弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人花井忠の上告趣意第一点について。
 原判決は被告人に対する司法警察官の昭和二一年七月一四日附第二回聴取書中同
人の供述記載を証拠として採用しているが、記録によると、被告人は右聴取書記載
の如く警察において本件犯行を自白しているだけで、その後は絶対にこれを否認し
ているのみならず第一審に至つて、警察における自白が強制、拷問によるものであ
ることを主張し原審においても論旨摘録の如き供述をして同一の主張をくり返えし
ていることが明かである。よつて、この点につき記録を調査すると、被告人の警察
における自白が強制拷問等によるものであるや否やの問題については、予審も第一
審も原審も愼重な考慮を払い、十分な注意をもつて審理にあたり相当の証拠調をし
ていることが記録上窺えるのである。即ち予審においては、警察監房における同房
者A及び被告人の取調に当つた警察官B、Cを証人として尋問し、第一審において
も右警察官両名を証人として尋問しており、原審においても右警察官両名及び被告
人の取調に立会つた巡査部長Dを尋問しているのである。そしてその証拠調の結果
によると、右の警察官はいづれも被告人の自白が強制拷問等によるものでないこと
を詳細に証言しているのであつて、原審はこれ等の証拠によつて被告人の主張を排
斥し被告人の警察における自白を証拠として採用するに至つたものであることは判
文上明かである。而して記録を精査するも原審の右判断を覆えし被告人の自白が強
制拷問等によるものであることを肯定しなければならない資料は存在しないのであ
る。然らば原判決は強制拷問等による自白を証拠に供した違法があるということは
できないのであるからこの点に関する論旨は理由がない。次に前記の如く被告人は
警察で自白しているだけでその後は犯行を否認し続けているのであるが被告人の犯
罪事実を認める供述と否認する供述とがある場合にその何れを採るかは、裁判官の
自由心証に委ねられているところである。そして原審は被告人の自白が真実に合す
るものであるかどうかについて十分な注意をもつて審理に当つたことは記録上認め
られるところであり、その結果被告人の公判廷における供述を排斥し警察における
自白を採用するに至つたものと認めるを相当とし証拠の採否について一々その理由
を判示する必要はないのであるから、原判決には何等所論の如き審理不尽理由不備
の違法はない。この点に関する論旨も理由なきものである。
 同第二点について。
 原判決はEに対する司法警察官の昭和二一年八月五日附聴取書中の同人の供述記
載を証拠として採用しているのであるが、原審公判調書によると原審は職権をもつ
て同人を証人として尋問し、同人は論旨摘録の如き供述をしていることは明かであ
つて、それによると同人の警察における供述が強要によるものであることを疑わせ
るものであるが、同人は警察で拷問を受けたことはないと明かに供述しており、な
お取調に当つた警察官はEに対して無理な取調をしていないと述べているのである。
ところで証人の警察における供述が強要によるものであるという証拠と、それを否
定する証拠がある場合にその何れを採るか、又証人の警察における供述が公判廷に
おける供述と相反する場合にその何れを採るかは一に裁判官の自由心証に委ねられ
ているのである。公判廷の供述であるからと云つて必ずこれを採用しなければなら
ないという法則はないのである。然らば原審が前記証人Eの公判廷の供述を採用せ
ずして、警察における供述記載を採用したからといつて、何等所論の如き違法があ
るということはできない。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 しかし、所論は原判決の採用した血液型に関する鑑定の証拠価値を論難し、又被
告人が度々指紋の調査を請求したに拘らず、原審がこれを顧みなかつたことを理由
として原判決をもつて憲法制定の趣旨に適合せざる審理不尽の違法ある判決である
というのであるが、右は結局原審の専権に属する証拠の取捨判断及び事実の認定を
非難するに帰着し、上告適法の理由とならない。
 被告人Fの上告趣意について。
 被告人の警察における供述が強制拷問によるものであると主張する点及びEの聴
取書並に指紋に関する点については、前記弁護人花井忠の上告趣意第一点乃至第三
点について説明した通りである。その他の所論は要するに本件犯行を否認しその無
実をうつたえるもので結局事実の認定に関する原審の専権行使を非難するに帰着し、
上告適法の理由とならない。
 よつて、刑事訴訟法施行法第二条旧刑事訴訟法第四四六条により、主文の如く判
決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 福尾彌太郎関与
  昭和二四年二月九日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛