弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴及び本件附帯控訴に基づき,原判決主文2,3項を次のとおり変更
する。
(1)控訴人は,P1に対し,55億3966万8080円及び
うち27億1480万7666円に対する平成18年5月1日から,
うち51万1360円に対する同月9日から,
うち3210万8000円に対する同月23日から,
うち1345万8837円に対する同月24日から,
うち6億9658万1163円に対する同月25日から,
うち1007万8687円に対する同月26日から,
うち558万円に対する同月29日から,
うち300万円に対する同月30日から,
うち20億5050万0141円に対する平成19年5月1日から,
うち79万2036円に対する同月15日から,
うち1050万3177円に対する同月22日から,
うち174万7013円に対する同月29日から
各支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
(2)控訴人は,別紙認容額一覧表の団体名欄記載の各団体に対し,それぞれ対
応する認容額欄記載の各金員の支払を請求せよ。
(3)被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,1,2審を通じてこれを9分し,その2を被控訴人らの負担と
し,その7を控訴人の負担とする
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨
(1)原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
(2)被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
2附帯控訴の趣旨
(1)原判決を次のとおり変更する。
(2)控訴人は,P1に対し,78億9662万円及びうち46億8343万円
に対する平成18年5月1日から,うち32億1319万円に対する平成1
9年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せ
よ。
(3)控訴人は,別紙請求額一覧表の団体名欄記載の各団体に対し,それぞれ対
応する請求額欄記載の金員及びうち対応する内金A欄に記載の金員に対する
平成18年5月1日から,うち対応する内金B欄に記載の金員に対する平成
19年5月1日からいずれも支払済みまで年5分の割合による金員の支払を
請求せよ。
第2事案の概要
本件は,神戸市の住民である被控訴人ら並びにP2,P3,P4,P5,P
6,P7(以下,P2以下の6名を「P2ら6名」という。),P8及びP9
が,神戸市長である控訴人に対し,神戸市が別紙請求額一覧表の団体名欄記載
の各団体に神戸市から派遣された職員らのために補助金を交付し,委託料名目
で上記職員らの人件費を支出したことは,公益法人等への一般職の地方公務員
の派遣等に関する法律(平成14年4月1日施行。ただし,10条については,
同年3月31日施行。以下「派遣法」という。)6条2項の手続によらない給
与の支給として脱法行為に当たり,違法無効であると主張して,地方自治法(
以下「地自法」という。)242条の2第1項4号に基づき,神戸市長個人で
あるP1に対しては損害賠償請求を,上記それぞれの団体に対しては不当利得
返還請求をすべきことを求めた事案である。なお,被控訴人らの請求中,控訴
人に対し,P10財団に対して請求すべきことを求める金額には,同財団が平
成20年3月31日に解散した財団法人P11センターの事業を承継し,未履
行債務を引き受けたことによる金額を含むものである。
原審は,P2ら6名の訴えを却下し,被控訴人らの請求を一部認容したので,
控訴人は控訴し,被控訴人らは附帯控訴した。なお,P8及びP9は原審係属
中に死亡し,両名の関係では本件訴訟は当然終了した。
1前提事実(争いがないか,証拠(各項に掲記)及び弁論の全趣旨により容易
に認められる。)
次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の1(同8頁
7行目から同18頁12行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決8頁22行目から同9頁3行目までを,次のとおり改める。
「(イ)財団法人P10財団(以下「P10財団」という。)
P10財団は,平成20年4月1日,財団法人P12財団(以下「P
12財団」という。)がその名称を変更したものである。
P10財団は,高齢化社会における勤労者の福祉の振興のため,市民,
事業者と行政の連帯と協力のもとに,中高年齢者に好適な職種,事業の
調査及び開発,勤労者を対象とする生涯教育事業の実施並びに中高年齢
者の福祉の増進に関する事業を行い,更に神戸市勤労者福祉共済制度の
運営,勤労者の福祉施設の管理運営等の事業を推進し,もって高齢化社
会における勤労者の福祉の向上に寄与することを目的とする団体である。
(乙24)」
(2)同9頁12行目の次に,改行して次のとおり加える。
「P11センターは,平成20年3月31日に解散し,その事業はP10
財団が承継した。また,P11センターとP10財団は,同年10月28
日,P11センターに何らかの未履行債務があったときには,P10財団
がP11センターに代わって当該債務を引き受ける旨の債務引受契約を締
結した。(乙59,60)」
2関係法令の定め
次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の2(同1
8頁14行目から同23頁9行目まで)のとおりであるから,これを引用す
る。
(1)同18頁14行目から15行目までを「(1)派遣法」と改める。
(2)同21頁9行目から同13行目までを,次のとおり改める。
「(2)神戸市の平成21年条例23号による改正前の公益法人への職員の派
遣に関する条例(平成13年条例49号。以下「本件旧条例」という。
乙46。なお,上記改正を定める条例を「本件改正条例」という。)は,
派遣法の規定に基づき公益法人等への職員の派遣等に関し必要な事項を
定めるものであり,同条例は以下の定めを置いていた。」
(3)同21頁14行目の「イ」を「ア」と,同19行目,同25行目,同22
頁4行目,同11・12行目の各「規定している」を「規定していた」と,
同21頁21行目の「本件条例」を「本件旧条例」と,同末行の「ウ」を「
イ」と,同22頁5行目の「エ」を「ウ」とそれぞれ改める。
(4)同22頁13行目から同17行目までを,次のとおり改める。
「(3)神戸市平成14年人事委員会規則7号(乙48,以下「本件旧規則」
という。)は,本件旧条例の規定に基づき公益法人等への職員の派遣等
に関し必要な事項を定めるものであり,同規則2条は派遣先団体等とし
て以下の定めを置いていた。」
(5)同22頁18行目を削除し,同19行目を「ア1項」と,同20行目,
同23頁4行目,同8行目の各「本件条例」を「本件各条例」と,同23頁
3行目を「イ2項」と,同7行目を「ウ4項」と,同1・2行目,同5
・6行目,同9行目の各「規定している」を「規定していた」とそれぞれ改
める。
(6)同23頁9行目の次に,改行して以下のとおり加える。
「(4)神戸市議会は,平成21年2月26日,本件改正条例を可決し,神戸
市長は,同日,同条例を交付した。本件改正条例は,本件旧条例2条1
項各号を削り,「別表第1」各号に掲げるものとの間の取決めに基づき,
当該公益法人等の業務にその役職員として専ら従事させるため,職員(
次項に定める職員を除く。)を派遣することができると定め,P13を
除く本件各団体を上記別表第1各号に掲げた。別表第1各号に掲げられ
ている本件各団体のうち,P14財団,P15研究所及びP16協会を
除く団体は,派遣法6条2項の規定により給与を支給することができる
派遣職員に係る派遣先団体とされた。
また,本件改正条例は,本件旧条例10条各号を削り,派遣法10条
1項に規定する特定法人として条例で定めるものを「別表第2」各号に
掲げると定め,P13を別表第2に掲げた。(乙63)
(5)本件改正条例の附則には,本件訴訟の請求に係る神戸市の不当利得返
還請求権及び損害賠償請求権(これらにかかる遅延利息を含む。)を放
棄するとの定めがある。(乙63)」
3争点
(1)神戸市が,本件改正条例により,本件訴訟における請求にかかる不当利得
返還請求権及び損害賠償請求権を放棄したことにより,本件訴えの利益が失
われたといえるか。
(2)本件各団体に対し,神戸市が派遣職員人件費相当額を補助金又は委託料と
して支出することは,派遣法6条の脱法行為として違法か。
(3)P1の故意又は過失の有無
(4)本件各団体の不当利得及び悪意の有無
(5)神戸市の損害額又は損失額
(6)本件訴訟における請求にかかる神戸市の不当利得返還請求権及び損害賠償
請求権は,本件改正条例により消滅したか。
4争点に対する当事者の主張
(1)争点(1)について
(控訴人)
前提事実のとおり,神戸市は,本件改正条例により,本件訴訟における請
求にかかる不当利得返還請求権及び損害賠償請求権を放棄し,上記請求権は
いずれも消滅した。したがって,本件訴えの利益は消滅したから,本件訴え
は却下されるべきである。
(被控訴人ら)
争う。
(2)争点(2)について
次のとおり訂正し,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決
の「事実及び理由」の第2の4(1)(同23頁20行目から同29頁23行
目まで)のとおりであるから,これを引用する。
ア原判決の訂正
(ア)同24頁13行目の「本件条例」を「本件旧条例」と改め,同25
頁8・9行目の「派遣に関する協定書が存在する」の次に「(同協定書
に基づく合意を以下「本件協定」という。)」を加える。
(イ)同11行目の「派遣先団体」を「当該職員派遣に係る職員の職員派
遣を受ける公益法人等(以下「派遣先団体」という。)」と改める。
(ウ)同27頁10行目の「前記第2,1,(1)」を「前記第2,1,(1),
イ,」と,同17行目の「本件条例」を「本件旧条例」と,同21・2
2行目の「給与支給可能業務」を「地方公共団体の委託を受けて行う業
務,地方公共団体と共同して行う業務若しくは地方公共団体の事務若し
くは事業を補完し若しくは支援すると認められる業務であってその実施
により地方公共団体の事務若しくは事業の効率的若しくは効果的な実施
が図られると認められるもの(以下,これらの業務を「給与支給可能業
務」と総称する。)」と,同28頁24行目の「本件条例」を「本件旧
条例」とそれぞれ改める。
(エ)同29頁15・16行目の「神戸市施策」を「神戸市の施策」と改
める。
イ当審における当事者の主張
(控訴人)
当該派遣職員が従事していた業務に公益性がある以上,補助金の積算根
拠(補助対象経費の決定根拠)にその給与相当額を含めることは合理的で
あり,派遣職員の給与費相当額が補助対象経費に含まれていることについ
て,公益性という観点から改めて審査すべき理由はない。
また,委託料は,委託した業務の処理に要する経費を負担するものであ
り,固有職員であれ,派遣職員であれ,当該業務を処理する職員の給与費
相当額が当該業務を処理するために必要な経費であることに変わりはない
から,その職員の給与費相当額が委託料に含まれるのは当然のことである。
当該業務を委託することの合理性・妥当性について検討すべきであるとい
うのなら格別,業務の委託について地自法232条の2の「公益性」が問
題になる余地はない。
職員を派遣するか否かと,派遣先団体に事業を委託するか否か又は補助
金を交付するか否かとの間には論理的な関係はない。派遣職員にいかなる
業務を行わせるかは,派遣先団体の裁量の問題であり,補助金交付に係る
審査及び委託契約の締結に当たっては,派遣先団体が当該事業に従事させ
ることとした派遣職員の給与相当額を含めることが妥当か否かを審査,検
討しているから,本件派遣が違法であるとはいえない。
(被控訴人ら)
派遣職員に派遣元の地方公共団体の公金で給与を支払う公益性があるな
ら,派遣法6条2項によりその道が開かれている。このルート以外に派遣
職員に派遣元の地方公共団体の公金で給与を支払う公益性があるなどとい
うことは,派遣法は想定していない。
しかるに,本件の補助金は,全て派遣職員の人件費に充てるためのもの
であるから,支出時点において,その違法は確定している。
無給派遣職員の人件費相当分の補助金交付は,派遣法の脱法行為であり,
公益上の理由で補助できるとする地自法232条の2は一般法であるから,
派遣法の脱法行為を正当化することはできない。
(3)争点(3)について
当審における当事者の主張を次のとおり付加するほかは,原判決の「事実
及び理由」の第2の4(2)(同29頁25行目から同30頁8行目まで)の
とおりであるから,これを引用する。
(被控訴人ら)
外郭団体といかに付き合うかは,神戸市行政の要であるから,これに関し
ては,個別の決定は部下に専決処理させているにせよ,神戸市長は,予算編
成会議,議会答弁など,節目節目では自ら関与しているはずである。そして,
本件は明白な違法行為であり,又,公益性の判断を放棄したものであるから,
控訴人は,部下の監督又は自らの補助金査定において過失がある。
(控訴人)
ア最高裁判所昭和61年2月27日第一小法廷判決は,普通地方公共団体
に対するその長の損害賠償責任については,地自法243条の2の適用は
ないと判示している。
長の職責が重いことは確かであるが,長もそれ以外の一般職員も同一の
地方公共団体の内部の者の職責の差異であるに過ぎず,長は地方公共団体
の多様かつ膨大な事務全般を広く浅く総括的に執行し,一般職員は個別の
事務を狭く深く専門的に執行するものであって,個別の問題の執行の適否
の判断は,長よりも担当職員の方がより的確に行える。
一般の職員は故意または重過失がなければ国家賠償法上も地自法上も損
害賠償責任を負わないとされるのに対し,長の責任は,国家賠償法上は故
意または重過失がある場合に限定されるが,地自法上は軽過失でも免責さ
れないとすることは均衡を失している。公務員の責任を厳しく追及すると
公務員の萎縮を招き,公務の適正果敢な運営を阻害することは長にあって
も一般職員と同様である。
したがって,上記最高裁判所判決は変更されるべきであり,P1の神戸
市に対する損害賠償責任の有無は重過失の有無により判断されるべきであ
る。
イ派遣法を審議する国会においては,職員が退職して営利法人等の事務事
業に従事する場合に,当該営利法人等に対して当該職員の給与相当額を補
助金として交付することができるかという質問に対し,第三セクター自体
の社会的な便益が広く地域にもたらされるような事業を行うというような
場合なら地自法232条の2の規定により地方公共団体が援助を行う場合
もあり得ると考えられるとの,補助金については,当該第三セクターに対
する地方公共団体の関わり方を踏まえて,補助金等に係る公益上の必要性
について十分検討が行われるものであり,当該県なり市町村の長あるいは
議会がかかわってお決めになる公益上の判断ということになるとの各答弁
がされたこと,全国のほとんどの地方公共団体に係る派遣先団体は,派遣
職員の人件費を地方公共団体からの補助金又は委託料により賄っているこ
とを考えると,本件支出に関しP1に過失があるということはできず,ま
して重過失など存在しない。
(4)争点(4)について
原判決の「事実及び理由」の第2の4(3)(同30頁10行目から同17
行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
(5)争点(5)について
原判決の「事実及び理由」の第2の4(4)(同30頁19行目から同35
頁19行目まで)のとおりであるから,これを引用する。
(6)争点(6)について
(控訴人)
ア前提事実のとおり,神戸市は,本件改正条例により,本件訴訟における
請求にかかる不当利得返還請求権及び損害賠償請求権を放棄したが,本件
改正条例が,上記権利の放棄を定めた理由は以下のとおりである。
(ア)法文上,補助金により派遣職員の給与相当額を支出してはならない
との規定はなく,ほとんどの自治体において派遣職員の給与相当額を含
む補助金支出が行われてきたこと。
(イ)総務省が開催した地方公務員制度研究会ブロック会議において,同
省は給与相当分の補助金を支出することは差し支えないとの説明を行っ
ており,現在も同様の見解を採っていること。
(ウ)本件支出が違法というのであれば,直接支給が可能な派遣職員に対
しては直接支給を行っていたこと。
(エ)本件支出はいわゆる冗費と判断されるようなものではなく,神戸市
に実質的な損害は生じていないこと。
(オ)派遣先団体に対して莫大な額の不当利得返還請求を行えば,多くの
公益性のある事業が実施できなくなること。
(カ)神戸市長(P1)に対する請求については,およそ個人では支払い
ようのない額であること。
イ普通地方公共団体の権利の放棄の方法は,地自法96条が規定する法令,
条例又は議会の議決による方法と地自法施行令171条の7の規定による
方法とがある。本件改正条例は,本件にかかる損害賠償請求権及び不当利
得返還請求権を放棄する旨の特別の定めを置くものであり,この定めは,
地自法96条1項10号に鑑み当然有効である。
同規定による権利の放棄は,長による特段の行為を必要とせず,議会の
議決によって成立する。また,本件改正条例は可決の日に公布されている
から,これに定める権利の放棄は改正条例の公布により確定したものであ
る。よって,被控訴人らの請求はいずれも棄却されるべきである。
ウ本件改正条例が無効であるとする被控訴人らの主張はいずれも争う。議
会がする権利の放棄の議決に法令上の制限はない。
(被控訴人ら)
ア本件改正条例が可決されたこと(以下「本件議決」という。)は認める。
イ地自法96条1項10号は,議会の議決事項として権利の放棄を定めて
いるが,他方,同法149条は,普通地方公共団体の長は財産の管理処分
の事務を担任すると定めている。権利の放棄が議会の議決事項とされてい
るのは,首長がその判断を誤って住民の重要な利益を害することがあり得
るので,議会が住民の立場に立って監視するということにすぎないから,
議会が権利放棄の議決をしたからといって,直ちに権利放棄の効果が生ず
るものではない。
行政の執行は一般的に首長が行うが,重要な案件は行政事務でも議会の
議決を要するものとしてダブルチェックがかけられている。議会が議決し
たからそれで放棄ができるというものではない。すなわち,権利の放棄に
は実体法上の要件が必要であるところ,本件ではそれが欠けているから,
議会の議決があるからといって権利の放棄ができるものではない。
ウ本件議決は以下のとおり無効であるから,本件改正条例に基づく権利の
放棄の効果は発生しない。
(ア)普通地方公共団体は,法令に違反しない限りにおいて条例を制定す
ることができるものであるところ,本件において神戸市が取得する損害
賠償請求権及び不当利得返還請求権は,本件補助金及び委託金の交付が
派遣法及び地自法に基づいて違法と判断される結果生ずるものであるか
ら,これを放棄することを内容とする本件改正条例は無効である。
(イ)地自法施行令171条の7は,普通地方公共団体の長が債権の免除
をする場合の要件を定めているが,これに鑑みると,権利の放棄に関す
る議会の議決が全くの自由裁量であるはずはなく,それなりの誠実な検
討が必要である。神戸市長及び神戸市議会は,かかる誠実な検討をして
いない。
本件改正条例は神戸市長の提案によるものであるが,市長個人に対す
る請求権を放棄する条例案を市長が提案することは利益相反行為に該当
するのみならず,その提案理由では,市長個人及び本件各団体に対する
請求権をなぜ放棄するのかという理由が示されていなかった。神戸市議
会においては,上記提案に反対する陳情,討論の内容を無視して,政治
的に権利を放棄する議決をしたのであるから,本件議決は無効である。
(ウ)本件改正条例による権利放棄は,住民訴訟をいわば死刑にするもの
であり,住民訴訟を妨害する目的と効果を有する。そのようなものに公
益性はない。権利放棄が一般には議会の裁量であるとしても,公益性の
ない権利放棄は裁量の濫用であり,本件決議はこれに該当する。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件訴えの利益)について
本件改正条例による権利の放棄が仮にその効力を有するとしても,そのこと
は,被控訴人らが控訴人に対して請求することを求めている神戸市の本件各団
体に対する不当利得返還請求権ないしP1に対する損害賠償請求権が消滅した
こと,したがって,被控訴人らの請求が理由がないことを意味するものにすぎ
ず,そのことによって本件訴えの利益が失われると解することはできない。
よって,本件訴えがその利益を欠くものとは認められない。なお,本件改正
条例による権利の放棄の効果については,後記争点(6)において判断する。
2争点(2)(本件各団体に対し,神戸市が派遣職員人件費相当額を補助金又は
委託料として支出することは,派遣法6条の脱法行為として違法か。)につい

(1)派遣法は,神奈川県茅ヶ崎市が同市の商工会議所に対して職務専念義務免
除の方法により職員を派遣し,その給与等を支払ったことの適否について判
示した茅ヶ崎市住民訴訟最高裁判決(最高裁判所平成10年4月24日第二
小法廷判決・裁判集民事188号275頁)等を踏まえ,従前,地方公共団
体毎に職務専念義務免除,職務命令,休職,退職等,様々な方法により行わ
れていた職員派遣について,その統一的なルールの設定,派遣の適正化,派
遣手続の透明化・身分取扱いの明確化等及び行政と民間との連携協力による
地方公共団体の諸施策の推進を目的として制定されたものである。(乙45,
弁論の全趣旨)
同法によれば,派遣職員は,派遣時の原職にとどまるが,その職務に従事
せずに派遣先団体の業務に従事し(4条1項,2項),その給与は派遣先団
体が支給し,地方公共団体は給与を支給しないとされる(同法6条1項)。
もっとも,派遣職員が派遣先団体において従事する業務が給与支給可能業務
である場合又は給与支給可能業務が派遣先団体の主たる業務である場合は,
地方公共団体の職務に従事することと同様の効果をもたらすものと認められ
ることから,その場合に限り,例外的に,地方公共団体は,条例で定めるこ
とを条件として,派遣職員に対し給与を支給することができるものとされて
いる(同法6条2項)。上記派遣法6条1項の規定は,地方公共団体の職員
として地方公共団体の事務を行っていない職員に対し,当該地方公共団体が
地方公共団体の職員としての給与を支給することは,原則として違法である
とする,いわゆるノーワーク・ノーペイの原則(地方公務員法24条1項参
照)を派遣職員について確認したものであり,派遣法6条2項は,給与条例
主義の趣旨も踏まえて,その例外を条例制定を条件に認めたものと解するこ
とができる。
派遣法は,同法6条2項の手続に拠らずに派遣元が派遣先に派遣職員人件
費の相当額を補助金として支出し,派遣先が派遣職員に派遣元と同額の給与
を支給することの可否に関する規定を設けていないが,派遣法の運用につい
ての自治公第15号平成12年7月12日付自治省行政局公務員部長通達は,
派遣法は職員派遣に関する統一的なルールを定めるものであることから,同
法の目的に合致するものについては,その施行後は同法規定の職員派遣制度
によるべきものであるとしている。(乙47)
かかる派遣法の規定,その制定経緯・趣旨,同法の運用に関する通達の内
容等を総合考慮すると,同法の目的に合致する職員派遣については,同法所
定の職員派遣制度によるべきものであり,派遣職員に対する給与の支給につ
いても同法の規定に準拠して行うべきであって,同法6条2項以外の方法に
よる派遣元による給与支給は許されないと解するのが相当である。そうする
と,本件において,本件補助金の支出に係る各交付決定の時点において,補
助金の全部又は一部が本件補助金交付団体への派遣職員人件費として支出さ
れることが予定されていた場合,すなわち,当該支出額が各交付決定の時点
で具体的金額として特定されていたような場合には,本件補助金支出のうち
派遣職員人件費に相当する部分は,派遣法6条1項,2項を潜脱する違法な
ものというべきである。
また,同様に,本件委託料についても,本件委託契約の時点において,委
託料の全部又は一部が本件委託団体への派遣職員人件費として支出されるこ
とが予定されていた場合,すなわち当該支出額が各委託契約締結の時点で具
体的金額として特定されていたような場合には,本件委託料の支出のうち派
遣職員人件費に相当する部分は派遣法6条1項,2項を潜脱する違法なもの
というべきである。
(2)控訴人の主張について
ア上記に関し,控訴人は,まず,当該派遣職員が従事していた業務に公益
性がある以上,補助金の積算根拠(補助対象経費の決定根拠)にその給与
相当額を含めることは合理的であるなどと主張する。しかし,派遣法2条
1項又は同法10条1項の要件に照らして,派遣法上の派遣先団体又は特
定法人であれば,その団体の性質ないし業務の性質が公益性を有すること
は自明とさえいえるのであり,派遣法は,そのことを前提とした上で,そ
のような性質の団体に対して地方公共団体が職員を派遣する場合の給与の
支払について,一定の制限を設けたものであると考えられる。したがって,
当該派遣職員が従事していた業務に公益性があることから,当然補助金の
積算根拠にその給与相当額を含めることが合理的であるとする控訴人の上
記主張は採用できない。
イ次に控訴人は,委託料は委託した業務の処理に要する経費を負担するも
のであり,固有職員であれ,派遣職員であれ,当該業務を処理する職員の
給与費相当額が当該業務を処理するために必要な経費であることに変わり
はないから,その職員の給与費相当額が委託料に含まれるのは当然のこと
と主張する。しかし,派遣元が派遣法6条2項に従い支給する給与分を補
助対象事業の経費の一部として考慮した上で,その相当分は,派遣職員に
給与として直接交付することとし,委託料としては交付しないとすればよ
いだけとも考えられ,派遣職員の給与費相当額が委託料に含まれるのが当
然のこととはいえない。
ウ控訴人は,派遣法は職員の派遣先団体に対する補助金交付に関し何ら制
限しておらず,派遣法6条2項により派遣職員の給与が支給されていない
場合に,公益上の必要があっても当該派遣職員の人件費相当額について補
助金を支出できないとは文言上読めないし,同法の制定経緯等に鑑みれば,
実質的にもそう解すべき理由はないと主張する。
しかし,派遣法が派遣先団体に対する補助金交付に関して明文の制限規
定を設けていないのは,かかる脱法的手法によって,派遣職員の給与が補
助金の形式で交付されることを想定していなかったためと考えられるから,
前記(1)で説示したとおり,派遣法6条1項,2項は,上記のような脱法
的手法も禁止する趣旨と解するのが相当である。また,乙61の派遣法制
定の際の国会審議における自治政務次官の答弁も,市長の公益的判断によ
って派遣職員の給与に係る財政的援助を可能とする見解を示したものとは
解されない。
エ控訴人は,補助金交付に係る審査及び委託契約の締結に当たっては,派
遣先団体が当該事業に従事させることとした派遣職員の給与相当額を含め
ることが妥当か否かを審査,検討しているので違法とはいえないと主張し,
証拠(乙54ないし58)もこれに沿う内容を含んでいる。しかし,派遣
職員の給与費相当額が補助金ないし委託料に含まれるのが当然のこととい
えないことは前記ア,イのとおりであり,控訴人指摘の審査,検討が仮に
行われているとしても,前記(1)の判断を左右するものではない。
オまた,控訴人は,派遣法6条2項による派遣元による給与支給をする場
合についての本件旧条例4条は,時間外勤務手当,管理職手当,通勤手当
及び勤勉手当等の諸手当を支給の対象外としており,派遣先が別途派遣職
員に支給せざるを得ないところ,給与支給元と上記諸手当の支給元が異な
ることとなる結果,源泉徴収額,共済費額の計算等が煩雑となり,派遣職
員に確定申告をさせる等の過度の負担を強いることになると主張するが,
その程度の派遣職員の負担をもって,本件につき派遣法6条2項によらな
い派遣元による給与支給が許される根拠とすることはできない。
カさらに,控訴人は,本件各法人は,神戸市の補助金によってそれに相当
する公益活動を完遂しており,神戸市には何らの損害も発生していないと
も主張するが,前記説示のとおり本件支出は違法な公金支出として許され
ないものを含んでおり,その支出それ自体が神戸市の損害に当たることは
明らかである。
キその他,控訴人は本件支出が適法である旨縷々主張するが,いずれも首
肯し難く採用することはできない。
(3)本件支出についての具体的検討
次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1(2)(
同43頁2行目から同81頁11行目まで)のとおりであるから,これを引
用する。ただし,上記引用箇所に「前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(b
)のとおり,」又は「前記第3,1,(2),ア,(イ),a,(b)のとおり,」
とあるのを,いずれも「上記交付決定時において上記補助金から具体的に派
遣職員の人件費が支出されることが予定されていたというべきであるから,
当該」と,「前記第3,1,(2),ア,(ウ),a,(b)のとおり,」を「上
記交付決定等の時点において,上記補助金のうちいくらが違法な派遣職員人
件費として支出される予定であったかを明らかにすることはできないから,
」と,「前記第3,1,(2),ア,(キ),a,(b)のとおり,」とあるのを,
「計上された人件費のうち,いくらが違法な派遣職員の人件費として支出さ
れる予定であったかは明らかではないから,」と,「前記第3,1,(2),
ア,(コ),b,(a),Ⅱのとおり,」を「上記補助金から派遣職員人件費と
して支出される予定であった部分は違法であるから,」と,「前記第3,1,
(2),イ,(ア),a,(a),Ⅱのとおり,」を「委託料から派遣職員人件費
として支出される予定であった部分について,同契約は違法であるから,」
と,それぞれ改める。
ア原判決43頁5行目から同44頁14行目までを,次のとおり改める。
「(a)前記認定事実,証拠(甲1,56,乙1)及び弁論の全趣旨(控訴人
の原審第6準備書面)によると,P17財団は,控訴人に対し,平成1
7年4月1日頃,要綱①に基づき,平成17年度補助金の交付申請をし
たこと,同財団が上記申請の際に提出した資料中では,派遣職員と固有
職員の人件費予定支出額が職員個人別に記載され,その合計額が1億円
であったこと,同日頃,控訴人によって1億5000万円の交付決定が
なされ,同年9月20日,同決定に基づく補助金として,上記のうち1
億円が支出されたこと,その後平成18年3月31日までに神戸市から
の上記補助金はほぼ全額が交付されたこと,要綱①に係る平成17年度
の派遣職員の人件費支出額(以下「派遣職員補助金決算額」という。)
は4431万3797円であったことが認められる。
(b)以上によれば,上記交付決定等に際しては,補助金から相当額の派遣
職員人件費が支出されることが予定されていたものと認められるから,
その部分に係る当該交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金
の支出も,その限りで違法な公金支出となるというべきである。
もっとも上記交付決定にかかる補助金のうち,派遣職員の人件費支出
に充てることが予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上必
ずしも明確でないが,一般に,派遣職員の人件費支出見込額は当該年度
の現実の派遣職員の人件費と相当程度近似していると考えられること,
本件財団法人等のうち派遣職員人件費の支出予定額が判明しているもの
では,その予定額と現実の支出額とにそれほど大きな差があると認めら
れないことなどに照らすと,上記交付決定等に際して派遣職員人件費と
して支出されることが予定されていた額は,現実に派遣職員人件費とし
て支出された額に等しいと推認するのが相当である。
そうすると,平成17年9月20日に神戸市がした補助金支出のうち
4431万3797円の支出は違法な補助金支出と認めるのが相当であ
る。」
イ同45頁1行目の「P12財団」を「P10財団(旧P12財団,以下
「P12財団」という。)」と,同23行目の「同決定」を「控訴人によ
る交付決定がなされ,同決定」とそれぞれ改める。
ウ同46頁5行目の「P11センター」を「P10財団(旧P11センタ
ー,以下「P11センター」という。)」と改める。
エ同50頁19行目から同52頁1行目までを,次のとおり改める。
「a平成17年度分
(a)前記認定事実,証拠(甲1,97)及び弁論の全趣旨によれば,福祉
振興協会は,控訴人に対し,要綱⑦に基づき,平成17年4月1日付け
で,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,同申請の際には,上記
補助金を,本件派遣職員3名,固有職員2人,パート従業員1人の人件
費合計4642万8000円に充てることが予定されていたこと,同月
15日付けで,控訴人による交付決定がされ,平成18年4月4日まで
に,同決定に基づく補助金として,1億2715万5000円が支出さ
れたこと,福祉振興協会における平成17年度の派遣職員の人件費支出
額は3915万4057円であったことが認められる。
(b)上記認定事実によると,上記交付決定の時点において,上記補助金か
ら相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたものと認
められるから,当該部分に係る交付決定は違法であり,同決定に基づく
補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
もっとも,上記交付決定にかかる補助金のうち,派遣職員の人件費支
出に充てることが予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上
必ずしも明確でないが,上記交付決定に際して派遣職員人件費として支
出されることが予定されていた額は,現実に派遣職員人件費として支出
された額に等しいと推認するのが相当であることは前記のとおりである
から,上記神戸市の補助金支出のうち3915万4057円に係る部分
は違法な補助金支出というべきである。
b平成18年度分
(a)前記認定事実,証拠(甲97,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨に
よれば,福祉振興協会は,控訴人に対し,要綱⑦に基づき,平成18年
4月1日付けで,平成18年度補助金の交付申請をしたこと,同協会が
同申請の際に提出した書面には,平成18年度の人件費予算として,本
件派遣職員3名分,固有職員2人分,パート従業員1人分の人件費合計
額4652万1000円及び本件派遣職員(主幹)1名分の人件費(た
だし,具体的金額は,マスキングにより不明である。)が記載されてい
ること,同年5月23日付けで,控訴人による交付決定がなされ,平成
19年5月18日までに,同決定に基づく補助金として,1億4474
万0689円が支出されたこと,P18協会の平成18年度における派
遣職員の人件費支出額は合計4188万7502円であったことが認め
られる。
(b)上記認定事実によると,上記交付決定等の時点において,上記補助金
から相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたものと
認められるから,当該部分に係る交付決定等は違法であり,同決定等に
基づく補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
もっとも,上記交付決定にかかる補助金のうち,派遣職員の人件費支
出に充てることが予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上
必ずしも明確でないが,上記交付決定等に際して派遣職員人件費として
支出されることが予定されていた額は,現実に派遣職員人件費として支
出された額に等しいと推認するのが相当であることは前記のとおりであ
るから,上記神戸市の補助金支出のうち4188万7502円に係る部
分は違法な補助金支出というべきである。」
オ同52頁23行目から同53頁3行目までを,次のとおり改める。
「a前記認定事実,証拠(甲99,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨に
よれば,P14財団は,控訴人に対し,要綱⑨に基づき平成18年度補
助金の交付申請をしたこと,これに対する交付決定に基づく補助金とし
て,平成19年5月21日までに,2469万1000円が支出された
が,そのうち1287万7012円が地域医療連携システム運営事業に
携わる神戸市からの派遣職員の人件費として当該派遣職員に支払われた
ことが認められる。
b上記認定事実によれば,上記交付決定の時点において,上記補助金か
ら相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたものと認
められるから,当該部分に係る交付決定は違法であり,同決定等に基づ
く補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
もっとも,上記交付決定にかかる補助金のうち,派遣職員の人件費支
出に充てることが予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上
必ずしも明確でないが,上記交付決定に際して派遣職員人件費として支
出されることが予定されていた額は,現実に派遣職員人件費として支出
された額に等しいと推認するのが相当であることは前記のとおりである
から,上記補助金支出のうち1287万7012円に係る部分は違法な
補助金支出というべきである。」
カ同56頁17行目から同57頁4行目までを,次のとおり改める。
「b平成18年度分
(a)前記認定事実,証拠(甲69)及び弁論の全趣旨によると,社会福祉
協議会は,控訴人に対し,要綱⑫に基づき,平成18年4月1日頃,平
成18年度補助金の交付申請をしたこと,同申請の際には,社会福祉事
業について,補助金等(うち,補助金1億9315万8000円,その
他569万5000円)を財源として派遣職員人件費8450万円が,
P34事業について,補助金を財源として派遣職員人件費2623万6
000円が,研究事業について,補助金を財源として派遣職員人件費1
927万3000円が,権利擁護事業について補助金等(うち,補助金
4551万7000円,利用料収入525万円)を財源として派遣職員
人件費2295万9000円がそれぞれ計上されていたこと,同日頃,
控訴人による交付決定がなされ,同年11月10日までに,同決定に基
づく補助金として,6億1179万1000円が支出されたこと,社会
福祉協議会は,平成19年3月31日頃,控訴人に対し,同年度の補助
金の交付変更申請をし,これを受けて控訴人による追加交付決定がなさ
れ,同年5月18日に,同決定に基づく追加補助金として,2417万
8772円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,まず,上記交付決定等の時点において,P3
4事業及び研究事業については,補助金のうちから派遣職員人件費とし
て合計4550万9000円の支出が予定されていたことが認められる。
社会福祉事業及び権利擁護事業については,派遣職員人件費について,
交付決定時において,上記補助金以外の財源からの収入も予定されてい
ることが窺われるところ,平成17年度分と同様の考え方で,社会福祉
事業については,補助金を財源として7880万5000円(8450
万円から補助金以外の財源569万5000円を控除した金額),権利
擁護事業については,補助金を財源として1770万9000円(22
95万9000円から525万円を控除した金額)の支出がそれぞれ予
定されていたといえるから,当該部分に係る交付決定等及び追加交付決
定等は違法であり,同各決定等に基づく補助金及び追加補助金の支出も,
その限りで違法な公金支出となる。
したがって,上記交付決定の時点において,上記4事業について,派
遣職員人件費として,合計1億4202万3000円(4550万90
00円,7880万5000円,1770万9000円の合計額)の支
出が予定されていたといえるから,当該部分に係る交付決定等及び追加
交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金及び追加補助金の支
出も,その限りで違法な公金支出となる。
なお,証拠(甲69)によれば,平成18年度分の補助金の交付変更
申請には,派遣職員人件費の不足(社会福祉事業について2048万4
257円,権利擁護事業について243万4710円)も理由の一つと
されていることが窺えるが,これ以外にも予算よりも支出が過大になっ
ている費目も多く,他方において支出が予算よりも減少している費目も
少なくないことなどに照らすと,結局,上記交付申請に基づいて追加交
付決定された補助金2417万8772円の中に含まれる派遣職員人件
費の具体的金額を的確に認めるに足る証拠はないというほかない。」
キ同60頁2行目から同62頁3行目までを,次のとおり改める。
「a要綱⑯
(a)平成17年度分
Ⅰ前記認定事実,証拠(甲76,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨
によれば,P19公社は,控訴人に対し,要綱⑯に基づき平成17年
度補助金の交付申請をし,控訴人は,平成17年4月1日付けで交付
決定をしたこと,同申請の際に,人件費として2695万4885円
が計上されていたこと,そのうち,派遣職員1人と嘱託職員分の人件
費が合計1527万1604円であったこと,平成18年3月31日
付で,同公社は,控訴人に対し,同年度補助金に係る補助事業実績報
告において補助金精算報告をしたこと,同年5月24日に,同年度補
助金に係る支出命令がされ,同月26日に,同命令に基づく補助金と
して2352万4000円が支出されたこと,要綱⑯に係る派遣職員
補助金決算額は1007万8687円であったことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,上記交付決定等の時点において,上記補助
金から相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたも
のと認められるから,当該部分に係る交付決定等は違法であり,同決
定等に基づく補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
もっとも,上記交付決定にかかる補助金のうち,派遣職員の人件費
支出に充てることが予定されていた額が具体的にいくらであるかは証
拠上必ずしも明確でないが,上記交付決定に際して派遣職員人件費と
して支出されることが予定されていた額は,現実に派遣職員人件費と
して支出された額に等しいと推認するのが相当であることは前記のと
おりであるから,上記補助金支出のうち1007万8687円に係る
部分は違法な補助金支出というべきである。
(b)平成18年度分
Ⅰ前記認定事実,証拠(甲1,77)及び弁論の全趣旨によれば,P
19公社は,控訴人に対し,要綱⑯に基づき,平成18年4月1日頃,
平成18年度補助金の交付申請をした後,同月10日頃,補助金交付
額変更の申請をしたこと,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件
費支出予定額は1122万円であったこと,上記両申請に対し,同日
頃,控訴人による交付決定がなされたこと,平成19年3月31日付
けで,同公社は控訴人に対し,同年度補助金に係る補助事業実績報告
において補助金精算報告をしたこと,同年5月17日に,同年度補助
金に係る支出命令がなされ,同月22日に,同命令に基づく補助金と
して,2687万2000円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,上記交付決定時において上記補助金から派
遣職員人件費として1122万円が支出されることが予定されていた
というべきであるから,当該部分に係る交付決定等は違法であり,同
決定等に基づく補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
b要綱⑰(平成17年度分のみ)
(a)前記認定事実,証拠(甲78)及び弁論の全趣旨(控訴人の原審第6
準備書面)によれば,P19公社は,控訴人に対し,要綱⑰に基づき,
平成17年4月1日頃,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,同
申請の際には,派遣職員人件費が計上されていたこと(ただし,具体的
金額は,マスキングにより不明である。),同日頃,控訴人による交付
決定がなされ,同年12月7日までに,同決定に基づく補助金として3
億3233万9000円が支出されたこと,要綱⑰に係る派遣職員補助
金決算額は9735万9000円であったことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,上記交付決定の時点において,上記補助金か
ら相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたと認めら
れるから,当該部分に係る交付決定は違法であり,同決定に基づく補助
金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
もっとも,上記交付決定にかかる補助金のうち,派遣職員の人件費支
出に充てることが予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上
必ずしも明確でないが,上記交付決定に際して派遣職員人件費として支
出されることが予定されていた額は,現実に派遣職員人件費として支出
された額に等しいと推認するのが相当であることは前記のとおりである
から,上記補助金支出のうち9735万9000円に係る部分は違法な
補助金支出というべきである。」
ク同66頁14行目から同23行目までを,次のとおり改める。
「Ⅰ前記認定事実,証拠(甲87)及び弁論の全趣旨によれば,P25協
会は,控訴人に対し,平成17年4月5日ころ,要綱<22>に基づき,平
成17年度補助金の交付申請をしたこと,同申請の際に同協会が提出し
た「平成17年度収支予算書」においては,派遣職員2名の派遣職員費
が2564万9000円とされていたこと,同年5月6日,控訴人によ
る交付決定がなされ,同年12月6日までに,同決定に基づく補助金と
して,5500万円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,上記交付決定時において上記補助金から派遣
職員人件費として2564万9000円が支出されることが予定されて
いたのであるから,当該部分に係る交付決定等は違法であり,同決定等
に基づく補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。」
ケ同68頁12行目から同69頁13行目までを,次のとおり改める。
「(a)契約②の1(平成17年度分のみ)
Ⅰ前記認定事実,証拠(甲22)及び弁論の全趣旨によれば,P20
協会は,神戸市との間で,平成17年4月1日付で,契約②の1を締
結したこと,同契約においては,委託料中,人件費3億0609万1
000円,そのうち派遣職員の人件費としては1億6853万200
0円が計上されていたこと,同契約に基づく委託料として,同年12
月9日までに,8億9292万9000円が支出されたことが認めら
れる。
Ⅱ上記認定事実によれば,契約②の1の締結時において,上記委託料
から派遣職員人件費として1億6853万2000円が支出されるこ
とが予定されていたというべきであるから,当該部分に係る契約②の
1は違法であり,同契約に基づく委託料の支出も,その限りで違法な
公金支出というべきである。
(b)契約③
Ⅰ平成17年度分
i前認定事実,証拠(甲23)及び弁論の全趣旨によれば,P20
協会は,神戸市との間で,平成17年4月1日付で,契約③の1を
締結したこと,同契約締結に際してP20協会が作成した「積算書
」と題する書面においては,人件費として1億0970万9000
円(4059万2000円,2803万4000円,4108万3
000円の合計額)が計上されていたが,その中には派遣職員の人
件費も含まれていたこと,同契約に基づく委託料として,平成18
年1月17日までに,1億1874万2000円が支出されたこと
が認められる。そして,証拠(甲16,22)によれば,P20協
会の平成17年度決算において,派遣職員人件費相当額は2億19
96万2447円,契約②の1に係る派遣職員人件費の額は1億5
556万5969円と認められるから,契約③の1に係る平成17
年度の派遣職員委託料決算額は2億1996万2447円から1億
5556万5969円を控除した6439万6478円であったと
認められる。
ii上記認定事実によれば,契約③の1締結時において,上記委託料
から相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたと
いうべきであり,当該派遣職員人件費部分に係る契約③の1及び同
契約に基づく委託料の支出は違法というべきである。
もっとも,上記委託料のうち,派遣職員の人件費支出に充てるこ
とが予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上必ずしも
明確でないが,委託料決定の際に派遣職員人件費として支出される
ことが予定されていた額は,現実に派遣職員人件費として支出され
た額に等しいと推認するのが相当であることは補助金の場合と同様
というべきであるから,上記委託料の支出のうち6439万647
8円に係る部分は違法というべきである。」
コ同70頁13行目から同24行目までを,次のとおり改める。
「(a)平成17年度分(契約⑤の1及び同⑥の1)
Ⅰ前認定事実,証拠(甲30)及び弁論の全趣旨によれば,P21財
団は,神戸市との間で,平成17年4月1日付で,契約⑤の1を締結
したこと,同契約締結に際して作成された「平成17年度P22事務
所委託料積算書」と題する書面において,国内費と海外費に分けて人
件費が計上されていたこと(ただし,具体的金額はマスキングにより
不明である。),その中には神戸市P22事務所所長として神戸市が
派遣した職員の人件費も含まれていたこと,同契約に基づく委託料と
して,平成18年1月16日までに,3702万6150円が支出さ
れたことが認められる。
また,前記認定事実,証拠(甲29)及び弁論の全趣旨によれば,
P21財団は,神戸市との間で,平成17年4月1日付で,契約⑥の
1を締結したこと,同契約に際して作成された「平成17年度α美術
館委託料内訳表」と題する書面において,派遣職員人件費が計上され
ていたこと(ただし,具体的金額はマスキングにより不明である。),
同契約に基づく委託料として,同年12月7日までに,4億0978
万6000円が支出されたことが認められる。
そして,証拠(甲16)及び弁論の全趣旨によれば,契約⑤の1及
び契約⑥の1に係る平成17年度の決算における派遣職員人件費は,
合計5010万8015円であったことが認められる。
Ⅱ上記認定事実に照らすと,契約⑤の1及び契約⑥の1の各締結時に
おいて上記委託料から相当額の派遣職員人件費が支出されることが予
定されていたと認められ,当該派遣職員人件費部分に係る契約⑤の1
及び契約⑥の1並びにこれらの契約に基づく委託料の支出は違法とい
うべきである。
もっとも,上記委託料のうち,派遣職員の人件費支出に充てること
が予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上必ずしも明確
でないが,委託料決定の際に派遣職員人件費として支出されることが
予定されていた額は,現実に派遣職員人件費として支出された額に等
しいと推認するのが相当であることは補助金の場合と同様というべき
であるから,上記委託料の支出のうち5010万8015円に係る部
分は違法というべきである。」
サ同70頁25行目を「(b)平成18年度分(契約⑤の2)」と,同26
行目の「i」を「Ⅰ」と,同71頁6行目の「ii」を「Ⅱ」と,それぞれ
改める。
シ同71頁25行目の「(平成17年度分のみ)」を削除し,同行目の次
に改行して「(a)契約⑦ないし⑯の各1」を加え,同26行目の「(a)」
を「Ⅰ」と,同72頁21行目から同23行目までを次のとおりそれぞれ
改める。
「Ⅱしかしながら,上記各委託契約のいずれについても,上記委託料の一
部を神戸市からの派遣職員の人件費として支出する予定であることを認
めるに足りる証拠はないから,上記各契約に基づく委託料及び追加委託
料の各支出を違法ということはできない。」
ス同72頁23行目の次に,改行して次のとおり加える。
「(b)契約⑦ないし⑯の各2
Ⅰ前記認定事実,証拠(甲16,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨
によれば,神戸市は,平成18年度も,P23公社との間で平成17
年度と同様の事業を委託する旨の契約を締結し,委託料のうち人件費
相当額は6億1301万4000円であったこと,上記のうち神戸市
からの派遣職員の人件費に充てられたのは5億8467万5646円
であったことが認められる。
Ⅱしかしながら,平成18年度分については上記神戸市とP23公社
との委託契約の内容自体を認めるに足る証拠はなく,委託料の一部を
神戸市からの派遣職員の人件費として支出することを予定していたと
は認めるに足りない。したがって,上記委託契約に基づく委託料の支
出を違法ということはできない。」
セ同75頁20行目から同76頁4行目までを,次のとおり改める。
「Ⅰ前記認定事実,証拠(甲44)及び弁論の全趣旨によれば,P24公
社は,神戸市との間で,平成17年4月1日付で,契約⑲の1を締結し
たこと,同契約締結に際して作成された「民間賃貸住宅家賃負担軽減補
助事業平成17年度委託料明細書」と題する書面において,派遣職員分
と固有職員分を併せた人件費として605万円が計上されていたこと,
同契約に基づく委託料として,平成18年5月24日に,2500万円
が支出されたこと,契約⑲の1に係る派遣職員委託料決算額は312万
2124円であることが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,契約⑲の1の締結時において,上記委託料か
ら相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたというべ
きであり,当該派遣職員人件費部分に係る契約⑲の1及び同契約に基づ
く委託料の支出は違法である。
もっとも,上記委託料のうち,派遣職員の人件費支出に充てることが
予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上必ずしも明確でな
いが,委託料決定の際に派遣職員人件費として支出されることが予定さ
れていた額は,現実に派遣職員人件費として支出された額に等しいと推
認するのが相当であることは補助金の場合と同様というべきであるから,
上記委託料の支出のうち312万2124円に係る部分は違法というべ
きである。」
ソ同77頁11行目から同21行目までを,次のとおり改める。
「Ⅰ前記認定事実,証拠(甲16,48)及び弁論の全趣旨によれば,P
25協会は,神戸市との間で,平成17年4月1日付で,契約<22>の1
を締結したこと,同契約締結に際して作成された「平成17年度P26
センター管理・運営に係る委託料の積算項目」と題する書面において,
派遣職員人件費が計上されていたこと(ただし,具体的金額はマスキン
グにより不明である。),同契約に基づく委託料として,平成18年5
月8日までに,追加委託料を含む1億3480万1570円が支出され
たことが認められる。
ところで,証拠(甲16)によれば,契約<22>ないし契約<26>の各1
の派遣職員委託料決算額は合計5億3440万7787円と認められる
ところ,少なくとも,これから証拠(甲49ないし51)によって認め
られる契約<23>の1の2億5662万3369円,契約<24>の1の82
79万3614円,契約<25>の1の1億3081万4334円の合計4
億7023万1317円の派遣職員委託料決算額を控除し,さらにこれ
から契約<26>の1に基づく委託料1132万8187円全額を控除した
残額5284万8283円は,契約<22>の1に係る派遣職員委託料決算
額であるということができる。
Ⅱ上記認定事実によれば,契約<22>の1の締結時において,上記委託料
から相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されていたという
べきであり,当該派遣職員人件費部分に係る契約<22>の1及び同契約に
基づく委託料の支出は違法であるといわざるをえない。
もっとも,上記委託料のうち,派遣職員の人件費支出に充てることが
予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上必ずしも明確でな
いが,委託料決定の際に派遣職員人件費として支出されることが予定さ
れていた額は,現実に派遣職員人件費として支出された額に等しいと推
認するのが相当であることは補助金の場合と同様というべきであるから,
上記委託料の支出のうち5284万8283円に係る部分は違法という
べきである。」
タ同80頁9行目から同22行目までを,次のとおり改める。
「Ⅰ前記認定事実,証拠(甲16,25,26)及び弁論の全趣旨によれ
ば,P13は,神戸市との間で,平成17年4月1日付けで,契約<27>
及び<28>の各1を締結したこと,契約<27>の1においては「P27作業
所運営費(担当:業務課)」,契約<28>の1においては「CCにおける
計量業務等(担当:施設課)」と題する書面において,それぞれ派遣職
員人件費が計上されていたこと(ただし,具体的金額はいずれもマスキ
ングにより不明である。),上記各契約に基づく委託料として,契約<2
7>の1については,同年12月1日までに4946万8107円が,契
約<28>の1については,平成18年1月6日までに3億1629万49
87円が各支出されたこと,契約<27>及び<28>の各1に係る派遣職員委
託料決算額は合計3738万9647円であったことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,契約<27>及び<28>の各1の締結時において,
上記委託料から相当額の派遣職員人件費が支出されることが予定されて
いたというべきであり,当該派遣職員人件費部分に係る契約<27>及び<2
8>の各1及び同契約に基づく委託料の支出は違法というべきである。
もっとも,上記委託料のうち,派遣職員の人件費支出に充てることが
予定されていた額が具体的にいくらであるかは証拠上必ずしも明確でな
いが,委託料決定の際に派遣職員人件費として支出されることが予定さ
れていた額は,現実に派遣職員人件費として支出された額に等しいと推
認するのが相当であることは補助金の場合と同様というべきであるから,
上記委託料の支出のうち3738万9647円に係る部分は違法という
べきである。」
3争点(3)(P1の故意又は過失の有無)について
(1)前記第2の1の事実,証拠(各項に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,次
の各事実が認められる。
アP1は,本件支出当時,神戸市長の地位にあったところ,神戸市長は,
本件補助金支出(ただし,P23公社に対する補助金を除く。)の根拠た
る本件各要綱を決定し,派遣職員人件費について,少なくとも平成4年度
以降,要項⑨に基づき,また,平成14年度以降は,本件各要綱のうち半
数以上の要綱が施行されている中で,上記各要綱に基づき,対応する各団
体の派遣職員人件費について,交付決定等及びこれに基づく補助金支出を
行ってきたものである。(原判決添付別表1の「H17(証拠等)」及び
同別表「H18(証拠等)」各欄記載の証拠)
イまた,P1は,本件委託料支出の根拠となった本件委託契約を神戸市の
代表者として締結し,神戸市と本件委託団体との委託契約は,相当程度長
期間にわたり継続されてきた。(原判決添付別表3の「H17(証拠等)
」及び同別表「H18(証拠等)」各欄記載の証拠。ただし,「H18(
証拠等)」欄のP25協会の「<26>埋蔵文化財発掘調査に係る事務管理」
の該当欄に「(弁)」とあるのを「(甲54)」と改める。)
ウ派遣法は,平成14年4月1日(一部の条文は同年3月31日)に施行
され,本件支出時には既に3年以上が経過していた。
エ神戸市は,派遣法制定を受けてその施行前に,同法6条2項所定の条例
として本件旧条例を制定していた。
(2)上記認定事実に加えて,①前記のとおり,従前,地方公共団体毎に様々な
方法により給与付職員派遣が行われていたところ,職務専念義務免除の方法
による職員派遣の適否についての前記最高裁平成10年4月24日判決がな
されたこと等を踏まえて,職員派遣についての統一的なルールの設定を目的
として派遣法が制定され,同法施行後は同法の目的に合致するものについて
は,同法所定の職員派遣制度によるべきものとされたこと,②同法6条2項
は,同法所定の制度による職員派遣につき,例外的な場合に限って条例で定
めることを条件に派遣元による給与支給を許したものであること,③派遣法
の有無にかかわらず,神戸市の職務に従事していない職員に給与を支給でき
ないことは当然であり(ノーワークノーペイの原則),かかる理を示した裁
判例が既に相当数存したこと(当裁判所に顕著),④前記のとおり,神戸市
は,派遣法制定を受けてその施行前に,同法6条2項所定の条例として本件
旧条例を制定しており,神戸市長であるP1も,前記派遣法の趣旨について
は,本件支出時までに了知していたと推認できること,⑤派遣職員人件費を
補助金ないし委託料として交付して支出させることを適法とするのが通説で
あるとか適法であると判示した裁判例が存在するといった状況にはなかった
こと,⑥前記2(2),(3)で検討したところからすると,本件各団体のうち多
くのものにおいて,本件支出の交付決定等の時点で,本件派遣職員の人件費
相当額の全てないしその大部分について,本件支出から充てられることが当
然に予定されていたと認められることなどを併せ考慮すると,P1には,本
件支出に係る違法な各交付決定等を行ったことにつき,少なくとも過失が認
められるというべきである。
また,仮に,神戸市長(控訴人)が本件違法支出に係る各交付決定等につ
いて神戸市の職員に専決させていたとしても,上記の点からすると,P1は,
専決権限を有する職員が上記各交付決定等をするのを阻止すべき指揮監督上
の義務を有していたにもかかわらず,これに違反し,少なくとも過失により
上記職員が上記各交付決定等をするのを阻止しなかったというべきである。
この点について,控訴人は,本件支出をするかどうかについては地自法等
の法令に従って審査をしているからP1には何ら過失はないと主張するが,
上記説示したところに照らし,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(3)これに対し,控訴人は,普通地方公共団体に対するその長の損害賠償責任
についても,地自法243条の2が適用されると解すべきであり,長は,故
意又は重過失がある場合でなければ普通地方公共団体に対する損害賠償責任
を負わないと主張する。
地自法243条の2の規定は,同条1項所定の職員の行為に関する限りそ
の損害賠償については民法の規定の適用を排除し,その責任の有無または範
囲は専ら同条1,2項の規定によるものとし,また,右職員の行為により当
該地方公共団体が損害を被つた場合に,賠償命令という地方公共団体内部に
おける簡便な責任追及の方法を設けることによつて損害の補てんを容易にし
ようとした点にその特殊性を有するものであるところ,普通地方公共団体の
長は,当該地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務その
他公共団体の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し及び執行する義
務を負い(同138条の2),予算についてその調製権,議会提出権,付再
議権,原案執行権及び執行状況調査権等広範な権限を有するものであって(
同176条,177条,211条,218条,221条),その職責は極め
て広範なものであり,一般の職員の職責とは異質なものがあるといわざるを
得ない。このことからすると,普通地方公共団体の長の行為による賠償責任
は,他の職員と異なる取扱をされることもやむを得ないというべきであり,
したがって,職員の賠償責任を故意又は重過失がある場合に限るとする地自
法243条の2の規定は,普通地方公共団体の長の損害賠償責任については
適用されないというべきである。控訴人の主張は,一般の職員の職責と長の
職責を同質のものとする点において相当でなく,採用することができない。
4争点(4)(本件各団体の不当利得及び悪意の有無)について
(1)法律上の原因の有無について
本件各団体が神戸市に対して不当利得として本件派遣職員人件費相当額を
返還すべき義務を負うのは,本件違法支出に係る各交付決定等(補助金交付
契約)及び各委託契約が私法上無効である場合に限られるというべきである
(最高裁判所平成16年1月15日第一小法廷判決・民集58巻1号156
頁参照)。
本件においては,前記のとおり,上記交付決定等及び本件委託契約の派遣
職員人件費に相当する部分はノーワーク・ノーペイの原則に反し,派遣法6
条1項,2項を潜脱するものとして違法であるところ,前記のとおり,上記
交付決定等又は各委託契約当時において,派遣職員の給与につき上記原則を
具体化した派遣法が施行されて既に3年以上が経過していたこと,それにも
かかわらず前記認定のとおりの態様で上記違法な支出が継続されてきていた
こと(弁論の全趣旨)及びその当時における前記の学説・判例の状況等から
すれば,上記交付決定等(補助金交付契約)及び各委託契約の派遣職員人件
費に相当する部分は,いずれも公序良俗に違反するものとして私法上も無効
であって,上記各団体の補助金又は委託料のうち派遣職員人件費に相当する
部分の受領については法律上の原因がないといわざるを得ない。
(2)悪意の有無について
前記第2の1の事実,前記2の事実を総合すると,本件各団体は,神戸市
との間で締結した本件協定に基づき,神戸市から本件補助金や本件委託料の
交付を受けた上,これを本件派遣職員に給与として支払ってきたものと認め
られる。そして,本件補助金や本件委託料を受領した当時,派遣職員人件費
に相当する部分の交付が違法であって法律上の原因を欠くとの指摘がなされ
た形跡が本件証拠上窺えないことなどを併せ考慮すると,上記の点について
本件各団体が悪意であったとまでは認め難い。
したがって,本件各団体が民法704条所定の法定利息の支払義務を負う
とは認められない。
5争点(5)(神戸市の損害額又は損失額)について
次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の4(同83
頁22行目から同107頁24行目まで)のとおりであるから,これを引用す
る。ただし,上記引用部分のうち,民法704条所定の法定利息について判示
した箇所はいずれも削除する。
(1)原判決83頁22行目を次のとおり改める。
「(1)P17財団
ア平成17年度分
争点(2)について認定したところによれば,先に認定した4431万
3797円の違法な補助金支出により,神戸市は同額の損害を被ったと
認められるから,その損害又は損失を4431万円とする被控訴人らの
請求は理由があるから認容すべきである。また,その補助金交付の時期
からすると,これについての神戸市の損害賠償請求権が平成18年5月
1日に遅滞に陥っているとする被控訴人らの主張も理由があるから認容
すべきである(以下,遅滞の時期について特記しないものは,被控訴人
らの主張を理由があるとする趣旨である。なお,遅延損害金に関して「
認容すべきである」というのは,神戸市に当該損害を被らせたことにつ
いて,P1に対し,これに対する遅延損害金の請求を認容すべきである
との趣旨である。)。
イ平成18年度分」
(2)同84頁13行目の「P12財団」を「P10財団(旧P12財団分)」
と改める。
(3)同87頁2行目の「P11センター」を「P10財団(旧P11センター
分)」と改め,同9行目の次に,改行して以下のとおり加える。
「なお,旧P12財団がP10財団にその名称を変更したこと,旧P11セ
ンターの未履行債務はP10財団に引き受けされたことは前記のとおりであ
るから,本項及び前項で認容した神戸市の損害又は損失(平成17年度分1
億4571万円,平成18年度分合計2億2160万2000円の総計3億
6731万2000円)は,併せてP10財団に対して請求すべきことにな
る。」
(4)同89頁5行目の「(契約④の1)」を削除し,同6行目から同17行目
までを,次のとおり改める。
「a契約②の1
証拠(甲22)によれば,契約②の1にかかる平成17年度の派遣職員
委託料の決算額は1億5556万5969円であったと認められ,これは
先に認定した違法な委託料支出である1億6853万2000円の範囲内
であるから,上記決算額である1億5556万5969円が違法な委託料
の支出により神戸市が被った損害又は損失と認められる。
b契約③の1
先に認定した契約③の1に係る6439万6478円の違法委託料支出
額は,派遣職員委託料の決算額と等しいものであるから,上記違法支出額
の全額が神戸市が被った損害又は損失というべきである。
c契約④の1
証拠(甲16)によれば,契約④の1にかかる平成17年度の派遣職員
委託料の決算額は2510万5739円であったと認められ,これは先に
認定した違法な委託料支出である2397万8000円を超えるものであ
るから,上記違法支出額の全部である2397万8000円が違法な委託
料の支出により神戸市が被った損害又は損失というべきである。」
(5)同18・19行目及び同19・20行目の各「5987万7839円」を
「2億7984万0286円」とそれぞれ改める。
(6)同91頁13行目の次に,改行して以下のとおり加える。
「(7)P18協会
ア平成17年度補助金
(ア)先に認定した平成17年度補助金に係る3915万4057円の
違法支出額は,派遣職員人件費の支出額と等しいものであるから,上
記違法支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべきである。
(イ)したがって,被控訴人らの請求額である3915万円を全額認容
すべきである
イ平成18年度補助金
(ア)先に認定した平成18年度補助金に係る4188万7502円の
違法支出額は,派遣職員人件費の支出額と等しいものであるから,上
記違法支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべきである。
(イ)したがって,被控訴人らの請求額である4188万円を全額認容
すべきである
(7)同14行目の「(7)」を「(8)」と改め,同25行目の次に,改行して以下
のとおり加える。
「(9)P14財団(平成18年度補助金)
ア先に認定した平成18年度補助金に係る1287万7012円の違法
支出額は,派遣職員人件費の支出額と等しいものであるから,上記違法
支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべきである。
イしたがって,被控訴人らの請求額である1287万円を全額認容すべ
きである。」
(8)同末行の「(8)」を「(10)」と,同92頁23行目の「(9)」を「(11)」と
それぞれ改め,同93頁11行目から同94頁19行目までを,次のとおり
改める。
「(ア)弁論の全趣旨によれば,平成18年度補助金にかかる派遣職員補助
金決算額は1億5047万1086円であったと認められ,これは先に
認定した違法な補助金支出である1億4202万3000円を超えるも
のであるから,上記違法支出額の全部である1億4202万3000円
が違法な補助金の支出により神戸市が被った損害又は損失というべきで
ある。
(イ)したがって,被控訴人らの請求額である1億5047万円のうち1
億4202万3000円を認容すべきである。
(12)P21財団
ア平成17年度分
(ア)補助金(要綱⑬)
証拠(甲1,70)によれば,要綱⑬による派遣職員補助金決算額
は1億9775万9736円であったと認められ,これは先に認定し
た違法な補助金支出である1億9997万6000円の範囲内である
から,上記決算額である1億9775万9736円が違法な補助金支
出により神戸市が被った損害又は損失と認められる。
(イ)委託料(契約⑤の1及び同⑥の1)
先に認定した契約⑤の1及び同⑥の1に係る5010万8015円
の違法委託料支出額は,派遣職員委託料の決算額と等しいものである
から,上記違法支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべ
きである。
(ウ)小計
以上によれば,P21財団に関する平成17年度の違法な公金支出
で神戸市が被った損害又は損失の額は合計2億4786万7751円
となるから,被控訴人らの請求額である2億7705万円のうち2億
4786万7751円を認容すべきである。」
(9)同95頁4行目から同14行目までを次のとおり改める。
「(b)よって,神戸市が被った損害又は損失の額は1億8291万2683
円となる。」
(10)同96頁12行目から同97頁1行目までを次のとおり改める。
「(ウ)以上によれば,P21財団に関する平成18年度の違法な公金支出
で神戸市が被った損害又は損失の額は合計2億3011万2683円と
なるから,被控訴人らの請求額である2億5007万円のうち2億30
11万2683円を認容すべきである。
(13)P19公社
ア平成17年度補助金
(ア)要綱⑯
先に認定した平成17年度要綱⑯の補助金に係る1007万868
7円の違法支出額は,派遣職員人件費の支出額と等しいものであるか
ら,上記違法支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべき
である。
もっとも,同要綱に係る平成17年度補助金2352万4000円
が支出されたのは,被控訴人らが遅延損害金の起算日とする平成18
年5月1日より後の同月26日であるから,上記1007万8687
円に係る遅延損害金は同日を起算日とすべきである。
(イ)要綱⑰
先に認定した平成17年度要綱⑰の補助金に係る9735万900
0円の違法支出額は,派遣職員人件費の支出額と等しいものであるか
ら,上記違法支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべき
である。
(ウ)小計
以上によれば,P19公社に関する平成17年度の違法な公金支出
で神戸市が被った損害額又は損失額は,合計1億0743万7687
円となるから,被控訴人らの請求額1億0742万円を全部認容すべ
きである。ただし,遅延損害金の始期については,うち1007万8
687円については平成18年5月26日とし,その余の9734万
1313円について同月1日とすべきである。」
(11)同20行目から同25行目までを,次のとおり改める。
「(ウ)小計
以上によれば,P19公社に係る平成18年度の違法な公金支出により
神戸市が被った損害又は損失の額は,合計4193万5190円となるか
ら,被控訴人らの請求額4193万円を全部認容すべきである。なお,遅
延損害金の起算日については,内金1050万3177円は平成19年5
月22日,内金174万7013円は同月29日であり,残額の2967
万9810円が同月1日である。」
(12)同97頁末行の「(12)」を「(14)」と,同98頁6行目の「内金7億14
95万円」から同9行目までを「7億1495万円のうち,5683万円を
認容すべきである(上記請求額である7億1495万円は,P23公社の平
成17年度補助金に係る損失又は損害5683万円と委託料に係る損失又は
損害6億5812円の合計であると解される。)。」と,それぞれ改める
(13)同98頁16行目の「(13)」を「(15)」と,同99頁11行目の「(14)」
を「(16)」と,同25行目から同100頁16行目までを「なお,遅延損害
金の起算日については,契約⑰の1について平成18年5月25日に委託料
8億7915万9961円が,契約⑱の1について同日に委託料7627万
7621円が,契約⑲の1について同月24日に2500万円が支出されて
いることは先に認定したとおりであるから,契約⑰の1に係る派遣職員人件
費支出予定額6億2030万3542円と契約⑱の1の7627万7621
円を合算した6億9658万1163円については平成18年5月25日と
し,認容額(7億1004万円)からこれを控除した残額1345万883
7円については同月24日とするのが相当である。」と,同101頁21行
目の「なるところ」から同23行目までを「なるので,被控訴人らが請求す
る5億4608万円の全額を認容すべきである。」と,それぞれ改める。
(14)同101頁24行目の「(15)」を「(17)」と,同102頁14行目の「(1
6)」を「(18)」と,それぞれ改める。
(15)同103頁3行目の「(17)」を「(19)」と改め,同5行目から同18行目
までを次のとおり改める。
「(ア)補助金
a要綱<21>
証拠(甲85)によれば,要綱<21>に係る平成17年度の派遣職員補
助金決算額は1億2303万5286円であったと認められ,これは先
に認定した違法な補助金支出である1億2627万3000円の範囲内
であるから,上記決算額である1億2303万5286円が違法な補助
金の支出により神戸市が被った損害又は損失と認められる。
b要綱<22>
証拠(甲87)によれば,要綱<22>に係る平成17年度の派遣職員補
助金決算額は2549万1397円であったと認められ,これは先に認
定した違法な補助金支出である2564万9000円の範囲内であるか
ら,上記決算額である2549万1397円が違法な補助金の支出によ
り神戸市が被った損害又は損失と認められる。
(イ)委託料
a契約<22>の1
先に認定した契約<22>の1に係る5284万8283円の違法委託料
支出額は,派遣職員委託料の決算額と等しいものであるから,上記違法
支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべきである。」
(16)同19行目の「a」を「b」と,同104頁11行目の「b」を「c」と,
同25行目の「c」を「d」と,同105頁17行目の「d」を「e」と,
同行目の「4億6582万1703円(」を「5億1866万9986円(
5284万8283円,」と,同20・21行目の「5億88856989
円」及び同21・22行目の「5億8885万6989円」を各「6億67
19万6669円」と,同107頁11行目の「なるところ」から同13行
目の「認容すべきであり,」までを「なるから,被控訴人らの請求額である
1億5105万円の全額を認容すべきである。なお,」とそれぞれ改める。
(17)同16行目を次のとおり改める。
「(20)P13
ア平成17年度委託料(契約<27>及び<28>の各1)
先に認定した契約<27>及び<28>の各1に係る3738万9647円の
違法委託料支出額は,派遣職員委託料の決算額と等しいものであるから,
上記違法支出額の全額が神戸市が被った損害又は損失というべきである。
したがって,被控訴人らの3億7389万円の請求のうち3738万9
647円を認容すべきである。
イ平成18年度委託料(契約<27>及び<28>の各2)」
(18)同24行目を次のとおり改める。
「(21)P1が神戸市に与えた損害額は,上記(1)ないし(20)の合計額である。

6争点(6)(本件改正条例による権利放棄の効果)について
(1)神戸市議会が,平成21年2月26日,本件改正条例を可決したこと,本
件改正条例の附則には,本件訴訟の請求に係る神戸市の不当利得返還請求権
及び損害賠償請求権(これらにかかる遅延利息を含む。以下,この項におい
て「本件権利」という。)を放棄するとの定めがあることは,上記第2の2
において認定したとおりである。控訴人は,本件改正条例の上記附則により,
本件権利は消滅したと主張するので判断する。
(2)本件改正条例の成立による権利の消滅
ア地方公共団体の議会は議事機関(憲法93条1項)であり,合議による
地方公共団体の意思決定機関である。他方,普通地方公共団体の長は,当
該普通地方公共団体を統轄し,これを代表し(地自法147条),又この
事務を管理し及び執行するとされている(同法148条)。我が国の地方
自治制度は基本的組織原理として執行機関の多元主義を採用しているが,
執行機関は長の下に系統的に構成される(同法138条の3)。議会は,
独立の立場においてその権限を行使するとともに,執行機関と相互に牽制
し,均衡と調和の関係を保持して地方公共団体の政治・行政を円滑に遂行
するものとされている。
イ地自法96条1項10号は,一定の場合の権利の放棄を議会の議決事項
と定める一方,同法149条1項6号は,財産を管理し,処分することを
普通地方公共団体の長が担任する事務と定めている。上記は,財産の処分
のうちでも権利の放棄は地方公共団体の財産を対価なく消滅させるもので
あるから,特に議会の議決を経た上で,これを長に担任させるのが相当と
の考慮に基づくものと解される。
そうすると,議会が権利の放棄を決議したとしても,また,それが条例
の形式でされた場合であっても,執行機関による放棄の行為を待たずに,
当該決議によって直ちにその対象となった権利について,放棄の効果が生
じ,同権利が消滅するということはできないところ,神戸市長において,
上記議会の決議に基づき,本件権利の放棄の手続をしたことを認めるに足
りる証拠はない。したがって,本件改正条例の成立により,本件権利が消
滅したとは認められない。
ウ上記に関し,控訴人は,本件改正条例が可決の日に公布されたとも指摘
する。公布は,成立した成文の法規を公表して,一般人が知ることのでき
る状態に置くことをいい,条例は,公布によって条例としての効力を生ず
ると解される。しかし,そうであるからといって,本件改正条例が定める
権利の放棄が,執行機関による特段の意思表示なく当然その効果を生ずる
と認めることはできない。したがって,本件改正条例が公布されたことを
考慮しても,本件権利の放棄が効力を生じ,同権利が消滅したと認めるこ
とはできない。
(3)改正条例の権利の放棄の定めの有効性
ア以上によれば,本件改正条例により本件権利が消滅したとする控訴人の
主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がないというべきで
あるが,当事者の主張にかんがみ,なお,本件改正条例中,本件権利を放
棄すると定めた規定の効力についても判断を加える。
イこれまでの認定によれば,本件権利は,神戸市の本件各団体に対する合
計55億3966万8080円の不当利得金返還請求権,P1に対する同
額の損害賠償請求権及び遅延損害金の請求権であり,神戸市は,P1の過
失に基づく違法な交付決定により上記損失,損害を被るに至ったものであ
り,本件各団体は不当な利得を得たものと認められる。
神戸市が本件各団体及びP1に対して有する上記不当利得返還請求権及
び損害賠償請求権(本件権利)については,本来であれば,神戸市におい
て然るべき調査を経た上でその存在を明らかにし,神戸市の執行機関であ
る控訴人において,その回収の措置を講ずべきものであったところ,被控
訴人らは,この点について,住民監査請求を行って,神戸市に上記調査の
端緒を与えたにもかかわらず,神戸市監査委員は神戸市が支出した補助金
又は委託料に含まれる派遣職員人件費相当額の支出は違法な公金の支出で
はなく,措置の必要を認めないと判断したため,地自法242条の2第1
項4号に基づいて,いわゆる住民訴訟として本件訴訟を提起し,その審理
の中で本件権利の存在が明確になったのである。以上の経緯は,前記認定
事実及び本件訴訟の経過自体から明らかである。
ウ住民訴訟の制度は,執行機関又は職員の財務会計上の行為又は怠る事実
の適否ないしその是正の要否について,地方公共団体の判断と住民の判断
が相反して対立し,当該地方公共団体がその回復の措置を講じない場合(
即ち,執行機関,議会がその与えられた職責を十分果たさない場合に生ず
るものである。)に,住民がこれに代わって提訴して,自らの手により違
法の防止又は回復を図ることを目的とするものであり,違法な財務会計上
の行為又は怠る事実について,最終的には裁判所の判断に委ねて判断の客
観性と措置の実効性を確保しようとするものである。
この点について,控訴人は,地自法96条1項10号により,権利の放
棄が議会の議決事項とされている以上,神戸市議会がした本件権利の放棄
の議決は当然有効であると主張する。しかし,前記前提事実,本件訴訟の
経緯,証拠(甲114,122,123,129,130,乙63ないし
70)及び弁論の全趣旨によれば,①本件の住民訴訟は,市長が違法な上
記財務会計行為を行い,議会も執行機関(市長)の財務会計行為を監督す
べき立場にあるのにこれを怠り,違法な財務会計行為を是正する措置を講
じなかったために提起されたものであること,②控訴人は上記財務会計行
為は適法であるとして争っていたところ,原審は,上記財務会計行為の一
部は違法であると認定し,神戸市の本件各団体に対する不当利得返還請求
権,神戸市長に対する損害賠償請求権をそれぞれ一部認めたこと(本件権
利),③控訴人は,この判決に対して控訴し,控訴審において引き続き上
記財務会計上の行為は適法であると主張して争ったところ,当裁判所は平
成21年1月21日弁論を終結し,判決言渡期日を同年3月18日と指定
したこと,④控訴人は,平成21年2月20日,本件権利の放棄を含む公
益的法人等への職員の派遣等に関する条例の一部を改正する条例を提出し,
議会は後記のとおり合理的な理由もないまま本件権利を放棄する旨の決議
をなしたこと,⑤控訴人は,平成21年3月4日,弁論再開の申立てをし,
当裁判所は,同月11日弁論を再開する旨の決定をしたこと,⑥本件権利
は,神戸市の執行機関(市長)が行った違法な財務会計上の行為によって
神戸市が取得した多額の不当利得返還請求権ないし損害賠償請求権であり,
この権利の放棄が神戸市の財政に与える影響は極めて大きいと考えられる
こと,⑦議会は,上記権利を放棄する旨の決議をした際,本件と同種の事
案である当庁平成▲年(行コ)第▲号,第▲号事件(原審・神戸地方裁判所
平成▲年(行ウ)第▲号)(控訴人が,P1に対し2億5379万円と遅延
損害金の,P14財団に対し1284万円の,P28協会に対し3909
万円の,P18協会に対し2億0186万円の各支払請求をすることを命
じたもので,現在上告中である。)等についても,不当利得返還請求権及
び損害賠償請求権をいずれも放棄する旨の決議をしたこと,⑧本件権利及
び上記⑦の権利を放棄するについて,請求を受けることとなる者の資力等
の個別的・具体的な事情について検討された形跡は窺えないことが認めら
れる。
以上のような住民訴訟の制度が設けられた趣旨,一審で控訴人が敗訴し,
これに対する控訴審の判決が予定されていた直前に本件権利の放棄がなさ
れたこと,本件権利の内容・認容額,同種の事件を含めて不当利得返還請
求権及び損害賠償請求権を放棄する旨の決議の神戸市の財政に対する影響
の大きさ,議会が本件権利を放棄する旨の決議をする合理的な理由はなく,
放棄の相手方の個別的・具体的な事情の検討もなされていないこと等の事
情に照らせば,本件権利を放棄する議会の決議は,地方公共団体の執行機
関(市長)が行った違法な財務会計上の行為を放置し,損害の回復を含め,
その是正の機会を放棄するに等しく,また,本件住民訴訟を無に帰せしめ
るものであって,地自法に定める住民訴訟の制度を根底から否定するもの
といわざるを得ず,上記議会の本件権利を放棄する旨の決議は,議決権の
濫用に当たり,その効力を有しないものというべきである。
不当利得返還請求権等の放棄の可否は,住民の代表である議会の良識あ
る判断に委ねられているとする考えもあるけれども,住民訴訟の制度が設
けられた趣旨は,上記のとおり地方公共団体が十分に機能しない場合に住
民がこれらに代わって提訴するものであることに照らし,直ちに採用する
ことはできない。
エ上記に関し,控訴人は,権利の放棄の議決に法令上の制限はなく,議会
が自由に行うことができるとした上で,本件権利の放棄を議決した理由に
ついて,争点(6)についての控訴人の主張アの(ア)ないし(カ)のとおり主
張する。しかし,先に判示した住民訴訟の制度趣旨に照らすと,少なくと
もこれらの制度に係る損害賠償請求権,不当利得返還請求権の放棄をする
ためには公益上の必要その他合理的な理由が必要であるというべきであり,
控訴人の主張は採用できない。そして,本件権利の放棄を議決した理由と
して控訴人が主張するところは,いずれもその事実自体を認めるに足りな
いか,又はその事実が存在するとしても本件権利を放棄することについて
の合理的な理由とは認められない。
以上によれば,本件権利を放棄する議会の決議は効力を有さず,本件改
正条例中,本件権利の放棄を定めた部分はその効果を生じないというべき
である。
(4)以上のとおりであるから,本件権利の消滅をいう控訴人の上記主張は,い
ずれにしても理由がない。
7その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,
原審及び当審で提出された全証拠を改めて精査しても,当審の認定,判断を覆
すほどのものはない。
8訴訟費用について
原審は,P2ら6名についての弁護士阿部泰隆(以下「阿部弁護士」という。
)の原審における訴訟代理権は,訴訟行為をするのに必要な授権があることを
証明することができず,かつ,追認を得ることができなかった場合に当たると
して,原審において控訴人に生じた費用の3分の1及びP2ら6名に生じた費
用を阿部弁護士に負担させた。
被控訴人らは,原審の上記訴訟費用の裁判に対して縷々不服をいうが,P2
ら6名は,原判決に対して不服を申し立てておらず,控訴人による控訴の相手
方でもない。そして,共同訴訟人の一部が控訴し,又は一部に対して控訴がさ
れた場合の控訴審における訴訟費用の裁判は,訴訟の総費用について裁判をす
る場合であっても,控訴審の当事者間についてのみ改めて行うべきものである
から,原審がP2ら6名と控訴人との間の関係でした訴訟費用の裁判について
は,当審において改めて裁判をすべきものではない。よって,被控訴人らの上
記訴訟費用の裁判に対する不服については判断の限りでない。
第4結論
以上の次第で,被控訴人らの控訴人に対する本件請求は,P1に対し,55
億3966万8080円及びうち27億1480万7666円に対する平成1
8年5月1日から,うち51万1360円に対する同月9日から,うち321
0万8000円に対する同月23日から,うち1345万8837円に対する
同月24日から,うち6億9658万1163円に対する同月25日から,う
ち1007万8687円に対する同月26日から,うち558万円に対する同
月29日から,うち300万円に対する同月30日から,うち20億5050
万0141円に対する平成19年5月1日から,うち79万2036円に対す
る同月15日から,うち1050万3177円に対する同月22日から,うち
174万7013円に対する同月29日から各支払済みまで年5分の割合によ
る遅延損害金の支払を請求するよう求め,また,別紙認容額一覧表の「団体名
」欄記載の各団体に対し,同「認容額」欄記載の各金員の支払を請求するよう
求める限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから棄却す
べきである。
よって,これと異なる原判決を,本件控訴及び本件附帯控訴に基づき上記の
とおり変更することとし,主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第13民事部
裁判長裁判官大谷正治
裁判官川谷道郎
裁判官神山隆一
(原裁判等の表示)
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1原告P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6及び原告P7の本件各
訴えをいずれも却下する。
2原告P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6及び原告P7を除く原
告らとの関係において,
(1)被告は,P1に対し,45億5277万4109円,及び,うち2
1億5562万5042円に対する平成18年5月1日から,うち51万1
360円に対する同月9日から,うち3210万8000円に対する同月2
3日から,うち605万円に対する同月24日から,うち6億9657万1
522円に対する同月25日から,うち1007万8687円に対する同月
26日から,うち558万円に対する同月29日から,うち300万円に対
する同月30日から,うち16億1826万8559円に対する平成19年
5月1日から,うち79万2036円に対する同月15日から,うち241
7万8772円に対する同月18日から各支払済みまで各年5分の割合によ
る金員の支払を請求せよ。
(2)被告は,財団法人P17財団に対し,6654万1000円,及び,
これに対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
の支払を請求せよ。
(3)被告は,財団法人P12財団に対し,3億0706万円,及び,う
ち1億4571万円に対する平成18年5月1日から,うち1億6135万
円に対する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金
員の支払を請求せよ。
(4)被告は,財団法人P11センターに対し,6025万2000円,
及び,これに対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員の支払を請求せよ。
(5)被告は,財団法人P29財団に対し,2億9784万6519円,
及び,うち1億4986万円に対する平成18年5月1日から,うち1億4
798万6519円に対する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5
分の割合による金員の支払を請求せよ。
(6)被告は,財団法人P20協会に対し,1億4373万9229円,
及び,うち5987万7839円に対する平成18年5月1日から,うち8
386万1390円に対する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5
分の割合による金員の支払を請求せよ。
(7)被告は,財団法人P30センターに対し,1億7480万3000
円,及び,うち8639万2000円に対する平成18年5月1日から,う
ち8841万1000円に対する平成19年5月1日から各支払済みまで各
年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
(8)被告は,財団法人P28協会に対し,3528万円,及び,これに
対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払
を請求せよ。
(9)被告は,財団法人P15研究所に対し,1979万9396円,及
び,うち924万8000円に対する平成18年5月1日から,うち51万
1360円に対する同月9日から,うち924万8000円に対する平成1
9年5月1日から,うち79万2036円に対する同月15日から各支払済
みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
(10)被告は,社会福祉法人P31協議会に対し,2億0821万円,及
び,うち1億2371万円に対する平成18年5月1日から,うち6032
万1228円に対する平成19年5月1日から,うち2417万8772円
に対する同月18日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を
請求せよ。
(11)被告は,財団法人P21財団に対し,4億2788万2550円,
及び,うち1億9775万9736円に対する平成18年5月1日から,う
ち2億3011万2683円に対する平成19年5月1日から各支払済みま
で各年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
(12)被告は,財団法人P19公社に対し,2057万8687円,及び,
うち1007万8687円に対する平成18年5月26日から,うち105
0万円に対する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合によ
る金員の支払を請求せよ。
(13)被告は,財団法人P23公社に対し,5683万円,及び,うち2
472万2000円に対する平成18年5月1日から,うち3210万80
00円に対する同月23日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の
支払を請求せよ。
(14)被告は,財団法人P32協会に対し,8億2464万円,及び,う
ち6億5994万円に対する平成18年5月1日から,うち558万円に対
する同月29日から,うち1億5912万円に対する平成19年5月1日か
ら各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
(15)被告は,P24公社に対し,10億2976万円,及び,うち74
1万8478円に対する平成18年5月1日から,うち605万円に対する
同月24日から,うち6億9657万1522円に対する同月25日から,
うち3億1972万円に対する平成19年5月1日から各支払済みまで各年
5分の割合による金員の支払を請求せよ。
(16)被告は,社団法人P16協会に対し,6083万円,及び,これに
対する平成18年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払
を請求せよ。
(17)被告は,財団法人P33公社に対し,8920万円,及び,うち4
430万円に対する平成18年5月1日から,うち4490万円に対する平
成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
(18)被告は,財団法人P25協会に対し,6億8966万6989円,
及び,うち5億8585万6989円に対する平成18年5月1日から,う
ち300万円に対する同月30日から,うち1億0081万円に対する平成
19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求
せよ。
(19)被告は,P13株式会社に対し,3985万4739円,及び,こ
れに対する平成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の
支払を請求せよ。
3原告P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6及び原告P7を除く原
告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,被告に生じた費用の3分の1並びに原告P2,原告P3,原告
P4,原告P5,原告P6及び原告P7に生じた各費用は阿部泰隆の負担とし,
被告に生じた費用の15分の4及び上記原告らを除く原告らに生じた費用の5
分の2を上記原告らを除く原告らの負担とし,被告に生じたその余の費用及び
上記原告らを除く原告らに生じたその余の費用を被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,P1に対し,70億0192万円,及び,うち46億8343
万円に対する平成18年5月1日から,うち23億1849万円に対する平成
19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せ
よ。
2被告は,財団法人P17財団に対し,1億1093万円,及び,うち4
431万円に対する平成18年5月1日から,うち6662万円に対する平成
19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せ
よ。
3主文2項(3)に同じ。
4被告は,財団法人P11センターに対し,1億2844万円,及び,う
ち6429万円に対する平成18年5月1日から,うち6415万円に対する
平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
5被告は,財団法人P29財団に対し,3億2972万円,及び,うち1
億4986万円に対する平成18年5月1日から,うち1億7986万円に対
する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払
を請求せよ。
6被告は,財団法人P20協会に対し,3億6745万円,及び,うち2
億8095万円に対する平成18年5月1日から,うち8650万円に対する
平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
7被告は,財団法人P30センターに対し,1億8087万円,及び,う
ち8828万円に対する平成18年5月1日から,うち9259万円に対する
平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
8被告は,財団法人P18協会に対し,8103万円,及び,うち391
5万円に対する平成18年5月1日から,うち4188万円に対する平成19
年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
9主文2項(8)に同じ。
10被告は,財団法人P14財団に対し,1287万円及びこれに対する平
成19年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求せよ。
11被告は,財団法人P15研究所に対し,2億1065万円,及び,うち
1億1025万円に対する平成18年5月1日から,うち1億0040万円に
対する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支
払を請求せよ。
12被告は,社会福祉法人P31協議会に対し,2億7418万円,及び,
うち1億2371万円に対する平成18年5月1日から,うち1億5047万
円に対する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員
の支払を請求せよ。
13被告は,財団法人P21財団に対し,5億2712万円,及び,うち2
億7705万円に対する平成18年5月1日から,うち2億5007万円に対
する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払
を請求せよ。
14被告は,財団法人P19公社に対し,1億1792万円,及び,うち1
億0742万円に対する平成18年5月1日から,うち1050万円に対する
平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
15被告は,財団法人P23公社に対し,7億1495万円及びこれに対す
る平成18年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求
せよ。
16被告は,財団法人P32協会に対し,8億2464万円,及び,うち6
億6552万円に対する平成18年5月1日から,うち1億5912万円に対
する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払
を請求せよ。
17被告は,P24公社に対し,10億2976万円,及び,うち7億10
04万円に対する平成18年5月1日から,うち3億1972万円に対する平
成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請求
せよ。
18主文2項(16)に同じ。
19主文2項(17)に同じ。
20被告は,財団法人P25協会に対し,7億8373万円,及び,うち6
億8292万円に対する平成18年5月1日から,うち1億0081万円に対
する平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払
を請求せよ。
21被告は,P13株式会社に対し,8億1529万円,及び,うち3億7
389万円に対する平成18年5月1日から,うち4億4140万円に対する
平成19年5月1日から各支払済みまで各年5分の割合による金員の支払を請
求せよ。
第2事案の概要
本件は,神戸市が,神戸市の職員を派遣している財団法人,株式会社等の2
0団体に対し補助金又は委託料を支出した行為について,原告らが,公益法人
等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成12年法律第50号。
以下「派遣法」という。)6条2項の手続によることなく上記各団体に派遣職
員人件費に充てる補助金又は委託料を支出することは派遣法の脱法行為として
違法であり,地方自治法(以下「地自法」という。)232条の2によっても
正当化されないとして,被告に対し,各支出時に神戸市長の地位にあったP1
に対し,平成17,18年度に神戸市が支出した補助金又は委託料に含まれる
派遣職員人件費相当額及びこれに対する遅延損害金について損害賠償請求する
ことを求めるとともに,上記補助金又は委託料を受領した上記各団体に対し,
上記人件費相当額について不当利得返還請求すること及びこれらに対する法定
利息の支払を請求することを求めた住民訴訟である。
1争いのない事実及び証拠等により容易に認定することのできる事実(証
拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)当事者等
ア原告らは,肩書地記載のとおり,いずれも神戸市内に住居を有
する者である。
イ財団法人等(以下,下記(ア)ないし(ト)を併せ,「本件各団体
」といい,本件各団体のうち,(ト)を除いたものを「本件財団法人等」と
いうことがある。)
(ア)財団法人P17財団(以下「P17財団」という。)
P17財団は,21世紀の成長産業として期待されている健康・福祉
・医療関連産業の振興を図ることによって,新産業の創出・既存産業の
高度化・雇用の確保による神戸経済の復興,健康支援と高齢化社会への
対応による市民福祉の向上,さらにはアジア諸国の医療技術の向上等の
国際社会への貢献を目的とする神戸医療産業都市構想を推進するため,
中核的支援機関として,産官学の連携による先端医療の臨床研究や技術
開発を行い,次世代の医療システムの構築を通じて,医療サービスの向
上と医療関連産業の集積形成に寄与することを目的とする団体である(
乙23)。
(イ)財団法人P12財団(以下「P12財団」という。)
P12財団は,高齢化社会における勤労者の福祉の振興のため,市民,
事業者と行政の連帯と協力のもとに,中高年齢者に好適な職種,事業の
調査及び開発,勤労者を対象とする生涯教育事業の実施並びに中高年齢
者の福祉の増進に関する事業を行い,さらに神戸市勤労者福祉共済制度
の運営,勤労者の福祉施設の管理運営等の事業を推進し,もって高齢化
社会における勤労者の福祉の向上に寄与することを目的とする団体であ
る(乙24)。
(ウ)財団法人P11センター(以下「P11センター」という。)
P11センターは,臨時的かつ短期的な就業又はその他の軽易な業務
(厚生労働大臣が定めるものに限る。)を通じて自己の労働能力を活用
し,自らの生きがいの充実や社会参加を希望するおおむね60歳以上の
神戸市内に居住する高年齢者に対し,就業機会を確保し,及び,組織的
に提供すること等により,高年齢者の福祉の増進を図り,もってその能
力を生かした活力ある地域づくりに寄与することを目的とする団体であ
る(乙25)。
(エ)財団法人P29財団(以下「P29財団」という。)P29財団
は,市民の文化活動の振興に資する事業を行い,もって個性豊かな魅力
ある神戸文化の創造に寄与することを目的とする団体である(乙26)。
(オ)財団法人P20協会(以下「P20協会」という。)
P20協会は,神戸市における観光事業の振興を図るとともに,学術,
文化等に関するコンベンションの誘致・支援等を行い,もって産業経済
の発展と市民文化の向上に資し,併せて国際観光及びコンベンションを
通じ国際交流及び国際親善に寄与することを目的とする団体である(乙
27)。
(カ)財団法人P30センター(以下「P30センター」という。)
P30センターは,開発途上国を中心とする諸外国の都市に関する諸
問題の解決に資するため,人材の受入れ及び研修の実施,人材の派遣を
行うとともに,開発途上国を中心とする諸外国の都市に関する諸問題の
調査,研究及び情報交換を行い,併せて地域の国際化を推進する活動を
行い,これらの事業を通じて神戸を中心とした関西一円における国際協
力及び国際交流を推進し,もって国際社会の平和と繁栄に寄与すること
を目的とする団体である(乙28)。
(キ)財団法人P18協会(以下「P18協会」という。)
P18協会は,市民,事業者及び神戸市がそれぞれの有する人材,資
力その他の福祉資源を総合的に活用することによって,市民の福祉を振
興するための事業を創造し,かつ,推進し,もって市民の福祉の向上に
寄与することを目的とする財団法人である(乙29)。
(ク)財団法人P28協会(以下「P28協会」という。)
P28協会は,神戸市の障害者のスポーツを振興することにより,障
害者の機能回復と健康の増進を図るとともに,障害者の社会的自立と社
会参加を促進し,もって障害者の福祉の向上に寄与することを目的とす
る財団法人である(乙30)。
(ケ)財団法人P14財団(以下「P14財団」という。)
P14財団は,健康づくりから診断・治療,リハビリテーションにい
たる包括的な医療供給体制の確立を図るため,神戸市における地域医療
のシステム化を推進し,もって市民の健康と福祉の増進に寄与すること
を目的とする財団法人である(乙31)。
(コ)財団法人P15研究所(以下「P15研究所」という。)
P15研究所は,在宅高齢者等に対する福祉・医療サービス(在宅ケ
ア)についての研究及び実践を行い,もって,高齢者等の福祉の向上に
寄与することを目的とする財団法人である(乙32)。
(サ)社会福祉法人P31協議会(以下「P31協議会」という。)
P31協議会は,神戸市における社会福祉事業その他の社会福祉を目
的とする事業の健全な発達及び社会福祉に関する活動の活性化により,
地域福祉の推進を図ることを目的とする社会福祉法人である(乙33)。
(シ)財団法人P21財団(以下「P21財団」という。)
P21財団は,神戸市における産業の情報化及び高度化の推進,貿易
及び投資の促進等により,市内産業の基盤強化と振興を図り,もって神
戸経済の発展に寄与することを目的とする財団法人である(乙35)。
(ス)財団法人P19公社(以下「P19公社」という。)
P19公社は,神戸市域の農業及び漁業の振興に関する事業を推進す
るとともに,消費の高度化と文化水準の向上に伴い,需要が著しく増大
している園芸農産物の安定供給等の事業を行い,市民のレクリエーショ
ンのための農漁業に関する施設を管理し,運営する等,市民福祉の向上
と市域農漁業の発展に資することを目的とする財団法人である(乙36
)。
(セ)財団法人P23公社(以下「P23公社」という。)
P23公社は,神戸国際港都建設の主旨にのっとり,神戸市域内の地
域的特性に適応する土地の合理的利用と開発を図るため,都市の整備及
び再開発並びに地域開発のための事業を推進することにより,都市機能
の維持増進と都市環境の整備改善につとめ,もって神戸市の産業経済の
発展と住民の福祉厚生の向上に寄与することを目的とする財団法人であ
る(乙37)。
(ソ)財団法人P32協会(以下「P32協会」という。)
P32協会は,神戸市の公園緑地事業の発展振興を図り,あわせて,
市民の保健,慰楽及び教育文化の向上に寄与することを目的とする財団
法人である(乙38)。
(タ)P24公社(以下「P24公社」という。)
P24公社は,住宅を必要とする勤労者に対し,住宅の積立分譲等の
方法により居住環境の良好な集団住宅及びその用に供する宅地を供給し,
もって住民の生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする
団体である(乙39)。
(チ)社団法人P16協会(以下「P16協会」という。)
P16協会は,神戸港の振興対策を強力に推進し,もって神戸港の永
遠の発展に寄与することを目的とする財団法人である(乙40)。
(ツ)財団法人P33公社(以下「P33公社」という。)
P33公社は,災害の予防と被害の軽減を図るため,防災安全意識の
普及啓発に努め,市民や事業者の自主的な防災活動を支援するとともに,
市民生活の防災安全対策を推進し,もって安心して暮らし,働けるまち
づくりに寄与することを目的とする財団法人である(乙43)。
(テ)財団法人P25協会(以下「P25協会」という。)
P25協会は,市民の健康増進を図るため,市民皆スポーツを基本理
念に,各種スポーツ大会等の開催及びスポーツ指導者の養成等を通じ,
神戸市におけるアマチュアスポーツ及び生涯スポーツの普及振興を図り,
また,学校給食の向上に関する事業その他学校教育及び社会教育の推進
に関する事業を行い,もって,市民の将来に渡る健全な心身の発達及び
保持に寄与することを目的とする財団法人である(乙44)。
(ト)P13株式会社(以下「P13」という。)
P13は,産業廃棄物,一般廃棄物の処理・処分及び資源の再生処理
等の事業を営むことを目的とする株式会社である(乙34)。
ウP1
P1は,平成13年11月20日以降,現在に至るまで,神戸市長の地
位にある者である。神戸市長は,本件各団体への補助金交付を決定する権
限及び同決定に基づく支出を命令する権限並びに神戸市と本件各団体との
委託契約を締結する権限及び同契約に基づく委託料の支出を命令する権限
を本来的に有している(地自法149条2号)。
(2)神戸市の本件各団体への職員の派遣
神戸市は,本件各団体に対し,神戸市の職員を派遣している(以下「本件
派遣職員」という。)。本件派遣職員は,本件各団体のみの業務に従事して
おり,神戸市の業務には一切従事しておらず,また,本件各団体には,本件
派遣職員の他に,本件各団体が採用している職員(以下「固有職員」という。
)が存在する(甲4,弁論の全趣旨)。
ア神戸市は,本件財団法人等との間で,後記派遣法2条1項規定
の「取決め」として,「職員の派遣に関する協定書」を作成し,以下の事
項等について合意した(甲19,55,95)。
(ア)2条(身分)
本件財団法人等へ派遣された職員は,神戸市において現に有する身分
をそのまま有するものとし,本件財団法人等は,当該派遣職員を本件財
団法人等の役員又は職員に併任するものとする。
(イ)3条(従事すべき業務)
本件財団法人等は,派遣職員を神戸市の事務又は事業と密接な関連を
有すると認められる業務,又は内部管理的な業務等であって,本件各団
体の業務運営上,派遣職員を従事させる必要があると認められる業務に
従事させることができる。
(ウ)6条(給与等)
派遣職員の給与及び諸手当(退職手当を除く。)は,本件財団法人等
の関係規定を適用し,本件財団法人等が支給するものとするが,本件財
団法人等が支給する給料及び諸手当は,当該派遣職員が神戸市において
職務に従事するものとした場合に神戸市より受けることができる額を下
回らないものとする。
イ神戸市は,P13との間で,後記派遣法10条1項規定の「取
決め」として,「職員の派遣に関する協定書」を作成し,以下の事項等に
ついて合意した(甲19)。
(ア)2条(身分)
神戸市は,P13へ派遣する職員を退職させて派遣するものとし,同
社は,当該派遣職員を同社の役員又は職員に採用するものとする。
(イ)3条(従事すべき業務)
P13は,派遣職員を,地域の振興,住民の生活の向上その他公益の
増進に寄与するとともに,神戸市の事務又は事業と密接な関連を有する
と認められる業務,又は内部管理的な業務等であって,同社の業務運営
上,派遣職員を従事させる必要があると認められる業務に従事させるこ
とができる。
(ウ)6条(給与等)
派遣職員の給与及び諸手当(退職手当を除く。)は,P13の関係規
定を適用し,同社が支給するものとするが,同社が支給する給料及び諸
手当は,当該派遣職員が神戸市において職務に従事するものとした場合
に神戸市より受けることができる額を下回らないものとする。
(3)神戸市の補助金支出
ア神戸市の定め
神戸市は,別表1「外郭団体」欄記載の各団体(以下,併せて「本件
補助金交付団体」という。)に対し,P23公社を除き,それぞれ同別
表「補助金交付要綱」欄記載の各要綱(以下,併せて「本件各要綱」と
いうことがある。)に基づき,補助金を支出している。本件各要綱に係
る派遣職員人件費についての補助対象の定めは,以下のとおりである(
なお,同別表記載の「弁」は弁論の全趣旨を意味する。以下,後記の別
表2及び3も同じ。)。
(ア)補助金の使途又は補助金交付の対象となる経費(以下「補助対象経
費」という。)として,派遣職員人件費を明示しているもの
別表1「補助金交付要綱」欄⑪記載の要綱(以下「要綱⑪」といい,
同欄記載の他の要綱も同様とする。2条。甲101),要綱⑯(3条1
号。甲77),要綱⑰(3条1号。甲78),要綱⑱(3条1号。甲7
9),及び,要綱⑲(3条1号。甲80,乙52,弁論の全趣旨)
(イ)補助対象経費,補助の対象又は補助金を充てる経費として,人件費
(又は「給料手当及び賃金」)を明示しているもの
要綱②(3条1号。甲58,59),要綱④(3条1号。甲62,6
3),要綱⑤(3条1号。甲64,65),要綱⑧(4条2号。甲98
),要綱⑫(2条1号。甲68,69),要綱⑬(3条1号。甲70,
71),要綱⑭(4条1号①,2号①。甲72,73,乙51),要綱
⑮(4条1号①,2号①。甲75,乙50),要綱⑳(3条1号。甲8
3,84),要綱<21>(3条1号。甲85,86),及び,要綱<22>(
3条1号。甲87,88)
(ウ)上記(ア),(イ)のいずれでもないもの
要綱①(3条。甲56,57,乙49),要綱⑥(3条。甲66,6
7),要綱⑦(3条。甲97),要綱⑨(2条。甲3),及び,要綱⑩
(2条。甲3)
(エ)確認できないもの
要綱③(補助対象経費を「別表1に掲げる経費とするほか,市長が特
に必要と認める経費」とするが(3条),当該「別表1」の内容が不明
である。甲60,61)
イ平成17,18年度の補助金支出
神戸市は,平成17,18年度において,本件補助金交付団体に対し,
それぞれ要綱①ないし<22>等に基づく交付申請に対する交付決定を行い,
補助金を支出した(以下,併せて「本件補助金」ということがある。)。
平成17,18年度の本件補助金交付団体における派遣職員人件費支出額
は,別表2「補助金」欄に○のある同別表「平成17年度派遣職員人件費
」欄及び「平成18年度派遣職員人件費」欄記載のとおりである(なお,
同各欄記載の「調」は,調査嘱託の回答結果を意味する。)。
(4)神戸市の委託料支出
ア神戸市の定め
神戸市は,別表3「外郭団体」欄記載の各団体(以下,併せて「本件委
託団体」という。)との間で,それぞれ同別表「委託業務」欄記載の各業
務についての委託契約(以下,併せて「本件各委託契約」ということがあ
る。)を締結し,本件委託団体に対し,本件各委託契約に基づき,委託料
を支出している。本件各委託契約に係る契約書又は協定書における委託料
と派遣職員人件費の関係に関する定めは,以下のとおりである。
(ア)委託料の内訳として,派遣職員人件費を明示しているもの
別表3「委託業務」欄<23>記載の委託業務についての委託契約(5
条1項。甲49。以下「契約<23>の1」といい,同欄記載の他の委託業
務についての各委託契約のうち,平成17年度の各委託契約も同様とす
る。)
(イ)委託料の内訳として,人件費を明示しているもの
別表3「委託業務」欄①記載の委託業務についての各委託契約(5条
1項。甲20,21。以下,平成18年度の委託契約を「契約①の2」
といい,契約①の1と併せて「契約①」ということがある。同欄記載の
他の委託業務についての各委託契約も同様とする。),契約⑰(3条2
項1号。甲42,45),及び,契約⑳の2(2条2項1号。甲93)
(ウ)上記(ア),(イ)のいずれでもないもの
契約②の1(5条。甲22),契約③(3条。甲23,24),契約
④の1(5条。甲53),契約⑤(3条。甲30,31),契約⑥の1
(4条。甲29),契約⑦の1(4条。甲32),契約⑧の1(4条。
甲33),契約⑨の1(4条。甲34),契約⑩の1(4条。甲35),
契約⑪の1(4条。甲36),契約⑫の1(4条。甲37),契約⑬の
1(4条。甲38),契約⑭の1(4条。甲39),契約⑮の1(4条。
甲40),契約⑯の1(4条。甲41),契約⑱(3条。甲43,46
),契約⑲の1(3条。甲44),契約<21>の1(3条。甲47),契
約<22>の1(5条。甲48),契約<24>の1(3条。甲50),契約<2
5>の1(3条。甲51),契約<26>(4条。甲52,弁論の全趣旨),
契約<27>(3条。甲25,27),及び,契約<28>(4条。甲26,2
8)
イ平成17,18年度の委託料支出
神戸市は,平成17,18年度において,本件委託団体に対し,それぞ
れ本件各委託契約に基づき,委託料を支出した(以下,併せて「本件委託
料」といい,本件補助金と併せて「本件支出」ということがある。)。平
成17,18年度における派遣職員人件費支出額は,別表2「委託料」欄
に○のある同別表「平成17年度派遣職員人件費」欄及び「平成18年度
派遣職員人件費」欄記載のとおりである。
(5)監査請求
ア原告らは,平成18年4月5日及び同月10日に,神戸市監査
委員に対して,神戸市が平成17年度に本件各団体等に対し,派遣職員人
件費相当額を補助金又は委託料として支出したことは,地方公共団体が給
与を負担する第三セクターへの職員派遣を原則として禁止し,職員を派遣
する場合は派遣先が給与を負担する旨定めた派遣法の脱法行為として違法
であるから,本件各団体等は受領した補助金又は委託料及び受領時からの
年5分の利息を返還すべきであり,支出命令権者である神戸市長の地位に
あるP1は,上記補助金又は委託料のうち本件各団体等から返還されない
額については神戸市に損害賠償すべきであり,平成18年度に支出予定の
補助金又は委託料については支出すべきでないなどと主張して,かかる趣
旨に沿った措置を執ることを求めて,住民監査請求を行った(甲1ないし
3)。
イ神戸市監査委員は,上記監査請求に対し,平成18年6月1日
付けの監査結果において,本件各団体等に対し支出した補助金又は委託料
に含まれる派遣職員人件費相当額の支出は違法な公金の支出ではなく,措
置の必要を認めない旨判断し,そのころ,原告らは同監査結果を受領した
(甲1,弁論の全趣旨)。
(6)本件訴えの提起
原告らは,上記監査結果に不服があるとして,平成18年6月29日,本
件訴えを提起した。
2関係法令の定め
(1)派遣法(平成14年4月1日施行。ただし,10条については,同
年3月31日施行。)
ア1条(目的)
同条は,派遣法の目的について,地方公共団体が人的援助を行うことが
必要と認められる公益法人等の業務に専ら従事させるために職員を派遣す
る制度等を整備することにより,公益法人等の業務の円滑な実施の確保を
通じて,地域の振興,住民の生活の向上等に関する地方公共団体の諸施策
の推進を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的とする旨規定
している。
イ2条(職員の派遣)
(ア)同条1項
同項は,任命権者は,同項各号に定める(なお,同項1号は,民法3
4条の規定により設立された法人を定めている。)公益法人等のうち,
その業務の全部又は一部が当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関
連を有するものであり,かつ,当該地方公共団体がその施策の推進を図
るため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるものと
の間の取決めに基づき,当該公益法人等の業務にその役職員として専ら
従事させるため,条例で定めるところにより,職員を派遣することがで
きる旨規定している。
(イ)同条3項
同項は,同条1項の取決めにおいては,当該職員派遣に係る職員の職
員派遣を受ける公益法人等(以下「派遣先団体」という。)における報
酬その他の勤務条件及び当該派遣先団体において従事すべき業務等その
他職員派遣に当たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を
定めるものとする旨規定している。
(ウ)同条4項
同項は,同条3項の規定により同条1項の取決めで定める職員派遣に
係る職員の派遣先団体において従事すべき業務は,当該派遣先団体の主
たる業務が地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認めら
れる業務である場合を除き,地方公共団体の事務又は事業と密接な関連
を有すると認められる業務を主たる内容とするものでなければならない
旨規定している。
ウ6条(派遣職員の給与)
(ア)同条1項
同項は,派遣職員には,その職員派遣の期間中,給与を支給しない旨
規定している。
(イ)同条2項
同項は,派遣職員が派遣先団体において従事する業務が地方公共団体
の委託を受けて行う業務,地方公共団体と共同して行う業務若しくは地
方公共団体の事務若しくは事業を補完し若しくは支援すると認められる
業務であってその実施により地方公共団体の事務若しくは事業の効率的
若しくは効果的な実施が図られると認められるものである場合(以下,
これらの業務を併せて「給与支給可能業務」という。)又は給与支給可
能業務が派遣先団体の主たる業務である場合には,地方公共団体は,同
条1項の規定にかかわらず,派遣職員に対し,その職員派遣期間中,条
例で定めるところにより,給与を支給することができる旨規定している。
エ10条(特定法人の業務に従事するために退職した者の採用)
(ア)同条1項
同項は,任命権者と当該地方公共団体が出資している株式会社のうち,
その業務の全部又は一部が地域の振興,住民の生活の向上その他公益の
増進に寄与するとともに当該地方公共団体の事務又は事業と密接な関連
を有するものであり,かつ,当該地方公共団体がその施策の推進を図る
ため人的援助を行うことが必要であるものとして条例で定めるもの(以
下「特定法人」という。)との間で締結された取決めに定められた内容
に従って,当該特定法人の業務に従事するよう求める任命権者の要請に
応じて職員が退職し,引き続き当該特定法人の役職員として在職した後,
当該取決めで定める当該特定法人において業務に従事すべき期間が満了
した場合又はその者が上記役職員の地位を失った場合等には,原則とし
て,その者が退職した時就いていた職等に係る任命権者は,上記役職員
としての在職に引き続き,その者を職員として採用する旨規定している。
(イ)同条2項
同項は,同条1項の取決めにおいては,同項の要請に応じて退職し引
き続き当該特定法人に在職する者の当該特定法人における報酬その他の
勤務条件及び当該特定法人において従事すべき業務その他職員派遣に当
たって合意しておくべきものとして条例で定める事項を定めるものとす
る旨規定している。
(ウ)同条3項
同項は,同条2項の規定により同条1項の取決めで定める派遣職員の
特定法人において従事すべき業務は,当該特定法人の主たる業務が地域
の振興,住民の生活の向上その他の公益の増進に寄与し,かつ,地方公
共団体の事務又は事業と密接な関連を有すると認められる業務である場
合を除き,上記業務を主たる内容とするものでなければならない旨規定
している。
(2)神戸市「公益法人等への職員の派遣等に関する条例」(乙46。平
成13年条例第49号。以下「本件条例」という。)
ア1条(趣旨)
同条は,派遣法の規定に基づき,公益法人等への職員の派遣等に関し必
要な事項を定める旨規定している。
イ2条1項(職員の派遣)
(ア)同項1号
同号は,派遣法2条1項に規定する公益法人等のうち,神戸市が基本
金その他これに準ずるものを出資している法人で人事委員会規則で定め
るものとの間の取決めに基づき,当該公益法人等の業務にその役職員と
して専ら従事させるため,職員を派遣することができる旨規定している。
(イ)同項2号
同号は,派遣法2条1項に規定する公益法人等のうち,上記本件条例
2条1項1号で定めるもののほか,派遣法2条1項各号に規定する団体
で人事委員会規則で定めるものとの間の取決めに基づき,当該公益法人
等の業務にその役職員として専ら従事させるため,職員を派遣すること
ができる旨規定している。
ウ4条(派遣職員の給与)
同条は,派遣職員のうち,派遣法6条2項に規定する業務(給与支給可
能業務)に従事するものには,その職員派遣期間中,給料,扶養手当,調
整手当,住居手当及び期末手当のそれぞれ100分の100以内を支給す
ることができる旨規定している。
エ10条2号(派遣法10条1項に規定する特定法人として条例
で定めるもの)
同号は,同条1号に掲げるもの(神戸市が資本金その他これに準ずるも
のの4分の1以上を出資している法人で人事委員会規則で定めるもの)の
ほか,神戸市が資本金その他これに準ずるものを出資している法人のうち,
神戸市が人的援助を行うことが特に必要であるものとして人事委員会規則
で定めるものが,派遣法10条1項に規定する特定法人に当たる旨規定し
ている。
(3)神戸市「公益法人等への職員の派遣等に関する条例の施行規則」(
乙48。平成14年人事委員会規則第7号。以下「本件規則」という。)
ア1条(趣旨)
同条は,本件条例の規定に基づき,公益法人等への職員の派遣等に関し
必要な事項を定める旨規定している。
イ2条(派遣先団体等)
(ア)同条1項
同項は,本件条例2条1項1号に規定する人事委員会規則で定める団
体として,P17財団(×号),P12財団(×号),P11センター
(×号),P29財団(×号),P20協会(×号),P30センター
(×号),P18協会(×号),P28協会(×号),P14財団(×
号),P15研究所(×号),P21財団(×号),P19公社(×号
),P23公社(×号),P32協会(×号),P24公社(×号),
P33公社(×号),及び,P25協会(×号)を規定している。
(イ)同条2項
同項は,本件条例2条1項2号に規定する人事委員会規則で定める団
体として,P31協議会(×号)及びP16協会(×号)を規定してい
る。
(ウ)同条4項
同項は,本件条例10条2号に規定する人事委員会規則で定める団体
として,P13(×号)を規定している。
3争点
(1)本件支出の違法性
具体的には,本件各団体に対し,神戸市が派遣職員人件費相当額を補助金
又は委託料として支出することが,派遣法6条の脱法行為として違法となら
ないか(争点1)である。
(2)P1の故意又は過失の有無(争点2)
(3)本件各団体の不当利得及び悪意の有無(争点3)
(4)損害額又は損失額(争点4)
4当事者の主張
(1)争点1
(原告らの主張)
ア本件補助金の支出について
(ア)派遣法6条との関係
派遣法6条1項は,同条2項の場合を除き,原則として給与付派遣を
禁止しているから,同項以外の場合に給与付派遣は許されない。同項に
該当する場合は条例で明記すれば給与付派遣は可能だが,本件補助金の
支出は,条例に規定のない補助金による迂回支出である。給与付派遣が
許されるのは同項に該当する場合に限定されているのであり,名目を補
助金とすれば派遣職員の人件費が支出できるとすれば,地方公共団体の
業務に従事していない公務員に給与を支給してはならないとする同法の
趣旨は完全に潜脱される。
被告は,地自法232条の2を根拠に本件補助金支出が適法である旨
主張するが,派遣法は,地自法施行後に制定されたその特別法であり,
同法に優先的に適用される。
また,被告は,給与支給と給与相当額の補助金支給は全く法的手段も
効果も異なり,派遣法6条2項以外の場合に給与支給が禁止されること
から,給与相当額の補助金支出が禁止されると結論付けるのは飛躍した
議論であるなどと主張するが,同法は,公益性のある事業に職員を派遣
するため,同項の給与付派遣の制度を置き,本件条例がそのための道を
開いているのであり,被告が給与付派遣をしたければ本件条例に基づく
給与付派遣制度によればよいのであり,自ら当該制度を設けておきなが
らそれによらなくてもよいと主張し,給与相当額の補助金支給をするの
は,自己矛盾であるとともに,給与付派遣の要件を満たさないからであ
り,まさに脱法行為である。
本件では,神戸市は,派遣法施行後は,同法施行前と同様に職員を派
遣しつつ給与は補助金の形式をとることで,従前の給与付派遣を維持し
ているにすぎない。従前の給与付派遣が適法とされるには,派遣目的が
神戸市の任務の達成にあり,派遣職員が神戸市のなすべき業務に従事し
ていること等を要するが,第三セクターがすべて神戸市の業務を行って
いるはずはなく,このような職員派遣は派遣法施行前も違法であり,公
益性がない。
(イ)地自法232条の2の公益上の必要性
a第三セクターはあくまで神戸市とは別の団体であるから,人件費は
自前で調達すべきであり,第三セクターの職員に人件費を補助する場
合は,神戸市の組織として法的統制を行うべきである。仮に派遣職員
人件費の補助が許される場合があるとしても,一般的には派遣職員へ
の給与支給が禁止されており,例外的に派遣法6条2項により許され
るにすぎないことから,それにもかかわらず,同法のルールによらず
に本件補助金交付団体に人件費を補助すべき公益性があることを,被
告は個別具体的に主張,立証しなければならない。
b被告と本件補助金交付団体との間には派遣に関する協定書が存在す
るところ,各協定は,いずれも,派遣法2条1項に基づく神戸市の職
員派遣について,給与その他必要な事項に関し協定すること,並びに,
派遣職員の給与及び諸手当(退職手当を除く。)は,派遣先団体の関
係規定を適用して同団体が支給するが,その給与等は,当該派遣職員
が神戸市で職務に従事した場合の支給額未満としない旨規定する。し
かし,上記各協定は,神戸市からの派遣職員への給与支給は協定され
ていないから,補助金による支給は,迂回支出として違法である。
c被告は,地自法232条の2の公益上の必要性は,支出先団体及び
その事業内容の性質により判断するもので,他に考慮すべき事情はな
いと主張するが,団体の性格のみで十分とするのはあまりに雑な議論
である。
また,被告の援用する国会答弁は,派遣法による給与支給の禁止に
もかかわらず,人件費相当額の補助ができるというものではなく,第
三セクターは本来自助努力により運営されるべきものであり,地自法
232条の2により補助できる場合も,第三セクター自体の社会的な
便益が広く地域にもたらされる事業を行うような場合に限られ,当該
第三セクターに対する地方公共団体の関わり方を踏まえて,公益上の
必要性等について十分な検討がなされることが必要であるとするもの
であり,あくまで一般論に終始するものにすぎない。
他にも,被告は派遣法の手続に従うと神戸市の業務・事業の効率的,
効果的実施を妨げることがありうると主張するが,その理由やどのよ
うに妨げられるのかという点の実証がなされていないし,他にも派遣
職員への確定申告の強制等を主張するが,事務手続の煩雑さは派遣法
を無視する理由とはならない。
イ本件委託料の支出について
本件委託団体に委託している業務について,被告は,本来神戸市の業務
であることや本件委託団体に委託することの公益性を立証する必要がある
が,それはなされていない。また,本件派遣職員の人件費も本件委託団体
の給与水準によって算定すべきであるが,本件では神戸市の職員の給与水
準によっており,神戸市が職員を給与付きで派遣しているのと同様である。
したがって,本件委託料の支出も,本件補助金の支出と同様に,派遣法に
より禁止された派遣職員への給与の支給を行うものであり,これも,派遣
法を迂回する脱法行為であり,派遣法の精神を滅却する違法支出である。
被告は,派遣法の趣旨に反しない理由として本件委託団体の業務を紹介
しているが,このようなおおざっぱな業務内容の紹介だけでは,神戸市か
ら給与分まで支給される公益性は証明されない。これらの業務が神戸市の
事務事業であるなら,他の民間資本を入れた自治体とは異なる団体である
第三セクターが経営を行うことはその設立の趣旨に反するものである。
ウ立証責任の所在について
本訴は,現行の地自法に基づき,被告たる執行機関等に対し一定の請求
をすることの義務付けを求めるものであり,処分取消訴訟における処分の
適法性の立証責任が被告にあるのと同様,上記義務付け訴訟においては,
被告が当該請求をしない理由を主張,立証する責任があると考えられる。
代位訴訟であった平成14年法律第4号による改正前の地自法と異なり,
現行のいわゆる4号請求は,構造的にも執行機関を被告とすることによっ
て自治体の説明責任を果たさせようとしたものである。
(被告の主張)
ア地自法232条の2は,各地方自治体がその自治権(憲法94
条)に基づき本来的に寄付や補助が可能であることを規定したものである
から,公益上の必要性の判断は,各地方公共団体の判断に委ねられ,著し
く裁量権を逸脱又は濫用したと認められる場合にのみ違法と判断される。
そして,上記公益上の必要性は,補助金支出先の団体及びその事業内容の
性質により判断するものであり,他に考慮すべき事情はない。
本件補助金交付団体は,前記第2,1,(1),(ア)ないし(ソ),(ツ),
及び,(テ)の目的の下,別表4「本件補助金交付団体の公益性(事業内容
)」欄記載のとおり,それぞれ極めて高度の公益性を有している。
したがって,神戸市が本件補助金交付団体に対し本件補助金を支出した
ことが著しく裁量権を逸脱又は濫用したといえないことは明らかである。
イ(ア)公益法人等への派遣は,地方公共団体の事務又は事業と密
接な関連を有するもので人的援助の必要なものとして条例に定めた法人
にできるとされており,神戸市においては,本件条例及び本件規則が制
定され,77の法人につき職員派遣ができることとなっているが,本件
補助金交付団体は本件規則上の派遣可能法人に含まれている。
また,派遣職員には,神戸市から直接給与は支給されないことが原則
であるが,派遣法6条2項によれば,派遣職員が従事する業務が給与支
給可能業務である場合又は給与支給可能業務が派遣先団体の主たる業務
である場合には条例の定めるところにより給与を支給できるものの,派
遣職員の業務が上記の各要件に該当するか否かの判定は困難を伴うこと
が考えられる。
(イ)そして,派遣法は,上記各事項について定めているものの,職員の
派遣先団体に対する補助金交付に関し何ら制限しておらず,派遣法6条
2項により派遣職員の給与が支給されていない場合に,公益上の必要が
あっても当該派遣職員の人件費相当額について補助金を支出できないと
は文言上読めないし,同法の制定経緯等にかんがみれば,実質的にもそ
う解すべき理由はない。補助金一般としてその対象に職員人件費を含む
ことは当然で,派遣先団体がいかに公益性のある事業を行っていても,
固有職員の人件費に係る補助金支給はよいが,派遣職員の人件費に係る
補助金支給が禁止されると解するのは不合理である。
派遣法の法案審議においても,地自法232条の2の規定により,地
方公共団体が財政的援助を行う場合もありうる旨の答弁もなされており,
このような審議を経て同法案が可決されていることからしても,派遣先
団体に対して給与相当額を含む補助金の支出をすることは派遣法に反し
ないとするのが立法者意思である。
原告らは,公益法人等の人件費を補助することが派遣法6条の脱法行
為であると主張するが,給与の支給と給与相当額の補助金の支給は全く
その法的手段も効果も異なるのであり,派遣法6条2項以外の場合に給
与支給が禁止されることから,給与相当額の補助金支給が禁止されると
結論付けるのは飛躍した議論である。
ウ国の作成した「公益法人等の職員派遣制度の運用について」は,
職員派遣の期間中に支給する給与の種類等については,休職期間中に俸給,
扶養手当,地域手当,広域調整手当,住居手当,期末手当及び期末特別手
当のそれぞれの100分の100以内を支給することができるとした一般
職の職員の給与に関する法律23条5項の規定と同様の扱いとすることが
適当であるとされ,本件条例4条も,これに従い定められたものであるが,
同条によれば,給与のうち時間外勤務手当,管理職手当,通勤手当及び勤
勉手当等の諸手当は支給の対象外とされていることから,上記諸手当は派
遣法6条2項により支給できず,派遣先団体が別途派遣職員に支給せざる
を得ない。そうすると,給与支給元と上記諸手当の支給元が異なることと
なる結果,源泉徴収額,共済費額の計算等の事務手続が煩雑となり,派遣
職員に確定申告をさせる等の過分の負担を強いることになる。なお,現に,
北九州市を除く政令指定都市では,派遣法6条2項による派遣職員への給
与支給を行っていない。
エ本件補助金交付団体は,神戸市の補助金によってそれに相当す
る公益活動を完遂しており,神戸市には何らの損害も発生していない。
オ本件委託料の支出について
神戸市は,民間等の専門的技術や能力を活用し,効率的な運営のもとで
良好な行政サービスを提供するため,事務事業の委託を実施している。こ
れらの委託事務の実施主体は神戸市であり,その内容は公共の福祉を実現
するところにある。また,公の施設の管理運営は,指定管理者制度への移
行が進む前は委託先が地方公共団体の出資法人や公共的な団体等に限定さ
れ,ノウハウなどの蓄積もあることなどから,委託先は公共性や神戸市施
策との密接な関連性を有する団体としている。
本件委託団体は,別表5「本件委託団体の公益性(事業内容)」欄記
載のとおりの事業を行っているところ,同事業はいずれも公共性を有し,
神戸市の事務若しくは事業の効率的若しくは効果的な実施を図ることを
目的とするものであるから,本件委託団体との本件各委託契約は適法で
あり,本件委託団体が本件派遣職員の給与を支給するにあたり,その財
源となる収入に神戸市からの委託料が含まれていても派遣法の趣旨に反
するものではない。
(2)争点2
(原告らの主張)
本件支出は迂回形式をとっていることからも,支出命令権者であるP1に
は故意がある。仮にそうでないとしても,本件では,神戸市の運用を正当化
する総務省の指導,同市と同様の運用実態の広がり又は同市の運用を適法と
する判例は存在せず,法解釈上の対立も認められないから,P1に過失があ
ることは明白である。
よって,本件支出当時,神戸市長の職にあったP1は責任を負うべきであ
る。
(被告の主張)
争う。
(3)争点3
(原告らの主張)
本件支出は,派遣法に明白に反し違法であるから無効であり,本件各団体
は,本件支出のうち,本件派遣職員人件費として費消した分を不当に利得し
ている。また,このような違法行為については補助金又は委託料を受領した
本件各団体は悪意であるといえるから,受領額に利息を付して神戸市に返還
すべきである(民法703,704条)。
(被告の主張)
争う。
(4)争点4
(原告らの主張)
本件各団体への補助金又は委託料に含まれて支出される派遣職員人件費の
支出は,派遣法6条2項に定める条例に規定されていない限り全て違法であ
るから,上記派遣職員人件費相当額が損害額であり損失額である。
原告らとしては,1万円未満の端数は本訴の対象には含めないこととする
ので,
アP17財団の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額である4431万3797円の内金4431万円及びこれに
対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,平成1
8年度補助金のうち派遣職員人件費相当額である6662万9277円の
内金6662万円及びこれに対する補助金支出日の後である平成19年5
月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
イP12財団の不当利得は,平成17年度補助金及び同委託料の
うち派遣職員人件費相当額である1億4571万3338円の内金1億4
571万円及びこれに対する補助金支出日又は委託料支出日の後である平
成18年5月1日から,並びに,平成18年度補助金及び同委託料のうち
派遣職員人件費相当額である1億6135万8112円の内金1億613
5万円及びこれに対する補助金支出日又は委託料支出日の後である平成1
9年5月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利

ウP11センターの不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣
職員人件費相当額である6429万6249円の内金6429万円及びこ
れに対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,平
成18年度補助金のうち派遣職員人件費相当額である6415万6295
円の内金6415万円及びこれに対する補助金支出日の後である平成19
年5月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
エP29財団の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額である1億4986万7631円の内金1億4986万円及
びこれに対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,
平成18年度補助金のうち派遣職員人件費相当額である1億7986万円
及びこれに対する補助金支出日の後である平成19年5月1日から各支払
済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
オP20協会の不当利得は,平成17年度補助金及び同委託料の
うち派遣職員人件費相当額である2億8096万8025円の内金2億8
095万円及びこれに対する補助金支出日又は委託料支出日の後である平
成18年5月1日から,並びに,平成18年度補助金及び同委託料のうち
派遣職員人件費相当額である8656万9910円の内金8650万円及
びこれに対する補助金支出日又は委託料支出日の後である平成19年5月
1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
カP30センターの不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣
職員人件費相当額である8828万4505円の内金8828万円及びこ
れに対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,平
成18年度補助金のうち派遣職員人件費相当額である9259万4333
円の内金9259万円及びこれに対する補助金支出日の後である平成19
年5月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
キP18協会の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額である3915万4057円の内金3915万円及びこれに
対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,平成1
8年度補助金のうち派遣職員人件費相当額である4188万7502円の
内金4188万円及びこれに対する補助金支出日の後である平成19年5
月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
クP28協会の不当利得は,平成18年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額である3528万2242円の内金3528万円及びこれに
対する補助金支出日の後である平成19年5月1日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による法定利息
ケP14財団の不当利得は,平成18年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額である1287万7012円の内金1287万円及びこれに
対する補助金支出日の後である平成19年5月1日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による法定利息
コP15研究所の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職
員人件費相当額である1億1025万円及びこれに対する補助金支出日の
後である平成18年5月1日から,並びに,平成18年度補助金のうち派
遣職員人件費相当額である1億0040万円及びこれに対する補助金支出
日の後である平成19年5月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分
の割合による法定利息
サP31協議会の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職
員人件費相当額である1億2371万2608円の内金1億2371万円
及びこれに対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並び
に,平成18年度補助金のうち派遣職員人件費相当額である1億5047
万1086円の内金1億5047万円及びこれに対する補助金支出日の後
である平成19年5月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合
による法定利息
シP21財団の不当利得は,平成17年度補助金及び同委託料の
うち派遣職員人件費相当額である2億7706万8948円の内金2億7
705万円及びこれに対する補助金支出日又は委託料支出日の後である平
成18年5月1日から,並びに,平成18年度補助金及び同委託料のうち
派遣職員人件費相当額である2億5007万円及びこれに対する補助金支
出日又は委託料支出日の後である平成19年5月1日から各支払済みまで
民法所定の各年5分の割合による法定利息
スP19公社の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額である1億9814万7687円の内金1億0742万円及
びこれに対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,
平成18年度補助金のうち派遣職員人件費相当額である1050万円及び
これに対する補助金支出日の後である平成19年5月1日から各支払済み
まで民法所定の各年5分の割合による法定利息
セP23公社の不当利得は,平成17年度補助金及び同委託料の
うち派遣職員人件費相当額である7億1495万8565円の内金7億1
495万円及びこれに対する補助金支出日又は委託料支出日の後である平
成18年5月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利

ソP32協会の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額である6億6552万7180円の内金6億6552万円及
びこれに対する補助金支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,
平成18年度補助金のうち派遣職員人件費相当額から後に返還された95
0万0965円を控除した1億5912万2035円の内金1億5912
万円及びこれに対する補助金支出日の後である平成19年5月1日から各
支払済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
タP24公社の不当利得は,平成17年度委託料のうち派遣職員
人件費相当額である7億1004万9641円の内金7億1004万円及
びこれに対する委託料支出日の後である平成18年5月1日から,並びに,
平成18年度委託料のうち派遣職員人件費相当額である3億1972万円
及びこれに対する委託料支出日の後である平成19年5月1日から各支払
済みまで民法所定の各年5分の割合による法定利息
チP16協会の不当利得は,平成17年度委託料のうち派遣職員
人件費相当額である6083万8240円の内金6083万円及びこれに
対する委託料支出日の後である平成18年5月1日から支払済みまで民法
所定の年5分の割合による法定利息
ツP33公社の不当利得は,平成17年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額から後に返還された142万4289円を控除した4430
万7711円の内金4430万円及びこれに対する補助金支出日の後であ
る平成18年5月1日から,並びに,平成18年度補助金のうち派遣職員
人件費相当額から後に返還された168万0761円を控除した4490
万7239円の内金4490万円及びこれに対する補助金支出日の後であ
る平成19年5月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合によ
る法定利息
テP25協会の不当利得は,平成17年度補助金及び同委託料の
うち派遣職員人件費相当額である6億8293万4470円の内金6億8
292万円及びこれに対する補助金支出日又は委託料支出日の後である平
成18年5月1日から,並びに,平成18年度補助金及び同委託料のうち
派遣職員人件費相当額である1億0081万円及びこれに対する補助金支
出日又は委託料支出日の後である平成19年5月1日から各支払済みまで
民法所定の各年5分の割合による法定利息
トP13の不当利得は,平成17年度委託料のうち派遣職員人件
費相当額である3億7389万円及びこれに対する委託料支出日の後であ
る平成18年5月1日から,並びに,平成18年度委託料のうち派遣職員
人件費相当額である4億4140万円及びこれに対する委託料支出日の後
である平成19年5月1日から各支払済みまで民法所定の各年5分の割合
による法定利息
となり,
ナP1が神戸市に与えた損害額は,上記アないしトの合計額(た
だし,法定利息とあるのは遅延損害金の趣旨となる。)ということとなる。
(被告の主張)
争う。
第3当裁判所の判断
1争点1について
(1)派遣職員人件費を補助金又は委託料により支出することの違法性の
有無について
ア前記のとおり,本件各財団法人等は,派遣法2条1項1号又は
2号の委任を受けた本件条例2条1項1号又は2号から再委任を受けた本
件規則2条1項各号又は2項各号において,P13は,派遣法10条1項
の委任を受けた本件条例10条2号から再委任を受けた本件規則2条4項
4号において,それぞれ職員派遣可能法人として規定されていることから,
本件各団体に対し,神戸市が本件派遣職員を派遣すること自体は適法であ
るといえる。
イ本件補助金について
(ア)本件補助金交付団体に対する派遣職員人件費相当額を補助金により
支出することの可否について判断するに,派遣法は,神奈川県茅ヶ崎市
が同市の商工会議所に対して職務専念義務免除の方法により職員を派遣
し給与等を支払ったことの適否について判示した茅ヶ崎市住民訴訟最高
裁判決(最高裁平成10年4月24日第二小法廷判決・裁判集民事18
8号275頁)等を踏まえ,これまで地方公共団体毎に職務専念義務免
除,職務命令,休職,退職等,様々な方法により行われていた職員派遣
についての統一的なルールの設定,派遣の適正化,派遣手続の透明化・
身分取扱いの明確化等,及び,行政と民間との連携協力による地方公共
団体の諸施策の推進を目的として制定されたものである(乙45,弁論
の全趣旨)。派遣期間中の派遣職員の給与に関して見ると,派遣職員は,
派遣時の原職にとどまるが,その職務に従事せずに派遣先団体の業務に
従事し(同法4条1項,2項),その給与は派遣先団体が支給し,地方
公共団体は給与を支給しないが(同法6条1項),派遣職員が派遣先団
体において従事する業務が給与支給可能業務である場合又は給与支給可
能業務が派遣先団体の主たる業務である場合は地方公共団体の職務に従
事することと同様の効果をもたらすものと認められることから,その場
合に限り,例外的に,地方公共団体は,条例で定めることを条件として,
派遣職員に対し給与を支給することができるものとされている(同法6
条2項)。
他方,一般に,地自法232条の2の要件を満たす限り,地方公共団
体が,団体に対し,その人件費を援助するため補助金を支出することは
許されるのであり,公益上の必要性の観点からすると,当該人件費が固
有職員に係るものか派遣職員に係るものかにより区別する合理的理由が
あるとはいえない。また,派遣法に定める公益法人等(同法2条1項柱
書き)及び特定法人(同法10条1項柱書き)の性質上,同法施行後に
おいてもこれらの法人に対する地方公共団体からの補助金支出が当然予
想されていたはずであるが,同法は,派遣職員人件費に充てる補助金支
出を禁止する明文規定を置いていない。これらの点からすると,派遣法
は,給与の支給対象が派遣職員であることのみを理由に当該給与相当額
を補助金により援助することを許さない趣旨とは解されず,地方公共団
体が,派遣職員について,派遣先団体の職員としての地位に基づき派遣
先団体から支給される給与相当額を援助する趣旨で補助金を支出するこ
とは,派遣法と必ずしも抵触するものではないと解すべきであり,かよ
うな補助金支出の適法性は,公益上の必要性(地自法232条の2)の
有無の問題として,別途検討されるべきものというべきである。すなわ
ち,補助金を充てる給与の支給対象者が派遣職員であっても,それが固
有職員である場合と同様に,当該派遣職員の従事する業務の内容,その
公益性の程度及びその給与相当額援助の必要性等の点から公益上の必要
性が肯定されるなら,当該補助金支出は適法といえるが,そうでなけれ
ば違法となる。以上と異なる原告らの主張は採用できない。
(イ)もっとも,地方公共団体の職員として地方公共団体の事務を行って
いない職員に対し,当該地方公共団体が地方公共団体の職員としての給
与を支給することは原則として違法であり(ノーワーク・ノーペイの原
則。地方公務員法24条1項参照),派遣法6条1項もこの理を派遣職
員について確認し,同条2項は,給与条例主義の趣旨も踏まえて,その
例外を条例制定を条件に認めたものと解することができる。したがって,
補助金を充てる給与の支給対象が派遣職員である場合に,上記のように
公益上の必要性の判断を経た上での補助金支出ではなく,地方公共団体
の職員としての給与支給の代替としてその人件費相当額を補助金によっ
て支出するなど地方公共団体からの給与支給そのものと同視できるよう
な補助金の支出は違法であるというべきである。
この点に関し,被告は,本訴において,本件補助金交付団体及びその
事業内容の性質のみから公益上の必要性(地自法232条の2)を判断
すべき旨主張し,これによると,被告は,本件補助金の交付決定及び同
決定に基づく支出命令(以下,一般に,補助金交付決定,同決定に基づ
く支出命令を併せて「交付決定等」という。)の際にもそれ以外の要件
の審査はしていないと考えざるを得ない。しかし,派遣法上の派遣先団
体又は特定法人であれば,同法2条1項又は10条1項の要件に照らし
てその団体の性質及びその業務の性質の一方又は双方が通常公益性を有
することは自明であるから,神戸市(被告)は,派遣職員の人件費相当
額の補助金については,公益上の必要性の実質判断を半ば放棄している
に等しい。すなわち,神戸市は,派遣職員人件費相当額について,条例
に基づき神戸市の職員として給与を支給することはしないとの選択をし
た場合において,派遣職員が併任されている本件補助金交付団体の職員
としての地位に基づき本件補助金交付団体から支給される公益法人等の
職員としての給与相当額につき,本件補助金交付団体に対して補助金と
して交付することの要否等について実質的には全く審査していないこと
を自認していることに他ならず,かかる場合に交付される補助金は,も
はや公益法人等の職員としての給与相当額を援助するものではなく,従
前の神戸市からの神戸市職員に対する給与そのものを補助金に藉口して
交付しているといわれてもやむを得ない(なお,本件補助金交付団体の
うち,派遣職員人件費の財源に補助金以外のものを含む団体についても,
上記のような審査をしていない以上は,当該補助金額分について上記結
論を左右するものではない。以下,委託料の場合も同じ。)。
(ウ)したがって,本件補助金の支出は違法たりうる。
もっとも,本件では,原告らは,本件補助金の支出に係る被告の各交
付決定等が違法であり,同決定等に基づく各支出が違法な公金支出たる
財務会計行為に該当すると主張するとともに,同決定等が無効であるか
ら本件補助金交付団体は,本件派遣職員人件費分を不当に利得している
と主張しているところ,前記第2,1,(3),ア,(ア)ないし(ウ)のと
おり,本件補助金の根拠たる本件各要綱においては,補助対象の規定内
容がそれぞれ異なっていること,本件補助金交付団体には本件派遣職員
のみならず固有職員も存在すること,及び,派遣職員人件費が補助金以
外の財源を含む場合もあること等から,そのような場合には,各交付決
定等の時点において,補助金が当該派遣先団体の派遣職員人件費として
支出されるか否か,又は,支出されるとしてもその支出額を確定するこ
とができない場合もあることから当初の交付決定等の時点では適法な,
支出であっても,派遣先団体が,派遣職員に対し当該補助金を給与とし
て支出した時点で神戸市が当該派遣先団体に対して返還請求権を有する
とか本件補助金交付団体は事後的に発生した返還債務の履行を怠ってい
るなどというならば格別,本件補助金の支出に係る各交付決定等自体が
違法となるためには,各交付決定等の時点において,補助金の全部又は
一部が本件補助金交付団体への派遣職員人件費として支出されることが
予定されていたといえる場合に限られ,補助金の一部が派遣職員人件費
として支出されることが予定されていたといえるためには,当該支出額
が各交付決定等の時点で(交付決定の際には特定されており,その範囲
で違法といえても,支出命令の際にはその額を超える支出がなされ,こ
れをも派遣職員人件費に費消した場合の支出命令の際の増加額について
も,また同じ。)具体的金額として特定されていることが必要であると
解される。また,交付決定等の時点で使途及び金額の絞りがない補助金
については,これが本件派遣職員人件費には費消しないという条件付き
で交付されたものとはいい難い以上,事後的な精算義務が発生する場合
があり得たとしても,事後的な費消の費目に応じて当該補助金が交付決
定等の時点に遡って違法となるものと解することはできないものといわ
ざるを得ない。
ウ本件委託料について
(ア)本件委託団体(ただし,P13を除く。)
本件各委託契約を締結し,本件各委託契約に基づき派遣職員人件費を
本件委託料として支払うことの可否について検討するに,本件委託料(
ただし,P13を除く。)についても,本件補助金の場合と同様に,本
件派遣職員について地方公共団体の職員としての給与支給の代替として,
その人件費相当額を委託料によって支出する場合には,ノーワーク・ノ
ーペイの原則に反し違法というべきである。
本件において,神戸市が,本件補助金の場合と異なり,本件各委託契
約の締結に当たり,委託料に派遣職員の給与相当額の全部又は一部を含
めるべきか否かについて,委託業務遂行の経費となる人件費としての相
当性の観点から検討を加えた形跡はなく(甲20号証,42号証等によ
れば,本件各委託契約の一部につき,委託(随意)契約の要否等の審査
がなされたことが確認できるが,上記観点からの審査がされたと認める
ことはできない。),本件委託料についても,本件派遣職員について,
神戸市の職員としての給与支給の代替として,その人件費相当額を委託
料として支出したというべきであり,違法たりうる。
(イ)P13
本件委託団体のうち,P13について,契約<27>及び<28>に基づき委
託料を支払うことの可否について検討するに,前記のとおり,地方公共
団体の職員としての給与支給の代替として,その人件費相当額を委託料
として支出した場合には違法となるところ,同社による職員派遣は,本
件財団法人等と異なり,派遣法10条1項に基づくものであり,派遣に
当たり,当該派遣職員は,退職した上で派遣先の特定法人の職務に従事
し,派遣期間満了又は当該特定法人における役職員の地位を失った場合
には,原則として,再度,退職前の地方公共団体から採用を受けること
になる。この趣旨は,地方公共団体が出資しているとはいえ,営利法人
たる株式会社に職員を派遣することから,いったん職員を退職させて再
度採用するという形をとることにより,その派遣手続や身分関係の透明
化を図る点にあるところ,特定法人への派遣においては,その給与の支
給に関しても,かかる趣旨から,派遣先団体への派遣と異なり,派遣法
6条2項の適用はなく,常に特定法人が派遣職員の給与を支給すること
とされている。
しかし,前記のとおり,特定法人(派遣法10条1項柱書き)の性質
上,同法施行後も特定法人に対する地方公共団体からの補助金支出が当
然予想されていたはずであること,派遣先団体に対する職員派遣におけ
る給与支給の要件が事業の密接関連性(同法2条1項,4項),人的援
助の必要性(同条1項),及び,地方公共団体の事業等の効果的な実施
等と評価しうること(同法6条2項)であるのに対して,特定法人への
職員派遣自体の要件は,事業の密接関連性(同法10条3項),人的援
助の必要性(同条1項),及び,地域の振興,住民の生活の向上その他
の公益の増進に寄与すること(同条1項,3項)とされており,派遣先
団体への職員派遣の場合の給与支給の要件を実質的に満たす場合も当然
にありうることからして,特定法人への派遣職員人件費相当額について
別途補助金(又は委託料)による援助を一切禁止する趣旨ではないもの
というべきであり,地方公共団体を退職している以上,神戸市から給与
という形で人件費を支出することはおよそ予定されていないということ
を意味するにとどまるものといえる。
そうすると,特定法人への派遣の場合は,派遣職員に対する神戸市か
らの給与支給という事態は形式上ありえないが,それはあくまで派遣法
が特定法人への派遣について退職派遣という形態を定めたことの裏返し
にすぎず,特定法人への派遣の場合も,公益法人等への派遣の場合と同
様に判断すべきであるところ,本件では,P13についても,委託料に
派遣職員の給与相当額の全部又は一部を含めるべきか否かについて,委
託業務遂行の経費となる人件費としての相当性の観点から検討を加えた
形跡はない(甲25ないし28号証も上記観点からの審査とは認められ
ない。)ことは同様であるから,P13に対する委託料支出は,本件派
遣職員について,神戸市の職員としての給与支給の代替として,その人
件費相当額を支出したものとして,違法たりうる。
(ウ)もっとも,本件では,原告らは,本件補助金の場合と同様に,被告
の本件委託団体との間の本件各委託契約が違法であるとして,本件各委
託契約に基づく各支出が違法な公金支出たる財務会計行為に該当すると
主張するとともに,本件各委託契約が無効であるから,本件委託団体は
本件派遣職員人件費分を不当に利得していると主張していることから,
本件補助金の場合と同様に,本件委託団体との本件各委託契約自体が違
法となるためには,本件各委託契約時点において,委託料の全部又は一
部が本件委託団体への派遣職員人件費として支出されることが予定され
ていたといえる場合に限られ,委託料の一部が派遣職員人件費として支
出されることが予定されていたといえるためには,当該支出額が各契約
締結の時点で具体的金額として特定されていることが必要であると解す
べきである。
(2)本件支出についての具体的検討
ア本件補助金について
(ア)P17財団
a平成17年度分
(a)証拠(甲56)によれば,P17財団は,被告に対し,平成1
7年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,同
財団が同申請の際に提出した資料中では,派遣職員と固有職員の人
件費予定支出額が職員個人別に記載され(ただし,具体的な金額は,
マスキングにより不明である。),その合計額が1億円であること,
同日ころ,被告による1億5000万円の交付決定がなされ,同年
9月20日,同決定に基づく補助金として,上記のうち1億円が支
出されたことが認められる。
(b)前記第2,1,(2)の事実に上記認定事実を併せると,上記提
出書面の記載内容に照らし,上記交付決定等の時点において,上記
補助金から派遣職員人件費が支出されることが予定されていたとい
うべきであるが,人件費支出予定総額のうちいくらが違法な派遣職
員人件費として支出される予定であったかは証拠上明らかではない
といわざるを得ず,その違法な部分を特定することができないから,
上記交付決定等の時点において,上記補助金の一部が派遣職員人件
費として支出されることが予定されていたともいえず,前記の事後
的な返還請求権をいうならば格別,上記交付決定等及び同決定等に
基づく上記補助金の支出が違法であるとの立証はないといわざるを
得ない。
(c)原告らは,平成14年法律第4号による改正により,地自法2
42条の2第1項4号の訴えが,代位訴訟から,被告たる執行機関
等に対して損害賠償請求等の義務付けを求める訴えに変更されたこ
とを根拠に,財務会計行為の適法性の主張,立証責任が被告に転換
されたかのように主張するが,かかる変更の趣旨は,被告を首長個
人や職員から執行機関等に変更することによって,地方公共団体の
有する証拠や資料の活用を容易にして審理の充実や真実追究を図り,
また首長個人や職員が被告とされることによる訴訟追行の上での様
々な負担を回避するという点にあるのであり,主張,立証責任の転
換までをも意味するものではない。原告らは上記改正による地方公
共団体の説明責任を強調するが,原告らのいう説明責任は,上記の
法改正の趣旨を説明する道具概念として使用するならともかく,そ
の性質(法的責任か否か,法的責任としても訴訟手続上の責任かそ
れ以外かなど),実定法上の根拠,責任の主体(地方自治体か執行
機関か),履行の強制の方法の有無,違反の効果等不明な点が多く,
上記の立証責任の転換を認める法的根拠として認め得るほど成熟し
た概念ではない。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,57)によれば,P17財団は,被告に対し,平
成18年4月3日ころ,平成18年度補助金の交付申請をしたこと,
同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は6654
万1000円であったこと,同年10月10日ころ,被告による交
付決定がなされ,同年11月16日,同決定に基づく補助金として
2億5000万円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,上記交付決定時において上記補助金か
ら派遣職員人件費として6654万1000円が支出されることが
予定されていたというべきであるから,当該部分に係る交付決定等
は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も,その限りで違法
な公金支出となる。
(イ)P12財団
a平成17年度分
(a)証拠(甲58)及び弁論の全趣旨によれば,P12財団は,被
告に対し,平成17年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付申
請をしたこと,同財団が同申請の際に提出した「補助事業費の算出
基礎」と題する書面においては,人件費として固有職員人件費98
5万9000円及び派遣職員人件費9283万2000円が計上さ
れており,同月22日ころ,被告による交付決定がなされ,そのう
ち人件費は上記固有職員人件費及び派遣職員人件費の合計額である
1億0269万1000円であったこと,同年12月1日までに同
決定に基づく補助金として,1億1852万7000円が支出され
たことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,上記提出書面の記載や交付決定におけ
る人件費の額等に照らし,上記交付決定等の時点において,上記補
助金から派遣職員人件費として9283万2000円が支出される
ことが予定されていたというべきであるから,当該部分に係る交付
決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も,その限り
で違法な公金支出となる。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,59)によれば,P12財団は,被告に対し,平
成18年4月1日付けで,平成18年度補助金の交付申請をしたこ
と,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は94
68万8000円であったこと,同年12月8日までに同決定に基
づく補助金として,1億2045万4000円が支出されたことが
認められる。
(b)上記認定事実によれば,上記補助金予算額に照らし,上記交付
決定等の時点において,上記補助金から派遣職員人件費として94
68万8000円が支出されることが予定されていたというべきで
あるから,当該部分に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基
づく補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(ウ)P11センター
a平成17年度分
(a)証拠(甲60)によれば,P11センターは,被告に対し,平
成17年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,
同月11日ころ,被告による交付決定がなされ,同年12月1日ま
でに同決定に基づく補助金として,9193万4000円が支出さ
れたことが認められる。
(b)前記第2,1,(2)の事実に上記認定事実を併せると,上記補
助金中に派遣職員人件費が含まれるとしても,交付申請時における
人件費支出予定額すら証拠上明らかでなく,上記交付決定等の時点
において,上記補助金のうちいくらが違法な派遣職員人件費として
支出される予定であったかを明らかにすることはできないといわざ
るを得ないから,上記交付決定等の時点において,上記補助金の一
部が派遣職員人件費として支出されることが予定されていたともい
えず,上記交付決定等及び同決定等に基づく上記補助金の支出が違
法であるということはできない。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,61)によれば,P11センターは,被告に対し,
平成18年4月3日ころ,平成18年度補助金の交付申請をしたこ
と,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は60
25万2000円であったこと,同申請に対し,そのころ,被告に
よる交付決定がなされ,同年12月1日までに同決定に基づく補助
金として,8967万3000円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額6025万2000円に
係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も,
その限りで違法な公金支出となる。
(エ)P29財団
a平成17年度分
(a)証拠(甲62)によれば,P29財団は,被告に対し,平成1
7年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,同
財団が同申請の際に提出した「平成17年度神戸市補助金事業別一
覧表」と題する書面においては,補助金を財源として,派遣職員人
件費1億6038万4000円(1億0310万4000円と57
28万円の合計額)が計上されていたこと,同日ころ,被告による
交付決定がなされ,同年12月6日までに同決定に基づく補助金と
して,2億9934万9000円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(イ),a,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1億6038万4000
円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出
も,その限りで違法な公金支出となる。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,63)によれば,P29財団は,被告に対し,平
成18年4月1日ころ,平成18年度補助金の交付申請をしたこと,
同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は1億63
92万1000円であったこと,同日ころ,被告による交付決定が
なされ,同年12月8日までに同決定に基づく補助金として,2億
9020万4000円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1億6392万1000
円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出
も,その限りで違法な公金支出となる。
(オ)P20協会
a平成17年度分
(a)証拠(甲64)によれば,P20協会は,被告に対し,平成1
7年4月1日付けで,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,
同協会が同申請の際に提出した「平成17年度コンベンション事業
人件費内訳書」と題する書面においては,補助金を財源として,3
名の派遣職員人件費3611万5000円(1人あたり約1203
万8000円)が計上されていたこと,同日ころ,被告による交付
決定がなされ,平成18年3月29日,同決定に基づく補助金とし
て,3834万3000円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(イ),a,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額3611万5000円に
係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も,
その限りで違法な公金支出となる。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,65)によれば,P20協会は,被告に対し,平
成18年4月1日付けで,平成18年度補助金の交付申請をしたこ
と,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は46
76万円であったこと,同日ころ,被告による交付決定がなされ,
同年12月6日までに同決定に基づく補助金として,9819万円
が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額4676万円に係る交付
決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も,その限り
で違法な公金支出となる。
(カ)P30センター
a平成17年度分
(a)証拠(甲66)及び弁論の全趣旨によれば,P30センターは,
被告に対し,平成17年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付
申請をしたこと,同センターが同申請の際に提出した「平成17年
度補助金交付申請予算書兼請求配分書」と題する書面においては,
派遣職員人件費(国際協力)として5399万5000円,人件費
(市民交流促進)として3975万5000円が計上されていたこ
と,同申請に対し,そのころ,被告による交付決定がなされ,同年
12月26日までに,同決定に基づく補助金として,2億4908
万4000円が支出されたこと,同センターが平成18年5月ころ
神戸市に提出した「平成17年度神戸市補助事業収支決算報告書(
国際協力・交流事業)」と題する書面においては,派遣職員人件費
予算額として5399万5000円(国際協力),3239万70
00円(市民交流促進),及び,嘱託職員人件費予算額として73
5万8000円(市民交流促進。上記市民交流促進の派遣職員人件
費予算額との合計は3975万5000円)が記載されていたこと
が認められ,上記認定事実を併せると,前記両書面における人件費
及び派遣職員人件費の記載内容等に照らし,前記申請時提出書面に
おける人件費(市民交流促進)のうち,3239万7000円につ
いては市民交流促進の派遣職員人件費としての支出が予定されてい
たものと推認される。
(b)したがって,上記交付決定等の時点において,上記補助金から
派遣職員人件費として8639万2000円(国際協力について5
399万5000円,市民交流促進について3239万7000円
)が支出されることが予定されていたというべきであるから,当該
部分に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支
出も,その限りで違法な公金支出となる。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,67)によれば,P30センターは,被告に対し,
平成18年4月3日ころ,平成18年度補助金の交付申請をしたこ
と,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は88
41万1000円であったこと,同月12日ころ,被告による交付
決定がなされ,同年12月11日までに,同決定に基づく補助金と
して,2億4698万6000円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額8841万1000円に
係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も,
その限りで違法な公金支出となる。
(キ)P18協会
a平成17年度分
(a)証拠(甲97)によれば,P18協会は,被告に対し,平成1
7年4月1日付けで,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,
同申請の際には,平成17年度の人件費予算として,本件派遣職員
3名分,固有職員2人分,パート従業員1人分の人件費合計額46
42万8000円が予定されていたこと,同月15日付けで,被告
による交付決定がなされ,平成18年4月4日までに,同決定に基
づく補助金として,1億2715万5000円が支出されたことが
認められる。
(b)前記第2,1,(2)の事実に上記認定事実を併せると,上記交
付決定等の時点において,上記補助金から派遣職員人件費が支出さ
れることが予定されていたというべきであるが,固有職員人件費相
当額について補助金を支出することが違法であるとの立証はないこ
と等から,人件費支出予定総額のうちいくらが違法な派遣職員人件
費として支出される予定であったかを明らかにすることはできない
といわざるを得ず,その違法な部分を特定することができないから,
補助金の一部が派遣職員人件費として支出されることが予定されて
いるとはいえず,上記交付決定等及び同決定等に基づく上記補助金
の支出が違法であるということはできない。
b平成18年度分
(a)証拠(甲97)によれば,P18協会は,被告に対し,平成1
8年4月1日付けで,平成18年度補助金の交付申請をしたこと,
同協会が同申請の際に提出した書面には,平成18年度の人件費予
算として,本件派遣職員3名分,固有職員2人分,パート従業員1
人分の人件費合計額4652万1000円,及び,本件派遣職員(
主幹)1名分の人件費(ただし,具体的金額は,マスキングにより
不明である。)が記載されていること,同年5月23日付けで,被
告による交付決定がなされ,平成19年5月18日までに,同決定
に基づく補助金として,1億4474万0689円が支出されたこ
とが認められる。
(b)上記認定事実によれば,上記4652万1000円分について
は,平成17年度分と同様に,本件派遣職員(主幹)1名分の人件
費については,前記第3,1,(2),ア,(ア),a,(b)のとおり,
上記交付決定等及び同決定に基づく補助金の支出が違法であるとい
うことはできない。
(ク)P28協会(平成18年度分のみ)
a証拠(甲1,98)によれば,P28協会は,被告に対し,平成1
8年4月1日付けで,平成18年度補助金の交付申請をしたこと,同
年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は3761万7
000円であったこと,同月28日付けで,被告による交付決定がな
され,同年12月1日までに,同決定に基づく補助金として,967
0万6000円が支出されたこと,同協会は,被告に対し,平成19
年3月1日付けで,全国障害者スポーツ大会参加費用の追加補助とし
て,平成18年度補助金の追加交付申請をしたこと,同月27日付け
で,被告による追加交付決定がなされ,同月29日に,同決定に基づ
く追加補助金として,170万円が支出されたことが認められる。
b上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(b)
のとおり,派遣職員人件費支出予定額3761万7000円に係る交
付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も,その限り
で違法な公金支出となる。
一方,上記追加補助金については,上記認定事実によれば,上記追
加交付決定時において,派遣職員人件費としての支出が予定されてい
たとはいえないから,上記追加交付決定等及び同決定等に基づく追加
補助金の支出が違法であるということはできない。
(ケ)P14財団(平成18年度分のみ)
a証拠(甲99)及び弁論の全趣旨によれば,P14財団による平成
18年度補助金の交付申請に対する被告の交付決定に基づく補助金と
して,平成19年5月21日までに,2469万1000円が支出さ
れたことが認められる。
b上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ウ),a,(b)
のとおり,上記交付決定等及び同決定等に基づく補助金の支出が違法
であるということはできない。
(コ)P15研究所
a要綱⑩(平成17年度分のみ)
(a)証拠(甲100)及び弁論の全趣旨によれば,P15研究所の
平成17年度補助金の交付申請に対する被告の交付決定に基づく補
助金として,平成18年5月22日までに,7116万8000円
が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ウ),a,(
b)のとおり,上記交付決定等及び同決定等に基づく補助金の支出
が違法であるということはできない。
b要綱⑪
(a)平成17年度分
Ⅰ前記第2,1,(3),ア,(ア)の事実及び証拠(甲1,101
)によれば,P15研究所は,被告に対し,平成17年4月1日
付けで,派遣職員人件費として,平成17年度補助金の交付申請
をしたこと,同日付けで,被告による交付決定がなされ,同年1
2月9日までに,同決定に基づく補助金として,924万800
0円が支出されたこと,同研究所は,被告に対し,平成18年3
月31日付けで,派遣職員人件費不足分として,同年度補助金の
追加交付申請をしたこと,同日付けで被告による交付決定がなさ
れ,同年5月9日,同追加決定に基づく追加補助金として,51
万1360円が支出されたこと,上記補助金及び追加補助金は,
いずれも派遣職員人件費として支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,交付決定等及び追加交付決定等の時点
において,上記補助金から派遣職員人件費として,合計975万
9360円が支出されることが予定されていたというべきである
から,当該部分に係る上記各決定等は違法であり,同決定等に基
づく補助金及び追加補助金の支出も違法な公金支出となる。
(b)平成18年度分
Ⅰ前記第2,1,(3),ア,(ア)の事実及び証拠(甲101)に
よれば,P15研究所は,被告に対し,平成18年4月1日付け
で,派遣職員人件費として,平成18年度補助金の交付申請をし
たこと,同日付けで,被告による交付決定がなされ,同年12月
13日までに,同決定に基づく補助金として,924万8000
円が支出されたこと,同研究所は,被告に対し,平成19年3月
31日付けで,派遣職員人件費不足分として,同年度補助金の追
加交付申請をしたこと,同日付けで被告による交付決定がなされ,
同年5月15日,79万2036円が支出されたことが認められ
る。
Ⅱ平成17年度分と同様に,派遣職員人件費1004万0036
円に係る交付決定等及び追加交付決定等は違法であり,同決定等
に基づく補助金及び追加補助金の支出も違法な公金支出となる。
(サ)P31協議会
a平成17年度分
(a)証拠(甲68)及び弁論の全趣旨によれば,P31協議会は,
被告に対し,平成17年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付
申請をしたこと,同申請の際には,社会福祉事業について,補助金
を財源として派遣職員人件費8304万9000円,P34事業に
ついて,補助金を財源として派遣職員人件費2618万3000円,
市民福祉開発研究事業(以下「研究事業」という。)について,補
助金等(うち,補助金2194万1000円,寄付金10万円,利
用料収入391万6000円,助成金50万円)を財源として派遣
職員人件費1902万円,権利擁護事業について,補助金等(うち,
補助金3662万1000円,利用料収入264万円)を財源とし
て2248万5000円が,それぞれ計上されていたこと,同日こ
ろ,被告による交付決定がなされ,同年12月1日までに,同決定
に基づく補助金として,5億6045万5000円が支出されたこ
と,その後,同協議会は被告に対し,平成18年3月31日ころ,
同年度補助金の変更交付申請をしたこと,同申請の際においては,
権利擁護事業について,派遣職員人件費支出予定額が2463万8
473円と積算され,利用料収入が179万4516円とされたこ
と,同申請に対し,被告により追加交付決定がなされ,同決定に基
づき,追加補助金が支出されたこと(具体的金額は不明。)が認め
られる(なお,社会福祉事業及び研究事業については,追加補助金
の交付申請はなく,P34事業の追加補助金中には派遣職員人件費
は計上されていない(甲68,弁論の全趣旨)。)。
(b)上記認定事実によれば,まず,上記交付決定等の時点において,
社会福祉事業及びP34事業については,派遣職員人件費として,
合計1億0923万2000円の支出が予定されていたというべき
である。
一方,研究事業及び権利擁護事業においては,派遣職員人件費に
ついて,上記補助金以外の財源からの支出も予定されていることが
窺われ,同財源と上記補助金の支出割合が不明であるから,立証責
任の観点から被告に不利益とならないように,補助金以外の財源を
まず派遣職員人件費に充て,なお,不足分がある場合に,少なくと
もその額を違法な派遣職員人件費として支出する予定であったとす
べきであり,研究事業については,補助金を財源として1450万
4000円(派遣職員人件費1902万円から補助金以外の財源合
計額451万6000円を控除した額)の支出が予定されていたと
いうべきである。また,権利擁護事業については,補助金を財源と
して,交付決定等時において,1984万5000円(派遣職員人
件費2248万5000円から利用料収入264万円を控除した額
)の支出が,また,追加交付決定等時において,増額された派遣職
員人件費支出予定額215万3473円の支出が予定されていたと
いうべきである。
したがって,上記交付決定等及び追加交付決定等の時点において,
上記4事業について,派遣職員人件費として,1億4573万44
73円(1億0923万2000円,1450万4000円,19
84万5000円,215万3473円の合計額)の支出が予定さ
れていたといえるから,当該部分に係る交付決定等及び追加交付決
定等は違法であり,同各決定等に基づく補助金及び追加補助金の支
出も,その限りで違法な公金支出となる。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,69)によれば,P31協議会は,被告に対し,
平成18年4月1日ころ,平成18年度補助金の交付申請をしたこ
と,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は84
50万円であったこと,同日ころ,被告による交付決定がなされ,
同年11月10日までに,同決定に基づく補助金として,6億11
79万1000円が支出されたこと,平成19年3月31日ころ,
同協議会からの追加交付申請を受けて被告による追加交付決定がな
され,同年5月18日に,同決定に基づく追加補助金として,24
17万8772円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額8450万円に係る交付
決定等及び追加交付決定等は違法であり,同各決定等に基づく補助
金及び追加補助金の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(シ)P21財団
a要綱⑬
(a)平成17年度分
Ⅰ証拠(甲70)及び弁論の全趣旨によれば,P21財団は,被
告に対し,平成17年4月1日付けで,平成17年度補助金の交
付申請をしたこと,同財団が同申請の際に提出した「平成17年
度P21財団自主事業収支予算書」と題する書面においては,補
助金を財源として,派遣職員人件費1億9997万6000円が
計上されていたこと,同申請に対し,そのころ,被告による交付
決定がなされ,同年12月ころまでに,同決定に基づく補助金と
して,2億9849万3000円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(イ),a,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1億9997万600
0円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の
支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(b)平成18年度分
Ⅰ証拠(甲1,71)及び弁論の全趣旨によれば,P21財団は,
被告に対し,平成18年4月3日ころ,平成18年度補助金の交
付申請をしたこと,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費
支出予定額は2億0035万6000円であったこと,同申請に
対し,そのころ,被告による交付決定がなされ,同年12月6日
までに,同決定に基づく補助金として,3億1065万8000
円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額2億0035万600
0円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の
支出も,その限りで違法な公金支出となる。
b要綱⑭
(a)平成17年度分
Ⅰ前記第2,1,(3),ア,(イ)の事実,並びに,証拠(甲72
)及び弁論の全趣旨によれば,P21財団は,被告に対し,平成
17年4月1日付けで,平成17年度補助金の交付申請をしたこ
と,同月8日ころ,被告による交付決定がなされ,同年12月1
3日までに,同決定に基づく補助金として2991万円が支出さ
れたこと,同申請及び同決定において人件費が計上されていたこ
と(ただし具体的金額は不明である。)が認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ウ),a,(
b)のとおり,上記交付決定等及び同決定等に基づく補助金の支
出が違法であるということはできない。
(b)平成18年度分
Ⅰ証拠(甲1,73)によれば,P21財団は,被告に対し,平
成18年4月1日付けで,平成18年度補助金の交付申請をした
こと,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は
1505万3000円であったこと,同申請に対し,そのころ,
被告による交付決定がなされ,同年12月13日までに,同決定
に基づく補助金として3029万3000円が支出されたことが
認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1505万3000円
に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出
も,その限りで違法な公金支出となる。
c要綱⑮
(a)平成17年度分
Ⅰ証拠(甲74)及び弁論の全趣旨によれば,P21財団は,被
告に対し,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,平成17
年4月8日付けで,被告による交付決定がなされ,同年12月1
3日までに,同決定に基づく補助金として,3444万1000
円が支出されたこと,同申請及び同決定において人件費として1
635万8513円が計上されていたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(キ),a,(
b)のとおり,上記交付決定等及び同決定等に基づく補助金の支
出が違法であるということはできない。
(b)平成18年度分
Ⅰ証拠(甲75)及び弁論の全趣旨によれば,P21財団は,被
告に対し,平成18年度補助金の交付申請をしたこと,同年度補
助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は1444万50
00円であったこと,同申請に対し,被告による交付決定がなさ
れ,同年12月13日までに,同決定に基づく補助金として32
44万3000円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1444万5000円
に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出
も,その限りで違法な公金支出となる。
(ス)P19公社
a要綱⑯
(a)平成17年度分
Ⅰ前記第2,1,(2)の事実及び証拠(甲76,調査嘱託の結果
)及び弁論の全趣旨によれば,P19公社は,被告に対し,平成
17年度補助金の交付申請をし,被告は,平成17年4月1日付
けで交付決定をしたこと,同申請の際に,人件費として2695
万4885円が計上されていたこと(なお,甲76号証の1頁に
は,情報公開請求後に原告らの1人が手書きした「情報提供より
派遣職員一人分¥1200万円とする。」との記載があるが,
情報源が不明であり,その記載態様自体からして,これをもって
派遣職員人件費支出予定額が1人1200万円であったと認める
ことはできない。),平成18年3月31日付けで,同公社は被
告に対し,同年度補助金に係る補助事業実績報告において補助金
精算報告をしたこと,同年5月24日に,同年度補助金に係る支
出命令がなされ,同月26日に,同命令に基づく補助金として,
2352万4000円が支出されたこと,上記補助金のうち派遣
職員人件費として支出された額(以下「派遣職員補助金決算額」
という。)は1007万8687円であったことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(キ),a,(
b)のとおり,上記交付決定は違法であるということはできない
が,上記支出命令が上記補助金精算報告を受けてなされているこ
とに照らし,遅くとも支出命令時点においては,派遣職員人件費
として1007万8687円の支出が予定されていたといえるか
ら,当該部分に係る同命令は違法であり,同命令に基づく補助金
の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(b)平成18年度分
Ⅰ証拠(甲1,77,調査嘱託の結果)によれば,P19公社は,
被告に対し,平成18年4月1日ころ,平成18年度補助金の交
付申請をした後,同月10日ころ,補助金交付額変更の申請をし
たこと,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額
は1122万円であったこと,上記両申請に対し,同日ころ,被
告による交付決定がなされたこと,平成19年3月31日付けで,
同公社は被告に対し,同年度補助金に係る補助事業実績報告にお
いて補助金精算報告をしたこと,同年5月17日に,同年度補助
金に係る支出命令がなされ,同月22日に,同命令に基づく補助
金として,2687万2000円が支出されたこと,派遣職員補
助金決算額は1050万3177円であったことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,平成17年度分と同様に,1050万
3177円に係る支出命令は違法であり,同命令に基づく補助金
の支出も,その限りで違法な公金支出となる(なお,交付決定時
との差額71万6823円については,支出命令の時点で違法性
がなくなったというべきである。)。
b要綱⑰(平成17年度分のみ)
(a)証拠(甲78)によれば,P19公社は,被告に対し,平成1
7年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,同
申請の際には,派遣職員人件費が計上されていたこと(ただし,具
体的金額は,マスキングにより不明である。),同日ころ,被告に
よる交付決定がなされ,同年12月7日までに,同決定に基づく補
助金として3億3233万9000円が支出されたことが認められ
る。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),a,(
b)のとおり,上記交付決定等及び同決定等に基づく補助金の支出
が違法であるとの立証はないものといわざるを得ない。
c要綱⑱(平成18年度分のみ)
(a)証拠(甲79)及び弁論の全趣旨によれば,P19公社は,被
告に対し,平成18年12月1日ころ,平成18年度補助金の交付
申請をしたこと,同公社が同申請の際に提出した「別紙平成18
年度農業公園管理運営人件費補助交付申請額明細(単位:千円)」
と題する書面には,補助金を財源として,派遣職員人件費3038
万5000円が計上されていたこと,同月28日ころ,被告により,
上記派遣職員人件費について3143万2013円とする交付決定
がなされ,同決定に基づく補助金として,平成19年1月15日に
2968万5000円,同年5月29日に174万7013円(合
計3143万2013円)が支出されたことが認められ,上記認定
事実によれば,上記補助金支出額はすべて派遣職員人件費として支
出が予定され,かつ,支出されたことが推認される。
(b)したがって,前記第3,1,(2),ア,(コ),b,(a),Ⅱの
とおり,派遣職員人件費支出予定額3143万2013円に係る交
付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出も違法な公
金支出となる。
(セ)P23公社(平成17年度分のみ)
a証拠(甲82)によれば,P23公社は,被告に対し,平成17年
4月1日付けで,派遣職員人件費として平成17年度補助金の交付申
請をしたこと,同日ころ,被告による交付決定がなされ,同年12月
14日までに,同決定に基づく補助金として2472万2000円が
支出されたこと,同公社は,被告に対し,平成18年3月31日付け
で,同年度補助金の追加交付申請をしたこと,同日付けで,被告によ
る追加交付決定がなされ,同年5月23日,前記決定に基づく補助金
の残金と前記追加交付決定に基づく追加補助金を併せ,3211万2
525円が支出されたこと,上記補助金及び追加補助金は,いずれも
派遣職員人件費として支出されたことが認められる。
b上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(コ),b,(a),
Ⅱのとおり,派遣職員人件費支出予定額5683万4525円(24
72万2000円と3211万2525円の合計額)に係る交付決定
等及び追加交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金及び追
加補助金の支出も違法な公金支出となる。
(ソ)P32協会
a平成17年度分
(a)前記第2,1,(3),ア,(ア)の事実及び証拠(甲1,80)
によれば,P32協会は,被告に対し,平成17年4月4日ころ,
派遣職員人件費として,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,
同月27日ころ,被告による交付決定がなされ,平成18年2月2
日までに,同決定に基づく補助金として6億5994万円が支出さ
れたこと,同年3月31日ころ,同協会は,被告に対し,派遣職員
人件費不足分として,同年度補助金の追加交付申請をし,同日ころ,
被告による追加交付決定がなされ,同年5月29日,同決定に基づ
く追加補助金として,558万7180円が支出されたこと,上記
補助金及び追加補助金は,いずれも派遣職員人件費として支出され
たことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(コ),b,(
a),Ⅱのとおり,派遣職員人件費支出予定額合計6億6552万
7180円に係る交付決定等及び追加交付決定等は違法であり,同
決定等に基づく補助金及び追加補助金の支出も違法な公金支出とな
る。
b平成18年度分
(a)前記第2,1,(3),ア,(ア)の事実及び証拠(甲1,81)
によれば,P32協会は,被告に対し,平成18年4月5日ころ,
派遣職員人件費として平成18年度補助金の交付申請をしたこと,
同月24日ころ,被告による交付決定がなされ,平成19年1月1
0日までに,同決定に基づく補助金として1億6862万3000
円が支出されたこと,上記補助金は派遣職員人件費として支出され
たことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(コ),b,(
a),Ⅱのとおり,派遣職員人件費支出予定額1億6862万30
00円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の
支出も違法な公金支出となる。
(タ)P33公社
a平成17年度分
(a)証拠(甲1,83)及び弁論の全趣旨によれば,P33公社は,
被告に対し,平成17年4月1日付けで,派遣職員人件費として平
成17年度補助金の交付申請をしたこと,同月22日付けで,被告
による交付決定がなされ,同年12月1日までに,同決定に基づく
補助金として,4573万2000円が支出されたこと,上記補助
金は派遣職員人件費として支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(コ),b,(
a),Ⅱのとおり,派遣職員人件費支出予定額4573万2000
円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出
も違法な公金支出となる。
b平成18年度分
(a)証拠(甲1,84)及び弁論の全趣旨によれば,P33公社は,
被告に対し,平成18年4月1日ころ,派遣職員人件費として平成
18年度補助金の交付申請をしたこと,同年5月2日ころ,被告に
よる交付決定がなされ,同年12月6日までに,同決定に基づく補
助金として,4658万8000円が支出されたこと,上記補助金
は派遣職員人件費として支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(コ),b,(
a),Ⅱのとおり,派遣職員人件費支出予定額4658万8000
円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出
も違法な公金支出となる。
(チ)P25協会
a要綱<21>
(a)平成17年度分
Ⅰ証拠(甲85)によれば,P25協会は,被告に対し,平成1
7年4月1日ころ,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,
同協会が同申請の際に提出した「平成17年度(財)P25協会
に対する補助金」と題する書面においては,補助金を財源として,
派遣職員人件費1億2627万3000円が計上されていたこと,
同申請に対し,そのころ,被告による交付決定がなされ,平成1
8年2月15日までに,同決定に基づく補助金として,2億13
95万4000円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(イ),a,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1億2627万300
0円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の
支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(b)平成18年度分
Ⅰ証拠(甲1,86)によれば,P25協会は,被告に対し,平
成18年3月31日付けで,平成18年度補助金の交付申請をし
たこと,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額
は1億2905万7000円であったこと,同日付けで,被告に
よる交付決定がなされ,平成19年2月15日までに,同決定に
基づく補助金として,2億1958万1000円が支出されたこ
とが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1億2905万700
0円に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の
支出も,その限りで違法な公金支出となる。
b要綱<22>
(a)平成17年度分
Ⅰ証拠(甲87)によれば,P25協会は,被告に対し,平成1
7年4月5日ころ,平成17年度補助金の交付申請をしたこと,
同申請の際に同協会が提出した「平成17年度収支予算書」にお
いては,派遣職員3名及び嘱託職員1.5名分の給料手当等が記
載されていたこと,同年5月6日,被告による交付決定がなされ,
同年12月6日までに,同決定に基づく補助金として,5500
万円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(キ),a,(
b)のとおり,上記交付決定等及び同決定等に基づく補助金の支
出が違法であるということはできない。
(b)平成18年度分
a証拠(甲1,88)によれば,P25協会は,被告に対し,平
成18年4月1日付けで,平成18年度補助金の交付申請をした
こと,同年度補助金予算額のうち,派遣職員人件費支出予定額は
1212万5000円であったこと,同年5月9日ころ,被告に
よる交付決定がなされ,同年12月7日までに,同決定に基づく
補助金として,5000万円が支出されたことが認められる。
b上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),ア,(ア),b,(
b)のとおり,派遣職員人件費支出予定額1212万5000円
に係る交付決定等は違法であり,同決定等に基づく補助金の支出
も,その限りで違法な公金支出となる。
イ本件委託料について
(ア)本件委託団体
aP12財団
(a)平成17年度分
Ⅰ証拠(甲20)によれば,P12財団は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約①の1を締結したこと,同契約に
おいては,人件費は9600万9000円とされ,同契約締結に
際して作成された「平成17年度勤労者福祉共済事業費委託料内
訳」と題する書面には,委託料を財源として,派遣職員人件費8
054万5000円が計上されていたこと,同契約に基づく委託
料として,同年12月8日までに,3億9225万5000円が
支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,契約①の1締結時において,上記委託
料から派遣職員人件費として8054万5000円が支出される
ことが予定されていたというべきであるから,当該部分に係る契
約①の1は違法であり,同契約に基づく委託料の支出も,その限
りで違法な公金支出となる。
(b)平成18年度分
Ⅰ証拠(甲16,21)によれば,P12財団は,神戸市との間
で,平成18年4月1日付けで,契約①の2を締結したこと,同
契約においては,委託料を財源とする派遣職員人件費支出予定額
は7822万8000円であったこと,同契約に基づく委託料と
して,同年12月12日までに,4億0311万円が支出された
ことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,平成17年度分と同様に,契約①の2
のうち,派遣職員人件費支出予定額7822万8000円に係る
部分は違法であり,同契約に基づく委託料の支出も,その限りで
違法な公金支出となる。
bP20協会
(a)契約②の1(平成17年度分のみ)
Ⅰ証拠(甲22)によれば,P20協会は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約②の1を締結したこと,同契約に
おいては,委託料中,人件費3億0609万1000円が計上さ
れていたこと,同契約に基づく委託料として,同年12月9日ま
でに,8億9292万9000円が支出されたことが認められる。
Ⅱ前記第2,1,(2)の事実に上記認定事実を併せると,固有職
員人件費相当額について委託料を支出することが違法であるとの
立証はないことから,契約②の1締結時において,人件費支出予
定総額中の違法な派遣職員人件費支出予定額を明らかにすること
はできないといわざるを得ず,その違法な部分を特定することが
できないから,委託料の一部が派遣職員人件費として支出される
ことが予定されていたとはいえず,契約②の1及び同契約に基づ
く委託料の支出が違法であるということはできない。
(b)契約③
Ⅰ平成17年度分
i証拠(甲23)によれば,P20協会は,神戸市との間で,
平成17年4月1日付けで,契約③の1を締結したこと,同契
約締結に際してP20協会が作成した「積算書」と題する書面
において,人件費として1億0970万9000円(4059
万2000円,2803万4000円,4108万3000円
の合計額)が計上されていたこと,同契約に基づく委託料とし
て,平成18年1月17日までに,1億1874万2000円
が支出されたことが認められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),b,
(a),Ⅱのとおり,契約③の1及び同契約に基づく委託料の支
出が違法であるということはできない。
Ⅱ平成18年度分
i証拠(甲16,24)によれば,P20協会は,神戸市との
間で,平成18年4月1日付けで,契約③の2を締結したこと,
同契約においては,委託料を財源とする派遣職員人件費支出予
定額は3875万7000円であったこと,同契約に基づく委
託料として,平成19年1月16日までに,7916万200
0円が支出されたことが認められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,
(a),Ⅱのとおり,契約③の2のうち,派遣職員人件費支出予
定額3875万7000円に係る部分は違法であり,同契約に
基づく委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(c)契約④の1(平成17年度分のみ)
Ⅰ証拠(甲53)及び弁論の全趣旨によれば,P20協会は,神
戸市との間で,平成17年4月1日付けで,契約④の1を締結し
たこと,同契約締結に際して作成された「平成17年度P35ホ
ール管理・運営業務委託経費内訳」と題する書面において,委託
料を財源として,派遣職員人件費2397万8000円が計上さ
れていたこと,同契約に基づく委託料として,平成18年3月2
3日までに,1億6238万2000円が支出されたことが認め
られる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約④の1のうち,派遣職員人件費支出予定
額2397万8000円に係る部分は違法であり,同契約に基づ
く委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
cP21財団
(a)契約⑤
Ⅰ平成17年度分
i証拠(甲30)によれば,P21財団は,神戸市との間で,
平成17年4月1日付けで,契約⑤の1を締結したこと,同契
約締結に際して作成された「平成17年度P22事務所委託料
積算書」と題する書面において,国内費と海外費に分けて人件
費2711万7150円が計上されていたこと,同契約に基づ
く委託料として,平成18年1月16日までに,3702万6
150円が支出されたことが認められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),b,
(a),Ⅱのとおり,契約⑤の1及び同契約に基づく委託料の支
出が違法であるということはできない。
Ⅱ平成18年度分
i証拠(甲16,31)によれば,P21財団は,神戸市との
間で,平成18年4月1日付けで,契約⑤の2を締結したこと,
同契約においては,委託料を財源とする派遣職員人件費支出予
定額は1770万2000円であったこと,同契約に基づく委
託料として,平成19年1月12日までに,4046万595
0円が支出されたことが認められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,
(a),Ⅱのとおり,契約⑤の2のうち,派遣職員人件費支出予
定額1770万2000円に係る部分は違法であり,同契約に
基づく委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(b)契約⑥(平成17年度分のみ)
Ⅰ証拠(甲29)によれば,P21財団は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約⑥の1を締結したこと,同契約に
際して作成された「平成17年度α美術館委託料内訳表」と題す
る書面において,派遣職員人件費が計上されていたこと(ただし,
具体的金額はマスキングにより不明である。),同契約に基づく
委託料として,同年12月7日までに,4億0978万6000
円が支出されたことが認められる。
Ⅱ前記第2,1,(2)の事実に上記認定事実を併せると,契約⑥
の1締結時において派遣職員人件費が支出されることは明らかで
あるものの,その具体的金額を明らかにすることはできないとい
わざるを得ず,その違法な部分を特定することができないから,
上記委託料の一部が派遣職員人件費として支出されることが予定
されているとはいえず,契約⑥の1及び同契約に基づく委託料の
支出が違法であるとの立証はないものといわざるを得ない。
dP23公社(平成17年度分のみ)
(a)証拠(甲32ないし41)によれば,P23公社は,神戸市と
の間で,平成17年4月1日付けで,契約⑦ないし⑯の各1を締結
したこと,上記各契約に係る実施計画書において,人件費総額(う
ち,契約⑦の1は9190万6666円,契約⑧の1は1912万
2856円,契約⑨の1は2461万9046円,契約⑩の1は1
億6692万7618円,契約⑪の1は2420万7618円,契
約⑫の1は2478万3808円,契約⑬の1は741万9046
円,契約⑭の1は4907万0476円,契約⑮の1は1億201
0万6666円,契約⑯の1は1億2347万5238円)が,そ
れぞれ計上されていたこと,上記各契約に基づく委託料が支出され
たこと(契約⑦の1は,平成18年8月31日までに追加委託料を
含む3億1810万7085円,契約⑧の1は,同年3月23日ま
でに4408万3000円,契約⑨の1は,同月22日までに83
18万4000円,契約⑩の1は,同年8月31日までに追加委託
料を含む1億9806万5252円,契約⑪の1は,同月28日ま
でに追加委託料を含む7275万3878円,契約⑫の1は,同月
29日までに追加委託料を含む4661万3499円,契約⑬の1
は,同月24日までに追加委託料を含む952万6955円,契約
⑭の1は同年3月23日までに1億4394万円,契約⑮の1は,
同月22日までに2億3544万1000円,契約⑯の1は,同日
までに1億8867万2000円)が認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),b,(
a),Ⅱのとおり,契約⑦ないし⑯の各1,及び,上記各契約に基
づく委託料及び追加委託料の各支出が違法であるということはでき
ない。
eP24公社
(a)契約⑰
Ⅰ平成17年度分
i証拠(甲42)及び弁論の全趣旨によれば,P24公社は,
神戸市との間で,平成17年4月1日付けで,契約⑰の1を締
結したこと,同契約においては,人件費は8億0349万円と
され,同契約締結に際して作成された「平成17年度公社委託
料内訳書」と題する書面において,派遣職員人件費5億757
9万2000円が計上されていたこと,同契約に基づく委託料
として,平成18年3月16日までに,43億7785万80
00円が支出されたこと,同公社は,同月31日,神戸市との
間で委託料を増額する変更契約(人件費を8億3343万91
60円に増額)を締結し,同変更契約締結に際して作成された
「平成17年度公社委託料変更明細表」及び「平成17年度公
社委託料内訳書」では,派遣職員人件費として6億2030万
3542円が計上されたこと,同年5月25日に8億7915
万9961円が支出され,併せて,追加委託料を含む合計52
億5701万7961円が支出されたことが認められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,
(a),Ⅱのとおり,契約⑰の1(上記変更契約を含む。)のう
ち,派遣職員人件費支出予定額6億2030万3542円に係
る部分は違法であり,同契約に基づく委託料及び追加委託料の
支出も,その限りで違法な公金支出となる。
Ⅱ平成18年度分
i証拠(甲45)によれば,P24公社は,神戸市との間で,
平成18年4月1日付けで,契約⑰の2を締結したこと,同契
約においては,人件費は3億2223万1000円とされ,同
契約締結に際して作成された「平成18年度公社委託料内訳書
」と題する書面において,派遣職員人件費2億0288万20
00円が計上されていたこと,同契約に基づく委託料として,
平成19年3月9日までに,51億0169万2000円が支
出されたことが認められる。
ii上記認定事実によれば,第3,1,(2),イ,(ア),a,(a
),Ⅱのとおり,契約⑰の2のうち,派遣職員人件費支出予定
額2億0288万2000円に係る部分は違法であり,同契約
に基づく委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(b)契約⑱
Ⅰ平成17年度分
i証拠(甲43)及び弁論の全趣旨によれば,P24公社は,
神戸市との間で,平成17年4月1日付けで,契約⑱の1を締
結したこと,同契約締結に際して作成された「P36センター
平成17年度委託料内訳書」と題する書面において,派遣職員
人件費として1億1511万6600円(上記書面において「
人件費」として計上されている1億2173万9600円(9
650万円と2523万9600円の合計額)のうち,「人材
派遣(2人)」の662万3000円を控除した額)が計上さ
れていたこと,同契約に基づく委託料として,同年10月19
日までに,1億4462万0567円,平成18年5月25日
に7627万7621円が支出され,併せて,追加委託料を含
む2億2089万8188円が支出されたことが認められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,
(a),Ⅱのとおり,契約⑱の1のうち,派遣職員人件費支出予
定額1億1511万6600円に係る部分は違法であり,同契
約に基づく委託料及び追加委託料の支出も,その限りで違法な
公金支出となる。
Ⅱ平成18年度分
i証拠(甲16,46)によれば,P24公社は,神戸市との
間で,平成18年4月1日付けで,契約⑱の2を締結したこと,
委託料を財源とする遣職員人件費支出予定額は1億0309万
3000円(甲16号証記載の契約⑰の2及び契約⑱の2の派
遣職員人件費支出予定額3億0597万5000円から前記契
約⑰の2における派遣職員人件費支出予定額2億0288万2
000円を控除した額。「P36センター平成18年度委託料
内訳書」(甲46)に計上された人件費1億0971万600
0円から人材派遣費用662万3000円を控除した額と一致。
)であったこと,同契約に基づく委託料として,同年11月2
2日までに,2億2254万3000円が支出されたことが認
められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,
(a),Ⅱのとおり,契約⑱の2のうち,派遣職員人件費支出予
定額1億0309万3000円に係る部分は違法であり,同契
約に基づく委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(c)契約⑲の1(平成17年度分のみ)
Ⅰ証拠(甲44)及び弁論の全趣旨によれば,P24公社は,神
戸市との間で,平成17年4月1日付けで,契約⑲の1を締結し
たこと,同契約締結に際して作成された「民間賃貸住宅家賃負担
軽減補助事業平成17年度委託料明細書」と題する書面において,
派遣職員人件費として605万円が計上されていたこと,同契約
に基づく委託料として,平成18年5月24日に,2500万円
が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約⑲の1のうち,派遣職員人件費支出予定
額605万円に係る部分は違法であり,同契約に基づく委託料の
支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(d)契約⑳の2(平成18年度分のみ)
Ⅰ証拠(甲93)によれば,P24公社は,神戸市との間で,平
成18年4月1日付けで,契約⑳の2を締結したこと,同契約に
おいては,人件費は3億7747万円とされ,うち派遣職員人件
費として2億7764万6000円が計上されていたこと,同契
約に基づく委託料として,平成19年3月9日までに,18億4
861万9000円が支出されたこと,同公社は,神戸市との間
で,同月30日付けで委託料を増額する変更契約を締結したこと
(なお,同契約に基づく追加委託料中には派遣職員人件費は計上
されていない。),同契約に基づく追加委託料として,同年5月
31日に1億3924万2700円が支出され,併せて,追加委
託料を含む19億8786万1700円が支出されたことが認め
られる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約⑳の2(上記変更契約を含む。)のうち,
派遣職員人件費支出予定額2億7764万6000円に係る部分
は違法であり,同契約に基づく委託料の支出も,その限りで違法
な公金支出となる。
fP16協会(平成17年度分のみ)
(a)証拠(甲47)によれば,P16協会は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約<21>の1を締結したこと,同契約締
結に際してP16協会が作成した「見積書」と題する書面において,
派遣職員人件費が7247万5000円(6900万円と347万
5000円の合計額)と見積もられていたこと,同契約に基づく委
託料として,平成18年2月6日までに,1億1162万6750
円が支出されたことが認められる。
(b)上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約<21>の1のうち,派遣職員人件費支出予定
額7247万5000円に係る部分は違法であり,同契約に基づく
委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
gP25協会
(a)契約<22>の1(平成17年度分のみ)
Ⅰ証拠(甲48)によれば,P25協会は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約<22>の1を締結したこと,同契約
締結に際して作成された「平成17年度P26センター管理・運
営に係る委託料の積算項目」と題する書面において,派遣職員人
件費が計上されていたこと(ただし,具体的金額はマスキングに
より不明である。),同契約に基づく委託料として,平成18年
5月8日までに,追加委託料を含む1億3480万1570円が
支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),c,(
b),Ⅱのとおり,契約<22>の1及び同契約に基づく委託料及び
追加委託料の支出が違法であるとの立証はないものといわざるを
得ない。
(b)契約<23>の1(平成17年度分のみ)
Ⅰ証拠(甲49)によれば,P25協会は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約<23>の1を締結したこと,同契約
の契約書において,委託料を財源として,派遣職員人件費3億0
230万9700円が計上されていたこと,同契約に基づく委託
料として,平成18年3月29日までに,追加委託料を含む8億
6948万1000円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約<23>の1のうち,派遣職員人件費支出予
定額3億0230万9700円に係る部分は違法であり,同契約
に基づく委託料及び追加委託料の支出も,その限りで違法な公金
支出となる。
(c)契約<24>の1(平成17年度のみ)
Ⅰ証拠(甲50)によれば,P25協会は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約<24>の1を締結したこと,同契約
締結に際して作成された「平成17年度P37管理運営にかかる
委託料の積算」と題する書面において,委託料を財源として,派
遣職員人件費7838万4000円が計上されていたこと,同契
約に基づく委託料として,平成18年3月23日までに,1億4
144万8000円,同年5月30日に300万円が支出され,
併せて,追加委託料を含む1億4444万8000円が支出され
たことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約<24>の1のうち,派遣職員人件費支出予
定額7838万4000円に係る部分は違法であり,同契約に基
づく委託料及び追加委託料の支出も,その限りで違法な公金支出
となる。
(d)契約<25>の1(平成17年度のみ)
Ⅰ証拠(甲51)によれば,P25協会は,神戸市との間で,平
成17年4月1日付けで,契約<25>の1を締結したこと,同契約
締結に際して作成された「平成17年度P38館の管理・運営に
係る委託料の積算項目」と題する書面において,委託料を財源と
して,派遣職員人件費1億3266万1000円が計上されてい
たこと,同契約に基づく委託料として,平成18年2月15日ま
でに,4億3267万6000円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約<25>の1のうち,派遣職員人件費支出予
定額1億3266万1000円に係る部分は違法であり,同契約
に基づく委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
(e)契約<26>
Ⅰ平成17年度分
i証拠(甲52)によれば,P25協会は,神戸市との間で,
平成17年4月1日付けで,契約<26>の1を締結したこと,同
契約において,精算の上,同契約に基づく委託料として,平成
18年5月17日に,1132万8187円が支出されたこと
が認められるが,同契約において,約定の委託料中に派遣職員
人件費が含まれることを認めるに足りる証拠はない。
ii上記認定事実によれば,契約<26>の1締結時において,上記
委託料の一部が派遣職員人件費として支出されることが予定さ
れているとはいえず,契約<26>の1及び同契約に基づく委託料
の支出が違法であるということはできない。
Ⅱ平成18年度分
i証拠(甲16,52,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨に
よれば,P25協会は,神戸市との間で,平成18年4月1日
ころ,契約<26>の2を締結したこと,同契約においては,委託
料を財源とする派遣職員人件費支出予定額は1102万800
0円であったこと,神戸市は,P25協会に対し,遅くとも平
成19年5月31日までに,平成18年度委託料として,10
81万0327円を超える金額を支払ったこと(同月30日以
前の支払を認めるに足りる証拠はない。)が認められる。
ii上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,
(a),Ⅱのとおり,契約<26>の2のうち,派遣職員人件費支出
予定額1102万8000円に係る部分は違法であり,同契約
に基づく委託料の支出も,その限りで違法な公金支出となる。
hP13
(a)平成17年度分
Ⅰ証拠(甲25,26)によれば,P13は,神戸市との間で,
平成17年4月1日付けで,契約<27>及び<28>の各1を締結し
たこと,契約<27>の1においては「P27作業所運営費(担当
:業務課)」,契約<28>の1においては「CCにおける計量業
務等(担当:施設課)」と題する書面において,それぞれ派遣
職員人件費が計上されていたこと(ただし,具体的金額はいず
れもマスキングにより不明である。),上記各契約に基づく委
託料として,契約<27>の1については,同年12月1日までに
4946万8107円,契約<28>の1については,平成18年
1月6日までに3億1629万4987円が支出されたことが
認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),c,(
b),Ⅱのとおり,契約<27>及び<28>の各1並びに上記各契約に
基づく委託料の各支出が違法であるとの立証はないものといわ
ざるを得ない。
(b)平成18年度分
Ⅰ証拠(甲16,27,28)によれば,P13は,神戸市との
間で,平成18年4月1日付けで,契約<27>及び<28>の各2を
締結したこと,上記各契約における委託料を財源とする派遣職
員人件費支出予定合計額は3985万4739円であったこと,
上記各契約に基づく委託料として,契約<27>の2については,
同年12月13日までに4717万3148円,契約<28>の2
については,同年11月14日までに3億3380万7082
円が支出されたことが認められる。
Ⅱ上記認定事実によれば,前記第3,1,(2),イ,(ア),a,(
a),Ⅱのとおり,契約<27>及び<28>の各2のうち,派遣職員人
件費支出予定額3985万4739円に係る部分は違法であり,
同各契約に基づく委託料の各支出も,その限りで違法な公金支
出となる(以下,本件支出のうち,違法な補助金又は委託料支
出を総称して「本件違法支出」という。)。
2争点2について
P1は,本件違法支出当時,神戸市長の地位にあったところ,神戸市長は,
本件補助金(ただし,P23公社に対する補助金を除く。)の根拠たる本件各
要綱を決定し,少なくとも平成4年度以降,要綱⑨に基づき,また,平成14
年度以降は,本件各要綱のうち半数以上の要綱が施行されているなかで,上記
各要綱に基づき,対応する各団体の派遣職員人件費について,交付決定等が行
われて補助金が支出されてきたこと(別表1「H17(証拠等)」及び同別表
「H18(証拠等)」各欄記載の証拠等),また,本件委託料の根拠となった
本件各委託契約を神戸市の代表者として締結し,神戸市と本件委託団体との委
託契約は,相当程度長期間にわたり継続されてきたこと(弁論の全趣旨),平
成14年4月1日には派遣法も全面施行され,地方公務員の派遣に関する法制
度が整備されたこと,派遣法6条2項は,前記のとおり派遣職員人件費を補助
金又は委託料として支出することを一切禁止する趣旨ではないものの,派遣法
の有無にかかわらず,神戸市の職務に従事していない職員に給与を支給できな
いのは当然であること(ノーワーク・ノーペイの原則),本件違法支出に係る
各交付決定等や各委託契約締結及びこれらに基づく本件違法支出時には,派遣
法が施行されて既に数年が経過していたこと,その当時において,派遣職員人
件費を補助金又は委託料として支出することについて適法とするのが通説であ
るとか適法であると判示した裁判例が相当数存在するといった状況があったと
は認められないこと(弁論の全趣旨),本件違法支出は,本来必要な審査を半
ば放棄し,派遣職員の給与の代替としてその人件費相当額を補助金又は委託料
として支出するもので,本来給与を支給できない場合にそれを脱法的に可能と
する態様のものといいうること等に照らせば,神戸市長が本件違法支出に係る
各交付決定等又は各委託契約について同市職員に専決させていたか否かにかか
わらず,本件違法支出に係る各交付決定等又は各委託契約締結につき,P1に
少なくとも過失は認められるというべきである。
3争点3について
(1)法律上の原因の有無について
P14財団及びP18協会以外の本件各団体が神戸市に対して不当利得と
して本件派遣職員人件費相当額を返還すべき義務を負うのは,本件違法支出
に係る各交付決定等(補助金交付契約)及び各委託契約が私法上無効である
場合に限られるというべきである。
本件においては,前記のとおり,上記交付決定等及び各委託契約はノーワ
ーク・ノーペイの原則に反し違法であるところ,地方公務員法24条1項等
は職員の給与の基準等を一般的に定めた規定であるとはいえ,前記のとおり,
上記交付決定等又は各委託契約当時において,派遣職員の給与につき上記原
則を具体化した派遣法が施行されて既に数年が経過していたこと,それにも
かかわらず前記認定のとおりの態様で上記違法な支出が継続されてきていた
こと(弁論の全趣旨),及び,その当時における前記の学説・判例の状況等
からすれば,上記交付決定等(補助金交付契約)及び各委託契約は,いずれ
も公序良俗に違反するものとして私法上無効であるといわざるを得ず,上記
各団体の補助金又は委託料の受領についても法律上の原因がないといわざる
を得ない。
(2)悪意の有無について
前記のとおり,本件補助金には条例等の法令上の根拠はなく本件各要綱を
根拠とするにすぎない(なお,P23公社については要綱すらない。)こと,
本件補助金交付団体の半分以上の団体に対する補助金支出は,少なくとも平
成14年度以降継続されており,本件委託団体への委託料支出も相当年度に
わたり継続されてきたこと,本件違法支出当時には派遣法も施行されて既に
数年が経過していたにもかかわらず,本件違法支出に係る各要綱又は各委託
契約に基づき,前記認定のとおりの態様で補助金又は委託料の支出が依然と
して継続され,P14財団及びP18協会以外の本件各団体は上記補助金又
は委託料を受領してきたこと等に照らすと,上記各団体は,本件違法支出に
係る補助金又は委託料の受領に法律上の原因がないことについて悪意であっ
たというべきである(なお,このような認識を有しつつ上記各団体が,被告
に対し補助金交付申請をし,それに対し神戸市長(被告)が交付決定等をす
ることや上記各団体と神戸市長(被告)が神戸市の代表者として委託契約を
締結することは,神戸市に対する関係では共同不法行為ともなりうるという
べきである。)から,神戸市に対し,本件違法支出に係る補助金又は委託料
を受領した日から年5分の割合による法定利息を支払う義務を負うというべ
きである(民法703条,704条)。
4争点4について
(1)P17財団(平成18年度補助金)
証拠(甲96)によれば,派遣職員補助金決算額は6662万9277円
であることが認められ,上記補助金について精算がなされたことを認めるに
足りる証拠もないから,派遣職員人件費総額中に補助金以外の財源が含まれ
ていても,前記派遣職員人件費支出予定額6654万1000円の範囲内で
ある限り,全額が損害又は損失というべきであり,前記第3,1,(1),イ,
(ウ)説示の事後的に発生する返還請求権を対象としない本件事案においては,
損害額又は損失額は6654万1000円となり(なお,派遣職員人件費支
出予定額の範囲外の分に係る交付決定等自体が違法ではないことは前記のと
おりである。以下,派遣職員人件費支出予定額を派遣職員補助金決算額が超
える場合につき,同じ。),請求額である内金6662万円のうち6654
万1000円を認容すべきである(これは請求額である6662万円の一部
として認容すべき部分であるが,原告らは,本訴請求のうちの一部について
一定の補助金又は委託料のまとまり毎に1万円未満を切り捨てて請求してい
るだけであって,一部認容の場合を含めてあらゆる認容額につきかかる切り
捨てを許容する趣旨とは解されないので,この額をもって,そのまま認容す
ることとする。以下,同じ。)。
(2)P12財団
ア平成17年度分
(ア)補助金
a証拠(甲1,58)によれば,派遣職員補助金決算額は8987万
2686円であることが認められるから,派遣職員人件費総額中に補
助金以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額9
283万2000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失である
というべきである。なお,前記補助金支出額のうち,平成18年5月
26日に,管理費397万4441円が未執行額として精算(戻入)
されているが,上記補助金決算額は,精算を経た上で算定されている
と認められる(甲58,弁論の全趣旨)から,上記精算は,上記結論
を左右するものではない。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額295万931
4円については,平成17年度補助金又は委託料に係る遅延損害金又
は法定利息の起算日である平成18年5月1日以降に未執行額として
精算された場合又は他の用途に使用された場合は,当該精算又は使用
分について,同日から精算日又は使用日までの遅延損害金又は法定利
息が発生するが,原告らは,上記残額については本訴の請求対象から
除外しているため,仮に,上記残額が上記精算額397万4441円
中に含まれ,又は平成18年5月1日以降に他の用途に使用されてい
たとしても,これに対する確定遅延損害金又は法定利息は,損害又は
損失として加算されない。
cよって,損害額又は損失額は8987万2686円となる。
(イ)委託料
a証拠(甲16)によれば,委託料のうち派遣職員人件費として支出
された額(以下「派遣職員委託料決算額」という。)は5584万0
652円であることが認められるから,派遣職員人件費総額中に委託
料以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額80
54万5000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべ
きである。なお,前記補助金支出額のうち,平成18年5月25日こ
ろ,1324万6296円が未執行額として精算されているが,上記
委託料決算額は,精算を経た上で算定されていると認められる(甲2
0,弁論の全趣旨)から,上記精算は上記結論を左右するものではな
い。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額2470万43
48円については,前記補助金の場合と同様に,これに対する確定遅
延損害金又は法定利息は,損害又は損失として加算されない。
cよって,損害額又は損失額は5584万0652円となる。
(ウ)以上より,平成17年度分の損害額又は損失額の合計は,1億45
71万3338円となり,請求額である内金1億4571万円全額を認
容すべきである。
イ平成18年度分
(ア)補助金
a証拠(甲59)及び弁論の全趣旨によれば,派遣職員補助金決算額
は9387万2237円であることが認められるから,平成17年度
分と同様に,派遣職員人件費支出予定額9468万8000円の範囲
内である限り,全額が損害又は損失というべきである。なお,前記補
助金支出額のうち,平成19年5月29日に,127万5934円が
未執行額として精算されているが,平成17年度分と同様に(甲59
),上記事実は上記結論を左右するものではない。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額81万5763
円分についても,平成17年度分と同様に,これに対する確定遅延損
害金又は法定利息は損害又は損失として加算されない。
cよって,損害額又は損失額は9387万2237円となる。
(イ)委託料
a弁論の全趣旨によれば,派遣職員委託料決算額は6748万587
5円であることが認められ,上記委託料について精算がなされたこと
を認めるに足りる証拠もないから,平成17年度分と同様に,前記派
遣職員人件費支出予定額7822万8000円の範囲内である限り,
全額が損害又は損失というべきである。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額1074万21
25円についても,平成17年度分と同様に,これに対する確定遅延
損害金又は法定利息は損害又は損失として加算されない。
cよって,損害額又は損失額は6748万5875円となる。
(ウ)以上より,平成18年度分の損害額又は損失額の合計は,1億61
35万8112円となり,請求額である内金1億6135万円全額を認
容すべきである。
(3)P11センター(平成18年度補助金)
証拠(甲61)によれば,派遣職員補助金決算額は6415万6295円
であることが認められ,上記補助金について精算がなされたことを認めるに
足りる証拠もないから,派遣職員人件費中に補助金以外の財源が含まれてい
ても,前記派遣職員人件費支出予定額6025万2000円の範囲内である
限り,全額が損害又は損失であるというべきであり,損害額又は損失額は,
6025万2000円となり,請求額である内金6415万円のうち,60
25万2000円を認容すべきである。
(4)P29財団
ア平成17年度補助金
(ア)証拠(甲1,62)によれば,派遣職員補助金決算額は1億498
6万7631円(9900万7126円と5086万0505円の合計
額)であることが認められるから,前記派遣職員人件費支出予定額1億
6038万4000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失という
べきである。なお,前記補助金支出額のうち,平成18年5月31日ま
でに,2323万6816円が未執行額として精算されているものの,
上記補助金決算額は上記精算後に算定されたものである(甲62,弁論
の全趣旨)から,上記精算は上記結論を左右するものではない。
(イ)他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額1051万63
69円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これ
に対する確定遅延損害金又は法定利息は,損害又は損失として加算され
ない。
(ウ)よって,損害額又は損失額は1億4986万7631円となり,請
求額である内金1億4986万円全額を認容すべきである。
イ平成18年度補助金
(ア)証拠(甲63)によれば,派遣職員補助金決算額は1億4798
万6519円(9529万6893円と5268万9626円の合計額
)であることが認められるから,平成17年度分と同様に,前記派遣職
員人件費支出予定額1億6392万1000円の範囲内である限り,全
額が損害又は損失というべきである。なお,前記補助金支出額のうち,
平成19年5月31日までに,1600万5708円が未執行額として
精算されているが,上記補助金決算額は上記精算後に算定されたもので
あるから,上記精算は上記結論を左右するものではない。
(イ)他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額1593万4
481円は本訴請求の対象(1億7986万円)に含まれているものの,
平成19年4月30日までに他の用途に支出されたものと認められる(
甲63,弁論の全趣旨)から,上記精算は上記結論を左右するものでは
ない。
(ウ)よって,損害額又は損失額は1億4798万6519円となり,
請求額である1億7986万円のうち1億4798万6519円を認容
すべきである。
(5)P20協会
ア平成17年度分
(ア)補助金
a証拠(甲1,64)によれば,派遣職員補助金決算額は3589万
9839円であることが認められるから,派遣職員人件費中に補助金
以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額361
1万5000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべき
である。なお,前記補助金支出額のうち,平成18年5月31日まで
に,1万0599円が未執行額として精算されているものの,上記補
助金決算額は上記精算後に算定されたものである(甲64,弁論の全
趣旨)から,上記精算は上記結論を左右するものではない。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額21万5161
円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これに
対する確定遅延損害金又は法定利息は,損害又は損失として加算され
ない。
cよって,損害額又は損失額は,3589万9839円となる。
(イ)委託料(契約④の1)
証拠(甲16)によれば,派遣職員委託料決算額は2510万573
9円であることが認められるから,派遣職員人件費中に委託料以外の財
源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額2397万800
0円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきである(派遣
職員人件費支出予定額の範囲外の分に係る委託契約が違法ではないこと
は前記補助金の場合と同様である。以下,派遣職員人件費支出予定額を
派遣職員委託料決算額が超える場合につき,同じ。)。なお,前記委託
料支出額のうち,平成18年5月18日ころ,1万2965円が未執行
額として精算されたことが認められるが,上記委託料決算額は精算後に
算定されたものである(甲53,弁論の全趣旨)から,上記事実は上記
結論を左右するものではない。
よって,損害額又は損失額は,2397万8000円となる。
(ウ)以上より,平成17年度分の損害額又は損失額の合計は,5987
万7839円となり,請求額である内金2億8095万円のうち,59
87万7839円を認容すべきである。
イ平成18年度分
(ア)補助金
証拠(甲65)によれば,派遣職員補助金決算額は4946万852
0円であることが認められ,上記補助金について精算がなされたことを
認めるに足りる証拠もないから,平成17年度分と同様に,前記派遣職
員人件費支出予定額4676万円の範囲内である限り,全額が損害又は
損失というべきであり,損害額又は損失額は4676万円となる。
(イ)委託料(契約③の2)
a弁論の全趣旨によれば,派遣職員委託料決算額は3710万139
0円であることが認められ,上記委託料について精算がなされたこと
を認めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件費中に委託料以外の
財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額3875万7
000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきである。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額165万561
0円は,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これに対する
確定遅延損害金又は法定利息は,損害又は損失として加算されない。
cよって,損害額又は損失額は,3710万1390円となる。
(ウ)以上より,平成18年度分の損害額又は損失額の合計は,8386
万1390円となり,請求額である内金8650万円のうち,8386
万1390円を認容すべきである。
(6)P30センター
ア平成17年度補助金
(ア)証拠(甲1,66)によれば,派遣職員補助金決算額は8828万
4505円であることが認められるから,派遣職員人件費中に補助金以
外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額8639万
2000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきである。
なお,前記補助金支出額のうち,平成18年5月25日に,385万円
が未執行額として精算されているものの,上記補助金決算額は上記精算
後に算定されたものである(甲66)から,上記精算は上記結論を左右
するものではない。
(イ)したがって,損害額又は損失額は8639万2000円となり,請
求額である内金8828万円のうち,8639万2000円を認容すべ
きである。
イ平成18年度補助金
(ア)証拠(甲67)及び弁論の全趣旨によれば,派遣職員補助金決算額
は9259万4333円であることが認められるから,派遣職員人件費
中に補助金以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定
額8841万1000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失とい
うべきである。なお,前記補助金支出額のうち,平成19年5月28日
に,6万1986円が未執行額として精算されているものの,上記補助
金決算額は上記精算後に算定されたものである(甲67)から,上記精
算は上記結論を左右するものではない。
(イ)したがって,損害額又は損失額は8841万1000円となり,請
求額である内金9259万円のうち,8841万1000円を認容すべ
きである。
(7)P28協会(平成18年度補助金)
ア証拠(調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,派遣職員
補助金決算額は3528万2242円であることが認められ,上記補助金
について精算がなされたことを認めるに足りる証拠もないから,派遣職員
人件費中に補助金以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出
予定額3761万7000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失と
いうべきである。
イ他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額233万4
758円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これ
に対する確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算されない。
ウ以上より,損害額又は損失額は,3528万2242円となり,
請求額である内金3528万円全額を認容すべきである。
(8)P15研究所(要綱⑪)
ア平成17年度補助金
前記のとおり,前記補助金支出額975万9360円はすべて派遣職員
人件費であり,それ以上に追加補助金が支出されたこと,及び,上記補助
金(追加補助金を含む。)について精算がなされたことを認めるに足りる
証拠はいずれもないから,全額が損害又は損失というべきであり,損害額
又は損失額は,975万9360円となり,請求額である1億1025万
円のうち975万9360円を認容すべきである。
なお,原告らは,遅延損害金又は法定利息の起算日を各年度の翌年の5
月1日としているところ,前記のとおり,上記損害額又は損失額のうち,
51万1360円の支出日は,原告らが起算日とする平成18年5月1日
より後の同月9日であるから,同日が起算日となり,残額924万800
0円についてのみ,同月1日が起算日となる。
イ平成18年度補助金
平成17年度分と同様に,前記補助金支出額1004万0036円全額
が損害又は損失というべきであり,損害額又は損失額は1004万003
6円となり,請求額である1億0040万円のうち1004万0036円
を認容すべきである。
もっとも,前記のとおり,上記損害額又は損失額1004万0036円
のうち,79万2036円の支出日は,原告らが遅延損害金又は法定利息
の起算日とする平成19年5月1日より後の同月15日であるから,同日
が起算日となり,残額924万8000円についてのみ,同月1日が起算
日となる。
(9)P31協議会
ア平成17年度補助金
(ア)証拠(甲68)及び弁論の全趣旨によれば,派遣職員補助金決算額
は1億2371万2608円であることが認められ,上記補助金につい
て精算がなされたことを認めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件
費中に補助金以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予
定額1億4573万4473円の範囲内である限り,全額が損害又は損
失というべきである。
(イ)他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額2202万18
65円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これ
に対する確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算されな
い。
(ウ)以上より,損害額又は損失額は1億2371万2608円となり,
請求額である内金1億2371万円全額を認容すべきである。
イ平成18年度補助金
(ア)弁論の全趣旨によれば,派遣職員補助金決算額は1億5047万1
086円であることが認められ,上記補助金について精算がなされたこ
とを認めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件費中に補助金以外の
財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額8450万円の
範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきであり,損害額又は
損失額は8450万円となり,請求額である内金1億5047万円のう
ち8450万円を認容すべきである。
(イ)もっとも,前記のとおり,上記補助金の最終支出日は原告らが遅延
損害金又は法定利息の起算日であると主張する平成19年5月1日以降
の同月18日であるところ,同日以前に派遣職員人件費支出予定額全額
が支出されたことについて原告らの立証はなされていない(交付決定等
に基づき派遣職員人件費として支出されたことについては,原告らが立
証責任を負うべきものであり,いったん派遣職員人件費として支出され
た金額が同年4月30日までに他の用途に支出され又は未執行額として
精算されたことについては,被告が立証責任を負うべきである。)から,
立証責任の観点から,被告に不利とならないように,同年5月18日の
補助金支出額2417万8772円は,全額,派遣職員人件費支出予定
額中からの支出であったとみなして同日を起算日とし,残額6032万
1228円についてのみ,同月1日を起算日とすべきである。
(10)P21財団
ア平成17年度補助金(要綱⑬)
(ア)証拠(甲1,70)によれば,派遣職員補助金決算額は1億977
5万9736円であることが認められるから,前記派遣職員人件費支出
予定額1億9997万6000円の範囲内である限り,全額が損害又は
損失というべきである。なお,前記補助金支出額のうち,平成18年5
月31日までに,366万7667円が未執行額として精算され,その
うち221万6264円は派遣職員人件費支出予定額であるものの,上
記補助金決算額は上記精算後に算定されたものである(甲70)から,
上記精算は上記結論を左右するものではない。
(イ)他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額221万626
4円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これに
対する確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算されない。
(ウ)よって,損害額又は損失額は,1億9775万9736円となり,
請求額である内金2億7705万円のうち1億9775万9736円を
認容すべきである。
イ平成18年度分
(ア)補助金
a要綱⑬
(a)証拠(甲71)によれば,派遣職員補助金決算額は1億829
1万2683円であることが認められるから,前記派遣職員人件費
支出予定額2億0035万6000円の範囲内である限り,全額が
損害又は損失というべきである。なお,前記補助金支出額のうち,
平成19年5月10日に,739万5372円が未執行額として精
算されている(甲71)が,平成17年度分と同様に,上記精算は
上記結論を左右するものではない。
(b)他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額1744万
3317円は本訴請求の対象(2億5007万円)に含まれている
ところ,上記精算額に含まれる派遣職員人件費支出予定額の内訳は
証拠上不明であるといわざるを得ないから,立証責任の観点から,
原告に不利にならないように,上記精算額全額が未使用分の派遣職
員人件費支出予定額であったとすべきであり,これに対する平成1
9年5月1日から同月10日までの確定遅延損害金又は法定利息1
万0131円(1円未満四捨五入。)が損害又は損失として加算さ
れる(なお,残額1004万7945円は同年4月30日までに他
の用途に支出されたものと認められる(甲71)。)。
(c)よって,損害額又は損失額は,1億8292万2814円とな
る。
b要綱⑭及び⑮(平成18年度分)
証拠(甲73,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,要綱
⑭及び⑮に係る派遣職員補助金決算額と契約⑤の2に係る派遣職員委
託料決算額の合計が4863万4225円であること,その内訳は,
前者が3009万9111円であり,後者が1853万5114円で
あることが認められるから,派遣職員人件費中に補助金以外の財源が
含まれていても,要綱⑭及び⑮に係る派遣職員人件費支出予定額29
49万8000円(1505万3000円と1444万5000円の
合計額)の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきである。
なお,平成19年5月14日に,要綱⑭に基づく前記補助金支出額の
うち110万3345円,要綱⑮に基づく前記補助金支出額のうち1
61万6377円がそれぞれ未執行額として精算されているが,上記
補助金決算額は,いずれも精算後に算定されたものである(甲73,
75,弁論の全趣旨)から,上記各精算は上記結論を左右するもので
はない。
よって,損害額又は損失額は,2949万8000円となる。
(イ)委託料
前記のとおり,契約⑤の2に係る派遣職員委託料決算額は1853万
5114円であることが認められ,前記委託料について精算がなされた
と認めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件費中に委託料以外の財
源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額1770万200
0円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきであり,損害
額又は損失額は1770万2000円となる。
(ウ)以上より,平成18年度分の損害額又は損失額の合計は,2億30
12万2814円となり,請求額である内金2億5007万円のうち2
億3012万2814円を認容すべきである(ただし,遅延損害金又は
法定利息の元本は,確定遅延損害金又は法定利息1万0131円を控除
した2億3011万2683円である。)。
(11)P19公社
ア平成17年度補助金(要綱⑯)
前記のとおり,派遣職員補助金決算額は1007万8687円であるか
ら,派遣職員人件費中に補助金以外の財源が含まれていても,前記派遣職
員人件費支出予定額1007万8687円の範囲内である限り,全額が損
害又は損失というべきであり,損害額又は損失額は1007万8687円
となり,請求額である内金1億0742万円のうち1007万8687円
を認容すべきである。
もっとも,前記のとおり,平成17年度補助金2352万4000円が
支出されたのは,原告らが遅延損害金又は法定利息の起算日とする平成1
8年5月1日より後の同月26日であるから,同日が起算日となる。
イ平成18年度補助金
(ア)要綱⑯
前記のとおり,派遣職員補助金決算額は1050万3177円である
から,平成17年度分と同様に,前記派遣職員人件費支出予定額105
0万3177円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきで
あり,損害額又は損失額は1050万3177円となる。
もっとも,前記のとおり,平成18年度補助金2687万2000円
が支出されたのは,原告らが遅延損害金又は法定利息の起算日とする平
成19年5月1日より後の同月22日であるから,同日が起算日となる。
(イ)要綱⑱
前記のとおり,前記補助金支出額3143万2013円はすべて派遣
職員人件費であり,上記補助金について精算がなされたことを認めるに
足りる証拠もないから,全額が損害又は損失というべきであり,損害額
又は損失額は3143万2013円となる。
もっとも,前記のとおり,上記損害額又は損失額のうち,174万7
013円の支出日は,原告らが遅延損害金又は法定利息の起算日とする
平成19年5月1日より後の同月29日であるから,同日が起算日とな
り,残額2968万5000円についてのみ,同月1日が起算日となる。
ウ以上より,平成18年度分の損害額又は損失額の合計は419
3万5190円となるところ,前記のとおり,原告らは請求額元本につい
て,要綱等を明示することなく,その一部の1050万円としているので,
1050万円全額を認容すべきであり,他方,遅延損害金又は法定利息の
起算日については,最も早い要綱⑱に基づく補助金2968万5000円
に係る起算日である平成19年5月1日とすべきである。
(12)P23公社(平成17年度補助金)
前記のとおり,前記補助金支出額5683万4525円はすべて派遣職員
人件費であり,上記補助金(追加補助金を含む。)について精算がなされた
ことを認めるに足りる証拠もないから,全額が損害又は損失というべきであ
り,損害額又は損失額は,5683万4525円となり(なお,甲1号証の
監査結果には派遣職員人件費は5480万8548円とあるが,これは消費
税を控除した額である。),請求額である内金7億1495万円のうち,5
683万円を認容すべきである(上記内金は,平成17年度補助金及び平成
17年度委託料のそれぞれについて1万円未満を切り捨てたものと解すべき
である。)。
もっとも,前記のとおり,上記損害額又は損失額のうち,3211万25
25円から原告らが本訴請求から除外した4525円(原告らに不利となら
ないよう,平成18年5月23日支出分から減縮した。)を控除した残額で
ある3210万8000円の支出日は,原告らが遅延損害金又は法定利息の
起算日とする同月1日より後の同月23日であるから,同日が起算日となり,
残額2472万2000円についてのみ,同月1日が起算日となる。
(13)P32協会
ア平成17年度補助金
前記のとおり,前記補助金支出額6億6552万7180円はすべて派
遣職員人件費であり,上記補助金(追加補助金を含む。)について精算が
なされたことを認めるに足りる証拠もないから,全額が損害又は損失とい
うべきであり,損害額又は損失額は6億6552万7180円となり,請
求額である内金6億6552万円全額を認容すべきである。
もっとも,前記のとおり,上記損害額又は損失額のうち,558万71
80円から原告らが本訴請求から除外した7180円(原告らに不利とな
らないよう,平成18年5月29日支出分から減縮した。)を控除した残
額558万円の支出日は,原告らが遅延損害金又は法定利息の起算日とす
る同月1日より後の同月29日であるから,同日が起算日となり,残額6
億5994万円についてのみ,同月1日が起算日となる。
イ平成18年度補助金
前記のとおり,前記補助金支出額1億6862万3000円はすべて派
遣職員人件費であるところ,証拠(甲81)及び弁論の全趣旨によれば,
そのうち,平成19年5月1日に950万0965円が未執行額として精
算する旨の決議がされ,遅くともその納期限である同月23日に同額が精
算されたことが認められるから,前記補助金支出額から前記未執行額を控
除した1億5912万2035円が損害額又は損失額であり,請求額であ
る内金1億5912万円全額を認容すべきである。
(14)P24公社
ア平成17年度委託料(契約⑰ないし⑲の各1)
(ア)証拠(甲16)によれば,契約⑰ないし⑲の各1の派遣職員委託料
決算額合計は7億1004万9641円であることが認められ,上記各
委託料について精算がなされたと認めるに足りる証拠はいずれもないか
ら,派遣職員人件費中に委託料以外の財源が含まれていても,前記派遣
職員人件費支出予定額7億4147万0142円(6億2030万35
42円,1億1511万6600円及び605万円の合計額)の範囲内
である限り,全額が損害又は損失というべきである。
(イ)他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額3142万05
01円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これ
に対する確定遅延損害金又は法定利息は,損害又は損失として加算され
ない。
(ウ)よって,損害額又は損失額は7億1004万9641円となり,請
求額である内金7億1004万円全額を認容すべきである。
なお,契約⑰及び⑱の各1の委託料の最終支出日は,原告らが遅延損
害金又は法定利息の起算日であると主張する平成18年5月1日以降の
同月25日であり,契約⑲の1の委託料支出日は同月24日であるとこ
ろ,上記委託料決算額中に含まれる契約⑰ないし⑲の各1における派遣
職員人件費支出予定額がいくらであるか,及び,同月24日又は25日
以前に派遣職員人件費支出予定額全額が支出されたことの立証はいずれ
もないから,立証責任の観点から,被告に不利とならないように,最後
に支出された委託料中から順に派遣職員人件費支出予定額が充当されて
いたものと解すべきである。すなわち,同月25日における契約⑰の1
の委託料支出額8億7915万9961円中には,同契約の派遣職員人
件費支出予定額6億2030万3542円全額が含まれており,同日に
おける契約⑱の1の委託料支出額7627万7621円は全額が派遣職
員人件費支出予定額であるものとみなして,これらの合計額6億965
8万1163円のうち原告らが請求対象から除外した9641円を控除
した6億9657万1522円については同日を起算日とすべきであり,
7億1004万円の残額1346万8478円のうち,605万円につ
いては,契約⑲の1の委託料支出日である同月24日を起算日とし,7
41万8478円については同月1日を起算日とすべきである。
イ平成18年度委託料
(ア)契約⑰及び契約⑱の各2
弁論の全趣旨によれば,契約⑰及び⑱の各2の派遣職員委託料決算
額は3億1972万7664円であることが認められ,上記各委託料に
ついて精算がなされたと認めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件
費中に委託料以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予
定額3億0597万5000円(2億0288万2000円と1億03
09万3000円の合計額)の範囲内である限り,全額が損害又は損失
というべきであり,損害額又は損失額は3億0597万5000円とな
る。
(イ)契約⑳の2
a証拠(甲93)によれば,契約⑳の2の派遣職員委託料決算額は
2億4010万6686円であること,及び,上記委託料決算額は平
成19年5月31日に支出された追加委託料1億3924万2700
円中には含まれていないことが認められ,上記委託料について精算が
なされたと認めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件費中に委託
料以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額2億
7764万6000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失とい
うべきである。
b他方,派遣職員人件費として支出されなかった3753万931
4円については,原告らは,契約⑰,⑱及び⑳の各2の派遣職員委託
料決算額の合計5億5983万4350円ではなく,3億1972万
円を本訴請求の対象としているところ,その内訳を原告らが明らかに
していないことから,原告らに不利益に,本訴請求の対象ではないと
解すべきであり,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これ
に対する確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算され
ない(仮に含まれているとしても,上記残額3753万9314円は,
平成19年4月30日までに他の用途に支出されている(甲93,弁
論の全趣旨)から,上記結論が左右されるものではない。)。
cよって,損害額又は損失額は2億4010万6686円となる。
(ウ)以上より,平成18年度分の損害額又は損失額の合計は5億46
08万1686円となるところ,前記のとおり,原告らは請求額元本に
ついて,委託契約を明示することなくその一部の3億1972万円とし
ているので,その全額を認容すべきである。
(15)P16協会(平成17年度委託料)
ア証拠(甲16,47)によれば,派遣職員委託料決算額は60
83万8240円(5774万3365円と309万4875円の合計額
)であることが認められるから,派遣職員人件費中に委託料以外の財源が
含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額7247万5000円の
範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきである。なお,平成1
8年5月31日までに,前記委託料支出額のうち,派遣職員の1名減少を
理由として,1474万8423円が未執行額として精算されており,そ
れには前記派遣職員人件費支出予定額の残額1163万6760円が含ま
れているものの,上記補助金決算額は上記精算の後に算定されていること
(甲47,弁論の全趣旨)から,上記精算は上記結論を左右するものでは
ない。
イ他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額1163万
6760円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,こ
れに対する確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算されな
い。
ウ以上より,損害額又は損失額は,6083万8240円となり,
請求額である内金6083万円全額を認容すべきである。
(16)P33公社
ア平成17年度補助金
証拠(甲83)によれば,前記補助金支出額4573万2000円のう
ち,平成18年4月17日に142万4289円が未執行額として精算さ
れたことが認められ,前記のとおり,上記支出額はすべて派遣職員人件費
であるから,精算額を控除した額の全部が損害又は損失というべきであり,
損害額又は損失額は4430万7711円となり,請求額である内金44
30万円全額を認容すべきである。
イ平成18年度補助金
証拠(甲84)によれば,前記補助金支出額4658万8000円のう
ち,平成19年4月27日に,168万0761円が未執行額として精算
されたことが認められ,前記のとおり,上記支出額はすべて派遣職員人件
費であるから,精算額を控除した額の全部が損害又は損失というべきであ
り,損害額又は損失額は4490万7239円となり,請求額である内金
4490万円全額を認容すべきである。
(17)P25協会
ア平成17年度分
(ア)補助金(要綱<21>)
a証拠(甲85)によれば,派遣職員補助金決算額は1億2303万
5286円であることが認められるから,派遣職員人件費中に補助金
以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額1億2
627万3000円の範囲内である限り,全額が損害又は損失という
べきである。なお,前記補助金支出額のうち,平成18年5月18日
に24万6044円が未執行額として精算されているものの,上記補
助金決算額は上記精算後に算定されたものである(甲85)から,上
記精算は上記結論を左右するものではない。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった323万7714円
については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これに対
する確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算されない。
cよって,損害額又は損失額は,1億2303万5286円となる。
(イ)委託料(契約<23>ないし<25>の各1)
a契約<23>の1
(a)証拠(甲49)によれば,契約<23>の1の派遣職員委託料決算
額は2億5662万3369円であることが認められ,前記委託料
について精算がなされたことを認めるに足りる証拠もないから,派
遣職員人件費中に委託料以外の財源が含まれていても,前記派遣職
員人件費支出予定額3億0230万9700円の範囲内である限り,
全額が損害又は損失というべきである。
(b)他方,上記派遣職員人件費として使用されなかった残額456
8万6331円については,原告らは,契約<22>ないし<26>の各1
の派遣職員委託料決算額の合計5億3440万7787円(甲16
)の内金5億3440万円を本訴請求の対象としているところ,そ
の内訳を原告らが明らかにしていないことから,原告らに不利益に,
本訴請求の対象ではないと解すべきであり,前記第3,4,(2),
ア,(ア),bのとおり,これに対する確定遅延損害金又は法定利息
は損害又は損失として加算されない(仮に含まれているとしても,
前記残額4568万6331円は,平成18年4月30日までに他
の用途に支出されている(甲49,弁論の全趣旨)から,上記結論
が左右されるものではない。)。
b契約<24>の1
(a)証拠(甲50)によれば,契約<24>の1の委託料決算額は82
79万3614円であることが認められ,前記委託料について精算
がなされたことを認めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件費
中に委託料以外の財源が含まれていても,前記派遣職員人件費支出
予定額7838万4000円の範囲内である限り,全額が損害又は
損失というべきである。
(b)なお,前記委託料の最終支出日は原告らが遅延損害金又は法定
利息の起算日であると主張する平成18年5月1日以降の同月30
日であるところ,同日以前に派遣職員人件費支出予定額全額が支出
されたことの立証はないから,同日の委託料支出額300万円は,
全額派遣職員人件費支出予定額中から支出されたものとみなして同
日を起算日とし,残額7538万4000円についてのみ,同月1
日を起算日とすべきである。
c契約<25>の1
(a)証拠(甲51)によれば,契約<25>の1の派遣職員委託料決算
額は1億3081万4334円である(なお,上記契約<23>ないし
<25>の各1の派遣職員委託料決算額の合計額4億7023万131
7円は,契約<22>ないし<26>の各1の派遣職員委託料決算額5億3
440万7787円の範囲内である。)ことが認められるから,派
遣職員人件費中に委託料以外の財源が含まれていても,前記派遣職
員人件費支出予定額1億3266万1000円の範囲内である限り,
全額が損害又は損失というべきである。なお,前記委託料支出額の
うち,平成18年4月10日に500万円,及び,同年5月19日
に119万1864円が未執行額として精算されているものの,上
記委託料決算額は上記精算後に算定されたものである(甲51)か
ら,上記精算は上記結論を左右するものではない。
(b)他方,派遣職員人件費として使用されなかった残額184万6
666円については,前記のとおり,原告らに不利益に,本訴請求
の対象ではないと解すべきであるから,前記第3,4,(2),ア,(
ア),bのとおり,これに対する確定遅延損害金又は法定利息は損
害又は損失として加算されない。
dよって,損害額又は損失額は,4億6582万1703円(2億5
662万3369円,7838万4000円,及び,1億3081万
4334円の合計額)となる。
(ウ)以上より,平成17年度分の損害額又は損失額の合計は5億888
56989円となり,請求額である内金6億8292万円のうち5億8
885万6989円を認容すべきである。なお,うち300万円の遅延
損害金又は法定利息の起算日のみ,平成18年5月30日となる。
イ平成18年度分
(ア)補助金
a要綱<21>
(a)証拠(甲86)によれば,派遣職員補助金決算額は1億281
2万1826円であることが認められるから,前記派遣職員人件費
支出予定額1億2905万7000円の範囲内である限り,全額が
損害又は損失というべきである。なお,前記補助金支出額のうち,
平成19年5月31日までに,134万0836円が未執行額とし
て精算されているものの,上記補助金決算額は上記精算後に算定さ
れたものである(甲86,弁論の全趣旨)から,上記精算は上記結
論を左右するものではない。
(b)他方,派遣職員人件費として使用されなかった93万5174
円については,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これ
に対する確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算さ
れない。
(c)よって,損害額又は損失額は,1億2812万1826円とな
る。
b要綱<22>
弁論の全趣旨によれば,派遣職員補助金決算額は2586万130
4円であることが認められ,上記補助金について精算がなされたと認
めるに足りる証拠もないから,派遣職員人件費中に補助金以外の財源
が含まれていても,前記派遣職員人件費支出予定額1212万500
0円の範囲内である限り,全額が損害又は損失というべきであり,損
害額又は損失額は1212万5000円となる。
(イ)委託料(契約<26>の2)
a証拠(甲52,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,契約
<26>の2の派遣職員委託料決算額は1081万0327円であること
が認められ,前記のとおり,上記委託料決算額は精算後に算定された
ものであるから,派遣職員人件費中に委託料以外の財源が含まれてい
ても,前記派遣職員人件費支出予定額1102万8000円の範囲内
である限り,全額が損害又は損失というべきである。
b他方,派遣職員人件費として使用されなかった21万7673円に
ついては,前記第3,4,(2),ア,(ア),bのとおり,これに対す
る確定遅延損害金又は法定利息は損害又は損失として加算されない。
c以上より,損害額又は損失額は,1081万0327円となる。
なお,前記のとおり,P25協会に対する委託料が支出されたのは,
遅くとも平成19年5月31日であるが,前記のとおり,同月30日
以前であることを認めるに足りる証拠はないから,同月31日が遅延
損害金又は法定利息の起算日となる。
(ウ)以上より,平成18年度分の損害額又は損失額の合計は,1億51
05万7153円となるところ,原告らは請求元本額を,要綱や委託契
約等を明示することなく,その一部である1億0081万円としている
ので,請求額1億0081万円全額を認容すべきであり,遅延損害金又
は法定利息の起算日は,最も早い要綱<21>に基づく補助金1億2812
万1826円に係る起算日である平成19年5月1日とすべきである。
(18)P13(平成18年度委託料)
弁論の全趣旨によれば,委託料決算額は4140万5459円であること
が認められ,上記委託料について精算がなされたと認めるに足りる証拠もな
いから,派遣職員人件費中に委託料以外の財源が含まれていても,前記派遣
職員人件費支出予定額3985万4739円の範囲内である限り,全額が損
害又は損失というべきであり,損害額又は損失額は3985万4739円と
なり,請求額4億4140万円のうち3985万4739円を認容すべきで
ある。
(19)P1が神戸市に与えた損害額は,上記(1)ないし(18)の合計額である。
5(1)なお,原告P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6,原告
P7の訴訟代理人弁護士阿部泰隆(以下「阿部弁護士」という。)に対す
る各訴訟代理権については,本訴において同原告らの訴訟代理人として訴
訟行為を行った阿部弁護士提出の平成18年6月29日付け「訴訟委任状
」と題する書面(以下「本件書面」という。)が存在する。本件書面は,
当初21名であった本訴の原告らの住所及び氏名が1枚の紙に印刷文字で
列記され,これに,市販の三文判と思料されるほぼ同一の形状の印影がそ
れぞれ押印されているものであり,これには,原告P39,原告P3,原
告P4の住所(同一)に誤りがありながらそれぞれについて押印がなされ
ているなど,当事者自身が押印しているとは到底考え難い事情があった(
住所の誤記は後に判明した。)。加えて,本訴口頭弁論終結後,原告らの
1人であるP5作成名義の平成20年3月3日付け上申書が当裁判所に提
出され,同上申書には,本訴の原告となる意思はなく,阿部弁護士あての
訴訟委任状を作成した覚えもないなどと記載されていたことから,当裁判
所は,阿部弁護士の訴訟代理権の存在を確認するのを相当と判断し,阿部
弁護士に対し,口頭弁論期日に出頭していなかった原告らについて,改め
て実印を押捺した委任状及び印鑑登録証明書を提出するよう求めたところ,
原告P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6,原告P7について
は遂にこれが提出されず,また,同原告ら本人が直接裁判所に出頭して委
任の意思を明らかにすることなどもなされなかったが,委任状を提出でき
ない合理的事情を窺わせる資料の提出等はない。さらに,記録によると,
阿部弁護士は,自らは原告らからの委任に当たって原告ら本人の意思確認
をしてはおらず,これを特定の原告に取りまとめさせていたが,その原告
は,他の原告ら各自から個別的に訴訟委任の意思を確認していない場合が
あり,委任状に押捺した印鑑もすべてその特定原告が所持している三文判
を同原告が押捺したことが窺える。また,後記のとおり原告らのうち2名
は訴訟係属後に死亡していたにもかかわらず,阿部弁護士からは,弁論終
結に至るまでその旨の報告は全くなく,終結後に当裁判所から上記訴訟代
理権の有無についての照会を受けた後に初めて死亡の事実を明らかにした
ところからすると,阿部弁護士自身,その死亡の事実を全く知らなかった
ものと推認され,特定の原告を通じてであれ当初からの各原告らとの意思
疎通自体の有無が疑われてもやむを得ない。これらの点からすると,原告
P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6,原告P7については,
本件書面の同原告ら作成部分の真正な成立を認めるのは困難であり,阿部
弁護士は,「訴訟行為をするのに必要な授権があることを証明することが
できず,かつ,追認を得ることができなかった」(民事訴訟法69条2項
)といえるから,同原告らの本件各訴えは不適法であるといわざるを得ず,
これに係る訴訟費用の負担については,同法70条を適用して,主文4項
掲記のとおり,その一部を阿部弁護士の負担とすべきである。
この点,阿部弁護士は,印鑑登録証明書を取得するにも費用はかかる,実
印を押すことに躊躇する当事者もいる,本件のような意思確認の方法も集団
訴訟においてはよく見られることである,訴訟提起時においては委任の意思
があったにもかかわらず訴訟係属中に心変わりをする当事者も多い,などと
るる主張するが,これらの事情は,訴訟代理権の証明と直接関係せず,訴訟
代理権の証明を不要とする理由にもならないし(なお,当裁判所は,原告ら
の負担も考慮し,公証人等の認証(民事訴訟規則23条2項)によらなくと
も,安価で簡易な方法として印鑑登録証明書等の提出で足りるものとした。
),原告らの訴訟係属中の心変わりであることを窺わせる徴表も全くないの
であるから,かかる点に関する阿部弁護士の主張を採用することはできない。
(2)他方で,記録によれば,原告P8及び同P9は本訴係属後に死亡したの
で,住民訴訟である本訴の性格上,上記2名の原告らの本件各訴えは,当然
に終了したこととなる。
第4結論
以上の次第で,原告P2,原告P3,原告P4,原告P5,原告P6及び原告
P7の本件各訴えはいずれも不適法であるから却下し,その余の原告らの請求は,
主文2項(1)ないし(19)掲記の限度で理由があるから認容し,その余の請求はい
ずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官佐藤明
裁判官菊池章
裁判官重高啓

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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
時給 当社規定による
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経験不問です。

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写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
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