弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人柳川俊一、同並木茂、同野崎彌純、同杉浦福夫、同東條敬、同瀬戸正
義、同松岡敬八郎、同渡辺龍太郎、同一ノ関昇允、同岡元秀人の上告理由について
 本件上告理由は、要するに、農地法五条所定の許可の制度は、専ら国民経済的な
観点から効率的な農地等の所有及び利用関係を調整し、わが国全体の農業生産力の
安定、向上を図ることを目的としたものであつて、近隣農地の所有者その他の第三
者の有する日照、通風等の具体的利益を個別的に直接保護する趣旨のものではなく、
これらの者は右許可の取消しを求める法律上の利益を有しないと解すべきであるか
ら、被上告人が本件許可の取消しを求める原告適格を有するとした原審の判断には、
法令の解釈、適用を誤つた違法がある、というものである。
 そこで検討するのに、近隣農地の所有者その他の第三者が所論のとおりおよそ一
般的に農地法五条所定の許可の取消しを求める法律上の利益を有しないものと解す
べきであるかどうかはともかく、本件において被上告人が本件許可の取消しを求め
るについての原告適格を基礎づけるものとして主張するところは、本件許可によつ
て本件畑地上に建物が築造されると、その所有する隣接畑地の日照、通風等が阻害
されて農作物の収穫が激減し、その農地としての効用が失われるおそれがあるとい
うのであつて、それは、本件許可自体によつて直接もたらされる法律上の効果では
なく、転用後の本件畑地上に特定の建物が築造されることによる事実上の影響にす
ぎないものというべきである。したがつて、本件において被上告人が本件許可の取
消しを求めるにつき法律上の利益を有せず原告適格を欠くものとすべきことは明ら
かである。
 そうすると、被上告人が原告適格を有するものとした原判決には、結局、法令の
解釈、適用を誤つた違法があることになり、右違法が判決の結論に影響を及ぼすこ
とは明らかであつて、原判決は破棄を免れず、本件訴えを不適法として却下した第
一審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、
八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    横   井   大   三
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    木 戸 口   久   治

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