弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人成田薫、同成田清、同池田桂子の上告理由第一点について
 原審は、(一) 第一審判決別紙目録一ないし四、七、九、一一、一三の各土地(
以下「本件各土地」という。)は、もと分筆前の愛知県小牧市大字a字bc番dの
土地の一部をなし、Dの所有であつた、(二) Dの妻Eは、昭和三五年七月ころ、
Dの代理人として、Fに対し、右c番dの土地を売り渡した(以下「本件売買」と
いう。)が、Dから本件売買に必要な代理権を授与されていなかつた、(三) Eは
昭和四四年三月二二日に死亡し、夫であるD及び子である被上告人らが同女の法律
上の地位を相続により承継した、(四) Dは昭和四八年六月一八日に死亡し、被上
告人らが同人の法律上の地位を相続により承継した、(五) 本件各土地について、
いずれも上告人を権利者とする原判決主文第二項掲記の各登記(以下「本件各登記」
という。)がされている、との事実を確定した上、無権代理人が本人を相続した場
合に、無権代理行為の追認を拒絶することが信義則上許されないとされるのは、当
該無権代理行為を無権代理人自らがしたという点にあるから、自ら無権代理行為を
していない無権代理人の相続人は、その点において無権代理人を相続した本人と変
わるところがなく、したがつて、無権代理人及び本人をともに相続した者は、相続
の時期の先後を問わず、特定物の給付義務に関しては、無権代理人を相続した本人
の場合と同様に、信義に反すると認められる特別の事情のない限り、無権代理行為
を追認するか否かの選択権及び無権代理人の履行義務についての拒絶権を有してい
るものと解するのが相当であるとの見解のもとに、本件売買に関して無権代理人で
あるE及び本人であるDをともに相続した被上告人らは、信義に反すると認められ
る特別の事情のない限り、本人の立場において本件売買の追認を拒絶することがで
き、また、無権代理人の立場においても本件各土地を含む前記土地の所有権移転義
務を負担しないものであり、しかも、右の追認ないし履行拒絶が信義に反すると認
められる特別の事情があるということはできず、本件売買が有効となることはない
として、上告人の抗弁を認めず、本件各土地の共有持分権に基づいて本件各登記の
抹消登記手続を求める被上告人らの本訴請求を認容すべきものと判断している。
 しかしながら、原審の右の判断を是認することはできない。その理由は次のとお
りである。
 すなわち、無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場
合においては、当該相続人は本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はな
く、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解
するのが相当である。けだし、無権代理人が本人を相続した場合においては、本人
の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、右のような法律上の地位ない
し効果を生ずるものと解すべきものであり(大審院大正一五年(オ)第一〇七三号
昭和二年三月二二日判決・民集六巻一〇六頁、最高裁昭和三九年(オ)第一二六七
号同四〇年六月一八日第二小法廷判決・民集一九巻四号九八六頁参照)、このこと
は、信義則の見地からみても是認すべきものであるところ(最高裁昭和三五年(オ)
第三号同三七年四月二〇日第二小法廷判決・民集一六巻四号九五五頁参照)、無権
代理人を相続した者は、無権代理人の法律上の地位を包括的に承継するのであるか
ら、一旦無権代理人を相続した者が、その後本人を相続した場合においても、この
理は同様と解すべきであつて、自らが無権代理行為をしていないからといつて、こ
れを別異に解すべき根拠はなく(大審院昭和一六年(オ)第七二八号同一七年二月
二五日判決・民集二一巻一六四頁参照)、更に、無権代理人を相続した者が本人と
本人以外の者であつた場合においても、本人以外の相続人は、共同相続であるとは
いえ、無権代理人の地位を包括的に承継していることに変わりはないから、その後
の本人の死亡によつて、結局無権代理人の地位を全面的に承継する結果になつた以
上は、たとえ、同時に本人の地位を承継したものであるとしても、もはや、本人の
資格において追認を拒絶する余地はなく、前記の場合と同じく、本人が自ら法律行
為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当であるか
らである。
 これを本件についてみるに、前記の事実関係によれば、Eは、Dの無権代理人と
して、本件各土地を含む前記土地をFに売却した後に死亡し、被上告人ら及びDが
同女の無権代理人としての地位を相続により承継したが、その後にDも死亡したこ
とにより、被上告人らがその地位を相続により承継したというのであるから、前記
の説示に照らし、もはや、被上告人らがDの資格で本件売買の追認を拒絶する余地
はなく、本件売買は本人であるDが自ら法律行為をしたと同様の効果を生じたもの
と解すべきものである。そうすると、これと異なる見解に立つて、無権代理行為で
ある本件売買が有効になるものではないとして、上告人の抗弁を排斥し、被上告人
らの本訴請求を認容すべきものとした原判決には、法令の解釈適用を誤つた違法が
あり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかというべきであるから、右違法を
いう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、以上
の見地に立つて、上告人の抗弁の当否について、更に審理を尽くさせる必要がある
から、これを原審に差し戻すべきである。
 よつて、その余の論旨に関する判断を省略し、民訴法四〇七条一項に従い、裁判
官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長   島       敦
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    坂   上   壽   夫

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