弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     当審における訴訟費用は、被告人の負担とする。
         理    由
 弁護人野村均一の控訴趣意は、別紙の通りである。
 その第一点について。
 本件起訴状の公訴事実の記載を見るに、所論のように、犯罪の動機が記載せられ
ていることは、明らかである。公訴事実は、刑事訴訟法第二百五十六條に定むる通
り、犯罪の日時、場所、犯行の方法手段等を記載して犯罪事実を特定し、よつて訴
因を明確にすることが必要であつて、犯罪事実及び情状に関し、裁判所に予断を<要
旨>抱かしむる虞れのある事項を記載することを禁止されているが、本件のような暴
行傷害に関する公訴事実については、犯罪の構成要件に該当する事実のみを
記載しただけでは、これを具体的に明確ならしめることは困難であつて、これを明
確ならしめるには、犯罪の動機も相当程度に記載することが必要である。而して起
訴状記載の動機の点は、本件傷害罪についての具体的事実を明確にするため必要な
程度のものであつて、予断を抱かしめる虞のある不当なものでないことが明らかで
あるから、本件公訴事実の記載に違法な点はなく、論旨は、採用することができな
い。
 同第二点について。
 原判決は、その犯罪事実として起訴状記載の公訴事実を引用しているが、原判決
挙示の証拠を綜合すると、被告人は、Aと共に生命保険の外交員をしていたもので
あるが、Aが、被告人と共同の地盤で、被告人より成績を挙げていたので、これを
快く思わず、憤慨の末昭和二十五年八月十二日頃、原判示A方に到り、就寝中の同
人に対し「やいA居るか」と言つて怒鳴り込み、Aの胸倉を掴んで押し立てたの
で、同人が被告人を押し返さんとしたところ、被告人は所携のナイフを振り上げて
斬りつけたので、Aが原判示の通りの傷害を負つたことが認められ、原判示のよう
に、被告人が、「片手を以てAの首を扼し、更に所携のナイフを同人に向つて突き
出し」た点は事実誤認であることは、所論の通りである。然れども、「首を扼し」
たことがなく、ナイフを「突き出し」たのでなく、「振り上げて斬り付け」たに過
ぎないのであつたけれども、被告人が原判示の通り、Aに対し所携のナイフで傷害
を負わしめたことは間違いないことであるから右の事実誤認は、比較的軽微なもの
で、犯罪の成否又は量刑について、判決に影響を及ぼすこと明らかなものと解する
ことはできない。原審裁判所としては、証拠に基いて、微細な点に至るまで正確に
認定し、起訴状記載の公訴事実を鵜呑みにすることは愼しむべきことであるけれど
も、前記のような事実の誤認だけでは、原判決を破棄する程のこともないので、論
旨は採用することができない。
 同第三点について。
 「ナイフを突き出し」ても切創を負わしめ得ることは、経験則に違反するもので
ない。即ちナイフを突き出すと同時にそのナイフが相手の肉体に触れた時は、多く
の場合刺創を生ずるけれども、互に格闘しているとき、ナイフを突き出すと状況に
より、切創を与えることもあるので、原判決が「ナイフを突き出し」て、切創を与
えたと認定したことは、その理由にくいちがいがあるものと謂うことはできない。
而も前記説明の通り、被告人は、ナイフを突き出したのでなく、振り上げて斬り付
けたことが真相に合致し、これがため切創を与えたもので、右の「突き出し」と認
定したのは、判決に影響を及ぼさない事実誤認と謂うことができるから、この点に
ついても、論旨は理由がない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により、本件控訴を棄却し、当審における訴訟
費用は、同法第百八十一条により、全部被告人の負担とする。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 堀内斉 判事 鈴木正路 判事 赤間鎮雄)

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