弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人海野普吉、同竹下甫、同小田切恒次郎の上告理由第一点の一について。
原判決は、被上告人の民法一一〇条の表見代理の主張を認容し、これによつて上告
人に本件土地売買につき売主としての責任あるものと判断している。すなわち、原
判決は、上告人が昭和二六年八月頃その妻Dに対し自宅の家事一切を処理するにつ
き上告人を代理して法律行為をする権限を与えていたこと、従つてDは右家事関係
処理のため本件土地その他上告人所有の不動産を上告人に代理し管理する権限を有
したこと、右Dは同年同月二三、四日頃訴外Eに対し本件土地を売却して二、三十
万円の金員を調達するよう依頼し、右Eは同月二五日被上告人と折衝の上代金一九
万円で上告人より被上告人に本件土地を売り渡す旨約し、即日手附金五万円が支払
われたこと、次いで同月二七日被上告人は右Dに対し残代金一四万円を支払つたと
ころ、Dは前記Eの受領した五万円を代金の一部として受領したことを承認して家
人をして本件土地売却代金一九万円の受領証(甲二号証)を上告人名義で作成せし
めて被上告人に交付したことを認定し、以上の事実を総合すると、右昭和二六年八
月二七日Dは上告人の代理人として被上告人との間に本件土地を代金一九万円で売
却する旨の売買契約を結んだものと認められるとし、かつ、右Dの本件土地売却行
為は上告人より与えられた前示代理権限を超越してなされた行為というべきである
が、上告人、被上告人およびE間の当時における親密な関係、被上告人が上告人の
好意により本件土地を自宅の敷地として使用しうるに至つた原判示の経緯のほかに、
被上告人はEが上告人の事業活動においてそのいわば番頭格の地位にあることを知
り同人を深く信頼していたこと、この両者間に取りきめられた契約内容どおりの書
面の作成、残代金の授受が円滑に上告人の妻たるDとの間に行われ、その間に何ら
の疑念をさしはさむ余地がなかつたこと、上告人の当時の生活内容から見て本件土
地をその地上に居住する被上告人に売却する行為が上告人にとつてさして重要なも
のではないとD、Eおよび被上告人において考えていたこと、被上告人は菓子小売
業を営むものであり不動産売買について専門的知識をもつものではないことが証拠
によつて認められ、この事実関係に徴すれば、被上告人が当時Dに本件土地売却の
代理権ありと信じたことはもつともであると判断し、なお、右売買に際して上告人
本人にその真意を確かめるべきこと、正式な売買契約書を作成すべきこと、印鑑証
明書によつて上告人本人の実印の押捺されたことの確認を求めるべきことは、叙上
のような状況のもとにあつては、被上告人に難きを強いるものというべきであると
しているのである。
 右原審の認定は、挙示の証拠関係に照して肯認できるし、その認定事実関係のも
とでなされた右判断は、すべて首定できるから、右認定にそわないことをもつて原
判決の判断を非難する所論は、採用できない。
 なお、所論は、原審が甲二号証の成立を証拠に基づかずに認定しているというが、
前示のとおり、原判決はその成立の経過を証拠によつて明確に認定判示しているの
であるから、同号証を証拠に供した点に何らの違法もない。また、所論筆蹟鑑定の
申請を却下したことは、原審の専権に属し、審理不尽の違法をきたさないから所論
は、採用できない。
 同第一点の二について。
 本件土地の売買代金が一九万円と定められたことは契約当時における社会経済通
念よりして不相当でないとした原審の認定判断は、原判決引用の第一審判決が挙示
する証拠に徴し肯認できる。原審が所論地価の再鑑定申請を採用しなかつたことは、
原審の専権に属し、審理に尽の違法をきたさない。従つて、所論は採用できない。
 同第二点について。
 所論は、原審が適法になした認定判断に対し、異見を述べるにすぎず、採用でき
ない。また、挙示の判例は、本件と事案を異にするから、判例違背の所論も採用の
誤りでない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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