弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告理由一、イ、ロ、ハについて。
 日本赤十字社法(以下単に法という。)一四条一項一号は、役員および代議員は
社員の資格を有する者のうちからなるべく社員の意思を反映するような手続で選出
すべきことを規定したものであつて、役員および代議員を社員の直接選挙以外の方
法によつて選出することおよび代議員の選出手続に関する事項の規整を日本赤十字
社の定款に委任することを禁じた趣旨とは解されないところ、法二一条二項は代議
員は定款の定めるところにより社員のうちから選出する旨規定し、この規定に基づ
いて、所論定款一五条その他の定款、規則の規定が定められたことは明らかである。
されば、法二一条二項が法一四条と矛盾しないことは、前記同条の法意に照し、明
白であり、法二一条二項の定めるところはもとより、右定款、規則の各規定も、結
局、法一四条にいう「この法律の定めるところ」というべきである。しかも、これ
ら定款、規則の各規定が法一四条に違反しないことは、前記同条の法意に照し、明
らかである。したがつて、所論定款、規則の各規定が憲法に違反するとの所論は前
提を欠くことが明らかであり、その他の所論は右と異なつた見解に立つて原判決を
攻撃するにすぎないから、論旨はすべて理由がない。
 同一、ニについて。
 所論定款三九条は、有給職員が代議員に選任されること自体をなんら禁じたもの
ではなく、代議員に選任された有給職員がその地位にとどまるか、代議員に就任す
るかの選択を当該有給職員の意思に任している趣旨と解すべきであり、所論は、右
と異なつた見解に立つて原判決を攻撃するにすぎず、その違憲の主張も前提におい
て採用できないものである。
 同一、ホ、へについて。
 所論定款の規定には、形式上も、実質上も、所論のかしがなく、その有効である
ことは、前記説示によつて明らかである。所論は、これと異なつた見解に立つて原
判決を非難するにすぎないから、採用できない。
 同二、イについて。
 法二一条二項および所論定款一五条が法一四条に違反するものでないことは、前
記のとおりである。所論は右各規定が法一四条に違反し、無効であることを前提と
するものであるから、採用のかぎりでない。
 同二、ロについて。
 原判決にいう「独自の見解」とは、所論の点についての原審の正当な解釈と異な
つた見解をいうものであることが明らかであるから、原判決に所論理由そごの違法
はなく、その他の所論は、いずれも、所論定款の規定の趣旨を正解しないことに出
づるものであるのみならず、原判決の結論に影響を及ぼさない事項についてこれを
攻撃するにすぎないから、論旨は、いずれも、理由がない。
 同三、イについて。
 上告人が、原審で、所論定款の無効確認を求める請求を取り下げたことは、記録
上明らかであるから、原審が一審判決中右請求を却下した部分は当然効力を失つた
旨判断したのは、相当である。したがつて、論旨は理由がない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助

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