弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
  弁護人根本仙三郎上告趣意第一点について。
  しかし記録によると、原審第二回公判期日は当初第一回公判期日に決定したよ
うに、昭和二三年七月八日に原審法廷で開廷されて弁護人根本仙三郎が出頭し、証
人A、同Bの二名を訊問し、弁護人は被告人の為め有利な弁論をした旨が記載され
ている。(記録第九四丁裏以下第一〇五丁)所論の第二回公判調書には、同日の公
判は何時に開廷されたかは記載されてないが、同弁護人は同公判に出廷し立会つた
ことは、前記の通り記載されているのである。そして旧刑事訴訟法第六四条によれ
ば、公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されているものは、同調書によつ
てのみ証明することを要し他の反証を許さないのであるから、結局同弁護人は右公
判期日の審理に立会つて弁論したものと認めるの外はない。してみれば原裁判所は
不法に弁護権の行使を制限したということはできない。論旨は理由がない。
 同第二点及び第三点について。
 原判決は被告人の供述だけで故なく侵入した事実を認定したのではなく、原審公
廷に於ける証人Aの供述及び原審の検証調書を綜合して、被告人は他人の邸宅と知
りながら故なく即ち正当な理由なくして之に侵入したと認定したものであつて右証
拠を綜合すれば原判決摘示の事実は十分認められるのである。原判決は、判示邸宅
並に附近の状況及び犯行の時刻等から見て本件では被告人主張の痔疾で休憩する為
め侵入したとのことは、侵入するについての正当な理由でないとして採用しなかつ
たところである。してみれば原判決には証拠によらずに事実を認定した違法又は罪
となるべき事実を判示しない違法はない即ち理由不備の違法はないといはねばなら
ぬ。論旨は理由がない。
 被告人C上告趣意書及び追訴と題する書面について。
 被告人提出の上告趣意書の要旨は原判決の事実認定を非難するに帰するから上告
適法の理由とはならぬ。又追訴と題する書面の要旨は、弁護人根本仙三郎の上告趣
意第一点と同旨であるから、前記第一点に対する判断によつて了知せらるべきであ
る。
 よつて、刑事訴訟法施行法第二条及び旧刑事訴訟法第四四六条により主文の通り
判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 岡本梅次郎関与
  昭和二四年二月八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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