弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士河田清次の上告理由第一点について。
 しかし、原判決認定の諸事情は、挙示の証拠関係に照し肯認できないことはなく、
その認定した諸事情の下において、原判決が本件営業に関して生じた債権債務は名
実ともに訴外Dに帰属するものと判断したのは正当であつて、所論の違法は認めら
れない。所論引用の判例は、すべて本件に適切でない。されば、所論は、結局原審
が適法になした事実認定を非難するに帰し採ることができない。
 同第二点について。
 所論は、原審が適法になした証拠の取捨、判断ないしは事実の認定を非難するに
帰し、上告適法の理由として採ることができない。
 同第三点について。
 原判決が所論(一)主張のようにE旅館の建物については原告本人がその所有名
義人となつていること、原告が同旅舘の業務に自ら携わり、旅舘組合の会合には常
に出席したことが窺えるほかその経営について事実上原告の意見が尊重され或は原
告の意のままに運営されることがある旨判示したことは所論のとおりである。しか
し、原判決は、判示理由を以てD自身その経営の衝に当つており少くとも対外的に
一般にD名義を使用したもので、特段の事情がない限り原告の活動は夫婦間の内部
関係における援助指導の関係に止ると見るのが相当である旨判示して結局本件債権
債務を名実ともに訴外Dに帰属するものと認定しているのであつて、その認定は論
旨第一点で述べたとおり肯認できないことはないのである。されば、原判決には、
所論(一)の違法は認められない。そして、原判決は、右の事由をもつて原告主張
の二〇万一三九〇円の債権の主張を排斥したものであるから、所論(二)乃至(四)
は、原判決に影響を及ぼすべき法令違背を主張するものとは認められない。また、
所論(五)、(六)は、原審が適法になした証拠の取捨、判断ないし事実の認定を
非難するに帰し採ることができない。
 同第四点について。
 しかし、本件旅舘営業がDに属することは論旨第一点、第三点で述べたとおりで
ある。されば、所論は、結局原審が適法になした事実の認定を非難するに過ぎない
ものであつて採ることができない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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