弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人柘植欧外、同水野祐一、同鶴見恒夫の上告理由について。
 所論は、本件(甲)(乙)の土地は部落民全員の総有に属するところ、右部落民
全員が、右各土地について訴外D、同E、同Fの三名の共有の登記(以下、本件共
有登記という。)を経由したことは、右(甲)(乙)土地を右三名に売却した旨の
通謀虚偽表示をして登記簿上右三名の共有である旨の虚偽の外観を作り出したもの
であるから、民法九四条二項の適用または類推適用により、被上告人らは、右各土
地が右Dら三名の共有ではないことを、善意の第三者である上告人らに対抗できな
い旨主張する。
 思うに、右(甲)(乙)の土地については、それぞれ、明治四〇年一一月二七日
a村大字bの名義で保存登記がされていたが、ついで明治四一年二月七日受附をも
つて、前記Dら三名の名義で売買による所有権移転登記(本件共有登記)が経由さ
れ、さらに昭和三六年五月三一日受附をもつて、第一審被告Gのため、その先代D
名義の三分の一の持分について、相続を原因とする所有権持分移転登記が経由され
ていることは、原審の確定した事実である。
 しかし、さらに原審が適法に確定したところによれば、右(甲)(乙)の土地に
ついては古くから原判示の入会権が存在し、その地盤である右土地は、いわゆる村
中入会の土地として大字bの部落民全員の総有に属して現在にいたつたのであるが、
部落名義の保存登記では登記権利者としての資格を欠如するため、当時のa村の所
有名義にするか、あるいは部落民全員の名義にするかの岐路に立たされ、登記の必
要上、当時の部落の区長ないし区長代理をしていた前記Dら三名の代表者名義で、
右のとおり本件共有登記を経由したというのである。
 そうすれば、総有の対象である右(甲)(乙)の土地については、もともと共有
持分というものは存在しえないものであるにもかかわらず、あえて本件共有登記が
経由されるにいたつたのは、前示のように、部落民全員が入会権者として登記の必
要に迫られるがら、共有の性質を有する入会権における総有関係を登記する方法が
ないため、単に登記の便宜から登記簿上前記三名の共有名義にしたにすぎないので
あつて、これを捉えて入会権者と前記三名との間に仮装の売買契約があつたものと
解し、あるいはこれと同視すべきものとすることは、相当でないというべきである。
したがつて、民法九四条二項の適用または類推適用がないとした原審の判断は是認
できる(所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。)。原判決に所論
の違法はなく、論旨は採用できない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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