弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人大橋茹の上告趣意第一点について。
 所論は憲法違反を主張するけれども、その実質は訴訟法違反の主張に過ぎず、刑
訴四〇五条の上告理由に当らない。
 記録を見ると原審に所論の判断遺脱のあることは所論のとおりであるが、右判断
遺脱のあつた控訴趣意点は、島田弁護人の控訴趣意第一点乃至第三点に対する原審
の判断中(原判決の一)に「……原判決(第一審判決)の対象事実を証拠に照らし
て掌握……」した認定事実として「……何等の暴行にも出ていない同人(A)に対
し……」と判示し、その判断を示しているところであるから、右判断遺脱の違法は
到底刑訴四一一条を適用すべき事由とはならない。
 同第二点について。
 所論は事実誤認または単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由に当らない。
 のみならず、田圃の現場からAの自宅に到るまでの間における被告人の所為につ
いても、起訴事実に該当する本件審判に付する決定事実中に包含されていることは、
同決定書中『……昭和二十七年六月三十日午後三時頃、右Aが所持している麦束を
証拠品として任意提出させる目的でa村巡査駐在所勤務のB巡査と共に右b部落に
赴き、同部落の東北方に当る通称cにある右A所有の田前農道で、前記麦束の任意
提出を求めるため同人に対し「盗んだ麦を出せ」と申向けたところ、同人より「盗
んだ麦はない、それなら令状を見せて貰いたい」と拒絶されたのに立腹し、何等の
抵抗がないのにもかゝわらず「生意気なことを云いさらす」と叫び、やにわに右足
で同人の左膝を蹴りつけて同人を仰向けに倒し、更にB巡査が同人の胸ぐらをつか
んで農道上を引ずつた際、「昔校長をしたと思つて生意気なことをいう、令状がな
くても逮捕できる、これから警察に行くんだ」といゝ乍ら、その必要もないのに、
倒れている同人の腕の辺を持ち、B巡査に脚部をもたせ、同人の身体を持ち上げて
四米程運び、更に右農道から前記の同人宅まで同行する間(徒歩で約五分の距離)、
附近に聞えるような大声で「Cの麦を盗んだのはお前だ」、「くそ隠居」、「貴様
のような者はやくざ校長だ」、「泥棒だ泥棒だ」と暴言をはき、ついで同人宅で同
人を……』との記載に照して明白である。また被告人がAを緊急逮捕しようと意を
決した時期に関し、第一審はAの自宅に着いて後決意したものと認定判示している
のに対し、原審は右以前である、田圃農道においてAが麦束の任意提出を拒んだ時
に決意した如く判示していることは所論のとおりであるが、本件審判に付する決定
事実中、前示のとおり田圃よりAの自宅に到るまでの被告人の所為をも包含されて
いるものである以上、被告人の所為が、麦束の任意提出を求める職務執行について
行われたか、はたまた緊急逮捕の職務執行について行われたか、言い換えれば緊急
逮捕の決意がいつどこでなされたかの判断は、それが証拠に即する限り、原審は一
審の判断に拘束されることなく、原審独自の判断権の範囲内に属することは当然で
あつて、従つて所論緊急逮捕決意の時期に関し所論原審の判示が一審の判示と差異
があるということだけでは、これを目して違法ありということはできない。それ故
所論はその実質においても採ることができず、原判決には何等所論の違法はないの
である。
 同第三点について。
 所論は原審の証拠の取捨判断を攻撃し、延いて事実誤認を主張するものであつて
適法な上告理由に当らない。
 弁護人島田武夫の上告趣意第一点及び第二点について。
 所論は判例違反を主張するけれども、原判決は却つて所論引用大審院の各判例の
趣旨に副いこそすれ、それに反する判断を示しているものとは到底解せられない。
また引用の裁判所の判例は本件には不適切のものであるから論旨は採用することが
できない。
 同第三点について。
 所論は憲法三一条違反を主張するけれども、その実質は法令違反の主張に帰着し
適法な上告理由に当らない。そして所論判断遺脱の違法のないことは原判示に照し
て明らかである(なお本点については、大橋弁護人論旨第二点に対する説明参照)。
 同第四点について。
 所論は判例違反と違憲をいうけれども、原審で主張判断のない事項であるから上
告適法の理由とならない。
 なお記録を調査するも、本件に刑訴四一一条を適用すべき事由を認め難い。
 よつて刑訴四〇八条に従い、主文のとおり判決する。
 この判決は、島田弁護人の上告趣意第四点に関し裁判官池田克の補足意見がある
ほか裁判官全員一致の意見によるものである。
 島田弁護人の上告趣意第四点に関する裁判官池田克の補足意見は次のとおりであ
る。
 本件のように、裁判上の準起訴手続により訴訟係属を生じた事件においては、検
察官は公訴の維持にあたるべきものではなく、公訴の維持にあたる者として裁判所
から指定を受けた弁護士が裁判の確定に至るまで検察官の職務を行うべきものであ
つて、公判廷にその出席を要することは、刑訴二六八条、同二八二条二項の解釈上
疑いを容れないところである。そしてその出席を要することは、当該公判廷が審理
のためであると判決言渡のためであるとにかかわらないと考える。但し、公判廷を
開くにあたり検察官の職務を行う弁護士の出席が必要とされるのは、検察官のそれ
と同じく判決裁判所の構成員としてではなく、当事者主義の建前上、公判開廷の手
続上の条件をなすに因るものと解すべきであるから、検察官の職務を行う弁護士の
不出席のまま、出席すべからざる検察官立会のもとに公判廷が開かれたときは、公
判開廷の手続上の違反ではあるが、判決裁判所の構成には影響がないのであるから、
刑訴三七七条一号の定める絶対的上訴理由たる「法律に従つて判決裁判所を構成し
なかつた」場合にはあたらないものといわなければならない。
 ところで、本件において第一審第四回公判調書によると、検察官の職務を行う弁
護士伊部栄治が同公判廷に出席した旨の記載がなく、却つて検察官神野栄一が出席
した旨の記載があるのであつて、すなわち、第一審第四回公判手続には、検察官の
職務を行う弁護士が出席しなかつたばかりでなく、本来出席すべきでない検察官が
出席したという二重の違法を存すること、まことに所論のとおりである。しかし、
これらの違法は、前示の如くいずれも単なる訴訟手続法上の違反に過ぎず、且つ記
録に徴しても明らかなとおり、右第一審第四回公判が事件の審理のために開かれた
ものでなく、すでに結審して判決言渡のみのために開かれたものであることを併せ
て考えてみると、判決には影響を及ぼさないものと認めるのを相当とする。論旨援
用の判例は、刑訴二八二条二項と趣旨を異にする旧刑訴三二九条に関するものであ
つて、本件に適切でない。所論違憲の主張は、憲法に名を藉りるものに過ぎない。
  昭和三一年二月一〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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