弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
本件申立てを却下する。
申立費用は申立人の負担とする。
       理   由
一、本件申立ての趣旨および理由は別紙(一)のとおりであり、これに対する被申
立人の意見は別紙(二)のとおりである。
二、被申立人は課税処分と滞納処分とは別個独立の処分であるから滞納処分の執行
停止を求めるためには滞納処分の取消しの訴えを本案としなければならないとこ
ろ、本件申立ては課税処分の取消しの訴えを本案とするものであるから不適法であ
ると主張する。
 課税処分と滞納処分は前者が納税義務を確定する手続における処分であり、後者
が確定した納税義務を強制的に実現する手続における処分である点で目的を異にす
る別個独立の処分であり、いわゆる先行処分と後行処分の関係に立つものでないこ
とは被申立人の主張するとおりであるけれども、他面、滞納処分手続は課税処分手
続の続行としてなされるものであることも否定できないから、課税処分取消しの訴
えを本案として、当該税額の滞納処分の執行停止を求めることは、行訴法第二五条
第二項にいう「手続の続行の停止」を求めるものとして適法というべきであつて、
両処分が別個独立の処分であるとの理由をもつて本件申立てが不適法であるとの被
申立人の見解は採用することができない。
三、ところで、申立人は右公売処分が執行され申立人主張の土地が他人に渡ること
になれば、右土地のうちには公衆用道路に供された部分があり、また水槽タンクの
設置等があることからこれをめぐつて紛争が発生することは必定であり、申立人は
信用を失墜することになるから本件公売処分の執行によつて申立人は回復の困難な
損害を蒙る旨主張するが、右事実は本件全疎明資料によつても認めることができな
い。
 してみれば、本件申立ては行政事件訴訟法第二五条第二項所定の回復の困難な損
害の点について疎明がないことに帰するからその余の点について判断するまでもな
く失当というほかない。
四 よつて、本件申立てはその理由がないので却下することとし、申立費用の負担
につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり決定す
る。
(裁判官 高津環 小木曾競 海保寛)
別紙(一)
申立の趣旨
別紙物件目録記載の不動産につき、東京法務局八王子支局昭和三九年一二月一六日
受付第二九三九五号、権利者大蔵省の差押登記に基く公売処分は御庁昭和四五年
(行ウ)第八号、更正処分等取消請求事件の判決が確定するまで之を停止する。
 との御決定を求める。
申立の原因
一、申立人は申立人の左記三期の事業年度の法人税につき、左記のような課税処分
を受けた。
一、昭和三五年九月一日~昭和三六年六月二〇日事業年度分
<略>
二、昭和三六年七月一日~昭和三七年六月三〇日事業年度分
<略>
三、昭和三七年七月一日~昭和三八年六月三〇日事業年度分
<略>
二、而して被申立人は右による法人税徴収の為、別紙物件目録記載の不動産につき
東京法務局八王子支局昭和三九年一二月一六日受附第二九三九五号をもつて差押登
記をなし、昭和四六年二月二三日午後一時三〇分公売に附する旨公告した。
三、然しながら前記の各更正及び、加算税の賦課決定は著じるしく多額なもので不
当なものであるので、御庁に右更正処分等取消請求の訴(昭和四五年(行ウ)第八
号)を提記し、現在審理中である。
四、ところで、既に公売期日もせつぱくしており、取消判決の確定をまつていて
は、公売処分の続行により、別紙物件目録記載の不動産を失う事になる。
 申立人は昭和四六年一月二七日に昭和三九年度源泉所得税(本税、加算税)金九
一万五〇五九円也を納付したにかかわらず、東京国税局、公売公告第一五号の公売
通知書により二重に公売通知書を出した事は不当である。
 また六番三、六番三〇は現況は公衆用道路であり、六番二九には豊田団地のゆい
つの水源である水そうタンクがある。
 若しかかる物件が他人に渡る事になれば同団地は重大な危機に直面する事になり
ふん争が発生する事は必至であり、かつ信用を失墜する事になり、申立人は回ふく
の困難な損害を受ける事になる。
五、よつて申立人は行政事件訴訟法第二五条により、申立の趣旨記載の決定を求め
る。
物件目録(省略)
別紙(二)
意見の趣旨
本件申立てを却下する。
申立て費用は、申立人の負担とする。
との決定を求める
理   由
一、本件申立ては不適法である。
 申立人は、公売処分の執行停止を求めている。
 しかし、行政処分の執行停止を求めるためにはその行政処分の取消しの訴を提起
することが要件とされている(行政事件訴訟法第二五条第二項)ところ、本件は、
公売(滞納)処分の取消しの訴の提起がないのに、申立人は、これとは別個独立の
処分である課税処分の取り消しを求める訴を提起したことを理由として、滞納処分
としての不動産公売処分の執行停止を求めるものであるから、右申立ては不適法な
ものである。
二、本件公売処分の執行により、回復の困難な損害は発生しない。
(一) 本件の公売しようとする物件は、全て商品として分譲のため分筆したもの
のうち、売却できぬうちに被申立人により差し押えられた部分である。これら物件
は本来売買の目的物なのであつて、かりに、本件物件が公売されることにより申立
人が損害を受けたとしても、それは金銭によつて充分かつ容易に填補されるもので
あつて何ら回復困難なものではない。
(二) 申立人のいう豊田団地がいずれにあるか明らかでないが、申立人が分譲し
た日野市豊田所在通称くるみ団地には、市営上水道が埋設されて飲料水等として住
民に利用されているのである。
 申立人のいう水そうタンクは、六番二九にあるのではなく、六番壱と河川敷の境
界辺上にあり、二、三の住民に利用されているが、飲料としてではなく、庭池用と
してであつて申立人の主張するような重要なものではない。
(三) 六番参、六番参〇の二筆は、道路として利用されていることは認めるが、
現況道路であるからといつて必ずしも換価々値がないとはいえない。
 ことに、本公売においては、六番壱、六番参、六番弐九および六番参〇は、一括
して公売することになつているのであり、かつ、袋地であるから、右道路を公売す
ることにより他の住民に何らの影響を及ぼさないから、申立人の信用が損なわれる
ことはない。
三、昭和四六年二月一〇日付公売通知書(公売公告第一五号)のうち、公売にかか
る国税の額、昭和三九年度源泉税本税八八三、四五九円、加算税八一、六〇〇円と
記載してあるのは、誤りであることは認める。
 ただし、申立人はその余の源泉税の延滞税および法人税について、いぜん滞納中
なのであつて、その滞納処分のため本件物件の公売を行なうことに何ら違法はな
く、行政事件訴訟法第二五条による執行停止を求められるいわれはない。
 以上の理由により、本件申立ては、失当であり却下さるべきである。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛