弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
         理    由
 本件抗告の要旨は、申立人からA市警察署長Bを強要罪で起訴されたいと告発し
た事件に付、昭和二十五年六月二十四日津地方検察庁四日市支部から不起訴処分に
付する旨の通知を受取り、同年六月三十日、刑事訴訟法第二六二条による審判請求
を同庁検事Cに差出したところ、そのような手続はないし、津の方へやつても直ぐ
返つてくるから検察審査会の方へ請求するのが本当だと云はれ、同検事の言を信
じ、審査会の方へも申立したが、後日本件請求もできる旨聞知し、昭和二十五年八
月二日本件請求書をC検事に提出した次第です。然るに津地方裁判所は、申立人の
右請求は、法定の期間経過後になされたものとして、棄却されたが、申立人が右期
間を経過したのは法律に無知のためと検事の言を信じたがためであるから、この点
を十分斟酌の上、申立人の請求の内容につき審理されたいと謂ふにある。
 <要旨>よつて本件記録について案ずるに、申立人は、刑事訴訟法第二百六十二条
第一項の請求を津地方裁判所に為したところ、同裁判所は昭和二十六年一月
九日、右の請求は、同法第二百六十二条第二項の期間経過後に為されたものである
から、不適法であるとして、同法第二百六十六条第一号に基き、申立の請求を棄却
する旨の決定を為し、右決定謄本は、昭和二十六年一月十二日申立人に到達したこ
とが明らかである。然れども右決定に対しては、刑事訴訟法第四百三十三条の特別
抗告の許される場合を除いては不服を申立てることが出来ないものであつて、申立
人が右特別抗告をしていないことは、抗告の申立の趣旨によつて明らかであるか
ら、本件抗告は、不適法である。原決定につき、抗告が許されないことは、刑事訴
訟法第四百二十条により、原決定は判決前に為された訴訟手続に関する決定であつ
て、同法第二百六十六条の決定については即時抗告を許す旨の規定がないので、抗
告をすることができないことになつていることから明らかである。更に若し原決定
に於いて申立人に手続費用の負担を命ずる決定が為されて居る時は、その点につい
ては、同法第二百六十九条により即時抗告を為すことが出来るけれども、右手続費
用負担の決定が為されていないので、この点についても不服を申立ることができな
い。なお原決定について、不服の申立が出来ないことは、刑事訴訟法第二百六十六
条第一号の請求棄却の決定をするとき、手続費用があつたときは決定で申立人に負
担せしめることができ、右決定についてのみ即時抗告ができることになつているこ
とから考えても、疑問の余地がない。
 以上のように本件抗告は、法律上許されないものであるから、刑事訴訟法第四百
二十六条一項により、これを棄却する。
 (裁判長判事 堀内斉 判事 鈴木正路 判事 赤間鎭雄)

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