弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主   文
       原判決を破棄する。
       本件を東京高等裁判所に差し戻す。
        理    由
 上告代理人上谷佳宏,同木下卓男,同幸寺覚,同福元隆久,同山口直樹,同今井
陽子,同松元保子の上告受理申立て理由第一の二,三,第二について
 1 原審の確定した事実関係は,次のとおりである。
 (1) D(以下「D」という。)は,第1審判決別紙物件目録記載の土地(以
下「本件土地」という。)を所有し,これを上告人及びE(以下「上告人ら」とい
う。)に建物所有目的で賃貸していた。
 平成4年3月ころ,Dと上告人らとの間で,1坪当たりの単価を52万円(1㎡
当たり15万7296円)とし,これに実測面積を乗じた額を代金額として,本件
土地を上告人らが買い取る話が進み,D側で測量を行うことになった。
 (2) Dは,本件土地の測量をF測量設計事務所ことG(以下「G」という。)
に依頼し,Gはこれを株式会社H測地(以下「H測地」という。)に依頼した。
 H測地は,本件土地の測量を実施したが,真実の面積が399.67㎡であった
のに,求積の際の計算の誤りにより59.86㎡少ない339.81㎡を実測面積
と記載した求積図を作成し,Gを介してDに交付した。
 (3) Dと上告人らは,平成4年7月30日,本件土地につき売買契約を締結
したが,その契約書には,取引は実測によるものと記載されて上記の求積図が添付
され,本件土地の実測面積が339.81㎡と明記された上,この面積に前記の単
価を乗じた5345万0800円が売買代金とされた(以下「本件売買契約」とい
う。)。なお,上告人とEが取得する持分は各2分の1とされた。
 (4) その後,測量結果の誤りを知ったDは,平成5年4月ころ,仲介業者を
して,上告人らに対して,売買代金が不足しているとして支払交渉をさせたが,物
別れに終わった。なお,真実の面積によって計算した代金額と,本件売買契約の代
金額との差額は,上記の1㎡単価15万7296円に59.86㎡を乗じた941
万5738円である。
 (5) Gは,測量結果に誤りがあったことによる損害賠償として,平成9年3
月から同年5月にかけて,上記の差額に迷惑料を加算した1000万円をDに支払
った(ただし,うち660万0200円は,GのDに対する債権と相殺された。)。
 (6) H測地は,平成9年12月4日,Gとの間で,測量結果に誤りがあった
ことによる損害賠償として,Gに対して600万円を支払う旨の示談をした。
 (7) 被上告人は,H測地との間で測量士賠償責任保険契約を締結していたと
ころ,平成9年12月18日,上記示談に係るH測地のGに対する債務のうち55
0万円を,H測地に代わってGに支払った。
 2 本件は,(1) 被上告人が上告人に対して,民法565条の類推適用によ
り,又は本件売買契約の際に成立した清算の合意に基づき,Dが上告人らに対して
有していた上記差額に相当する941万5738円の代金請求権について,損害賠
償者の代位(民法422条)及び保険者の代位(商法662条)によって,内金5
50万円を取得したとして,その半額である275万円と遅延損害金の支払を求め
る反訴事件と,(2) 上告人が被上告人に対して,上記代金債務の不存在確認を
求める本訴事件である。
 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判示し,被上告人の反訴請求を
認容し,上告人の本訴請求を棄却した。
 (1) 本件売買契約は,民法565条にいういわゆる数量指示売買に当たる。
 (2) 数量指示売買で目的物の数量が指示された数量を超える場合において,
当該売買契約に至る経緯や代金額が決定された経緯等の事情から,代金の増額を認
めないことが公平の理念に反し,かつ,その増額を認めることが買主にとっても対
応困難な不測の不利益を及ぼすおそれがないものと認めるべき特段の事情が存する
ときには,民法565条,563条1項を類推適用して,超過部分について,売主
の代金増額請求権を認めるのが相当である。本件では,上記の特段の事情が存する
から,Dは代金増額請求権を行使することによって,上告人らに対して941万5
738円の代金請求権を取得した。
 (3) Gは,Dに対して債務不履行に基づく損害賠償義務を履行したので,損
害賠償者の代位(民法422条)によって,Dの上告人らに対する代金請求権を取
得した。H測地は,Gに対して債務不履行に基づく損害賠償義務を履行したので,
同じく賠償者の代位によって,同人から600万円の限度で上記代金請求権を取得
した。さらに,被上告人は,測量士賠償責任保険契約に基づき550万円を支払っ
たので,保険者の代位(商法662条)によって,H測地から550万円の限度で
上記代金請求権を取得した。
 3 しかしながら,原審の上記判断のうち(2)及び(3)は是認することがで
きない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 原審の上記判断(2)について
 民法565条にいういわゆる数量指示売買において数量が超過する場合,買主に
おいて超過部分の代金を追加して支払うとの趣旨の合意を認め得るときに売主が追
加代金を請求し得ることはいうまでもない。しかしながら,同条は数量指示売買に
おいて数量が不足する場合又は物の一部が滅失していた場合における売主の担保責
任を定めた規定にすぎないから,【要旨】数量指示売買において数量が超過する場
合に,同条の類推適用を根拠として売主が代金の増額を請求することはできないと
解するのが相当である。原審の上記判断(2)は,当事者間の合意の存否を問うこ
となく,同条の規定から直ちに売主の代金増額請求権を肯定するものであって,同
条の解釈を誤ったものというべきであり,この判断には,判決に影響を及ぼすこと
が明らかな法令の違反がある。
 (2) 原審の上記判断(3)について
 本件において,仮に,Dが上告人らに対して,契約書に記載された面積を超過す
る部分について代金請求権を有するとすれば,上告人らが任意の支払を拒んでいた
としても,上告人らが無資力であって上記代金請求権が無価値である等の特段の事
情がない限り,Dには上記代金請求権相当額について損害が発生しているというこ
とはできない。そうすると,上記特段の事情の存在について主張,立証のない本件
においては,Dに損害が発生したことを前提とした損害賠償者の代位によるG及び
H測地に対する権利移転の効果を認めることはできないし,さらにはH測地が損害
賠償義務を負うことを前提とした保険者の代位による被上告人への権利移転の効果
が生ずるともいえない。したがって,原審の上記判断(3)には,判決に影響を及
ぼすことが明らかな法令の違反がある。なお,被上告人の主張は,結局,Dの上告
人らに対する代金請求権の順次移転をいうものであって,前記1の(5),(6)
及び(7)のG,H測地,被上告人の各支払又は支払約束に際して,Dが有した代
金請求権の全部又は一部を順次譲渡する旨の合意があったとの主張を含むものと解
する余地がある。
 4 以上のとおり,論旨はいずれも理由があり,原判決は破棄を免れない。
 そして,被上告人は,数量超過の場合に買主において超過部分の代金を追加して
支払う旨の合意がDと上告人らとの間に存在した旨の主張をしており,また,被上
告人の本件請求に係る権利の取得原因を明らかにさせる必要があるから,これらの
点について審理判断させるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田
昌道)

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