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判決 平成14年1月9日 神戸地方裁判所 平成13年(わ)第928号 道路
交通法違反被告事件
          主       文
      被告人を懲役6月に処する。   
      この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
      訴訟費用のうち証人Aに関する分は被告人の負担とする。
          理       由
(罪となるべき事実)
 被告人は,公安委員会の運転免許を受けないで,
第1 平成13年4月17日午後4時40分ころ,神戸市B区Ca丁目b番c号付近道
路において,普通乗用自動車を運転した
第2 同年6月14日午後3時20分ころ,同市D区Ed丁目e番f号付近道路にお
いて,普通乗用自動車を運転した
ものである。
(証拠の標目)‐かっこ内は検察官請求証拠等関係カード甲乙の番号
 省略
(争点に対する判断)
 弁護人は,被告人には無免許運転の故意はないから,運転免許証不携帯の罪が成
立するにすぎない旨主張する。
 しかしながら,関係各証拠によれば,被告人は,平成11年6月7日に運転免許
更新センターに赴き,運転免許証更新の申請をしたが,それまでの交通違反のた
め,兵庫県公安委員会において,既に運転免許取消の行政処分を受けており,それ
が未執行になっていたことから,係官から,運転免許取消処分の執行を受けるより
も運転免許を失効させる方が有利である旨の説明を受け,運転免許証更新の申請を
撤回して,その有効期間の経過により同日限りで運転免許を失効させたものであっ
て,被告人には,本件各犯行当日,自己が無免許であることの認識のあったことが
十分認められる。
 被告人の公判供述等は,前記の運転免許証更新の申請をした際に,係官から上記
のような説明を受けておらず,優良運転者として運転免許証の有効期間が5年に延
び,罰金を払うまで運転免許証を上記センターに預けていると思っていたなどとい
うのであるが,被告人は,運転免許取消の行政処分を受け,それが未執行になって
いたものであって,係官が,そのような被告人に対し,運転免許証の有効期間が5
年に延びるとか,罰金を払うまで運転免許証を上記センターで預かるなどと言うは
ずがないこと,被告人は,運転免許証更新の申請をした際に支払った手数料等の返
還を受けたことを認めているが,それは運転免許証更新の申請を撤回したからにほ
かならないこと,更には,被告人が,上記運転免許証の失効後に普通乗用自動車の
無免許運転をしたことにより,平成12年1月13日と同年12月7日の2回にわ
たり罰金刑に処せられていることなどからして,被告人の上記のような公判供述等
は全く信用できないことが明らかである。
 以上のとおりであって,被告人に無免許運転の故意があったことに疑いを容れる
余地はなく,弁護人の上記主張は採用できない。
(法令の適用)
 被告人の判示各行為はいずれも道路交通法118条1項1号,64条に該当する
ところ,各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であ
るから,同法47条本文,10条により,犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加
重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役6月に処し,情状により同法25条1項を
適用して,この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用について
は,刑事訴訟法181条1項本文により,証人Aに関する分は被告人に負担させる
こととする。 
(量刑の事情)
 本件は,被告人が,2回にわたり,普通乗用自動車を無免許運転したという事犯
であるが,被告人は,交通違反を重ねて,運転免許取消の行政処分を受けていた
(未執行)ことから,平成11年6月7日限りで運転免許証を失効させながら,自
分勝手な理屈を振り回して,いまだ運転免許を有していて免許証の不携帯に過ぎな
いなどと強弁し,自己名義の自動車を所有して無免許運転を繰り返すうち,本件各
犯行に至っただけでなく,本件裁判中も無免許運転を繰り返すとともに,今後も無
免許運転を続ける旨公言しており,被告人の交通法規軽視の態度には強いものがあ
って,被告人の刑事責任は軽くないといわざるを得ないから,本件は実刑をもって
臨むことも十分考えられる事案である。
 しかしながら,被告人にはこれまで禁錮以上の刑に処せられた前科がないこと,
被告人が64歳と若くはないこと,被告人の妻の健康状態がよくないこと,強制執
行を受けて,これまで住んでいた住居を明け渡すに至っていることなどの,被告人
のために酌むべき事情もあるので,被告人に対し,今後絶対に無免許運転をしない
ように強く戒めた上で,今回はその刑の執行猶予の言渡しをすることとする。
(検察官の科刑意見 懲役6月)
 よって,主文のとおり判決する。
     平成14年1月9日
        神戸地方裁判所第12刑事係甲
 
           裁判官     森   岡   安   廣

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