
ップメントに対するアロケーションを実行することが可能となり,」に訂正25
する。
エ訂正事項23
特許請求の範囲の請求項8に「比較的低いレベルのコントロールチャネル
は,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表さ
れる,」とあるのを,「前記最高レベルよりも低い各レベルのコントロールチ
ャネルは,ツリー構造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構造5
のノードによって表され,ツリー構造における,より低いレベルほど,ユー
ザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャ
ネル候補の割合がより大きくされる,」に訂正する。
(2)訂正事項11,14及び16
前記1(3)のとおり。10
(3)訂正事項20ないし23(請求項8の訂正)について
ア訂正事項22について
(ア)新規事項について
訂正事項22に係る訂正により,訂正前の「それにより,比較的低いレ
ベルのコントロールチャネルのアロケーションが可能となり,」は,訂正後15
の「それにより,前記最高レベルよりも低い各レベルにおける,ユーザイ
クイップメントに対するアロケーションに使用可能なコントロールチャ
ネル候補の割合を,前記最高レベルにおける,ユーザイクイップメントに
対するアロケーションに使用可能なコントロールチャネル候補の割合よ
りも大きくして,ユーザイクイップメントに対するアロケーションを実行20
することが可能となり,」に訂正されるものであるところ,請求項8に係る
発明には,「最高レベル」において使用可能なコントロールチャネルと,「比
較的低いレベル」において使用可能なコントロールチャネルとが特定の関
係になるように制限してアロケーションを実行することは特定がないか
ら,訂正事項22に係る「それにより,・・・割合よりも大きくして,ユーザ25
イクイップメントに対するアロケーションを実行することが可能となり,」
との訂正は,ユーザイクイップメントに対するアロケーションに使用可能
なコントロールチャネル候補の「各レベル」における「割合」に着目して,
最高レベルよりも低い各レベルにおける割合を,最高レベルにおける割合
よりも大きくして,アロケーションを実行することが可能となるという技
術的事項を追加するものということができるから,前記1(4)ア(ア)と同様5
の理由により,訂正事項22に係る訂正は,特許明細書等の全ての技術的
事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものといえる。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項22に係る訂正は,上記(ア)のとおり,新たな技術的事項を導
入するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更す10
るものといえる。
イ訂正事項23について
(ア)新規事項について
訂正事項23に係る訂正は,請求項8に係る発明に「ツリー構造におけ
る,より低いレベルほど,ユーザイクイップメントに対するアロケーショ15
ンに使用可能なコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる,」
という技術的事項を追加する訂正を含むものであり,前記1(4)イ(ア)と同
様の理由により,訂正事項23に係る訂正は,特許明細書等の全ての記載
を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術
的事項を導入するものといえる。20
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項23に係る訂正は,上記(ア)のとおり,新たな技術的事項を導
入するものであるから,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更
するものといえる。
ウ請求項8に係る訂正についてのまとめ25
請求項8に係る訂正事項20ないし23を総合的にみても,訂正事項20
ないし23に係る訂正は,特許明細書等の全ての記載を総合することにより
導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するもので
あり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(4)訂正事項11,14及び16(明細書の訂正)について
ア訂正事項11について5
(ア)新規事項について
訂正事項11に係る訂正は,請求項8に係る訂正事項22に対応する訂
正前の【0035】の記載を訂正するものであって,前記1(4)ア(ア)と同
様の理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれ
る技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。10
(イ)特許請求の範囲又は拡張について
訂正事項11に係る訂正は,請求項8に係る訂正事項22に対応する訂
正前の【0035】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,新
たな技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求の
範囲を拡張又は変更するものといえる。15
イ訂正事項14について
(ア)新規事項について
訂正事項14に係る訂正は,請求項8に係る訂正事項23に対応する訂
正前の【0038】の記載を訂正するものであって,前記1(4)イ(ア)と同
様の理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれ20
る技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項14に係る訂正は,請求項8に係る訂正事項23に対応する訂
正前の【0038】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,新
たな技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求の25
範囲を拡張又は変更するものである。
ウ訂正事項16について
(ア)新規事項について
訂正事項16に係る訂正は,請求項8に係る訂正事項22に関連する訂
正前の【0040】の記載を訂正するものであって,前記1(5)ア(ア)と同
様の理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれ5
る技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項16に係る訂正は,請求項8に係る訂正事項22に関連する訂
正前の【0040】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,新
たな技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求の10
範囲を拡張又は変更するものである。
(5)小括
請求項8ないし10からなる一群の請求項における訂正事項22,23,1
1,14及び16に係る訂正の請求は認められない。
3請求項11ないし13からなる一群の請求項に係る訂正事項と訂正事項に関す15
る本件審決の判断
(1)訂正事項24ないし27
ア訂正事項24
特許請求の範囲の請求項11に「前記デコーディングユニット(12)は,
最高レベルのコントロールチャネルに対する検索を制限するように構成され20
ており,」とあるのを,「前記デコーディングユニット(12)は,検索され
るべき最高レベルのコントロールチャネル候補を部分的に制限して検索を実
行するように構成されており,」に訂正する。
イ訂正事項25
特許請求の範囲の請求項11に「前記最高レベルのコントロールチャネル25
は,ツリー構造の最高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,」と
あるのを,「前記最高レベルのコントロールチャネルは,ツリー構造の前記最
高レベルにあるツリー構造のノードによって表され,」に訂正する。
ウ訂正事項26
特許請求の範囲の請求項11に「それにより,比較的低いレベルのコント
ロールチャネルの検索が可能となり,」とあるのを,「それにより,前記最高5
レベルよりも低い各レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル候
補の割合を,前記最高レベルにおける検索されるべきコントロールチャネル
候補の割合よりも大きくして検索を実行することが可能となり,」に訂正す
る。
エ訂正事項2710
特許請求の範囲の請求項11に「比較的低いレベルのコントロールチャネ
ルは,ツリー構造の比較的低いレベルにあるツリー構造のノードによって表
される,」とあるのを,「前記最高レベルよりも低い各レベルのコントロール
チャネルは,ツリー構造の前記最高レベルよりも低いレベルにあるツリー構
造のノードによって表され,ツリー構造における,より低いレベルほど,検15
索されるべきコントロールチャネル候補の割合がより大きくされる,」に訂
正する。
(2)訂正事項11,14及び16
前記1(3)のとおり。
(3)訂正事項24ないし27(請求項11の訂正)について20
ア訂正事項26について
(ア)新規事項について
訂正事項26に係る訂正は,前記1(5)ア(ア)と同様の理由により,特許
明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関
係において,新たな技術的事項を導入するものである。25
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項26に係る訂正は,上記(ア)のとおり,新たな技術的事項を導
入するものであって,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更す
るものといえる。
イ訂正事項27について
(ア)新規事項について5
訂正事項27に係る訂正は,前記1(5)イ(ア)と同様の理由により,特許
明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関
係において,新たな技術的事項を導入するものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項27に係る訂正は,上記(ア)のとおり,新たな技術的事項を導10
入するものであるから,その結果,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更
するものといえる。
(4)請求項11に係る訂正についてのまとめ
請求項11に係る訂正事項24ないし27を総合的にみても,訂正事項24
ないし27に係る訂正は,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導15
かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり,
かつ,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
(5)訂正事項11,14及び16(明細書の訂正)について
ア訂正事項11について
(ア)新規事項について20
訂正事項11に係る訂正は,請求項11に係る訂正事項26に関連する
訂正前の【0035】の記載を訂正するものであって,前記1(4)ア(ア)と
同様の理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導か
れる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであ
る。25
(イ)特許請求の範囲又は拡張について
訂正事項11に係る訂正は,請求項11に係る訂正事項26に関連する
訂正前の【0035】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,
新たな技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求
の範囲を拡張又は変更するものといえる。
イ訂正事項14について5
(ア)新規事項について
訂正事項14に係る訂正は,請求項11に係る訂正事項27に関連する
訂正前の【0038】の記載を訂正するものであって,前記1(4)イ(ア)と
同様の理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導か
れる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであ10
る。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項14に係る訂正は,請求項11に係る訂正事項27に関連する
訂正前の【0038】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,
新たな技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求15
の範囲を拡張又は変更するものである。
ウ訂正事項16について
(ア)新規事項について
訂正事項16に係る訂正は,請求項11に係る訂正事項26に対応する
訂正前の【0040】の記載を訂正するものであって,前記1(5)ア(ア)と20
同様の理由により,特許明細書等の全ての記載を総合することにより導か
れる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであ
る。
(イ)特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項16に係る訂正は,請求項11に係る訂正事項26に対応する25
訂正前の【0040】の記載を訂正するものであって,上記(ア)のとおり,
新たな技術的事項を導入するものであるから,その結果,実質上特許請求
の範囲を拡張又は変更するものである。
(6)小括
請求項11ないし13からなる一群の請求項における訂正事項26,27,
11,14及び16に係る訂正の請求は認められない。5
(別紙2)
【技術分野】
【0001】
本発明は,通信ネットワークシステムにおけるコントロールチャネルに関するも
のであり,とりわけ3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)LTE5
(LongTermEvolution)ネットワークシステムにおけるコントロールチャネルア
ロケーションおよびデコーディングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
LET技術は例えばパケット無線システムを規定する。ここではすべてのチャネ10
ルアロケーションがサブフレームの短い期間で生じるものと期待される。このこと
は古い3Gシステムとは異なるものであり,ここではパケットトラフィックをセッ
トアップするためにも専用のシグナリングチャネルが必要である。これは,WLA
N(WirelessLocalAreaNetwork)のアロケーション形式とも異なる。ここでは各
IP(InternetProtocol)パケット伝送がトランスポートヘッダを含む。15
【0003】
LTE技術によれば,すべてのアロケーションが共有コントロールチャネルに通
知される。この共有コントロールチャネルは,データチャネルのマルチキャリアシ
ンボルに先行するサブフレームの第1マルチキャリアシンボル存在する。コントロ
ールチャネルは別個に符号化されている。すなわちダウンリンク(またはアップリ20
ンク)チャネルが2つの別個の部分に分割されており,一方がコントロール用,他
方がデータ用である。データ部分(PDSCH)はダウンリンク(またはアップリ
ンク)データを,同期スケジュールされたユーザのために伝送し,コントロール部
分(PDCCH)はそれらの間のアロケーション情報をスケジュールされたユーザ
のために伝送する。25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は,統合されたコントロールチャネルに対するツリー検索が系統的
に低減されるように構成することである。
【課題を解決するための手段】5
【0005】
上記課題は,請求項1記載の構成によって解決される。
【発明の効果】
【0006】
特許請求の範囲に記載のように,コントロールチャネルのデコーディング複雑性10
を低減する方法および装置を提供する。本発明はまた,コンピュータプログラムと
して実現される。
【0007】
本発明によれば,統合されたコントロールチャネルに対するツリー検索が系統的
に低減される。これにより,UE(ユーザイクイップメント)側でのデコーディン15
グ試行数が格段に低減される。一方,eNB(evolvedNodeB)でのほとんどのス
ケジューリングフレキシビリティは維持される。すなわちシステムスペクトル効率
vs.UE複雑性とのトレードオフが得られる。
【0008】
本発明によれば,同時にスケジュールされる,同じ伝搬条件を有するユーザが多20
数は存在しないことが前提である。ツリー低減は,同じ制限をツリー構造に,仕様
を通して設定することにより得られる。
【0009】
UEはツリー構造を使用して,電力を節約するためにデコーディング複雑性を低
減する。本発明の実施例によれば,L1/L2コントロールチャネルの復号/検知25
において電力消費を節減することができる。
【0010】
ここに説明する本発明のために以下のことに注意すべきである。
・ユーザエクイップメントは,これによりユーザが通信ネットワークにアクセスす
ることができる任意のデバイスである。これには携帯電話の他に,ベースとなる技
術プラットフォームに依存して非携帯デバイスおよびネットワークも含まれる。5
・ユーザエクイップメントはクライアントエンティティとして,またはサーバエン
ティティとして本発明に関連して動作することができる。または両方の機能を組み
込むこともできる。
・ソフトウエアコード部分として実現され,プロセッサによりサーバ/クライアン
トエンティティで実行される方法ステップは,独立したソフトウエアコードであり,10
公知のまたは将来開発されるプログラミング言語を使用して明記することができる。
・ハードウエアコンポーネントとしてサーバ/クライアントエンティティの一つで
実現される方法ステップおよび/またはデバイスは独立したハードウエアであり,
公知のまたは将来開発されるハードウエア技術またはそれらのハイブリッド,例え
ばMOS,CMOS,BiCMOS,ECL,TTL等と,ASICコンポーネン15
トまたはDSPコンポーネントを使用して実現することができる。
・一般的にいずれの方法ステップもソフトウエアとして,またはハードウエアによ
り適切
に実現することができ,本発明の技術思想を変更することはない。
・デバイスは独立したデバイスとして実現することができる。しかしこのことは,20
デバイスの機能性が維持される限りにおいて,それらをシステムにわたり分散させ
て実現することを排除するものではない。
【0011】
本発明はLTEネットワークシステムに限定されるものではなく,ダイナミック
で高速なチャネルアロケーションを必要とする他の任意の通信システムに適用する25
ことができる。これには,コントロールチャネルのために多重コードレートが存在
するシステムも含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
通信ネットワークシステムのユーザを同時にスケジュールするためのアロケーシ
ョン情報を伝送する物理的ダウンリンク共有コントロールチャネル(PDSCCH)5
が,図1に示すように多重コントロールチャネルエレメントからなるツリー構造に
配置されている。デコーディング中に,UE(ユーザエクイップメント)はコント
ロールチャネルエレメントを結合または集合して,種々のコードブロックまたはコ
ントロールチャネル候補を形成する。各コードブロックはコントロールチャネル候
補と呼ばれる。コードブロックが一つのMAC(MediumAccessControl)IDに10
対する情報を伝送するからである。MACIDはUEにより,またはUEのグル
ープにより,チャネルを検知するために使用される。ツリーの各レベル,各ノード
は,コードブロックのシングルコントロールチャネルを表す。ツリーの最下位レベ
ルにあるコントロールチャネルの数が,システムバンド幅,最大コードブロックに
対して使用可能なOFDMシンボルの数n,そしてコントロールチャネルエレメン15
トのサイズによって決定される。図1の実施例ではn=3である。このレベルにお
いてコントロールチャネルにより占有されていないツリーのノードは,ツリーの次
のレベルに対して2つのコントロールチャネルとして使用可能である。この2つの
コントロールチャネルのそれぞれは,ペアレントノードにあるコントロールチャネ
ルの大きさの半分である。20
【0014】
所定数のサブキャリアリソースからなるシステムバンド幅は,最大コードブロッ
クの整数倍数に分割することができる。ツリーの所定のノード,すなわちサブキャ
リアのセットは,最大コードブロックの一つのコントロールチャネル,または2番
目の最大コードブロックの2つまでのコントロールチャネル,または最小コードブ25
ロックの4つまでのコントロールチャネルからなることができる。
【0015】
各コントロールチャネルは,このコントロールチャネルに対して使用可能な第1
のnOFDMを完全に越えている。コントロールチャネルは,システムバンド幅
にわたりサブキャリアに分散することができ,これにより周波数ダイバシティが最
大となる。例えば各コードブロックにアロケートされたサブキャリアリソースの45
つの分散セットがある。これは図2に示されている。
【0016】
図1にはツリー構造の異なるレベルにアロケートされた3つのノードCB1,C
B2,CB3が示されている。図2は,分散してサブキャリアリソースにマッピン
グされ,アロケートされた3つのノードCB1,CB2,CB3を示す。これらの10
マッピングは単なる例であり,このマッピングは一般的に,周波数ダイバシティを
スキャッタリングによりシステムバンド幅にわたって提供する。
【0017】
各コントロールチャネルはMACIDにより一義的に定義されなければならな
いから,CRCをMACIDにより部分的にマスキングすることによりCRC(周15
期的冗長コード)と組み合わせることができる。MACIDは,UE専用コント
ロールチャネルと,共通のコントロールチャネルとの両方のアドレシングに使用さ
れるから,MACIDを互換のあるように定義するのが有利である。したがって
任意のコントロールチャネルを,コントロールチャネルをそれぞれのMACID
によりフィルタリングすることによって受領することができる。エラー検出は,C20
RCがマスクされたMACIDから得られる。MACIDの長さは,C-RN
TI(CellRadioNetworkTemporaryIdentifier)の長さに整合されている。
【0018】
受信器,例えばUEは,ダウンリンクおよびアップリンクシェアードデータチャ
ネルにおけるシンボルを受領および処理する前に,サブフレームのダウンリンクシ25
ェアードコントロールチャネル部分のシンボルを受信する手段を有する。受信器は,
OFDMシンボルのサブキャリアを復調し,復号する。このOFDMシンボル内で
受信器は,最大コードブロック,例えば図1のCB1のセットを検索する。コード
ブロックのサイズとシステムバンド幅は既知であるから,受信器はCB1を検索す
るための,サブキャリア位置の整数倍数を知っている。正しく検知されたか否かの
受領は,受信器専用c-RNTI識別子によりフィルタリングされた巡回冗長検査5
器により認識される。UEのc-RNTIがマッチしないCRCのすべてのマッチ
に対して,受信器はツリーの次に高いレベルがマスクされ,使用不可であることを
知る。すべての非マッチCRCチェックに対して,UEはツリーの次に高いレベル
でコードブロック(CB2)のデコーディングを続け,ペアレントノードの2つの
チャイルドノードでのマッチングを検索する。さらにすべての非マッチCRCチェ10
ックに対して,UEはツリーの次に高いレベルでコードブロック(CB3)のデコ
ーディングを続け,ペアレントノードの2つのチャイルドノードでのマッチングを
検索する。検索は,UEが受領を意図するすべてのコントロールチャネルを検知し,
正しくデコーディングするまで続けられる。
【0019】15
固有の受信器専用c-RNTIを備えるサーチシグナリングエントリーに加えて,
UEは共通のシグナリングエントリーを共通の識別子により検索しなければならな
い。
【0020】
ツリーにおける検索は,最下位レベルノードから比較的に高いレベルノードへの20
順番以外に別の順番で行うことができる。適用される符号化スキームに応じて,受
信器は高レベルのノードから低レベルのノードへとノードを処理することができる。
さらに受信器は,他の任意の(または系統的)順序で,複数の測定量,例えば候補
コードブロックのSINR(信号対干渉雑音比)品質に基づきノードを処理するこ
とができる。25
【0021】
以下では,ツリー構造の最高レベル(図1のレベル3)におけるノード(すなわ
ちコントロールチャネル)の一つのサイズだけがセルの所定のバンド幅に対して定
義されていると仮定する。最高レベルノードは,「コントロールチャネルエレメント」
と参照される。多重コントロールチャネルの集合は,大きなペイロードおよび/ま
たは低いコーディングレートを達成するために使用することができる。5
【0022】
しかしコントロールチャネルエレメントの集合は,可能なアロケーションのため
にリストアップされたすべてのUEに多数のデコーディング試行を要求する。コン
トロールチャネル集合の例が図3に示されている。
【0023】10
図3から,コントロールチャネルエレメントの比較的少数の集合でも,リソース
アロケーションのためのUEリストに対して多数のデコーディング試行を引起し,
各UEはダウンリンクアロケーションとアップリンクアロケーションの両方にリス
トアップされることがわかる。図3の例では,6つのコントロールチャネルエレメ
ントがある。図1に示したツリー構造を使用する集合は,10の潜在的コントロー15
ルチャネル候補となる。これはUE複雑性の点では準最適のものである。なぜなら
UEは,コントロールチャネル候補を,これらのうちのいくつかはスケジュールさ
れなくても,すべてデコーディングしなければならないからである。
【0024】
本発明の実施例を以下の詳細に説明する。20
【0025】
図4は,図3からの平坦なツリー構造の一種を示す。図4は,種々の集合可能性
(白と灰色エリアの両方)に対する潜在的コントロールチャネル候補を示す。図4
から分かるように,全部で24のコントロールチャネルエレメント(CCE)があ
る。これらはトリガがないため,リンク方向の(すなわちダウンリンク/アップリ25
ンク)アロケーションごとに45のデコーディング試行となる。言い替えると,集
合レベル1では24のコントロールチャネルエレメントが,それぞれ一つのコント
ロールチャネルを形成する。集合レベル2では2つのコントロールチャネルエレメ
ントが一つのコントロールチャネルにまとめられる。集合レベル4では,4つのコ
ントロールチャネルエレメントが一つのコントロールチャネルにまとめられ,集合
レベル8では,8つのコントロールチャネルエレメントが一つコントロールチャネ5
ルにまとめられる。
【0026】
本発明の実施例によれば,図4の白と灰色のエリアにより示されたコントロール
チャネル構造は,白の集合コントロールチャネル候補だけがスケジュールに使用可
能であるという制限を受ける。この制限により,デコーディング試行の数は15に10
低減される(灰色エリアはコントロールチャネル候補の検索のためにデコードされ
ない)。このことは係数3の低減に相当する。言い替えると,4つのコントロールチ
ャネル候補が集合レベル1にあり,4つのコントロールチャネル候補が集合レベル
2に,4つのコントロールチャネル候補が集合レベル4に,そして3つのコントロ
ールチャネル候補が集合レベル8にある。15
【0027】
上記の制限をツリー構造に課すことにより,スケジュールフレキシビリティは,
以下の論点に基づきさほど低減しない。
・ユーザイクイップメントが集合レベル1だけを要求するコントロールチャネルを
スケジュールするeNBに近接するユーザエクイップメントが多数存在すれば,電20
力の低減された集合レベル2エレメントを,電力平衡を実行する可能性があるので,
より多くのユーザを持つために使用することができる。図4に示された例では,有
利に条件付けられた9つのユーザをこのアプローチを使用してスケジュールするこ
とができる。言い替えると,集合レベル1では4つのコントロールチャネルを,集
合レベル2では2つのコントロールチャネルを,集合レベル4では2つのコントロ25
ールチャネルを,そして集合レベル8では1つのコントロールチャネルをスケジュ
ールすることができる。
・スケジュールされた複数のユーザが一つのセルエッジに存在すれば(集合レベル
8),付加的ユーザをいずれにしろスケジュールすることはできない。使用可能なコ
ントロールチャネルエレメントの数が制限されているからである。
・集合レベル間の差は係数2であるので,電力平衡を使用する場合には,集合と電5
力の相互間である程度のトレードフレキシビリティが存在する。
【0028】
上記の説明は,単一リンク方向に対するアロケーションツリーについてのもので
あるが,本発明は2ツリー,すなわちアップリンクとダウンリンクがそれぞれ存在
する場合でも適用される。10
【0029】
さらに各レイヤーで可能なコントロールチャネルの数は重要ではないことを述べ
ておく。
【0030】
アロケーションルールが使用される本発明の実施例では,すべてのコントロール15
チャネルエレメント上での最小コントロールチャネルの使用が禁止される。同時に,
比較的小さいコントロールチャネルは,良好なカバレッジを備える集合コントロー
ルチャネルと組み合わせることができる。
【0031】
上記のアプローチにより,各UEにより必要とされるデコーディング試行の数を20
低減することができる。ツリーは,すべてのコントロールチャネルエレメントに対
して適用される周波数ダイバシティにより,各CCEが同じチャネル条件または類
似のチャネル条件を経験するように制限することができる。
【0032】
図5は,本発明の実施例によるネットワークデバイス20と,eNBのようなユ25
ーザエクイップメント10を示すブロック図である。
【0033】
ユーザイクイップメント10は,受信/送信セクション11とデコーディングセ
クション12を有する。受信/送信セクション11はシンボルをネットワークデバ
イス20から受信する。このネットワークデバイス20は,シンボルを送信する受
信/送信セクション21とアロケーションセクション22を有する。5
【0034】
アロケーションセクション22はツリー構造のノードにより表されるコントロー
ルチャネルをアロケートし,各コントロールチャネルは少なくとも一つのコントロ
ールチャネルエレメントを有し,このコントロールチャネルエレメントはコントロ
ールチャネルを検知するために使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送す10
る。ここでアロケーションは最高レベルのコントロールチャネルのアロケーション
を制限することによって実行され,最高レベルのコントロールチャネルは,最高レ
ベルにあるツリー構造のノードによって表される。例えば図1では,最高レベルは
レベル3により示されている。図4を参照すると,最高レベルは集合レベル1によ
り表されている。15
【0035】
アロケーションセクション22は,比較的低いレベルのコントロールチャネルの
アロケーションを増大することができる。比較的低いレベルのコントロールチャネ
ルは,ツリー構造の比較的低いレベルにあるノードによって表される。例えば図1
では,比較的低いレベルはレベル2と1により示されている。図4を参照すると,20
比較的低いレベルは集合レベル2,4と8により表されている。
【0036】
受信/送信セクション21は,アロケートされたコントロールチャネルをシンボ
ルとしてユーザイクイップメント10に送信する。これはアロケートされたコント
ロールチャネルを,システムバンド幅にわたってサブキャリアに分散することによ25
って行われる。
【0037】
比較的高いレベルのコントロールチャネルは,比較的低いレベルのコントロール
チャネルと組み合わせることができる。言い替えると小さいコントロールチャネル
は,良好なカバレッジを備える集合コントロールチャネルと組み合わせることがで
きる。5
【0038】
アロケーションセクション22は,比較的低いレベルのツリー構造においてアロ
ケーションをより増大する。
【0039】
ユーザイクイップメント10のサーチセクション12はコントロールチャネルを,10
ツリー構造のノードにより表されたコントロールチャネルをデコーディングするこ
とによって検索する。これは,MACID,CRCまたはc-RNTIのような
識別子を使用して行われる。各コントロールチャネルは少なくとも一つのコントロ
ールチャネルエレメントを有し,このコントロールチャネルエレメントはコントロ
ールチャネルを検知するために使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝送す15
る。ここでサーチセクション12は,最高レベルのコントロールチャネルの検索を
制限し,最高レベルのコントロールチャネルは,最高レベルにあるツリー構造のノ
ードによって表される。
【0040】
サーチセクション12は,比較的低いレベルのコントロールチャネルに対する検20
索を増大することができる。比較的低いレベルのコントロールチャネルは,ツリー
構造の比較的低いレベルにあるノードによって表される。
【0041】
受信/送信セクション11はコントロールチャネルを,ネットワークデバイス2
0からのシンボルとして受信することができる。25
【0042】
サーチセクション11は,検索を最低レベルのコントロールチャネルから開始す
ることができる。最低レベルのコントロールチャネルはツリー構造の最低ベルにあ
るノードにより表される。例えば図1では,最低レベルはレベル1により示されて
いる。図4を参照すると,最低レベルは集合レベル8により表されている。
【0043】5
図5に示されたネットワークデバイス20とユーザイクイップメント10は,例
えばノードBおよびUEによりとしての動作のためにさらなる機能性を有すること
ができる。ここで本発明の理解に関連するネットワークデバイスとユーザイクイッ
プメントの機能性は,図5に示された機能ブロックを使用して説明される。ネット
ワークデバイスとユーザイクイップメントの機能ブロックは,本発明を制限するよ10
うには構成されない。この機能性は一つのブロックにより実行することができ,ま
たサブブロックに分割することができる。
【0044】
本発明の実施形態によれば,送信側でツリー構造のノードにより表されるコント
ロールチャネルをアロケートし,各コントロールチャネルは少なくとも一つのコン15
トロールチャネルエレメントを有し,このコントロールチャネルエレメントはコン
トロールチャネルを検知するために使用されるそれぞれの識別子に対する情報を伝
送する。ここでアロケーションは最高レベルのコントロールチャネルのアロケーシ
ョンを制限することによって実行され,最高レベルのコントロールチャネルは,最
高レベルにあるツリー構造のノードによって表される。受信側ではコントロールチ20
ャネルが,アロケートされたコントロールチャネルをデコーディングすることによ
って検索される。ここで検索は,最高レベルのコントロールチャネルに制限される。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】5

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛