弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件を水戸地方裁判所竜ケ崎支部に差し戻す。
         理    由
 本件公訴事実は公判請求書には司法警察官意見書記載の犯罪事実が引用され同意
見書の記載によれば「被告人は(一)Aと共謀の上昭和二二年七月五日午前一時頃
茨城県稲敷郡a村b町c番地履物商B方より中古自転車一台外一六点合計七四八四
円相当を窃取し(二)さらに右同様同日午前二時二〇分頃同県同郡同村b町d番地
C方より国防色ズボン外九点合計五八〇〇円相当を窃取したものである」というの
であつて、右起訴状には罪名は窃盗、被告人氏名はDと記載されている。ところで
右起訴前に作成され原裁判所に提出された関係書類によれば、E(自称本籍茨城県
多賀郡e町大字fg番地、住所東京都浅草六区h町i番地、無職当二一年)なるも
のが昭和二二年七月五日取手警察署巡査F及び同Gに不審尋問を受け賍品を所持す
るものと認められて取手警察署に同行され、即日同警察署警部補の請求により水戸
地方裁判所土浦支部判事の発した逮捕状によつて逮捕されたのであるが、同日同署
に引致されると直ぐ犯罪事実の大要と弁護人を選任することができる旨を告げられ
た調書には氏名をDと自署押印したのである。しかして同日同署において司法警察
官警視代理巡査部長Hより被疑者尋問を受けたが、氏名はD偽名E、年令は当二一
年職業は川崎市I株式会社自動車運転助手、住所は同市jk丁目同会社寄宿舎第一
寮一二号室、本籍は茨城県l町大字m番地不詳、出生地は本籍地に同じである旨供
述し、前示意見書記載の犯罪事実のごとくAなるものと共謀して二回に窃盗に及ん
だことを自供し署名押印したのであるが、さらに同年七月七日水戸地方検察庁竜ケ
崎支部において検事多田正一から尋問を受けた際にも氏名年令職業及び住居につい
ては右同様に供述し、被疑事実についても自供して署名押印をしているのである。
 <要旨>してみると検事が本件公訴提起に際して被告人として指定したのは右検事
の尋問に際してDと名乗る被疑者であつて、よしや同人がEなる偽名を使つ
たことがあるとしても、当時はDとしての本籍や身元調査の結果が判明していなか
つたことでもあるので、これもまた偽名であるとはにわかに断定しがたく、その真
実の氏名の判明しないことが客観的に明白ではなかつたのであるから、右は旧刑事
訴訟法第二九一条第二項後段にいう「氏名の知れない時」であるとして「容貌、体
格その他の徴表をもつて被告人の指定をすべき」場合には該当しないというべきで
ある。従つて検事が公判請求書に被告人氏名としてDとのみ記載したことを目して
旧刑事訴訟法第二九一条に違背するものとはいわれず。このことの故に本件公訴提
起手続が右規定に違反したため無効となるわけのものではない。しかるところ、本
件記録にあらわれた関係証拠及び被告人の当審における供述によつて明らかなごと
く検事が本件被告人と指定して公訴を提起した自称Dなる者(原判決が甲被告人と
略称する者)は公判請求と同時に令状を請求されたが、勾留訊問前に逃走し、昭和
二七年三月二五日にいたつてD(茨城県真壁郡l町大字n、o番地住居東京都世田
谷区p町q丁目r番地昭和三年四月一八日生)なるものが原裁判所の本件公判廷に
被告人として出頭して審理を受け以後同年一〇月二九日にいたるまで前後六回にわ
たる公判廷における審理の結果同人が起訴せられた甲被告人とはまつたく人違であ
ることが明らかとなつたので「Dなる乙被告人」として公訴棄却の判決を受けたも
のであつて、甲被告人はついに原審公判の審理を受けるところがなかつたまま現在
に及んでいるのであるが、その後の調査の結果同人のいうDもやはり偽名であつて
本名はD(亡J二男大正一五年三月三〇日生)で本籍は茨城県真壁郡l町大字no
番地であることが判明した次第である。しからば本件被告人D(原判決のいわゆる
甲被告人)は昭和二二年七月七日原裁判所に適法に公訴を提起されたままなんら第
一審公判手続による審理を受けることなく現在に及んでいるものであるが故に、同
人に対して旧刑事訴訟法第三六四条第六号を適用して公訴を棄却した原判決の措置
は不法というの外はないものである。よつて旧刑事訴訟法第四〇二条刑事訴訟法施
行法第二条に則り本件を第一審裁判所たる水戸地方裁判所竜ケ崎支部に差し戻すこ
ととし、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 西村康長)

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