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平成16年(ネ)第833号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成1
4年(ワ)第20610号)
口頭弁論終結日 平成16年4月27日
判決
控訴人         A
同訴訟代理人弁護士對崎俊一
被控訴人        株式会社ツインリンクもてぎ
同訴訟代理人弁護士   平尾正樹
同勝又祐一
同訴訟代理人弁理士   山中伸一郎
主文
     1 本件控訴を棄却する。
     2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,控訴人に対し,1億0500万円及びこれに対する平成14
年2月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(4) 仮執行宣言
2 被控訴人
 主文と同旨
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 控訴人は,被控訴人に対し,①被控訴人が平成12年,13年に曲技飛行競
技会を開催するに当たって,原判決別紙営業表示目録(1)ないし(4)記載の標章(以
下,順に「FWGPA」,「アエロバティックス」,「AEROBATICS」,
「ウイングマーク」といい,まとめて「本件営業表示」という。)を使用した行為
は,不正競争防止法2条1項1号に該当する,②被控訴人が,上記各大会
を開催するに当たって,控訴人を同大会の開催事業から排除したことは,第三者と
の共同不法行為を構成する,③被控訴人が平成11年に曲技飛行競技会を開催する
に当たり,控訴人に対し,上記各標章を使用すること等の対価として4500万円
を支払う旨約したが,そのうち3000万円しか支払われていない旨主張して,上
記①②に基づく損害金9000万円(選択的請求)及び上記③に基づく未払金15
00万円の合計1億0500万円並びにこれに対する支払催告書到達日の翌日であ
る平成14年2月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金の支払を求めた。
 原判決は,控訴人の本訴請求をいずれも棄却したのに対し,控訴人が,その
変更を求めて本件控訴を提起した。
2 争いのない事実等並びに争点及びこれに関する当事者の主張は,原判決の
「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2ないし4に記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
(ただし,原判決2頁13行目の「甲74」を「甲74,弁論の全趣旨」と,
同3頁6行目から7行目にかけての「平成12年10月にも,FWGPAの代表で
あるB(以下「B」という。)との間で契約を締結し(乙7),」を「平成12年
5月10日,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATI
ON(FWGPA)代表者」との肩書きのB(以下「B」という。)との間で契約
を締結した上(乙7),同年10月にも,」と,同頁13行目の「平成13年10
月にも,Bとの間で契約を締結し(乙8),」を「平成13年3月5日,上記と同
様の肩書きのBとの間で契約を締結した上(乙8),同年11月にも,」と,同頁
24行目の「契約」を「平成11年大会に関して締結された契約」と,同6頁25
行目の「Bは,」を「また,Cは,Bと共に,」と,同7頁5行目の「被告をし
て,無断で使用させた」を「被控訴人が無断で使用するよう働きかけた」と,同頁
8行目から9行目にかけての「被告は,平成12年6月25日,平成12年大会に
関して,B及びCとの正式な契約をした。」を「被控訴人は,Cからの働きかけを
受け,平成12年6月25日,平成12年大会に関して,B及びCとの正式な契約
をした上,同年10月,上記大会を主催者として開催した。」と,同頁10行目の
「本件営業表示」を「控訴人が有する本件営業表示」と,同頁16行目の「このよ
うな」を「また,被控訴人は,平成13年大会についても,控訴人と契約を締結す
ることなくこれを主催者として開催した。このような」と,同8頁19行目の「対
価」を「対価等」と,同頁21行目の「平成11年大会覚書」を「平成11年大会
について作成された覚書(乙10)」とそれぞれ改める。)
第3 当裁判所の判断
 1 争点1(不正競争行為の該当性)について
  (1) 事実認定
 証拠(甲1ないし47,53,57ないし73,74(以下の認定に反す
る部分を除く。),79(以下の認定に反する部分を除く。),乙1ないし14,
19ないし35,37ないし40,42ないし86,92,99ないし102)及
び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,これを覆すに足りる的
確な証拠はない。
ア 「AEROBATICS」(エアロバティックス)競技
(ア) 国際航空連盟(FAI)は,航空スポーツの普及を目的として19
05年に設立され,1985年に国際オリンピック委員会の承認を受けた非政府,
非営利の国際団体である。国際航空連盟(FAI)の行う競技には,バルーン,グ
ライダー,ラジコン,曲技飛行等があるが,このうち専用の小型飛行機を用い,設
定された空域の中で,規定演技又は自由演技のプログラムで実施する曲技飛行につ
いては,「AEROBATICS」(エアロバティックス)と呼ばれている。
(イ) スイスの時計製造会社であるブライトリング社は,平成2年から平
成4年までは,「ブライトリング・マスターズ・オブ・エアロバティックス」(B
reitling Masters of Aerobatics)との名称で,
エアロバティックスの競技会を主催し,平成5年から平成7年までは,国際航空連
盟(FAI)公認の公式世界選手権として,「ブライトリング・ワールドカップ・
オブ・エアロバティックス」(Breitling World Cup of 
Aerobatics)との名称で,エアロバティックスの競技会を主催した。B
は,平成2年から,上記各競技会の企画等を行った。
(ウ) 日本においては,平成6年,厚木において,ブライトリング・ワー
ルドカップ・オブ・エアロバティックス・デモンストレーション・イベントが開催
された。また,平成7年,兵庫県の但馬空港において,但馬空港フェスティバル’
95の一環として,ブライトリング社及び日刊スポーツ新聞社の主催で,ブライト
リング・ワールドカップ・オブ・エアロバティックスの最終戦が実施された(乙2
4の1・2)。
イ ブライトリング社の撤退とエアロバティックス競技会の継続
(ア) ブライトリング社は,平成7年10月,翌年以降のブライトリン
グ・ワールドカップ・オブ・エアロバティックスのスポンサーから降りることを決
定した。これに対して,国際航空連盟(FAI)は,上記競技会の人気が高かった
ことから,発案者であるBを同競技会のディレクターに任命して,曲技飛行の競技
会を継続することとした(乙47)。また,国際航空連盟(FAI)の下部組織で
あるFAI International Aerobatics Comiss
ion(FAI国際エアロバティックス飛行委員会,CIVA)も,その会議にお
いて,同競技会を継続していくこと,その競技会の名称は,ブライトリング社主催
の名称とは異なる名称とすること,その実施をBに委託することを採決し,Bを国
際航空連盟(FAI)の平成8年のエアロバティックスシリーズのマネージャーに
任命して,CIVAの代表として行動する全面的な権限を与えた(乙48,5
3)。
(イ) CIVAは,上記競技会の新名称を「WORLD GRAND P
RIX OF AEROBATICS」とすることを決定し,CIVAの会長は,
平成7年11月,Bに対して,「WORLD GRAND PRIX OF AE
ROBATICS」との名称の登録手続をまもなく行う旨を伝えた(乙49)。
(ウ) なお,Bは,FAI及びCIVAから上記競技会のマネージャーに
任命された後,平成8年には,珠海において,同競技会である「FAI WORL
D GRAND PRIX OF AEROBATICS Airshow Ch
ina」を開催した(乙68,69)。このことは,「ブライトリング・ワールド
カップ」を「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」
として,継続したことを示している。
ウ 但馬大会の準備
(ア) ブライトリング社は,平成7年の但馬での曲技飛行の競技会を最後
に,同競技会から撤退した。しかしながら,同競技会の運営に関与していた控訴人
の従業員であったD(以下「D」という。)は,その翌年の平成8年にも,但馬空
港において,エアロバティックス大会を開催することができるように,Bとの間
で,ファックス等により,詳細の打合せをしたことがあった。平成7年11月30
日,Bは,Dにあてて,「Breitling World Cup of Ae
robatics」(ブライトリング・ワールドカップ・オブ・エアロバティック
ス)との名称に代えて,「FAI WORLD GRAND PRIX OF A
EROBATICS」との名称が公式に採択されたが,未だ国際航空連盟(FA
I)及びFAI国際エアロバティックス飛行委員会(CIVA)によって公表され
ていない旨を書面で伝えている(乙55)。同書面のレターヘッドには「FAI 
WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」と記載されて
おり,それ以降,Bが作成する書面のほとんどは,「FAI WORLD GRA
ND PRIX OF AEROBATICS」の表記が使用されている。
(イ) その後,Dは,Bに対して,但馬大会の開催を実現するために,F
AI WGPA Japan Delegation(以下,「FAI日本代表
部」という場合がある。)を設置すること,及び控訴人及びDが上記日本代表とし
て活動できることが必要であることを伝え,Bは,最終的にはBとの契約書が作成
されることを条件として,これに同意した。もっとも,その後,平成8年2月6
日,Bは,Dに対し,同年1月30日開催のFAI総会において,Bと控訴人及び
Dとの間で契約が締結され,World Grand Prix of Aero
baticsの銀行口座に,保証金として20万米ドルの金員が振り込まれない限
り,FAIがFAI日本代表部を承認しない旨決定したことを伝えた(乙59)。
(ウ) しかるに,但馬大会開催に向けての日本側の準備は,資金的な理由
などから,必ずしも順調には進展しなかった。
 Bは,平成8年3月22日,但馬組織委員会及びFAI日本代表部事
務局長のDあてに,同年10月の但馬大会開催のための登録及び確定のため,FA
I World Grand Prix of Aerobaticsの銀行口座
に,同月31日までに,前渡金として10万米ドルを振り込むよう請求した(乙6
3)。
(エ) これを受けて,控訴人は,「FWGPA日本代表部のテクニカルア
ドバイザー」との肩書きで,平成8年3月28日,Bに対し,但馬空港フェスティ
バル実行委員会が,同年のFAI World Grand Prix of A
erobaticsを但馬において開催する申請を公式に行うこと,地元市議会が
上記競技会に対し,25万米ドルを支払うための予算を承認し,そのうち10万米
ドルについては,前渡金として,同年4月末までに所定の口座に振り込むこと等を
回答した(乙26)。控訴人は,自らを,FWGPA日本代表部又はFWGPA 
JAPANテクニカルアドバイザー等と称していた。なお,Dは,同月に退職した
ため,このころから,Bとの連絡は,Dではなく,専ら,控訴人自身が担当するよ
うになった。
(オ) Bは,平成8年4月22日,但馬空港フェスティバル実行委員会会
長に対し,但馬でのFAI World Grand Prix of Aero
baticsの開催が正式に登録でき次第,上記委員会に協力していくこと,FA
I World Grand Prix of AerobaticsのDele
gate(代理,代表)を控訴人とすること,控訴人は,FAI World G
rand Prix of Aerobaticsと上記委員会との間の連絡員と
して,大いに役に立つこと,ただし,Bが署名した時のみ国際航空連盟(FAI)
が責任を負うこと等を伝えている(乙27)。
 控訴人は,同月30日,「マーケティング・サービスイズ代表A」名
義で,Bの「World Grand Prix of Aerobatics」
名義の口座に前渡金10万米ドルを振り込んだ(乙67)。
エ 但馬大会,とよころ大会の開催
(ア) 平成8年10月25日から27日にかけて,兵庫県但馬空港におい
て,「FAI World Grand Prix of Aerobatics
 in Tajima」との名称で,エアロバティックス競技会が開催された(甲
3ないし9。以下,「但馬大会」という場合がある。)。但馬大会は,主管が国際
航空連盟(FAI),主催が但馬空港フェスティバル実行委員会として開催され
た。控訴人は,必要な航空法上の許可を得る等,但馬大会開催のために必要な作業
を行い,豊岡市から開催実施委託料の支払を約された。しかしながら,控訴人は,
豊岡市から,任意にその支払を受けることができず,やむなく訴えを提起して,裁
判上の和解により,支払を受けた(甲47)。なお,但馬大会においては,その広
告用のポスター,入場券,名札,表彰状及び会場内通行証(甲3ないし9)等にお
いて,アエロバティックス及びAEROBATICSの標章並びにウイングマーク
が使用された。また,但馬大会に関する報道においても,但馬大会において行われ
た曲技飛行についてアエロバティックスと表記されていた(甲40,41)。もっ
とも,FWGPA-Jとの標章は使用されているが,FWGPAとの標章は使用さ
れていない。
(イ) 平成9年8月9日及び10日には,北海道とよころ飛行場におい
て,「FWGPA Official Exhibition 遠TONE音 w
ith AEROBATICS」との名称で,エアロバティックス競技会が開催さ
れた(甲10。以下「とよころ大会」という。)。とよころ大会は,主管がFAI
 World Grand Prix of Aerobatics Head 
Officeとされ,また,同競技会のポスター(甲10)には,FWGPA-J
APAN DELEGATIONが共催する旨の記載がされているほか,裏面に
は,「アエロバティックスには,国際航空連盟(FAI)の公認する最高峰のFA
I ワールド・グランプリ・オブ・アエロバティックス(FWGPA)があり,世
界最高のパイロットによる競技会となりますが,今回の豊頃での演技は,この試
技・エキシビションとなります。」と記載されている。そして,とよころ大会に関
する報道においても,とよころ大会において行われた曲技飛行について,アエロバ
ティックスと表記されていた(甲42,43の1ないし3)。なお,とよころ大会
開催に当たり必要となる施設等の使用承諾,及び航空法上の各種許可は,いずれも
控訴人に対しされているが,控訴人の肩書きは,FWGPA-J(甲12,1
3),FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS
 JAPAN DELEGATION(甲14),FWGPA JAPAN代表
(甲15)などと付記されている。
オ 平成10年大会の開催
(ア) 被控訴人は,平成8年ころから,ツインリンクもてぎサーキットに
おいてエアロバティックス大会を開催することを検討し始め,同年8月6日には,
被控訴人のE課長とF主任(いずれも当時。以下同じ。)とが控訴人と面会し,ま
た,同年10月14日には,Cと面会した。なお,その際,控訴人及びCの名刺に
は,「WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS」と記載
され,控訴人の肩書きは「TECHNICAL ADVISER/JAPAN D
ELEGATION」,Cの肩書きは,「PUBLIC AFFAIRS/JAP
AN DELEGATION」とされていた(乙32の1・2)。
(イ) 平成9年8月ころ,控訴人は,Fらから,翌平成10年3月に予定
されているツインリンクもてぎサーキットの開業祝典行事の一つとして曲技飛行競
技会を開催したいので,そのための業務を実施してほしいとの依頼を受けた。控訴
人は,正規の飛行場ではないツインリンクもてぎサーキットにおいて曲技飛行競技
会を開催することができるように種々の航空法上の許可を得る作業を行い,控訴人
名義で飛行場外での外国曲技専用航空機運航に関する許可等を得,その結果,同年
3月26日から28日までの間,同サーキットにおいて,被控訴人主催の自動車レ
ース’98FedEx.チャンピオンシップシリーズ第2戦Budweiser5
00開催の際に,曲技飛行競技が実施された(乙39)。もっとも,その際,FW
GPAや「ウイングマーク」は,使用されなかった。なお,前記の許可取得の際の
控訴人の肩書きは,FWGPA-J(甲16),FWGPA JAPAN代表(甲
17),FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATIC
S JAPAN DELEGATION(甲18,19)などとされていた。ま
た,控訴人は,前記大会の終了を陸上自衛隊等に報告する際には,FWGPA-J
日本代表との肩書きを使用した(甲21の1・2)。
(ウ) 平成10年6月13日及び14日に,ツインリンクもてぎサーキッ
トにおいて全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第4戦が行われた際にエキシビシ
ョンとして曲技飛行が行われた(甲26)が,この際の各種許可等も控訴人名義で
取得された。もっとも,その肩書きは,FWGPA-J(甲22),FAI WO
RLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DE
LEGATION(甲23ないし25)とされ,対日本代表と記載されたものもあ
った。
(エ) その後,被控訴人は,平成10年大会開催のため,平成10年9月
15日,Bとの間で,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AV
IATION PROMOTER AGREEMENT」と題する契約(以下「平
成10年大会契約」という。)を締結した(乙5)。同契約においては,Bの肩書
きは,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION
(FWGPA)代表者」とされている。
 また,被控訴人は,控訴人との間で,同年8月ころ,「’98アエロ
バティックス日本グランプリ開催に関する覚書」(以下「平成10年大会覚書」と
いう。)を取り交わした(乙9)。平成10年大会覚書において,控訴人について
は,「国際航空連盟・曲技飛行競技部門FAI WORLD GRAND PRI
X OF AEROBATICS 日本代表部 A」と記載されており,控訴人
も,自ら「FWGPAJ 対日本代表 A」と署名した。
(オ) なお,平成10年7月31日に,BがFWGPAチーフエグゼクテ
ィブ(最高責任者)として被控訴人に提出した書類(乙33)では,控訴人が,日
本もてぎグランプリに関連したFAI World Grand Prix of
 Aerobatics/Aviation(FWGPA)のマネジメントチーム
の一員であることを認証する旨,控訴人の役割は,FWGPAのチーフエグゼクテ
ィブと主催者との間で交わされる契約における話合いと契約の署名に関する進行に
携わり,契約が円滑に遂行されるように,主催者との良好な調整に関わるものであ
る旨,それらの業務に関連して,控訴人は,管理上発生するすべての申請事項,運
送,衣食住,規則に関する解釈や詳細点などにおいて,日本もてぎグランプリの主
催者である被控訴人の業務をアシストする権限をFWGPAチーフエグゼクティブ
より付与されている旨が記載されている。実際にも,控訴人は,Bと被控訴人との
間の平成10年大会契約の締結に当たり,両者の間に入り,その調整事務等に関与
した。
(カ) 平成10年大会契約においては,「FAI(国際航空連盟)は,…
“FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION”と称さ
れるスポーツイベントに関連する全ての権利を保有し管理する。」,「FAIは,
世界中のFWGPAの開催と上演をBに任命し,その権利を与えている。」,「F
WGPAは,被控訴人に対し,当該イベントの日本における企画及び主催する権利
…を与える。」と規定され,また,被控訴人が,FWGPAに対し,開催費用とし
て合計26万5000米ドルを支払うこと等が定められている。なお,上記支払に
ついては履行済みである(乙99の3・4,100の3・4)。
 平成10年大会覚書においては,控訴人の業務として,平成10年大
会を行うに当たり必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との
調整,大会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括,「FWGP
A」,「C-1」等国際航空連盟(FAI)・曲技競技部固有の商標・意匠標章等
知的財産権の管理,機材の輸送に関する手続等の統括,パイロットらの査証の取
得,通信機器,音響機器等の設置監修,広報用素材の提供等,航空機運行保険契約
の締結が挙げられており,また,被控訴人が,控訴人に対し,大会開催準備・開催
に至る実施報酬として4500万円を支払うことが定められている。そして,実際
に,控訴人は,Cとともに,平成10年大会において,前記の業務を実施し,前記
の業務の実施報酬として,被控訴人から4500万円の支払を受けた。なお,航空
法上の各種許可はいずれも控訴人名義で取得されているが,その肩書きは,FAI
 WORLD GRAND PRIX OF AEROBATICS JAPAN
 DELEGATION(甲27ないし29)などとされている。
(キ) 被控訴人は,平成10年10月,被控訴人が管理するツインリンク
もてぎサーキットにおいて,平成10年大会を開催した。同大会は,主管がFWG
PA及び国際航空連盟(FAI),主催が被控訴人として開催された。その際,平
成10年大会のポスターには,「FWGPA」,「アエロバティックス」及び「A
EROBATICS」並びに「ウイングマーク」の標章が,いずれも使用された
(乙1)。
 平成10年大会は,雑誌等で報道されたが,そこでは,アエロバティ
ックスとの表記が用いられている(甲44)。
(ク) なお,平成10年大会の後も,控訴人は,エアロバティックスのた
めの各種許可等を控訴人名義で取得したことがあったが,その際の肩書きは,FW
GPA-J(甲30),FAI対日本代表(甲31),FAI WORLD GR
AND PRIX OF AEROBATICS JAPAN DELEGATI
ON(甲32ないし35)などとされていた。
カ 平成11年大会の開催
(ア) 被控訴人は,平成11年大会に先立ち,同年6月1日,Bとの間
で,「FAI WORLD GRAND PRIX OF AVIATION P
ROMOTER AGREEMENT」と題する契約(以下「平成11年大会契
約」という。)を締結するとともに(乙6),同年,控訴人との間で,「’99 
アエロバティックス日本グランプリ開催に関する覚書」(以下「平成11年大会覚
書」という。)を取り交わした(乙10)。なお,上記両契約におけるB及び控訴
人の肩書きは,平成10年大会契約及び同大会覚書と同様のものである。
(イ) 上記両契約では,関係者の地位,業務等について,上記オ(カ)と同
様に定められた。また,平成11年大会契約には,被控訴人が,FWGPAに対
し,開催費用として合計26万5000米ドルを支払うこと等が定められている。
なお,上記支払については履行済みである(乙101の1・3,102の1・
2)。さらに,平成11年大会覚書には,控訴人に対し,「本大会開催準備・開催
に至る実施報酬として,現金3000万円,事業商権は金1500万円相当を上限
として支払う。」と規定されている。そして,実際に,控訴人は,平成11年大会
においても,平成10年大会と同様の業務を行い,航空法上の許可についても控訴
人名義で取得されたが,その肩書きは,FAI WORLD GRAND PRI
X OF AEROBATICS JAPAN DELEGATION(甲36)
とされていた。
(ウ) 被控訴人は,平成11年10月,被控訴人が管理するツインリンク
もてぎサーキットにおいて,平成11年大会を開催した。同大会は,前年と同様,
主管がFWGPA及び国際航空連盟(FAI),主催が被控訴人として開催され
た。なお,平成11年大会のポスターにおいても,「FWGPA」,「アエロバテ
ィックス」及び「AEROBATICS」,「ウイングマーク」の標章がいずれも
使用され(乙2),雑誌でも,アエロバティックスとの名称で報道された(甲4
5)。
キ ウイングマークの創作等
 なお,本件営業表示のうちウイングマークの創作経過等は,次のとおり
である。すなわち,Bは,ブライトリング社から国際航空連盟(FAI)が引き継
いで行う曲技飛行競技会の名称がFAI World Grand Prix o
f Aerobaticsとされたことを受けて,平成7年12月ころから,フラ
ンス空軍のマーク,地球,FAI旗(虹のデザイン),FAI及びWORLD G
RAND PRIX OF AEROBATICSという文字を組み合わせた,曲
技飛行競技会を示すロゴを作成することを検討し,建築家のG(以下「G」とい
う。)にそのデザインを依頼し(乙34,79ないし81),Gと平成8年4月1
9日に打合せを行い,Gからロゴ案(乙82)を受け取るとともに,ロゴのデザイ
ンについての指示を与え,さらにGと打合せを重ねた(乙70)。Bは,Gから,
同年7月1日に,新しく工夫したロゴ案(乙83,84)を受け取り,同月末に,
完成品の納品を受け(乙85,86),同年8月30日,デザイン料として,総額
3000フランをGに支払った(乙70,72,73,74)。
 控訴人は,平成8年5月19日,スイスのヌーシャテルにあるBの事務
所を訪問した際,Bらの考案したロゴ案の写しを受け取った。さらに,控訴人は,
同年7月7日ころ,但馬大会の打合せのためにBの事務所を訪問し,Bの考案した
ロゴ案のコピーを受け取った(乙71)。控訴人は,「TAKE-1」社に対し
て,「ウイングマーク」のデジタル化を指示し,マークを完成させた(甲2の3な
いし11)。もっとも,TAKE-1とのやりとりにおいて現れているマークと
「ウイングマーク」とは,AEROBATICSの文字の位置や,月桂冠の有無と
で異なり,「ウイングマーク」は,BがGに依頼して作成したロゴと,AEROB
ATICSの文字の位置において類似する。
(なお,甲75,76によれば,被控訴人が開催予定だった平成15年の曲
技飛行競技大会直前の練習で,人身事故が発生し,大会の開催が中止されたことが
認められるところ,甲77(控訴人の陳述書)には,Bは,事故当時来日していた
が,事故について責任を問われる立場にないとして,航空機事故調査委員会の事情
聴取にも応じることなく離日してしまい,負傷したパイロットの治療費も負担して
いない旨の陳述記載がある。しかしながら,乙94によれば,Bが航空機事故調査
委員会の事情聴取に応じたことが認められ,また,乙95ないし98によれば,負
傷したパイロットの治療費については,まず被控訴人が独協医科大学病院に立て替
えて支払をした上,Bが被控訴人に立替払い分を支払ったことが認められる。した
がって,甲77の陳述記載は採用できない。
 また,控訴人は,FAI事務局長H名義の乙53,78は署名が異なるか
ら,真正に成立したものではない旨主張する。しかしながら,同人名義の他の文書
(乙38,60,77)の署名も対照すると,乙53,78の署名も含めて極めて
類似したものということができるから,弁論の全趣旨も総合すれば,同人名義の上
記各文書の真正な成立が認められる。)
  (2) 判断
 以上認定した事実を基礎として,本件営業表示が,控訴人の行う役務(曲
技飛行)を表示するものと認められるか否かについて判断する。
ア 本件営業表示全般について
(ア) 各大会における対外的な表示についてみると,平成10年大会及び
平成11年大会においては,国際航空連盟(FAI)及びFWGPAが,また,但
馬大会においては,国際航空連盟(FAI)が,それぞれ大会を主管することが明
示され,また,とよころ大会についても,主管がFAI World Grand
 Prix of Aerobatics Head Officeとされると共
に,国際航空連盟(FAI)の公認する競技会の試技・エキシビションとなるとの
説明がされ,国際航空連盟(FAI)との関係を示唆する表記がされている。他
方,平成10年大会,平成11年大会,但馬大会及びとよころ大会において,各大
会の主体が,控訴人であるとの表記が示されたことはない。
(イ) 各大会に際して締結された契約についてみると,平成10年大会契
約及び平成11年大会契約においては,当事者の表記は,Bが「FAI WORL
D GRAND PRIX OF AVIATION(FWGPA)代表者」であ
って,契約内容も,FAIが「FAI WORLD GRAND PRIX OF
 AVIATION」と称されるイベントに関する全ての権利を保有管理し,その
イベント開催権を被控訴人に授与すると共に,被控訴人が開催費用を支払うとされ
ている(支払は履行済みである。)。
 また,平成10年大会覚書及び平成11年大会覚書においては,「国
際航空連盟・曲技飛行競技部門日本代表部」としての控訴人が,大会を実施するに
当たって必要な航空法等の各種許可の取得,国際航空連盟(FAI)との調整,大
会における飛行の運行計画,飛行管制,競技運営の統括等を業務として担当すると
される一方,被控訴人が平成10年大会及び平成11年大会の主催者であることが
明記されている。
(ウ) 上記(ア)(イ)のとおり,各大会における対外的表示においては,F
AIが大会を主管する旨の表示がされている一方,控訴人が大会を主管する旨の表
示は一切ない。また,各大会の開催に際して締結された契約上も,被控訴人がFA
Iないしこれを代表するBから許諾を受けて各大会を主催し,控訴人が,「国際航
空連盟・曲技飛行競技部門日本代表部」として,被控訴人の委託を受けてその運営
等を業務として担当することが規定されている。これらの事情に鑑みれば,平成1
0年大会及び平成11年大会において,控訴人が上記(イ)の業務を担当していて
も,そのことをもって,本件営業表示が,控訴人の実施する役務(曲技飛行競技
会)を表示するものとは到底いえず,かえって,本件営業表示は,①国際航空連盟
(FAI)が実施する役務(曲技飛行競技会)ないし②同連盟から委託を受けたB
又はBの運営する会社が実施する役務(曲技飛行競技会)を表示するものと解すべ
きである。
イ FWGPAの標章について
 控訴人の上記標章についての主張は,以下の理由からも失当である。す
なわち,FWGPAの標章は,FAI WORLD GRAND PRIX OF
 AEROBATICSとの名称のうち,FAI,WORLD,GRAND,PR
IX及びAEROBATICSの各単語の頭文字を取って,短縮したものである。
そして,FAI WORLD GRAND PRIX OF AEROBATIC
Sは,スイスの会社であるブライトリング社の主催する「ブライトリング・ワール
ドカップ・オブ・エアロバティックス」を,国際航空連盟(FAI)が引き継いで
実施する際の新たな名称として付されたものである。
 国際航空連盟(FAI)からFAI WORLD GRAND
 PRIX OF AEROBATICSの競技会の実施について全面的な権限を
与えられたBは,その作成する書面等で継続的にFAI WORLD GRAND
 PRIX OF AEROBATICSとの表示を使用している。
 これに対して,控訴人は,自らをFWGPA JAPAN DELEG
ATION,FWGPA日本代表部などと,FWGPAに由来し,かつ,その日本
支部を示す名称を使用している。
 その他,控訴人が一切関与していない中国における曲技飛行競技会にお
いても,その契約書においてFAI WORLD GRAND PRIX OF 
AEROBATICSとの表示が用いられていること,平成10年大会覚書及び平
成11年大会覚書には,FWGPAが,国際航空連盟(FAI)・曲技飛行競技部
を示す標章等として扱われていること等も総合考慮すると,「FAI WORLD
 GRAND PRIX OF AEROBATICS」又は「FWGPA」の標
章は,控訴人固有のものではないから,控訴人の商品等表示とはいえない。
ウ AEROBATICS及びアエロバティックスの標章について
 控訴人の上記各標章についての主張は,以下の理由からも失当である。
すなわち,AEROBATICSとの名称は,一般に,曲芸飛行又は曲芸飛行術を
意味し(甲55),現に,平成7年に但馬で行われた但馬空港フェスティバルにお
いても,「エアロバティックス」の名称が曲技飛行を指すものとして使われている
(乙24の1・2)。したがって,上記各標章を曲技飛行競技会の役務に使用して
も,出所表示機能を有するものではないから(不正競争防止法12条1項1号参
照),上記各標章が控訴人の実施する役務(曲技飛行競技会)を表示する営業表示
であるとはいえない。
 この点,控訴人は,アエロバティックスとの名称について,AEROB
ATICSの英語の発音はエアロバティクスであり,控訴人がこれをあえてアエロ
バティックスと表記した点に特徴があり,通常の使用方法とは異なる旨主張する。
 しかしながら,AEROBATICSとの語をローマ字読みするとアエ
ロバティックスとの称呼が生じること,アエロバティックスの標章から曲技飛行又
は曲技飛行術が想起されることは十分に考えられること等の点に照らすと,アエロ
バティックスとの表記が,特に,通常とは異なる使用方法であるということはでき
ないから,アエロバティックスの標章が,曲技飛行という通常の使用方法を超え
て,控訴人の実施する役務を表示する特別の名称であるとする余地もない。
エ 「ウイングマーク」の標章について
 控訴人は,自らが「ウイングマーク」を発案したものであり,したがっ
て,「ウイングマーク」は控訴人の役務を表示するものである旨主張する。しかし
ながら,上記標章が控訴人の創作に係る標章であるか否かの点は,同標章が不正競
争防止法2条1項1号における保護の対象となる商品等表示に当たるか否かの結論
に何ら影響を与えるものではないのみならず,本件全証拠によるも,「ウイングマ
ーク」を控訴人において創作したものと認定することはできないから,控訴人の上
記主張は理由がない。すなわち,前記(1)キ認定の事実によれば,「ウイングマー
ク」は,そもそも,Bが考案したロゴに依拠して,これをわずかに改変して作成さ
れたものであって,控訴人が作成したものということはできない。
(3) 結論
 以上のとおり,FWGPA,AEROBATICS及びアエロバティック
ス,並びに「ウイングマーク」の標章は,いずれも控訴人の行う役務を表示するも
のと認めることはできないから,その余の点を判断するまでもなく不正競争防止法
に基づく控訴人の主張は理由がない。
 2 争点(2)(共同不法行為の成否)について
 控訴人は,被控訴人がCと共同して,平成12年大会及び平成13年大会か
ら,控訴人を排除した行為は共同不法行為に該当する旨主張するので,この点につ
いて検討する。
(1) 事実認定
 当事者間に争いのない事実並びに証拠(乙3,4,7,8,11ないし1
5)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これに反する証拠はな
い。
ア 平成11年大会が終了した後,控訴人・被控訴人の間で,平成12年大
会の開催に向けた打合せをした。
 ところが,被控訴人は,平成12年3月13日ころ,Bから,平成12
年大会についての日本における唯一の代理人としてC及びIを任命し,平成12年
大会に関連する第三者とのすべての協定,合意又は契約は,BとCとの連帯の署名
をもってのみ有効である旨記載された書面を受け取った(乙12)。また,被控訴
人は,同年5月31日にも,再度Bから,控訴人とBとの間にはもはや関係はな
く,Cを日本における代表者と考えてほしいこと,グランプリに関するあらゆる合
意はBとCとの両者の署名により,独占的に行わなければならないことを内容とす
る電子メールを受け取った(乙13)。
イ そこで,被控訴人は,同年5月ころ,Bとの間で,「FAI WORL
D GRAND PRIX OF AVIATION TRM AGREEMEN
T」と題する契約(平成12年大会契約)を締結するとともに(乙7),「FAI
 WORLD GRAND PRIX OF AVIATION マネージングデ
ィレクター」と称するCとの間で,平成12年6月25日,「’00エアロバティ
ックス日本グランプリ開催に関する覚書」を作成し,Cに対し,大会開催準備・開
催に至る実施報酬として,3000万円を支払う旨約した(乙11)。被控訴人
は,控訴人との間で契約を締結することなく,同年10月,平成12年大会を開催
した。
ウ また,被控訴人は,Bとの間で,平成13年3月5日,「FAI WO
RLD GRAND PRIX ORGANISER AGREEMENT Mo
tegi,Japan」と題する契約(平成13年大会契約)を締結した(乙
8)。被控訴人は,控訴人又はCと覚書を取り交わすことなく,同年11月,平成
13年大会を開催した。
エ 平成12年大会及び平成13年大会では,主管が国際航空連盟(FA
I)及びFAI-WGPAとされている。なお,平成12年大会及び平成13年大
会において使用されたポスターでは,「アエロバティックス」及び「AEROBA
TICS」の表示は使用されたが,「FWGPA」の表示及び「ウイングマーク」
は使用されていない。(乙3,4)
オ 控訴人は,平成12年4月25日,Cが,控訴人から管理を委託されて
いた控訴人所有の通帳,印鑑その他の物品を使用して,自己の用途に宛てるため現
金を引き出す等の行為をしたとして,Cを業務上横領罪で豊平警察署長に対し告訴
し,そのころ,告訴状の写しを被控訴人に送付した(乙14)。また,当時の控訴
人代理人弁護士は,同年7月5日,被控訴人に対し,FWGPAの標章に係る商標
権等は控訴人に帰属するものであり,Cはこれらの権利とは無関係である旨の意見
書を提出した(乙15)。
(2) 判断
 以上認定した事実及び前記1で認定した事実を基礎として判断する。
 被控訴人が平成12年大会及び平成13年大会について控訴人との間で業
務委託契約を締結しなかったのは,FAI(CIVA)を代表するBが,被控訴人
に対し,控訴人とBとは関係がなくなったので,控訴人を日本における代表者とし
て取り扱わないようにしてほしい旨指示したからである。そうすると,控訴人から
被控訴人に対し,Cを告訴したこと等の通知があったことを考慮しても,被控訴人
が,FAIの主管の下に平成12年大会及び平成13年大会を実施する目的で,F
AI(CIVA)を代表するBの指示に基づいて,控訴人との間で業務委託契約を
締結しなかったこと(また,平成12年大会においては,Cと上記覚書を取り交わ
したこと)に,不法行為としての違法性があるとは認められない(また,仮に何ら
かの違法性があるとしても,被控訴人に違法行為についての故意又は過失があると
解することはできない。)。したがって,被控訴人による共同不法行為に関する控
訴人の主張は理由がない。
 3 争点(4)(被控訴人の控訴人に対する未払金の有無)について
 控訴人は,被控訴人が,控訴人に対し,平成11年大会開催に当たり,本件
営業表示の使用の対価等として合計4500万円を支払う旨約したが,被控訴人は
内金3000万円を支払ったのみで,残金1500万円の支払をしないこと,ま
た,平成11年大会覚書において事業商権とされた1500万円相当については,
後に現金で支払う旨の合意があったことを主張するので,この点を判断する。
(1) 事実認定
 証拠(乙9,10,19ないし23,43ないし45)及び弁論の全趣旨
によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
ア 平成11年大会覚書においては,被控訴人が,控訴人に対し,大会開催
準備・開催に至る実施報酬として,現金3000万円及び事業商権を1500万円
相当を上限として支払う旨記載されている(乙10)。このような定めにされたの
は,以下のとおりの経緯によるものである。
イ 平成10年大会覚書においては,被控訴人が控訴人に対して支払うべき
大会開催準備・開催に至る実施報酬額は,4500万円と定められていた(乙
9)。
ウ しかるに,平成11年大会に向けた交渉において,被控訴人の担当者で
あったF課長(当時。以下同じ。)は,控訴人側担当者のCに対して,平成11年
2月5日,①曲技飛行競技会の採算が合わず予算が厳しいこと,②大会開催が2度
目となり,コスト削減が可能であること,③平成10年大会では,控訴人側で業務
を担当したのは3人であったが,平成11年大会では,控訴人側で業務を担当した
のは控訴人とCの2名となること,④控訴人の支払額が,Bへの支払額よりも高額
になるのは釣合いがとれないことなどを理由として,平成11年大会における実施
報酬につき,4500万円から減額するよう要請した。しかしながら,控訴人側
は,同月7日,一旦は,被控訴人の上記要請を拒否した。同月11日,被控訴人の
予算会議において,1億円の予算の範囲内で上記大会を開催し,費用がこれを超え
る場合には同大会を取りやめると採決されたため,Fは,同月13日,Cに対し
て,①平成10年大会と同様にグランプリの格式を維持しつつコストを削減する,
②グランプリではなくエキシビションイベントに格下げしてコストを削減する,③
イベントを取りやめる,のいずれかの選択肢しかない旨を伝え,同月27日にも,
上記報酬として3000万円しか支払えないことを伝えた。(乙43)
エ これに対し,Cは,被控訴人に対して,平成11年3月1日,上記報酬
額につき,現金を3000万円,事業商権1500万円とすること,事業商権の内
容として,チケットのみの場合,6000万円分のチケットの交付を受けることを
希望する旨対案を提示して,回答を求めた(乙44)。そして,同月3日,FとC
との間で,覚書上,報酬額については,現金を3000万円,事業商権については
1500万円を上限とする旨の合意が成立した(乙43)。これを受けて,上記ア
のとおり,平成11年大会覚書においては,被控訴人が,控訴人に対し,大会開催
準備・開催に至る実施報酬として,現金3000万円及び事業商権を1500万円
相当を上限として支払う旨規定された(乙10)。
オ なお,被控訴人は,控訴人側のCに対し,平成11年大会覚書の報酬支
払債務の履行として,同年9月6日及び30日,それぞれファミリーチケット50
0枚ずつ合計1000枚(600万円相当分)を送付した(乙19ないし23)。
(2) 判断
 上記(1)において認定した平成11年大会覚書における報酬額確定の経緯か
らみて,1500万円相当を上限とする事業商権とされた報酬について,控訴人と
被控訴人との間で後日現金1500万円を支払う旨の合意が成立していたものと認
めることは到底できない。
 したがって,控訴人の,被控訴人に対する,平成11年大会覚書に基づく
報酬の支払請求には理由がない。
4 結論
 以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本訴請求をいずれも棄却すべきも
のとした原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないから,これを棄却
することとし,主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所知的財産第1部
  裁判長裁判官 北  山  元  章
 裁判官   青  柳     馨
 裁判官   沖  中  康  人

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