弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成21年(ラ)第10006号不正競争仮処分申立却下決定に対する抗告事件
(原審・東京地方裁判所平成21年(ヨ)第22011号)
決定
抗告人ユーエム株式会社
同代理人弁護士山崎順一
今村憲
酒迎明洋
小林陽子
相手方株式会社円谷プロダクション
同代理人弁護士遠山友寛
水戸重之
千葉尚路
鈴木優
坂井はるか
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
第1抗告の趣旨
1原決定を取り消す。
2相手方は,日本国内外の第三者に対し,抗告人が原決定別紙第二目録記載の
各著作物について日本以外の国において独占的利用権を有しない旨を告知し又は流
布する行為を行ってはならない。
3相手方は,日本以外の国において,抗告人が同独占的利用権を有しないこと
を理由とする抗告人に対する主位的に(1)の行為,予備的に(2)の行為を行ってはな
らない。
(1)裁判上の請求
(2)差止請求,損害賠償請求,不当利得返還請求及び刑事告訴
第2事案の概要
1本件は,原決定別紙第二目録記載の本件著作物(以下,特に断らない限り,
略称は原決定に従う)の日本以外の国における本件独占的利用権の許諾を相手方。
から受けたAから同利用権を譲り受けたと主張する抗告人が,相手方が国内の映像
事業関係者に対し相手方書面(原決定にいう債務者書面)を送付した行為が不正競
争防止法2条1項14号の「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当し,
また,本件契約上の義務に違反することを前提に,相手方に対し,不正競争防止法
3条に基づく本件独占的利用権の利用妨害行為の差止請求権ないし本件契約に基づ
くという差止請求権を被保全権利として,抗告の趣旨2記載の告知・流布行為(以
下,日本国内の第三者に対する当該行為を「国内告知・流布,日本国外の第三者」
に対する当該行為を「国外告知・流布」という)及び同3の(1)記載の裁判上の請。
(「」。)(「」求以下国外裁判というないし(2)記載の差止請求等以下国外訴訟など
という)の差止めを求める仮処分申立事件である。。
2原決定は,相手方の相手方書面の送付行為は不正競争防止法2条1項14号
所定の「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当しないし,また,相手方
に本件契約上の義務違反も認められないとして,同法3条に基づく差止請求権も,
本件契約に基づくという差止請求権も認められないとして,本件申立て(ただし,
国外訴訟などの差止めを除く)を却下したため,抗告人は,原決定を不服として。
本件抗告を提起するとともに,国外裁判の差止めを主位的申立てとし,その予備的
申立てとして,国外訴訟などの差止めを追加した。
3本件申立てに対する判断の前提となる事実は,次のとおり訂正するほかは,
(),原決定の理由の要旨第2の1原決定2頁3行∼6頁25行のとおりであるから
これを引用する。
(1)原決定2頁21行,3頁4行の「日本」を「我が国」と改める。
「」「」(2)原決定3頁8行の本件契約書はを本件契約書はAと相手方との間で
と改める。
(3)原決定5頁25行の「映像事業関係者」を「国内の映像事業関係者」と改
める。
4本件申立てにおける争点
本件申立てにおける争点は,以下のとおりである。
(1)本件の準拠法(争点1)
(2)不正競争防止法21条1項14号所定の「虚偽の事実を告知し,又は流布
する行為」の存否等(争点2)
(3)本件契約に基づく差止請求の可否(争点3)
(4)保全の必要性(争点4)
第3当事者の主張
前記争点に係る当事者の主張は,次のとおり訂正付加するほか,原決定の理由の
要旨第2の4(原決定7頁20行∼24頁22行)のとおりであるから,これを引
用する。
(1)原決定8頁3行の「日本において」を「日本国内において」と改める。
,,,,,,(2)原決定8頁7行9∼10行14行14頁20行15頁5行末行
17頁10行,15行,19頁12行,20頁9行,21頁13行,22頁末行,
24頁3行の「日本」を「我が国」と改める。
(3)原決定9頁6∼8行を「(2)争点2(不正競争防止法2条1項14号所定
の「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」の存否等)について」と改める。
(4)原決定12頁22行の次に,改行の上,以下を加える。
「オ原決定は,相手方書面の送付行為は,不正競争防止法2条1項14号所定の
『虚偽の事実を告知し,又は流布する行為』に該当するとは認められないとした。
しかしながら,そもそも『虚偽』であるか否かは,原決定のように厳格に判断され
るべきではなく,注意深く検討すれば,必ずしも虚偽の事実とはいえないような内
容なり体裁を採っていても,告知・流布の受け手になる者が一見すると誤解を招く
ような内容になっていれば,虚偽の事実に該当すると解すべきである。
本件において,相手方書面には『本権利の譲渡については,法的に重大な疑義,
があるため既に正式に異議を申し上げ法的手続きを採る予定でございます上,,。』『
記のような状況の中,B・Cらによる76年書面譲渡の主張は,現在のところ,彼
,,。』らの一方的な考えにすぎず当然弊社と致しましては法的処置を実施いたします
と記載され,タイ最高裁判決をも紹介して『Cによる76年書面に基づく権利主,
張等も禁じられ』と明記し,最後に抗告人書面(原決定にいう債権者書面)につい
て『客観性・正当性を欠いた情報』と指摘しており,その他,東京高裁判決におい
てCが権利者であると判示されていることなどは全く触れていないことを総合考慮
すると,相手方書面は,一見すると,相手方が,日本国内外の第三者に対し,抗告
人が本件著作物について独占的利用権を有しないと告知したものであることは明白
である。
カまた,抗告人は,既に配布されてしまった相手方書面に限定してその更なる
配布の差止めを求めているだけではなく,相手方書面に実例として表現された虚偽
の告知・流布の差止めを求めているのであるから,仮に相手方書面の記載が全くの
虚偽でないと認定したとしても,なお,相手方書面を含む一切の事情を考慮して,
本件仮処分命令の要否を判断すべきであったにもかかわらず,原決定はこれを怠っ
ている。
,『』,キ抗告人は不正競争によって営業上の利益を侵害されているだけでなく
『不正競争によって営業上の利益を侵害されるおそれがある』ことから,その侵害
の停止又は予防を請求したものである。いまだ侵害の事実がなくとも,現在の相手
方の態度から,近い将来侵害されるおそれがあると判断される場合もあり得るもの
で,このような場合には,将来の予防の必要性が存在する。
本件において,仮に相手方書面の送付行為が侵害行為又は契約違反に該当せずと
も,相手方は,タイ王国や中国において,Aが無権利者であると主張し,抗告人の
権利を否定する趣旨の相手方書面を送付するなど,抗告人が本件独占的利用権者で
あることを強く否認しているものであって,このような相手方の態度及び相手方書
面のような書類が一度送付されると,抗告人はもはや営業活動の停滞を余儀なくさ
れてしまうことに照らすと,抗告人の営業上の利益が侵害されるおそれがあり,本
件申立てが認められるべきである」。
(5)原決定17頁23行の次に,改行の上,以下を加える。
「エ抗告人は,申立ての趣旨において,相手方書面の配布が不正競争防止法上の
『虚偽の事実を告知し,又は流布する行為』に該当するとして,相手方書面の配布
の差止めに限定して仮処分命令の発令を求めているものではなく,その他のあらゆ
る方法による抗告の趣旨記載の仮処分命令の発令を求めている。
すなわち,本件申立ては,本件独占的利用権の内実である相手方の不作為義務に
対する具体的・現実的な違反行為の差止めを求めるものであって,利用権の許諾者
と被許諾者という契約関係にある当事者間の不作為義務違反にかかわるものである
から,たとえ相手方の告知・流布内容がこのような契約関係にない第三者を相手方
とすることを前提とする不正競争防止法における差止めの対象となる虚偽性の要件
を充足しないとしても,なお,利用権許諾の趣旨に照らして,相手方は,被許諾者
の利用権行使を妨害してはならず,無関係な第三者に比してより重い不作為義務を
負うべきである。具体的には,利用権許諾の契約当事者である許諾者は,一定の社
会的接触関係にある以上,契約に内在する当然の義務として,又は本来的債務に付
随する信義則上の義務として,被許諾者に付与した権利を否定するような告知・流
布を第三者にも被許諾者にも行ってはならないという不作為義務を有していると解
される。許諾者が第三者に対して行った告知・流布が,虚偽とまでは断定し得なく
とも,被許諾者に付与した権利を否定する趣旨の告知・流布であるならば,差止対
象となる不作為義務違反行為を構成すると解される。
本件において,仮に相手方書面の内容が『虚偽』と認定されないものであるとし
ても,少なくとも,相手方は,タイ王国におけるAの権利を否定し,抗告人への権
利譲渡についても問題があると告知しており,抗告人の権利を否定する趣旨の告知
をしていることが明白であり,利用権許諾に係る本件契約についての不作為義務違
反があるというべきであるから,このような契約上の不作為義務違反に対しては,
損害賠償のみならず,差止めによる救済が認められるべきである。
オ原決定は,本件申立ての基本をなす上記不作為義務の一部を構成する『裁判
上の請求を行わない合意』について『本件全疎明資料によっても,本件契約上,,
相手方とAの間において,Aが本件独占的利用権を有しないことを理由とする相手
方からAに対する裁判上の請求を日本以外の国で行わない旨の合意があったとは認
めることはできない』と否定したが,これが本件独占的利用権許諾とは許諾者に。
よる被許諾者に対する著作権に基づく排他的不行使義務を負うことの同意にほかな
らないことを否定する趣旨であるとするならば,知的財産権許諾の法的性質を全く
理解しないものであって,法解釈の誤りがある。
カまた,著作権法に基づく著作権の本質は,他人が著作物について著作権法に
規定されている利用行為をすることに対する禁止権・排他権であり,著作権者以外
の被許諾権者が利用権を有するとは,著作権者がこの禁止権を当該被許諾者に限り
解除すること,すなわち,利用権付与契約の相手方に対して差止請求権,損害賠償
請求権,不当利得返還請求権を行使しない,又は刑事告訴をしないという不作為義
務を負うというものであって,申立ての趣旨における『裁判上の請求を…行っては
ならない』ということも,この不作為義務の履行強制を求めるものである。
抗告人は,抗告の趣旨の主位的請求における『裁判上の請求』との範囲が,文言
上,包括的な訴訟上の請求禁止と解される余地があるとされる場合に備え,抗告の
趣旨における予備的請求を求める。
キ本件契約に基づく差止請求においても,上記(2)キのとおり『不正競争によ,
って営業上の利益を侵害されるおそれがある』ことをもって,本件申立てが認めら
れるべきである」。
「()」。(6)原決定22頁15行を(4)争点4保全の必要性についてと改める
第4当裁判所の判断
1争点1(本件の準拠法)について
本件申立ては,いずれも日本法人である抗告人が相手方に対して,国内告知・流
布及び国外告知・流布の差止めと,国外裁判ないし国外訴訟などの差止めを求める
ものであって,抗告人が主張する被保全債権の有無を検討するには,本件申立てに
おいて差止めの対象とされている以上の行為(以下「本件対象行為」という)が。
差止めの認められる行為であるのか否かについても,また,外国人であるAが契約
当事者となっている本件契約の効力についても法の適用に関する通則法以下通,(「
則法」という)の規定に基づき,その準拠法が決定される必要がある。。
(1)不正競争防止法に基づく請求の準拠法
抗告人は,相手方の国内の映像事業関係者に対する相手方書面の送付が不正競争
防止法2条1項14号所定の「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当す
ることを前提に,相手方に対し,本件対象行為の差止めを求めているが,本件対象
行為は,日本国内において行われる国内告知・流布,日本国内から行われる国外告
知・流布を除き,日本国外における行為の差止めを求めるものであるから,不正競
争防止法の適否の以前の問題として,通則法に基づいて,その差止めの準拠法を定
めなければならない。
しかるところ,抗告人の主張に係る差止請求権については,通則法に明文の規定
がないが,本件対象行為が抗告人に対する関係で違法であることを原因としてその
,「」差止めを求めることができるというものであって通則法17条にいう不法行為
を原因として法の適用が問題となる場合であると解するのが相当であるから,同条
所定の「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力」として「加害行為の結果,
が発生した地の法」によるべきことになる。
そうすると,日本国外における本件対象行為の差止めが認められるか否かについ
ては「加害行為の結果が発生した地」として,本件対象行為の結果が発生する当,
該外国となる。
しかしながら,抗告人及び相手方とも我が国に本店所在地を有する日本法人であ
ること,日本国外における本件対象行為についても,相手方が日本国内においてそ
の意思決定を行うものと考えられること,国外における本件対象行為によって当該
外国において結果が発生したとしても,その結果は日本国内の抗告人に対して影響
を及ぼすものであることなどの事情に照らすと,明らかに当該外国よりも我が国が
密接な関係がある他の地ということができるから,通則法20条により,その準拠
法は日本国法と解するべきものである。
したがって,日本国内における本件対象行為については,もとより不正競争防止
法が適用されるほか,日本国外における本件対象行為についても同法がその準拠法
として適用されることになる。
(2)本件契約に基づく請求の準拠法
抗告人の主張によると,本件契約は,通則法施行日以前の昭和51年,我が国に
おいて,日本法人である相手方とタイ王国人であるAとの間で締結されたものであ
る。
したがって,本件契約の成立及び効力については,通則法附則3条3項,法例7
条により,当事者による準拠法の選択がある場合は当該選択地の法,当事者による
準拠法の選択がない場合は行為地法(同条2項)によるべきものである。
そして,本件契約書には,準拠法についての規定がなく,契約当事者である相手
方及びAにおいて準拠法の選択について合意していたことを認めるに足りる証拠も
ないので,本件契約の成立及び効力の準拠法は,本件契約の行為地法である我が国
の法によることになる。
2争点2(不正競争防止法2条1項14号所定の「虚偽の事実を告知し,又は
流布する行為」の存否等)について
(1)証拠及び原審における審尋の全趣旨によると,一応,次の事実を認めるこ
とができる。
ア相手方書面の送付に先立って,抗告人書面(疎乙2)が関係者に送付されて
いるところ,同書面には,①平成20年11月に抗告人を設立したこと,②抗告人
は,Aと相手方との間で締結された本件契約におけるAの一切の権利を引き継ぎ,
運用していくことになったこと,③本件契約は,日本の最高裁判決で確定している
(なお,実際は,東京高裁判決が最高裁の上告棄却兼不受理決定により確定したも
の。疎甲3)ウルトラマンの日本を除く全世界の独占的利用権をAに認めたもので
あり,その海外利用権の一部として,タイ王国及び中国で独自の展開がされてきた
ものであって,今後,抗告人は,本件独占的利用権を行使して,世界的な展開を目
指すことが記載されているが,他方,平成20年2月5日に言い渡されて確定した
(),,タイ最高裁判決疎乙1において本件契約書が偽造された無効なものであって
タイ王国においては,Aが本件独占的利用権を実施できなくなっていること,中国
においてAと相手方との間の訴訟が係属中であることについての記載はない。
イAは,平成21年2月10日,相手方に対し,本件契約に基づくAのすべて
の権利を平成20年12月24日に抗告人に譲渡した旨の通知をしたが(疎甲4の
1,2)その一方で,抗告人代表者であるBは,雑誌のインタビューにおいて,A
は,同年12月24日,子のDに本件独占的使用権を譲渡し,その後,Dから抗告
人に本件独占的利用権が譲渡されたと答えていた(疎乙3。)
ウ相手方書面(疎甲5)には,①Aから抗告人に対する本件独占的利用権の譲
渡については,法的に重大な疑義があるため,相手方は,これに異議を述べ,法的
手続を執る予定であること,②平成20年2月5日に言い渡されたタイ最高裁判決
において,本件契約書が偽造された無効なものであるとの判断がされて確定し,こ
れにより,Aは,本件契約に基づく権利主張が禁じられ,タイ王国において相手方
に対する損害賠償債務を負い,文書偽造の罪で訴追されていること,③相手方がこ
れらの事実を知らせるのは,抗告人書面に記載された客観性・正当性を欠いた情報
により,関係者に迷惑を掛けることになってはならないと考えたからであることな
どが記載されているが,他方,Aの本件独占的実施権を認めた東京高裁判決が存在
すること,その後にタイ最高裁判決が出されたことによって東京高裁判決で確認さ
れたAの本件独占的利用権に何らかの影響が生じるのかということについての記載
はない。
(2)以上のアないしウの事実によると,相手方書面の内容は,タイ最高裁判決
によって,タイ国内において,Aが本件独占的利用権を有することを主張すること
ができないこと,Aは,タイ王国において相手方に対する損害賠償債務を負い,文
書偽造の罪で訴追を受けているとの客観的事実を伝えるものと認めることができる
ところ,前記第2の3の前提となる事実によると,相手方書面は,その記載内容,
配布先,作成に至る経緯等に照らし,その配布の直前に抗告人書面を受領している
者に送付されたものであって,その送付を受けた者は,本件独占的利用権について
Aと相手方との間で従前から紛争があり,我が国においては,確定した東京高裁判
決によって,Aが本件独占的利用権を有することが確認されていることを認識して
いる者であると認められることからすると,その後に相手方書面を受領しても,抗
告人書面と対比して,相手方書面は,要するに,タイ最高裁判決によってタイ王国
内においてAが本件契約書に基づく権利主張等をすることが禁じられたことなどを
述べているにすぎないと理解すると認めるのが相当であり,さらに進んで,Aがタ
イ王国以外の外国でも本件独占的利用権を主張することが禁じられているとまで理
解するとは解されない。
また,上記雑誌によると,Aが有していた本件独占的利用権を抗告人が取得した
経緯について,Aから直接に取得したのか,Aの子であるDを経て取得したのか,
相手方において疑義を抱く余地があったこと,本件独占的利用権に基づくAの権利
主張がタイ王国ではできなくなっていること,前記第2の3の前提となる事実のと
おり,本件独占的利用権について中国において係争中であることなどに照らすと,
第三者が我が国以外の国で抗告人との間で本件独占的利用権を基にした事業を行う
場合には紛争が生ずるおそれがあることは否定し得ないことを踏まえると,相手方
書面も,要は,この点について指摘するものであったと解することができる。
(3)そうすると,相手方書面をもって,抗告人の主張するように,タイ最高裁
判決が東京高裁判決に優先し,抗告人が無権利者となるため,抗告人と取引に及べ
ば損害を被ることが記載されたものとまで認めることができず,また,抗告人書面
を受領した後に相手方書面の送付を受けた者がそのように理解すると認めることも
できない。
(4)したがって,相手方書面の送付をもって,相手方において,抗告人の主張
するように,東京高裁判決で認められたAの有する本件独占的利用権が無効である
ことを理由として,本件独占的利用権を譲り受けたとする抗告人が当該利用権を有
しない旨を告知し又は流布したものと解するのは相当でなく,それ故に,そのよう
な相手方書面の送付があったとの事実をもって,相手方において,Aが本件独占的
利用権を有しない旨を告知し又は流布するおそれがあることの徴表と解することも
できないし,さらに,相手方書面の送付以外に,相手方においてAが本件独占的利
用権を有しない旨を告知し又は流布するおそれがあることの徴表となるような事実
についての疎明があるともいえないから,そもそも我が国の不正競争防止法が国外
における行為等に適用されるか否かという点はさておき,抗告人がAから本件独占
,,的利用権の譲渡を受けていたとしても抗告人の同法に基づくという請求について
抗告人主張の被保全権利の疎明があるということができない。
3争点3(本件契約に基づく差止請求の可否)について
本件全疎明資料によっても,本件契約上,相手方とAとの間において,Aが本件
独占的利用権を有しないことを理由とする本件対象行為を行わない旨の合意があっ
たと認めることはできず,本件契約に基づくという請求について,抗告人主張の被
保全権利の疎明があるということができない。
なお,抗告人は,利用権許諾の契約当時者である許諾者は,一定の社会的接触関
係にある以上,契約に内在する当然の義務又は本来的債務に付随する信義則上の義
務として,被許諾者に付与した権利を否定するような告知・流布を行ってはならな
,,いという不作為義務を有しており被許諾者が第三者に対して行った告知・流布が
虚偽とまでは断定し得なくとも,被許諾者に付与した権利を否定する趣旨の告知・
,,流布であるならば差止めの対象となる不作為義務違反を構成すると解されること
また,著作権法に基づく著作権の本質は,他人が著作物について著作権法に規定さ
れている利用行為をすることに対する禁止権・排他権であり,著作権者以外の被許
諾者が利用権を有するとは,著作権者がこの禁止権を当該被許諾者に限り解除して
利用権付与契約の相手方に対して差止請求権等を行使しないという不作為義務を負
うものであることなどからして,本件申立てに係る差止請求権が認められるべきで
あると主張する。
しかしながら,差止請求権については,当事者間において対象行為を行わないと
の合意が成立しているとき又は実定法に基づき差止請求権が付与されているときに
認められるべきものであって,そのような合意又は実定法が存在しないにもかかわ
らず,著作権についての独占的利用権の付与があったことのみをもってこれが認め
られるものではない。そして,このことは,著作権という観点からみても,著作権
法,不正競争防止法等の法律によって,一定の要件の下に差止請求権が認められて
いるものであって,そのような要件がないにもかかわらず,差止請求を認めること
は相当でない。
加えて,相手方書面の送付が前記2で説示したとおりの趣旨のものと解されるに
とどまる以上,本件契約についても,相手方にその義務違反又はそのおそれがある
ことの徴表となる事実についての疎明があるということはできないから,抗告人の
主張は採用することができない。
4争点4(保全の必要性)について
以上のとおり,抗告人主張の被保全権利についての疎明がないので,本件申立て
は理由がないことになるが,事案にかんがみ,保全の必要性についても付言する。
抗告人が差止めを求める相手方の本件対象行為については,日本国内で行われる
行為についてだけでなく,日本国外において行われる行為についても不正競争防止
法が適用されるとして,本件は,そのような本件対象行為が現に行われていること
,,を理由とする停止としてではなくそのおそれがあることを理由とする予防として
その差止めが求められている事案であるから,日本国内外における本件対象行為を
仮処分によってあらかじめ差し止める必要性があるのか否かについて,ここで検討
することとする。
(1)日本国外における本件対象行為の差止めの必要性
本件申立ては,本件対象行為のうち,日本国外における行為の差止めを求める部
分についても,仮の地位を定める仮処分命令の発令を求めるものであるが,仮の地
位を定める仮処分命令は,争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害
又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができるもの(民
事保全法23条2項)であって,断行的・満足的な仮処分として,その発令に際し
ては,高度の保全の必要性が要求されるものであるところ,本件において,相手方
が日本国以外のすべての国において本件対象行為を行うがい然性があると疎明する
資料はなく,抗告人の主張が具体的な国を特定することなく,漫然と日本国以外の
すべての国において本件対象行為の差止めを求める必要性があるという趣旨である
としても,そのような主張は到底これを首肯し得ず,不正競争防止法に基づく請求
部分については,そもそも同法が国外における行為等に適用されるか否かという点
はさておき,その必要性はないものといわざるを得ない。
したがって,本件申立てのうち,日本国外で行われる本件対象行為の差止めを求
める部分は,抗告人主張の被保全債権について検討するまでもなく,保全の必要性
を欠く申立てといわざるを得ないことになる。
(2)日本国内における本件対象行為の差止めの必要性
日本国内における本件対象行為のうち,国外告知・流布の差止めを求める部分に
ついては,相手方が日本国外のすべての国の第三者に対してそのような告知・流布
を行うがい然性があると疎明する資料はなく,抗告人の主張が具体的な国を特定す
ることなく,漫然と日本国以外のすべての国の第三者に対する告知・流布の差止め
を求める必要性があるという趣旨であるとしても,そのような主張は到底これを首
肯し得ず,日本国外における本件対象行為についてと同様,その必要性はないもの
といわざるを得ない。
そうすると,保全の必要性について検討する必要があるのは,日本国内における
本件対象行為のうち,国内告知・流布の差止めを求める部分ということになるが,
当該部分については,その被保全権利についての疎明がないことは前記説示のとお
りである。
5結論
以上の次第であるから,いずれにしても本件申立ては理由がなく,原決定は相当
であって,本件抗告は棄却されるべきものである。
平成21年12月15日
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官滝澤孝臣
裁判官本多知成
裁判官浅井憲

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛