弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告人の抗告の趣旨および理由は、別紙記載のとおりである
 (一) 別紙一の抗告理由中競売期日の公告について
 本件競売期日の公告には、民事訴訟法第六五八条第一項第三号掲記の事項が記載
されていないことは、本件記録に徴し明白である。そこで少くとも、本件競売申立
当時以降所論のような賃貸借が存在するかどうかにつき考えてみるに、所論にそう
原審における抗告人の審尋の結果(第一回)はたやすくこれを信用できないし、抗
告人提出のA名義の証明書によるもこれを認めることができない。また、他にこれ
を肯定するに足りる征拠がない。かえって当審における抗告人の審尋の結果と本件
記録によると、抗告人の実母であるAが昭和一四年頃本件家屋を当時の所有者Bか
ら賃借したこと、Bが本件家屋を同二〇年頃Cに売却し、同人においてその所有権
を取得すると同時に、Aに対するBの賃貸人たる地位を承継したこと、抗告人が昭
和二五年か或は同二六年頃Cから本件家屋を代金六万千円で買い受け、その所有権
を取得すると同時に、Aに対するCの賃貸人たる地位を承継し、ここにAは、抗告
人に対し本件家屋の賃借権を有するに至ったが、その後Aは暗黙のうちに右賃借権
を放棄し、おそくも本件競売申立当時である昭和二九年一一月二四日頃から本件家
屋に賃借権を有しなくなったことがうかがい知ることができるのである。
 されば本件競売期日の公告に民事訴訟法第六五八条第一頃第三号所定の事項の記
載のないことは当然であって、右公告にはなんら違法の点がないから、この点の抗
告理由はこれを採用することができない
 (二) 別紙二の抗告理由中競売手続中断について。
 <要旨>不動産競売手続が開始された後は、原則として当事者は、その手続の主体
ではなく、その手続は、主として執行裁判所の職権によつて遂行されるもの
であるから、当事者が死亡しても、権利実現の必要がなくならない限り、その手続
を遂行するに差支えがないので、不動産競売手続においては民事訴訟法におけるよ
うな中断はないものと解するのが相当である。本件記録によると、本件不動産競売
手続が開始された後である昭和三〇年六月四日に本件債権者Dが死亡したこと明白
であるが、これがため本件競売手続の中断を来すものでないことは、前段説示の理
由から当然といわなくてはならない。したがつて右債権者の死亡により本件競売手
続の中断を来すものであるとの抗告理由はこれを採用することができない。
 以上、(一)、(二)以外の抗告理由は、適法の抗告理由とはならないし、なお
記録によるも本件競落を不許とすべき事由を発見することができない。それ故原決
定は相当である。
 よつて民事訴訟法第四一四条第三八四条第九五条第八九条を適用し、主文のとお
り決定する。
 (裁判長裁判官 猪股薫 裁判官 臼居直道 裁判官 安久津武人)

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