弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人勅使河原直三郎の上告理由(昭和三〇年八月一二目附)について。
 所論は、原判決が、上告人は当事者たる適格を欠くから、その請求は不適法であ
るとして排斥したのは違法であるというにある。しかし記録によれば、上告人は原
審において請求の趣旨訂正書を提出し(二一三丁)、「売買による所有権移転の無
効なることを確認しこれが抹消登記手続をせよ」という主張を明確にしたが、これ
を陳述した口頭弁論期日においては、同書第三項記載の「右物件はBの所有なるこ
とを確認す」とある部分は、特に除外して陳述しなかつたことが認められる(二二
三丁)。してみれば上告人の請求の趣旨は、被上告人名義の所有権移転登記は無効
であるから、右登記の抹消手続を求めるというに帰し、特に参加人の所有権の確認
を求める申立はなかつたものと認めるのが相当である。そして登記が無効であつて
も、その登記の抹消は、抹消登記請求権を有する者のみがなしうるのであるから、
原審が、上告人はなんら本件土地建物に関して自己の権限を主張するのでないとし
て、その登記抹消手続の請求を排斥したのは、判示の用語が適確でなかつたことは
別として、そのかぎりにおいては正当であつて結論に誤りはない。所論は採用でき
ない。
 同代理人上告理由(昭和三〇年八月三〇日附)第一点について。
 所論は、所論の理由によつて、乙二、三号証に記載するような、Dが所論(二)
の契約の買主たる権利義務の一切を被上告会社に譲渡したとの事実は、実験則上認
めることはできないと主張するに帰する。しかし記録によれば、所論の事実を肯定
するに足る証人の供述も存するのであるから(一八〇丁、一八二丁裏ないし一八三
丁裏)、原判決に実験則違反があるというのは当らない。従つてまた審理不尽、理
由不備も認められない。
 同第二点について。
 所論は、原判示の(一)の契約が無効であるから、これを前提とする(二)(三)
の契約もまた無効であるというに帰する。所論は、結局原審の適法にした証拠の取
捨ないし事実認定を非難するにすぎず採用できない。(原審は、(一)の契約につ
いて、上告人AがE木工所なる会社の不存在と、従つて契約の無効なことを知つた
ので、改めて(二)の契約を締結したと認定したのであつて、所論のような結論を
存ずる理由がない)。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

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