弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

令和2年(行ヒ)第238号住民訴訟による違法確認請求事件
令和3年5月14日第二小法廷判決
主文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理由
上告代理人田中浩三,同坂田知範,同矢田茂明の上告受理申立て理由(ただし,
排除されたものを除く。)について
1本件は,徳島県(以下「県」という。)の住民である被上告人が,県知事で
あるA(以下「A知事」という。)が管弦楽団の演奏会への出席のために公用車を
使用したことは違法であり,公用車の燃料費並びに同行した秘書及び運転手の人件
費に相当する額につき,県はA知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有
するにもかかわらず,上告人はその行使を違法に怠っていると主張して,地方自治
法242条の2第1項3号に基づき,上告人を相手に,当該怠る事実が違法である
ことの確認を求める住民訴訟である。
2原審が適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)県は,平成23年,県内の全24市町村が開催地となった同24年の国民
文化祭を契機として,とくしま国民文化祭記念管弦楽団(以下「本件管弦楽団」と
いう。)を設立し,平成25年度からは,公益財団法人徳島県文化振興財団(以下
「本件財団」という。)に本件管弦楽団の事業を委託した。
本件管弦楽団は,日本を代表する世界的指揮者を音楽監督に迎え,職業音楽家に
より構成されるところ,その事業は,演奏会の都度管弦楽団を組織し,県内の各地
を訪れて,県,県内の各市町村等と連携しながら演奏会を開催するというものであ
る。
(2)A知事は,県知事であった平成23年から同29年にかけて,県内におい
て開催された本件管弦楽団による多数回の演奏会に公用車を使用して出席した。
そのうち,平成29年7月22日に吉野川市の公民館において開催された演奏会
(以下「本件演奏会」という。)は,同市,吉野川市教育委員会及び吉野川市民コ
ンサート実行委員会が主催し,県及び本件財団が共催するものであった。
(3)徳島県県有車両管理規則14条は,県有車両は,公用以外の目的のために
使用してはならないと規定している。
3原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,本件演奏会
への出席に係る燃料費及び人件費に相当する額である1万5173円につき,県は
A知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているとして,被上告人の
請求のうち,同請求権の行使を怠る事実が違法であることの確認を求める部分を認
容した。
A知事による本件演奏会への出席は,各種団体等の主催する会合に列席するなど
の交際に該当するところ,県が本件演奏会の共催者にとどまり,A知事による挨拶
等もされていないことからすると,特定の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程に
おいて具体的な目的をもってされるものとは認め難い。これに加え,A知事が観客
や主催者である市の首長等と意見交換もしていないことからすると,本件演奏会へ
の出席は,相手方との友好,信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的
にみることはできない。そして,観客と同様の条件下で演奏会を体感し,今後の県
政運営における判断材料とする必要性があるといい得るとしても,そのような必要
性が認められるのは,せいぜい1,2回の出席のときにすぎず,本件演奏会につい
てそのような必要性があるとはいえない。したがって,A知事による本件演奏会へ
の出席が公務に該当するということはできず,その目的のために公用車を使用する
ことは違法である。
4しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
前記事実関係等によれば,県は,本件管弦楽団を設立し,本件財団に委託するな
どして,本件管弦楽団において県内の各地を訪れて演奏会を開催する事業を行うこ
ととなったところ,本件演奏会も,その一環として,県内の吉野川市等が主催し,
県及び本件財団が共催したというのである。そうすると,県が本件演奏会を共催し
たことは,住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的
かつ総合的に実施する役割を広く担う県の文化振興政策に基づくものと評価するこ
とができ(地方自治法1条の2第1項参照),県の事務に含まれるものということ
ができる。
したがって,県を統轄して,これを代表し,また,その事務を管理し及びこれを
執行する県知事であるA知事が,県の事務として開催された本件演奏会に出席した
ことは,公務に該当するものというべきである。そして,A知事が公務として本件
演奏会に出席し,そのため公用車を使用したことに違法があるというべき事情は見
当たらない。
5以上によれば,県が,A知事に対し,本件演奏会の出席に要した費用に相当
する額の損害賠償請求権を有しているとした原審の判断には,判決に影響を及ぼす
ことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は
破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人の請求は理由
がなく,これを棄却した第1審判決は相当であるから,上記部分につき,被上告人
の控訴を棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官菅野博之裁判官三浦守裁判官草野耕一裁判官
岡村和美)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛