平成19年(行ウ)第94号所得税更正処分取消等請求事件
判決
主文
1処分行政庁が原告に対し平成18年2月10日付けでした平
成15年分の所得税に係る更正処分のうち納付すべき税額84
万4100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を
取り消す。
2訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文第1項と同旨。
第2事案の概要
本件は,原告が,商品取引員であるA商事株式会社(以下「A商事」という。)
に委託して行った商品先物取引に関しA商事から受け取った和解金457万045
5円(以下「本件和解金」という。)を所得に計上せずに平成15年分の所得税の
確定申告を行ったところ,処分行政庁から平成18年2月10日付けで本件和解金
を雑所得として計上することなどを内容とする更正処分(以下「本件更正処分」と
いう。)及びこれに伴う過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」
という。)を受けたことから,本件更正処分のうち納付すべき税額84万4100
円(本件和解金に係る雑所得を除いて算出した税額)を超える部分及び本件賦課決
定処分の取消しを求める事案である。
本件で引用する所得税法及び所得税法施行令の主な条項は,別紙1記載のとおり
である。
1前提事実(争いがないか,証拠上明らかである。)
(1)原告がA商事に委託して行った商品先物取引
原告は,平成13年4月23日から平成14年7月2日までの間,A商事に委託
して商品先物取引を継続的に行い,1281万5795円の損失を被った(以下,
この商品先物取引を「本件先物取引」という。)。なお,A商事は,本件先物取引
の委託手数料として1425万7900円を得た。
(2)原告とA商事との和解契約
ア原告は,平成15年2月25日,A商事との間で,本件先物取引に関し,要
旨次の(ア)ないし(エ)のとおりの和解契約(以下「本件和解契約」という。)を締結
した。
(ア)A商事は,本件先物取引において,原告とA商事との間に意思疎通を欠いた
取引があったことを認め,本件和解金457万0455円の支払義務があることを
認める(第1条)。
(イ)A商事は,本件和解金として原告に対して支払う457万0455円のうち,
7万0455円を帳尻損金に充当し,450万円を平成15年3月14日限り,原
告の指定する口座に送金して支払う(第2条①)。
(ウ)原告は,A商事が第2条の債務を履行したときは,A商事及びその従業員に
対する民事上の請求並びに行政上の一切の不服申立権を放棄する(第3条)。
(エ)原告とA商事は,本件先物取引に関し,本件和解契約の各条項に定めるもの
のほか,相互に債権債務のないことを確認する(第4条)。
イA商事は,平成15年3月14日,本件和解金の支払として,7万0455
円を原告の帳尻損金に充当するとともに,450万円を原告が指定したB銀行勝川
支店の原告名義の普通預金口座に振り込んだ。
なお,原告は,同年2月22日,浅井岩根法律事務所に対し,本件先物取引に係
る法律相談料として1万円を支払った。
(3)課税の経緯等
課税の経緯等は,次に記載するほか,別表1記載のとおりである。
ア原告は,平成16年3月12日,処分行政庁に対し,平成15年分の所得税
について,不動産所得を225万4252円,給与所得を214万4000円,一
時所得を415万7651円,総所得金額を855万5903円,納付すべき税額
を79万9200円とする確定申告書を提出した。
原告は,上記の確定申告において,本件和解金を所得に計上しなかった。
イ処分行政庁は,平成18年2月10日,原告に対し,平成15年分の所得税
について,不動産所得を200万0181円,給与所得を214万4000円,雑
所得を457万0455円,一時所得を415万7651円,総所得金額を128
7万2287円,納付すべき税額を184万1400円とする本件更正処分をする
とともに,過少申告加算税11万4000円を賦課する本件賦課決定処分をした。
処分行政庁が雑所得として計上した457万0455円は,本件和解金に係るも
のである。
2被告が主張する税額の計算根拠
被告は,原告の平成15年分の所得税として納付すべき税額は別紙2のとおり1
94万5300円であり(なお,雑所得は,本件和解金から法律相談料1万円を控
除した456万0455円としている。),過少申告加算税は11万4000円で
あると主張しており,本件更正処分による納付すべき税額は上記の金額を超えるも
のではなく,本件賦課決定処分は上記の金額と同額であるから,いずれも適法であ
ると主張している。
原告は,本件更正処分のうち,本件和解金を雑所得(本件更正処分では457万
0455円,本件訴訟における被告の主張額は456万0455円)として計上し
たことを争っており,他の項目については争っていない。
なお,本件和解金が非課税所得に当たるとした場合に,原告の平成15年分の所
得税として納付すべき税額が84万4100円,過少申告加算税が0円となること
(税額の算出過程につき別表1の「雑所得がゼロの場合」欄参照)は,当事者間に
争いがない。
3争点
(1)本件和解金がA商事の不法行為に基づく損害賠償金に当たるか否か
(2)本件和解金が所得税の課税対象となるか否か
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(本件和解金がA商事の不法行為に基づく損害賠償金に当たるか否
か)について
(被告の主張)
アA商事に不法行為責任が認められないこと
(ア)適合性の原則違反がないこと
a原告は,平成元年12月6日,C証券株式会社(現D証券株式会社。以下
「C証券」という。)に口座を開設して証券取引を開始し,投資信託や株式取引を
継続して実施し,E建設株式会社(以下「E建設」という。)の株式取引により2
00万円以上の含み損を,F株式会社の株式取引により270万円以上の含み損を,
投資信託「太陽Wブル・ストック・オープン」により470万円以上の含み損を,
投資信託「パートナーズダブル・トレンドオープン」により1190万円以上の含
み損を被った。また,原告は,平成12年6月26日,当時のG株式会社に口座開
設を申し込み,同年7月14日から平成13年3月16日までの間,外国為替証拠
金取引を行い,約40万円の損失を受けた。
なお,原告は,本件先物取引を開始した後の平成14年2月15日,G株式会社
に対し,口座開設を申し込み,商品先物取引を開始している(以下「別件先物取
引」という。)。
このように,原告は,株式取引,投資信託,外国為替証拠金取引,商品先物取引
を経験し,投資ないし投機的取引に係る十分な経験を重ねており,複数の取引を重
ねる中で,一定の損失を経験しつつ,それでも取引を継続し,あるいは,従前の取
引に比べてより複雑かつ投機的な取引を選択している。
b原告は,愛知県春日井市に自宅用の土地建物を,宮崎県日向市の自己所有土
地に共同住宅(アパート)を新築して現在に至るまで保有し,共同住宅を1室月額
約5万円で賃貸し,不動産収入を得ている。
また,原告は,本件先物取引に係る口座開設申込書において資産を1000万円
以上と申告し,別件先物取引に係る取引口座申込書において保有金融資産を200
0万円以上と申告しているように,生活に余裕のある範囲で運用できる資産を有し
ていた。
c原告の以上のような取引経験,財産の状況等に照らせば,商品先物取引に係
る原告の適合性に問題があったとは認められない。
(イ)説明義務違反がないこと
原告は,本件先物取引の開始に際して,A商事の営業担当者から,「商品先物取
引委託のガイド」(乙12。以下「本件ガイド」という。)及び受託契約準則を受
領し,事前交付書面等に基づきそのリスク等についての説明を受け,その説明をお
おむね理解できた旨表明し,先物取引のリスクを了知した上で,取引の委託に際し
ては,受託契約準則の規定に従って,自己の判断と責任において取引を行うことを
承諾した。そして,原告は,平成13年4月17日付けで,約諾書(乙3)及び口
座開設申込書(乙5)にそれぞれ署名押印してA商事に提出し,同口座開設申込書
記載の「事前交付書面(委託のガイド等)の受領について」の欄には,いわば盲目
的に「説明を受け十分理解できた」に○印を付けるのではなく,「説明を受けおお
むね理解できた」に自分が当たる旨を主体的に判断して○印を付けた。
上記(ア)のとおり原告は投資ないし投機的取引に係る十分な経験を有していたも
のであるから,本件先物取引の契約締結に至る上記の事実経過を踏まえれば,取引
の説明をした書面は郵送されたものであるとの原告の供述を前提としても,これに
より原告の理解が不十分であったとか,A商事の営業担当者が原告に対する説明義
務を尽くしていなかったということはできない。
(ウ)新規委託者保護義務違反がないこと
A商事は,平成13年当時,受託業務管理規則(平成12年6月15日改定,同
日から平成13年7月31日まで施行。以下「本件管理規則」という。)を定め,
委託者の保護育成措置として,11条において,商品先物取引の経験がない委託者
について,3か月を限度とする習熟期間を設け,保護育成措置として,別に定める
「相応の建玉枚数の範囲」内において受託を行うこととし,習熟期間中は,その建
玉枚数の範囲を超えないこととする旨が定められている(別紙3参照)。そして,
A商事は,上記の「相応の建玉枚数の範囲」について,別紙4のとおり管理部内規
(以下「本件内規」という。)を定め,「(1)年収500万円以上,有価証券・預
貯金合計が500万円以上と推定されること,(2)商品取引に関する知識・理解度
が深いこと」を基準とする審査に適合する者(第1分類に該当する者)に対しては,
50枚を超え100枚までと定めている。
A商事は,原告が本件内規の第1分類に該当すると判断したことに基づき,原告
の習熟期間中は,建玉枚数を100枚までの範囲に限定するようにしていたのであ
って,その取引は本件管理規則に違反するものではない。
(エ)断定的判断の提供がないこと
断定的判断が与えられたというためには,投資ないし投機行動に踏み切る旨を決
断するだけの相応の根拠が認められたり,外務員の具体的な専門性や知識等に裏打
ちされていなければならないところ,原告が断定的判断として主張する各説明は,
その文言自体,いずれも必ずもうかる旨の表示になっていないことは明らかであり,
A商事の外務員が原告に対し断定的判断を提供して本件先物取引に勧誘したとは認
められない。
(オ)無断売買,実質的一任売買による違法がないこと
原告の投資ないし投機的取引経験に照らせば,本件先物取引における取引数量及
び金額の増加についても過当という評価は当たらないし,むしろ,取引の拡大が,
商品先物取引による利益獲得の拡大に対して強烈な意欲を有する原告の取引目的に
合致するものであって,原告自身の判断に基づくものであることは明白であり,こ
うした取引による損失がA商事の違法行為によるものと評価することはできない。
このことは,原告が,合計1686万1750円の差引損金を出した平成13年
9月20日以降も,別件先物取引を新たに開始して商品先物取引の委託先を増やす
という,取引の簡素化,収束化を望む者の行動とは全く相容れない行動をしている
ことからも明らかである。
(カ)両建て等の特定売買に関する原告の主張が失当であること
両建てを含め,いわゆる特定売買は,一般投資家であっても,目先の相場変動を
狙って,利益を追求するために(又はリスクを回避するために)日常的に行う取引
手法であって,特定売買ができないとなれば,投資家は,自由な取引の機会を奪わ
れることになる。
なお,原告は,昭和63年12月26日付けで「商品取引員の受託業務の適正な
運営の一層の確保について」(同日付け第63−5995号農林水産省食品流通局
商業課長,通商産業省産業政策局商務室長共同通達)が,同月27日付けで「委託
者売買状況チェックシステムについて」(同日付け63食流第6050号農林水産
省食品流通局商業課長通達)が,平成元年1月23日付けで「売買状況に関するミ
ニマムモニタリング(MMT)について」(同日付け通商産業省産業政策局商務室
長通達)がそれぞれ発出され(以下,これらの通達によるチェックシステムを「特
定売買監視システム」という。),特定売買監視システムにより特定売買の比率を
全体の20%以下にとどめる旨の指導があった旨を主張する。しかし,特定売買監
視システムに係る通達は平成11年4月1日に廃止されている上,原告がその根拠
とする記事は,特定売買監視システムに関する通達が発せられる前に記載された予
測記事にすぎないし,記事の内容も,それ自体,特定売買監視システムが監視ない
し指導に係るひとつの目安として機能する旨を説明するにとどまるものにすぎず,
取引を上記範囲内に制限する旨の規定は存在しない。
また,原告の主張する手数料化率は,損失合計に対する手数料合計の割合であっ
て,これによると,手数料が同じであれば損失が多いほど,手数料化率が低くなる
という不合理な数値であり(その不合理性は,顧客に利益が存在するがゆえに手数
料化率として100%を超える数値を示す本件において顕著である。),違法性の
判断に当たり,このような数値を基準とすることには合理性がない。
(キ)まとめ
以上のとおり,A商事は,本件先物取引において,商品取引員として果たすべき
注意義務を欠く違法があったとはいえず,不法行為責任を負うものとは認められな
い。なお,付言すれば,原告が問題とする損失は,平成13年9月20日の取引に
よって生じたものであるから,同取引とは関連のない取引等を含む本件先物取引全
体を違法と評価すべきではない。
イ過失相殺
仮に本件先物取引においてA商事に不法行為責任が認められる場合には,上記で
述べた本件先物取引に係る原告の落ち度にかんがみ,相当の過失相殺がされるべき
である。
ウ本件和解金が損害賠償金ではないこと
上記アのとおり,A商事は本件先物取引に関し不法行為責任を負うものではない。
本件和解契約が締結される過程において,原告がA商事に対し本件訴訟代理人の浅
井岩根弁護士(以下「浅井弁護士」という。)の名前を示したところ50万円の増
額がされたなどの事情があることからすれば,A商事が原告に本件和解金を支払っ
た趣旨は,本件先物取引に係る原告の苦情を円満に解決することにあったものであ
り,その性質は,一種の紛争解決金にすぎないものであって,不法行為に基づく損
害賠償金ではないというべきである。
(原告の主張)
アA商事の不法行為責任
(ア)適合性の原則違反
a収入,財産に対して不適合(過大)な取引を勧誘,受託していたこと
原告は,本件先物取引を開始した当時,投機取引の原資として投入し得る正味の
資産として,90万円程度の現金及びE建設の株式1000株のみを保有するにと
どまり,本件先物取引当初に原告が預託したのは,これらの資産のほか,借入金
(農協から借り入れたアパート建築用資金)を流用した100万円であった。
A商事の外務員H(以下「H」という。)は,原告が当初より投機不適格資金で
あることが明らかな借入金を取引原資としていたことを了知しながら,白金18枚
という過量な初回建玉を勧誘して受託し,その後も,一貫して取引の拡大を勧め,
取引開始後1か月強の建玉枚数が45枚,約1か月半後の建玉枚数が62枚,約3
か月後の建玉枚数が90枚,約3か月半後の建玉枚数が190枚まで膨れあがって
いた。
そして,原告は,これらの取引に要する委託本証拠金や追証拠金として,別表2
の「預託金」欄記載のとおり資金を預託させられているところ,これらの入金はい
ずれも借金によって調達したものであった。さらに,平成13年8月2日に入金し
た450万円に至っては,自宅を担保にI株式会社から借り入れて調達したもので
あったが,Hは,I株式会社からの借入れを迷っていた原告に対し,借入れによる
資金調達を勧めた。このように,Hは,明らかに投機原資としては不適格な資金で
あることを承知の上で,原告に対し,借入れを勧めてまで,取引のより一層の拡大,
継続を企図していた。
以上のような取引状況及び資金状況に照らせば,本件先物取引は原告の上記のよ
うな資産状況に照らし明らかに過大なものといわざるを得ず,これを承知で,かつ,
借入れを勧めてまで,かかる過大取引を勧誘,受託したHの行為は強度の違法性を
有する。
b経験,知識に照らして不適合(過大)な取引を勧誘,受託していたこと
原告は,公社債,現物株及び投資信託の証券取引の経験を有してはいたが,信用
取引はしていなかった。
なお,原告は,本件先物取引以前に,約8か月にわたり,G株式会社との間で外
国為替証拠金取引を行っていたが,取引開始に当たっても,取引中においても,G
株式会社の担当者とは一切面談しておらず,資料等は送付されてきたのみであり,
かつ,取引口座開設申込書も電話による担当者からの指示に従って記入したものに
すぎないなど,取引の仕組みやリスクについて何ら具体的な説明を受けてはいなか
った。実際の取引内容及び取引結果も,450万円を投入して約40万円の損失を
被ったという程度であり,金融デリバティブ取引としての高リスク性を実感するに
はほど遠いものであった。そのため,原告は,外国為替証拠金取引について,当時
は,そのレバレッジ性や,現物株あるいは投資信託より危険なものであるとの認識
を持つには至っていなかった。
このような原告の投資経験及びその理解程度に照らせば,商品先物取引について,
その仕組みやリスク内容を具体的かつ的確に理解,判断することは困難である。
しかるに,HをはじめとするA商事の従業員らは,原告に対し,当初,喫茶店に
て「小一時間ほど」面談説明したのみで,本件ガイドなどの説明書は送付したもの
のこれに基づき具体的な取引の仕組みやリスクを面談説明することもなく取引を開
始させ,前記aのとおり,短期間に取引規模を拡大させた。
このようなHらの取引勧誘,受託行為は,原告の知識,経験に照らして,明らか
に過大,不適合な取引を勧めるものであって,適合性原則に違反する違法行為であ
ることは明らかである。
(イ)説明義務違反
原告の本件先物取引開始以前の投資取引経験が,商品先物取引の具体的リスクを
覚知,理解させるに足るものではなかったことは前記(ア)のとおりであり,そうで
あればこそ,A商事の従業員らは,本件先物取引勧誘に際して,原告に対し,商品
先物取引の具体的な仕組みやこれに内在する具体的なリスク(①預託する証拠金
は総約定代金の約5%ないし10%にすぎないこと,②値動きが約定値段から予
想に反して2.5%ないし5%変動すると追証拠金が必要となること,③預託し
た証拠金以上の損失が発生する危険があること,④相場における損益の平均的な
確率を前提にすれば,取引を反復継続することで,手数料の累積により遅かれ早か
れ必然的に元本の欠損を生ずること,⑤顧客と取引員との間に意図的な向かい玉
のみならず,偶発的な利害相反もあり得ること)及びこれらを踏まえた資金投下の
あり方や適切な取引仕法などにつき,資料等を示すことはもちろん,口頭において
も,具体的かつ原告が理解できる程度に十分な説明を行うことが要求されていたも
のである。
しかるに,原告がA商事の従業員らから受けた説明は,自宅近くの喫茶店にて
「小一時間くらい」面談にて説明を受けたというものにすぎず,法定交付書面たる
本件ガイドは,取引口座開設申込書(乙5)等と一緒に郵送されてきたのであって,
これに基づいて具体的な面談説明は一切受けていなかった。この程度の説明では,
上記のような属性を有する原告に先物取引の仕組みや具体的リスクを十分に理解さ
せることがほぼ不可能であることは明らかである。むしろ,Hは,原告に対し「私
はプラチナが得意です。江戸時代に開発されたテクニックで売り買いをして利益を
出します。」などと述べており,過度に利益を強調するばかりで,損失発生のリス
クについては何ら具体性のない抽象的な説明しか行わなかったことは容易に推測で
きる。
しかも,本件先物取引においては,投入した資金及び取引によって生じた利益の
ほぼ全額を証拠金に充当して,常時限度一杯の建玉がされており(いわゆる満玉),
かかる取引手法は,ひとたび相場が反転した場合には,余剰資金がないため,直ち
に破綻の危機に直面する極めて危うい手法である一方,業者にとっては,顧客の相
場変動に対する耐性を弱化させ,誘導に対する抵抗力を低減させる点及び相場反転
をきっかけに追証ないしは両建に要する証拠金名目でさらに顧客から資金を引き出
す機会を増大させるという点で利益となる。原告が,かかる危険な手法を無自覚に,
かつ,その意味を理解することなく行っていること自体が,商品先物取引の具体的
リスクについて全く理解していない何よりの証左である。
以上からすれば,Hらの説明義務違反は明らかである。
(ウ)新規委託者保護義務違反
原告は,本件先物取引以前において,商品先物取引の経験を有していなかったの
であり,A商事の本件管理規則においても,かかる新規委託者に対しては,取引開
始から3か月間は保護育成措置として,余裕資金を保持した取引を励行させるとと
もに,当該委託者の資質,資力等を考慮のうえ,相応の建玉枚数に制限する旨が規
定されていた。
しかるに,本件先物取引の取引開始から3か月間の取引の実態を見るに,当初建
玉は白金18枚で開始され,取引開始後1か月強の建玉枚数は45枚,約1か月半
後の建玉枚数は62枚,約3か月後の建玉枚数は90枚に達していた。
さらに,Hは,原告が当初より借入金を取引原資に充てていることを承知の上で,
原告の入金額及び取引による利益のほぼ全額を委託証拠金に振り替えて,その限度
一杯の建玉を恒常的に行わせていたのであって,余裕資金の保持については何らの
考慮も払われていなかった。
以上のとおり,A商事の新規委託者保護義務違反は明らかである。
(エ)断定的判断の提供
Hは,原告に対し,各商品を勧誘するに際し,「プラチナに詳しいんですよ。江
戸時代に開始された,そういう手法があってね,そういうのでやって割りと当たる
んですよ。」,「(プラチナの値動きについて)下がるんじゃないか。」,「今コ
ーンが底値です。」,「ガソリンは,上司で非常に石油製品に詳しい人がおるから,
この人の言うのは間違いない。」,「(年明けの小豆の値動きについて)需要が多
くなるから絶対値上がりする。年明けると,天皇陛下のお祝い事があるで絶対需要
がある。」などと勧誘した。
原告は,これらHの説明の真偽については,確認する知識も情報も持ち合わせて
おらず,その結果,Hの勧める商品取引を断ったことはなかった。
このようなる経緯に照らせば,Hの上記各勧誘文言は,原告にとって,「確か
だ」と誤認させるに足りるものであったことは明らかであって,断定的判断提供に
該当する違法な勧誘行為であったことは明白である。
(オ)無断売買,実質的一任売買
本件先物取引は,そもそも3取引所で7商品もの多品種取引である上,建落の頻
度も頻繁であり,素人顧客では建玉状況,損益状況を正確に把握することすら困難
な状況であった。
原告は,先物取引の経験はなく,A商事からは先物取引について十分な説明を受
けておらず,相場の動きなどについては独自の情報源を持っていなかったから,A
商事の従業員からの一方的な電話連絡,指示に従わざるを得ず,実質的な投資判断
を行っていたのはA商事の従業員であったことは明らかであり,本件先物取引は,
そのほとんどが無断売買ないしは押付け売買であって,その実態は,実質的一任売
買と評価されるべきものというべきである。
(カ)両建て等の特定売買
a以下の取引は,その性質上,委託者に売買委託手数料の負担を生じさせるば
かりで,委託者の利益につながらない不合理な取引方法であるため,委託者保護の
見地から望ましくない取引方法として,特定売買監視システムの対象とされ,この
特定売買の比率を全体の20%以下にするよう指導がされている。
(a)直し既存建玉を仕切るとともに,同一日内で新規に売り直し又は買い直し
を行っているもの(異限月を含む。)
(b)途転既存建玉を仕切るとともに,同一日内で新規に反対の建玉を行ってい
るもの(異限月を含む。)
(c)日計り新規に建玉し,同一日内に手仕舞いを行っているもの
(d)両建て既存建玉に対応させて反対建玉を行っているもの
(e)手数料不抜け売買取引による利益が発生したものの,当該利益が委託手数
料より少なく,差引損となっているもの
b本件先物取引においては,別表3のとおり特定売買が行われ,全取引中の特
定売買の占める割合は45.8%になり,特定売買を全取引の20%以下にすると
いう基準をはるかに超えている。
また,本件先物取引の差引損益1281万5795円に対し,A商事が得た委託
手数料は1425万7900円であり(手数料化率は111.25%),取引によ
る売買損益自体では215万5000円の利益が出ていたにもかかわらず,無意味
かつ頻繁な取引によって生じた膨大な手数料の負担が生じたために,原告が多額の
損失を被る結果となったことを意味する。
このように,A商事において,原告の利益を犠牲にして(少なくともその利益に
何ら顧慮することなく),自らの利益を図るという違法な業務遂行がされていたこ
とは明らかである。
(キ)まとめ
以上のとおり,A商事の従業員らは,本件先物取引において違法な勧誘,取引を
行ったものであるから,A商事は,これによって被った原告の損失につき,民法7
15条の不法行為責任を負うものというべきである。
イ過失相殺が許されないこと
原告がA商事の従業員から先物取引のリスクについて十分な説明を受けておらず,
そのリスクを十分に認識していなかったことは既に述べたとおりであり,仮に原告
に不注意が認められるとしても「単純な落ち度」にすぎないし,原告は自宅を担保
に供して消費者金融から借り入れた資金も本件先物取引の原資にしており,最低限
その資金分を確保しなければ取引を終えることができない状態に追い込まれていた
ものであり,原告をこのような状態に追い込んだのは,A商事の従業員が説明責任
を果たさなかったことによるものであるから,A商事の違法行為を過失相殺によっ
て減責するというのは,公平の法理に著しく反するものというべきである。
ウ本件和解金が損害賠償金に当たること
以上のとおり,A商事は原告に対し不法行為に基づき1281万5795円の損
害賠償債務を負っており,本件和解金は,かかる不法行為に基づく損害賠償金とし
て原告に交付されたものというべきである。
なお,被告は,原告がA商事に対し浅井弁護士の名前を示したところ50万円の
増額がなされたことなどをもって,本件和解金は一種の紛争解決金であって損害賠
償たる性質を有しないと主張するが,損害賠償の示談交渉において,交渉中に金額
が上下することやその際に様々な要素が考慮されて金額決定に至ることは当然のこ
とであって,こうした事情は,本件和解金が損害賠償たる性質を有しないことの根
拠とはなり得ない。
(2)争点(2)(本件和解金が所得税の課税対象となるか否か)について
(被告の主張)
ア本件和解金が雑所得に当たること
所得税法(以下「法」という。)は,譲渡所得,山林所得,一時所得等の所得類
型を設けて,一時的,偶発的利得を一般的に課税の対象とする一方,雑所得という
類型を設けて,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,
山林所得,譲渡所得及び一時所得に含まれない所得をすべて雑所得として課税の対
象とする旨定めていることから明らかなように,人の担税力を増加させる経済的利
得はすべて所得を構成するという包括的所得概念を採用しているところ,損害賠償
金についても人の担税力を増加させると捉えることが可能であるから,課税の対象
としているものと解するのが相当である。
このことは,法9条1項16号,所得税法施行令(以下「施行令」という。)3
0条が,損害賠償金であっても課税所得とされる場合があることを定めていること
からも明らかである。
本件和解金は,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所
得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しないから,雑所得に当た
る。
イ本件和解金が法9条1項16号を受けて定められた施行令30条2号の「不
法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠
償金」に当たらないこと
(ア)法9条1項16号は,「損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害
賠償金(これらに類するものを含む。)で,心身に加えられた損害又は突発的な事
故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるも
の」を非課税所得とし,これを受けて定められた施行令30条は,①身体の傷害
又は心身に加えられた損害について支払を受けるもの(同条1号),②不法行為
その他突発的な事故により資産に加えられた損害について支払を受けるもの(同条
2号)について非課税とする旨定めている。
損害賠償金が非課税とされるのは,その一般的性格を一種の財産的穴埋めとして
捉え,そのような賠償行為からは何らの利得も生じてこない以上,課税しないのは
当然であるとの発想に基づくものと解されるから,損害賠償金が本当の意味での
「損害の償い(穴埋め)」であって,法令が予定する非課税の取扱いに値する損害
賠償金に該当する場合のみ非課税とするのが相当であり,損害賠償金が非課税所得
に当たるか否かについては,単なる当事者間の支払名目によってではなく,法の趣
旨から,支払われた損害賠償金の実体に即して判断する必要がある。
(イ)そして,法9条1項16号を受けて定められた施行令30条各号の規定は,
損害賠償金を損害を加えられた対象が心身であるか資産であるかによって大きく2
つに分け,被害対象が心身の場合には,計上される必要経費の賠償金を除き,ほと
んど全面的に非課税所得としているのに対し,被害対象が資産の場合には,「不法
行為その他突発的な事故によるもの」だけに限定した上,計上される必要経費の賠
償金はもちろん,施行令94条に該当するものも除くとして,非課税所得の範囲を
大きく限定していることからすると,被害対象が資産の場合には,不法行為に基づ
く損害賠償金が非課税所得に該当するか否かは,当該損害賠償金が「突発事故,つ
まり相手の合意をえない予想されない災害」による損害と同視できる事情に基因し
て得られたものか否かという点を基準として判断するのが相当である。
このことは,補償金,損害賠償金等に関する税制改正がされた昭和37年12月
7日付け税制調査会答申(乙29。以下「税制調査会答申」という。)において,
「課税所得を構成するか,あるいは非課税所得とすべきかという点の判断の基準は,
その損害の発生が不可抗力ないし不可避的なものであったかどうかということより
も,むしろそれが突発事故,つまり相手の合意をえない予想されない災害であった
かどうかというところに基準を置くほうが,常識的に妥当と思われる。」という方
針が示されていたこと,法9条1項16号が「突発的な事故により資産に加えられ
た損害に起因して取得するものその他の政令で定めるもの」と規定しているが,
「その他の」の文言の法令上の用いられ方は,その前の字句が,その後にある字句
の例示として,その一部を成している場合に用いられるとされていることに照らし
ても明らかである。
そうすると,施行令30条2号が「不法行為その他突発的な事故により資産に加
えられた損害」と規定する「不法行為」とは,「突発的な事故」と同様の不法行為,
すなわち,相手方との合意に基づかない突発的で予想することができない不法行為
を意味するものと解するのが相当である。
(ウ)これを本件先物取引についてみると,原告は,投機利益の獲得を企図して積
極的にリスクの高い先物取引に関与したものであり,いわば自らの意思で危険に近
づき損失を被ったにすぎないこと,しかも,原告は,平成13年9月20日及び平
成14年3月1日の2度にわたり,多額の損失を被り,差引損益額の累計額が一挙
にマイナスになる事態を認識し,本件先物取引が多大な損害を生じさせるリスクの
高いものであることを痛感していたにもかかわらず,A商事の従業員に対し,本件
先物取引の手仕舞いを申し出ることなく,更に多額の利益を獲得することを期待し
て,本件先物取引を継続したことなどの取引経緯に照らすと,仮に,本件先物取引
においてA商事に違法性がある旨の判断がされたとしても,当該「違法性」及び原
告に発生した「損失」は,法9条が非課税所得として予定する突発的な事故と同様
の「不法行為」とは大きく異なるから,本件和解金は,施行令30条2号の「不法
行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償
金」には当たらないというべきである。
ウ仮に前記イの主張が認められないとしても,次のとおり,本件和解金は非課
税所得とはならない。
(ア)本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得とはならない
こと
本件和解金が不法行為に基づく損害賠償金であるとしても,その内訳として,本
件先物取引によって生じた売買差損,委託手数料,取引所税及び消費税の累計額,
弁護士費用及び遅延損害金が考えられるところ,本件先物取引においては売買差損
は生じておらず(むしろ,売買差益が生じている。),原告は損害賠償請求訴訟を
提起することなく和解金を得ているため弁護士費用相当額の損害が発生しているも
のではないから,本件で損害として考えられるものとしては,委託手数料,取引所
税及び消費税の累計額及び遅延損害金が考えられる。
そして,委託手数料,取引所税及び消費税についての損害賠償金は,施行令30
条柱書きの括弧書きの「所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんす
るための金額」に該当し,非課税所得にはならないと解すべきである。
また,本件和解金のうち遅延損害金に相当するものがあるとしても,その法的性
質は実質的には利息と異ならないものであり,利息について非課税所得とする旨の
規定はないし,また,遅延利息は元本債権に附帯するものであり,従たるものとし
て元本と同じ性格を有するから,元本に当たる委託手数料,取引所税及び消費税が
前記のとおり非課税所得に当たらない以上,附帯する遅延損害金に相当する部分も
非課税所得には当たらないというべきである。
(イ)本件和解金が施行令94条1項2号に当たり,施行令30条2号括弧書きに
より非課税所得から除外されること
施行令94条1項2号は,「当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その
他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するも
の」と規定するが,「その他の事由」とは,必ずしも業務の休止等に限定されない
と解すべきであり,また,収益補償として取得する補償金にとどまらず,「その他
これに類するもの」としてさらに広い範囲を予定しているから,同号は,営業活動
に限らず,所得稼得活動から生じた経済的な価値の流入を全般的に含めて理解すべ
きである。
そして,本件先物取引は,その性質上極めて投機的性格が高いものの,原告は,
当該所得の発生を期待して取引を行っていた上,現に大幅な利益を発生させていた
から,同号の「当該業務」に当たるというべきであり,また,同項柱書きにいう
「収入金額に代わる性質を有するもの」とは,「本来収入となるべきもの」あるい
は「収入を補てんするもの」であれば足り,「本来所得となるべきもの」あるいは
「得べかりし利益の喪失を補てんするもの」などと限定的に解する根拠はないから,
本件和解金のような所得稼得活動たる業務から得られる経済的な価値の流入は,同
項柱書きにいう「収入金額に代わる性質を有するもの」に当たるというべきである。
したがって,本件和解金については全額が施行令94条1項2号に当たり,施行
令30条2号括弧書きにより非課税所得から除外されるというべきである。
(原告の主張)
ア本件和解金が所得に当たらないこと
本件和解金は,生じた損害を原状に回復する損害賠償金であって,担税力を増加
させるものではないから,収入といえども,純資産の増加という意味での所得にな
らないことは明らかである。
イ本件和解金は法9条1項16号を受けて定められた施行令30条2号の「不
法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠
償金」に当たること
(ア)被告は,施行令30条2号が「不法行為その他突発的な事故により資産に加
えられた損害」と規定する「不法行為」とは,「突発的な事故」と同様の不法行為,
すなわち相手方との合意に基づかない損害など突発的で予想することができない不
法行為に基づく損害に対する損害賠償金に限定する趣旨であると主張する。
しかし,施行令30条2号は「不法行為その他突発的な事故により資産に加えら
れた損害」と規定しているだけで,「不法行為」を突発的な事故によるものだけと
は限定していない。この規定からは,不法行為が「突発的な事故」の一類型である
といい得るだけで,「突発的な事故」以外の不法行為が存在するのは明らかである
のに,それらを除外していると解する文理上の根拠はない。「不法行為その他」と
の文言は,「不法行為その他の」との文言と対比しても,「不法行為」と「突発的
な事故」が,いわば並列的なものと理解する方が文理にも整合していることは明ら
かである。したがって,施行令が,「取引的不法行為」を特に除外していると解す
る根拠はないというべきである。
被告の主張は「取引的不法行為」が「突発的な事故」に当たらないことを前提と
するものであるが,取引的不法行為によって損害を発生させることが現にあるので
あるから,これを本号から除外して解するなら相当の合理的理由がなければならな
いところ,これが,不法行為による損害であり,それを賠償することにおいて,他
の突発的事故における損害及びそれに対する補填又は賠償の関係と同質である以上,
取引的不法行為だけを除外するに足りる理由はないというべきである。
被告は,法9条1項16号の「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資
産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの」という規
定中に「その他の」という文言が用いられていることを上記主張の理由としている
が,同号の規定は,損害賠償金が非課税である基本を確認しているものにすぎず,
「その他の政令に定めるもの」とは,具体的に非課税所得となる損害賠償金等を政
令で改めて規定することを明確にしたものであることは文理上明らかである。また,
被告は,税制調査会答申の内容を上記主張の理由としているが,税制調査会答申の
内容は,損害賠償金を非課税とする不法行為の範囲を限定する趣旨のものではない。
(イ)以上のとおり,施行令30条2号が「不法行為その他突発的な事故により資
産に加えられた損害」と規定する「不法行為」とは,「突発的な事故」と同様の不
法行為に限定されるものではないというべきであるから,不法行為の損害賠償金と
して受領した本件和解金は,同号の「不法行為その他突発的な事故により資産に加
えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に当たる。
なお,仮に施行令30条2号の「不法行為」が「突発的な事故」と同様の不法行
為に限定されるとしても,先物取引を行い商品取引員の不法行為により損害を被っ
た場合には「突発的な事故」に当たるというべきであるから,本件先物取引に係る
不法行為の損害賠償金として受領した本件和解金は,同号所定の損害賠償金に当た
るものである。
ウ本件和解金について,施行令30条柱書きの括弧書き又は施行令94条1項
2号の適用はないこと
(ア)被告は,本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得とは
ならないと主張する。
しかしながら,施行令30条柱書きの括弧書きは,非課税とされた収益の補償金
に対する規定であって,本件和解金のように収益の補償金でない損害賠償金とは関
係がない規定である。
したがって,本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得とは
ならないとの被告の主張は理由がない。
(イ)また,被告は,本件和解金が施行令94条1項2号に当たり,施行令30条
2号括弧書きにより非課税所得から除外されると主張する。
しかしながら,施行令94条1項柱書きの「収入金額に代わる性質を有するも
の」とは,「本来収入となるべきもの」あるいは「収入を補てんするもの」であっ
て,原状回復にすぎない非課税たる損害賠償金までをこれに含めて解釈することは
できないというべきであるから,不法行為により客観的に純資産を減らした損失を
埋めるための補てん金(原状回復たる損害賠償金)である本件和解金は「収入金額
に代わる性質を有するもの」には当たらない。さらに,上記の性格を有する本件和
解金は,同項2号の「収益の補償として取得する補償金」にも当たらないし,同号
の「その他これに類するもの」にも当たらない。
したがって,本件和解金が施行令94条1項2号に当たるとの被告の主張は理由
がない。
エまとめ
以上によれば,本件和解金は,法9条1項16号,施行令30条2号の非課税所
得に当たるから,所得税の課税対象となるものではない。
第3争点に対する判断
1争点(1)(本件和解金がA商事の不法行為に基づく損害賠償金に当たるか否
か)について
(1)証拠(甲10,11,乙2,3,5,7∼9,12∼15,17∼25,3
9∼43《枝番号を含む。》,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が
認められる。
ア原告の経歴,資産及び投資経験
(ア)原告(昭和20年2月生)は,昭和35年3月,中学校を卒業した後,愛知
県瀬戸市にある会社に入社して陶器玩具の製造等の仕事をし,昭和37年1月,同
社を退社して,愛知県春日井市にあるJ株式会社に入社し,ホーロー加工の仕事を
したり,子会社に移籍して人工大理石等の製造をしたりし,平成17年2月,定年
退職になったが,その後も嘱託として大手電器メーカーの下請けの仕事を担当し,
平成18年11月,J株式会社を退社した。原告は,平成19年2月,建設業の仮
設機材をレンタルする会社に入社し,レンタル機材の清掃の仕事をしている。
原告には,妻と3人の子があるが,子らはいずれも成人して原告と離れて生活し
ている。
原告は,肩書地に土地及び昭和50年12月3日建築の居宅を所有するほか,宮
崎県日向市a町b丁目c番に土地及び平成13年3月25日建築のアパートを所有
している。原告は,本件先物取引開始時点において,このほか約90万円の現金を
保有していた。
なお,原告は,上記アパートの新築のため,その土地,建物に根抵当権を設定し,
K農業協同組合から4800万円を借り入れて,その中から建築資金4600万円
を支払っており,同アパートの居室8室を1室当たり月額約5万円で賃貸し,賃料
収入を得ていた,
原告は,平成14年当時,上記アパートの賃料収入から必要経費を控除した不動
産所得と,J株式会社からの給与があり,これらの合計は約500万円であった。
(イ)原告は,平成元年12月6日,C証券に口座を開設して証券取引を開始し,
投資信託やE建設及びF株式会社の株式の現物取引を行った。
このうち,E建設の株式取引の経緯をみると,平成2年6月19日に同株式10
00株を265万円(1株2650円)で購入し,平成4年9月3日にこれを18
5万円(1株1850円)で売却し,平成6年6月10日に同株式2000株を2
64万円(1株1320円)で購入した。本件先物取引開始直前の平成13年3月
末には,同株式2000株は時価52万2000円(1株261円)に下落してい
た。
また,原告は,同月末の時点で,F株式会社の株式取引により270万円以上の
含み損を,投資信託「太陽Wブル・ストック・オープン」により470万円以上の
含み損を,投資信託「パートナーズダブル・トレンドオープン」により1190万
円以上の含み損を被っていた。
(ウ)原告は,平成12年6月26日,G株式会社に対して口座開設を申し込み,
同年7月14日,300万円を入金して外国為替証拠金取引を開始し,平成13年
3月16日までの間,150万円の追加入金を含め合計450万円を入金して同取
引を行い,これにより約40万円の損失を受けた。
イ本件先物取引の経緯
(ア)原告は,平成13年2月ころ,A商事の営業担当者から数回にわたり電話を
受けて先物取引を勧誘された上,自宅近くまで来ているので是非会いたいとの電話
連絡を受け,営業担当者と面会して,先物取引の勧誘を受けた。
その後,原告は,Hから電話を受け,先物取引により利益が得られるとの説明を
聞いて,先物取引をすることにし,同年4月17日,約諾書(乙3)及び口座開設
申込書(乙5)に署名押印して,A商事との間で委託契約を締結した。なお,原告
は,上記口座開設申込書において,「税込年収」欄の「500万円以上」,「資
産」欄の「1000万円以上」,「商品先物取引のご経験」欄の「無」に○印を記
載し,証券取引について「証券取引のご経験」欄の「有」,「お取引商品」欄の
「現物取引」,「お取引期間」欄の「5年以上」,「ご投下資金」欄の「1000
万円以上」に○印を記載し,「事前交付書面(委託のガイド等)の受領について」
の欄の「説明を受けおおむね理解できた」に○印を記載した。原告は,このころ,
A商事から本件ガイドを受け取った。
(イ)原告は,平成13年4月18日にE建設の株式1000株を,同月19日に
90万円,同月23日に100万円を預託して,本件先物取引を開始した。原告は,
手持ちの現金90万円と宮崎県日向市のアパートを建築する際に借り入れた借入金
の一部から,上記預託金190万円を支出した。
原告は,Hの勧めに従って,同月23日,白金18枚を売建てし,同年5月11
日にコーン5枚を買建てし,同月22日,100万円を追加入金し,同月25日,
白金20枚を売建てし,同月28日,灯油3枚を買建てし,同月30日,灯油3枚
の買玉を仕切って,灯油2枚を売建てし,取引開始後1か月強の建玉枚数は45枚
(平成13年5月30日現在)となった。
その後,約1か月半後の建玉枚数は62枚(同年6月7日現在),約3か月後の
建玉枚数は90枚(同年7月27日現在),約3か月半後の建玉枚数は190枚
(同年8月17日現在)に増え,原告はこれら取引に要する委託証拠金として,同
年8月2日までの間に,別表2の「預託金」欄記載のとおり,合計910万円及び
E建設の株式1000株を預託した。なお,原告がA商事に預託した現金は,その
ほとんどがI株式会社等の金融機関から借り入れて調達したものであり,平成13
年8月2日に450万円を預託した際には,I株式会社から資金を借り入れるため
に自宅の土地,建物に根抵当権を設定した。Hは,原告が先物取引の預託金を上記
のように金融機関からの借入れにより調達していたことを知っていた。
(ウ)原告は,Hの勧めに従って,平成13年8月6日から同年9月14日にかけ
て,粗糖,白金,ガソリンについて,連日頻繁に取引を繰り返したが,この間は,
利益が上がり,同年8月21日から同年9月10日までの間,別表2の「返戻金」
欄記載のとおり合計310万円の返戻金を受領した。
(エ)原告は,平成13年9月20日ころ,Hから,粗糖の値が下がり,白金の値
が上がっており,いずれも損が出ているとの連絡を受けたが,どうしたらよいか全
く見当がつかなかったため,Hにうまく処理してほしいと依頼した。Hは,粗糖買
い建玉120枚,白金売り建玉75枚を仕切り,粗糖で約1252万円,白金で約
434万円の損失が生じた。
(オ)原告は,平成13年9月25日以降,Hから,損が膨らんでおりそれを防ぐ
ために取引を行う必要があると言われたり,他の商品で利益を出して損失を挽回す
ることを勧められたり,追証拠金が発生したので至急追加入金をするように言われ
たりし,同月26日から同年12月4日までの間,金融機関から借り入れて,別表
2の「預託金」欄記載のとおり合計470万円を預託した。
(カ)原告は,平成14年4月ころ,Hから担当者が替わったと連絡を受け,新し
い担当者から,損失を挽回するために必要であると勧められて,同月8日から同月
16日までの間,金融機関や親族から借り入れて,別表2の「預託金」欄記載のと
おり,合計250万円を預託した。
(キ)平成14年6月ころ,原告の担当者がA商事の営業部長に替わり,営業部長
から,継続して取引をすることを勧められたが,損失は膨らんでいき,同年7月2
日ころ,追証拠金が工面できないまま強制決済され,本件先物取引は終了した。
(ク)原告は,本件先物取引により,215万5000円の売買差益を得ているが,
その一方で,委託手数料1425万7900円並びに消費税及び取引税合計71万
2895円を支払っており,これらを差引きすると,結果的に1281万5795
円の損失を被った。
本件先物取引においては,東京工業品取引所,東京穀物商品取引所及び関西商品
取引所の3取引所において7商品について取引が行われ,このうち特定売買がされ
た回数は,別紙特定売買一覧表のとおりである。
ウ本件和解契約に至る経緯
(ア)原告は,本件先物取引終了後,A商事の営業部長や管理部副部長に会い,言
われたとおりに取引したにすぎないこと,I株式会社や親族から本件先物取引のた
めに金銭を借りたこと,食事を満足にとれないこと,家族から相手にされなくなっ
てしまったことなどを伝え,何とかしてほしいと訴えたところ,平成14年9月中
旬ころ,管理部副部長から400万円なら支払うとの連絡を受けた。原告は,管理
部副部長に対し,I株式会社と親族から借りた分の約1000万円の返還を要求し
たが,話はつかなかった。
(イ)原告は,信仰している宗教団体の法律相談を担当する弁護士から,実践先物
取引被害救済の手引きという本をもらい,これを読んだところ,適合性原則違反,
無断売買,一任売買,手数料稼ぎなどのことが書いてあり,これらは本件先物取引
に当てはまるから損害賠償を請求できると思うようになった。原告は,A商事に電
話を架け,本を読んで得た知識を基に,本件先物取引は違法であるから金員を返還
するように求め,その後,3,4回面会して話をしたが,従前の提示額(400万
円)が増額されることはなかった。
(ウ)原告は,上記の本に連絡先が書いてあった浅井弁護士に連絡して相談したと
ころ,浅井弁護士から,訴訟を提起して勝てる可能性はあるが,それには時間がか
かると言われ,長期間訴訟を追行することは難しいと考えた。また,弁護士費用や
訴訟費用を負担する目処も立たなかった。なお,原告は,浅井岩根法律事務所に対
し,法律相談料として1万円を支払った。
(エ)原告は,再度自分で交渉することとし,A商事の管理部長に電話を架け,浅
井弁護士に面談したことや浅井弁護士から聞いた話を伝えたところ,管理部長から,
「浅井弁護士とは面識がある。会社に言ってもう50万円出してもらう。会社が出
さなければ私が50万円出す。」と言われたので,浅井弁護士に電話をして相談し
た上,450万円の返還を受けることで了承することにした。
(オ)原告は,平成15年2月25日,A商事との間で,本件和解金457万04
55円の支払を受ける旨の本件和解契約を締結し,その後,A商事は,本件和解金
の支払として,7万0455円を原告の帳尻損金に充当するとともに,450万円
をB銀行勝川支店の原告名義の普通預金口座に振り込んだ。
(2)以上の事実関係を基に,A商事に不法行為が成立するか否かを検討する。
ア適合性の原則違反,説明義務違反に関する違法性について
(ア)原告は,本件先物取引開始当時56歳であり,自宅と宮崎県日向市のアパー
トを所有していたほか,現金約90万円とE建設の株式2000株を所有しており,
J株式会社からの給与とアパート収入による不動産所得として年間約500万円を
得ていたが,投資に回すことのできる余裕資金としては,上記の現金約90万円と,
平成13年3月末時点の時価約52万2000円のE建設の株式2000株程度で
あった。
原告は,それまでの投資経験として,C証券に口座を開設して行った数銘柄の現
物株取引及び投資信託と,G株式会社に口座を開設して行った外国為替証拠金取引
があり,いずれの取引においても損失を被ったことがあったが,商品先物取引の経
験はなかった。また,原告がそれまで勤務していた会社においては,商品製造の仕
事をしており,投資に関する知識が得られるような職場での勤務経験はない。
これらの事実関係によれば,原告は,一定程度の投資経験,資産,収入を有する
ものではあるが,商品先物取引の投資経験はなく,商品先物取引のリスクについて
は,一般的にリスクの高い取引であるという程度の知識を有していたとしても,商
品先物取引における取引の仕組み,それによって生じ得る具体的なリスクを理解し
ていたものとは認められないし,取引の対象商品や行うべき取引手法を判断するこ
とができる能力,知識を有していたとか,各商品の相場状況について独自の情報を
得ていたものとも認められない。
(イ)A商事の営業担当者やHは,上記のような原告に対し,電話で商品先物取引
を勧誘して原告に本件先物取引を行うことを決意させ,本件先物取引のために金融
機関から借入れをしてまでその預託金を調達させたものである。
原告は,本件先物取引の開始の際,A商事の営業担当者ないしHから,本件ガイ
ド等で一定の説明を受けたものの,上記程度の商品先物取引の経験,知識を有して
いたにすぎない原告にとって,先物取引の仕組み,それによって生じ得る具体的な
リスクを十分に理解できるような説明を受けたことを認めることはできない(なお,
原告が口座開設申込書において「説明を受けおおむね理解できた」という箇所に○
印を記載しているが,このことは原告が実際に先物取引の仕組み,リスクを理解し
たことを示すものとはいえない。)。
イ新規委託者保護義務違反に関する違法性について
本件管理規則及び本件内規によれば,A商事においては,商品先物取引の経験が
ない委託者について3か月を限度とする習熟期間を設け,年収500万円以上,有
価証券・預貯金合計が500万円以上と推定され,かつ,商品取引に関する知識・
理解度が深いことを基準とする審査に適合する者に対しては,50枚を超え100
枚までの建玉枚数の範囲内で取引するが,この基準を満たさない者に対しては,建
玉枚数を50枚以下とする旨が定められている。また,本件管理規則には,余裕資
金を保持した取引を励行させる旨も定められている。
原告は,「有価証券・預貯金合計が500万円以上と推定される者」とは認めら
れない上,「商品取引に関する知識・理解度が深い」とも認められないところ,本
件先物取引は,取引開始後1か月強の建玉枚数が45枚(平成13年5月30日現
在),約1か月半後の建玉枚数は62枚(同年6月7日現在),約3か月後の建玉
枚数は90枚(同年7月27日現在),約3か月半後の建玉枚数は190枚(同年
8月17日現在)に増えており,3か月以内の建玉枚数は本来50枚以下に抑える
べきであったにもかかわらず,これを超えた取引がされている。また,原告は預託
金の大半を金融機関又は親族からの借入金によって調達しており,本件先物取引は,
余裕資金を保持した状態でされたものとは到底いうことができない。
ウ断定的判断の提供,無断売買,実質的一任売買及び両建て等の特定売買に関
する違法性について
前記アのとおり,原告は,取引の対象商品や行うべき取引手法を判断することが
できる能力,知識を有しておらず,また,各商品の相場状況について独自の情報を
得ていなかったにもかかわらず,前記(1)イのとおり,3取引所で7商品もの取引
を頻繁に行っており,それが原告に無断でされたと認めることはできないものの,
その大部分の実質的な判断はHによってされていたものと認められる。そして,別
表3のとおり,途転,日計り,両建て及び手数料不抜けの特定売買が頻繁に行われ,
その特定売買が全取引に占める割合は45.8%である。上記の特定売買に関して
は,農林水産省及び通商産業省が特定売買監視システムを設け,取引全体に占める
特定売買の割合(ただし,取引開始後3か月以内)を受託業務の適不適の判断基準
の一つとしたものであり,現時点において,特定売買監視システムに関する通達が
廃止されているとしても,一定期間の取引を全体的に観察した場合の特定売買の比
率は,商品取引員の外務員が顧客の利益よりも売買委託手数料を稼ぐという不公正
な目的を優先させて取引を行わせたか否かの一つの指標となり得るものというべき
である。
そうすると,本件先物取引において,A商事の担当者が個々の取引の際に具体的
にどのような勧誘をしたかは必ずしも明確ではないものの,本件先物取引は,実質
的には委託の際の指示事項の全部又は一部について原告の指示を受けないでされた
ものであって,しかも,その取引内容は,特定売買の比率が45.8%と高い割合
であり,原告の被った損失が1281万5795円であるのに対し,A商事は14
25万7900円もの多額の手数料を得たものであるから,本件先物取引の大部分
がHによる実質的な一任売買であり,またその一定部分が売買委託手数料を稼ぐ目
的を優先させたものであると認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
エ以上によれば,①A商事の営業担当者又はHは,商品先物取引の経験がな
く,取引の対象商品や行うべき取引手法を判断することができる能力,知識を持た
ず,各商品の相場状況について独自の情報を得る能力もない原告に対し,先物取引
を勧誘し,その取引手法やリスクについて十分な説明をしないまま,取引を始めさ
せ,②Hは,商品取引に関する知識・理解度が深いとはいえず,また,余裕資金
を保持してはいなかった原告に対し,本件管理規則及び本件内規に反して,3か月
以内に所定の基準を超える建玉90枚もの取引を行わせ,その約20日後には建玉
190枚にまで増加させ,さらに,原告がA商事に支払った預託金の大半を金融機
関又は親族からの借入金によって調達していることを知りながら,原告に過大な取
引を行わせ,③しかも,本件先物取引の大部分がHによる実質的な一任売買であ
り,またその一定部分が売買委託手数料を稼ぐ目的を優先させたものであったので
あるから,原告が本件先物取引によって被った損害は,A商事の営業担当者及びH
の不法行為によるものであり,A商事は,同損害につき民法715条に基づく損害
賠償責任を負うものというべきである。
なお,被告は,原告が問題とする損失は平成13年9月20日の取引によって生
じたものであるから,同取引とは関連のない取引等を含む本件先物取引全体を違法
と評価すべきではないと主張するが,原告が結果的に被った損失1281万579
5円は一連の本件先物取引によって生じたものと評価するのが相当である。また,
被告は,原告が平成14年2月15日に別件先物取引を開始している点を指摘する
が,別件先物取引は,本件先物取引を開始した後の事情であって,A商事の不法行
為の成否に直接影響するものとは認められない。
(3)次に,過失相殺について検討する。
原告の年齢,投資経験,保有資産及び本件先物取引の経緯に照らせば,原告にお
いても,一般的にリスクが高いとされている先物取引を安易に行ったことについて
不注意があったといわざるを得ない。
本件では,本件和解金457万0455円(原告の被った損失1281万579
5円の約35.7%に相当)が不法行為に基づく損害賠償金として支払われたもの
か否かが問題となるところ,A商事の不法行為の内容及び程度,原告の不注意の内
容及び程度,本件先物取引の経過等に照らすと,A商事の負うべき損害賠償額につ
いて過失相殺として控除すべき割合は,64%を超えることはないと認めるのが相
当である。
そうすると,本件和解金の額は,本件先物取引に係る不法行為についての過失相
殺後の損害賠償金額の範囲内のものであるということができる。
(4)以上のとおり,A商事は原告に対し本件先物取引について不法行為責任を負
っており,本件和解金の額は過失相殺後の損害賠償金額の範囲内であるから,本件
和解契約は,この不法行為に基づく損害賠償金として本件和解金を支払う趣旨で締
結されたものと認めるのが相当である。
このことは,A商事が,本件先物取引においてA商事の営業担当者に不法行為等
の非があったことを認め,原告に対し本件和解契約のとおり損害賠償の責めに任じ,
和解金の名目で本件和解金を支払った旨を証明する文書(乙11)を作成している
こと,商品取引員であるA商事が不法行為が成立する余地がないのに安易に損失補
てんとして和解金の支払に応ずることは通常考え難いことからも明らかである。
被告は,原告がA商事に対し浅井弁護士の名前を示したところ50万円の増額が
なされたことなどの交渉経緯を理由に,本件和解金が一種の紛争解決金であって,
不法行為に基づく損害賠償金の性質を有するものではないと主張する。しかし,原
告とA商事との間でそうした交渉がされ,両者の紛争を解決するために本件和解金
が支払われることになったとしても,上記のとおり,A商事は原告に対し本件先物
取引について不法行為責任を負っていたのであるから,本件和解契約が締結される
までの交渉も,その不法行為に基づく損害賠償の問題を解決するためにされたもの
というべきであり,また,その交渉の結果支払うことになった本件和解金の額も過
失相殺後の損害賠償金額の範囲内であるのであるから,本件和解金は,不法行為に
基づく損害賠償金としての性質を有するものというべきである。
(5)以上のとおりであるから,本件和解金は,A商事の原告に対する不法行為に
基づく損害賠償金に当たるものというべきである。
2争点(2)(本件和解金が所得税の課税対象となるか否か)について
(1)法は,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,
山林所得,譲渡所得及び一時所得という所得区分を設けるほか(法23条ないし3
4条),それらに含まれない所得をすべて雑所得として課税の対象としており(法
35条),人の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得を構成するという包括
的所得概念を採用している。その上で,法は,立法政策上,所得税の課税対象とす
ることが適当でないと判断された所得について,非課税所得としてこれを個別的に
列挙しているところ,法9条1項16号は,「損害保険契約に基づき支払を受ける
保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で,心身に加えられた損害
又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政
令で定めるもの」を非課税所得として定めている。同号が損害賠償金を非課税所得
として定めた趣旨は,損害賠償金は,他人の行為によって被った損害を補てんする
ものであって,その担税力等を考慮すると,これに所得税を課するのは適当でない
という判断によるものであるが,賠償の対象となる損害には種々のものが含まれる
ため,損害賠償金のすべてを一律に非課税所得とすることは適当でないことから,
同号は,「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に
基因して取得するもの」を例示的に掲げた上,これらを含めて,非課税所得となる
損害賠償金の範囲の具体的な定めを政令にゆだねたものと解される。
そして,法9条1項16号の規定を受けて,施行令30条は,「法第9条第1項
第16号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに
類するものを含む。)は,次に掲げるものその他これらに類するもの」とする旨規
定し,その1号で,「損害保険契約に基づく保険金及び生命保険契約に基づく給付
金で,身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき
支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事
することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含
む。)」を,その2号で,「損害保険契約に基づく保険金及び当該契約に準ずる共
済に係る契約に基づく共済金(中略)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並
びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける
損害賠償金(これらのうち第94条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規
定に該当するものを除く。)」を掲げている。
(2)ア本件においては,本件和解金が施行令30条2号にいう「不法行為その他
突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に当た
るかどうかが問題となるところ,この点につき,被告は,同号にいう「不法行為」
とは,「突発的な事故」と同様の不法行為,すなわち,相手方との合意に基づかな
い突発的で予想することができない不法行為を意味するものであると主張する。
しかしながら,施行令30条2号は,「不法行為その他突発的な事故」と規定し
ているのであり,「不法行為その他の突発的な事故」と規定しているのではない。
法令における「その他」と「その他の」の使い分けに関する一般的な用語法に照ら
せば,同号において「不法行為」と「突発的な事故」は並列関係にあるものとして
規定されていると解されるのであって,文言上,同号にいう「不法行為」を被告が
主張するように限定的に解すべき根拠はない。また,不法行為の態様が,突発的な
事故ないしそれと同様の態様によるものであるか,又はそれ以外の態様によるもの
であるかによって,当該不法行為に係る損害賠償金の担税力に差異が生ずるもので
はないから,損害賠償金が非課税所得とされている立法趣旨に照らしても,同号に
いう「不法行為」は突発的な事故と同様の態様によるものに限られると解する理由
はない。
イ被告は,施行令30条2号にいう「不法行為」を被告が主張するように限定
的に解すべき根拠として,法19条1項16号及び施行令30条が現行の規定のよ
うに定められるにつきその基礎となった税制調査会答申において,「課税所得を構
成するか,あるいは非課税所得とすべきかという点の判断の基準は,その損害の発
生が不可抗力ないし不可避的なものであったかどうかということよりも,むしろそ
れが突発事故,つまり相手の合意をえない予想されない災害であったかどうかとい
うところに基準を置くほうが,常識的に妥当と思われる。」という方針が示された
ことを挙げている。
しかしながら,税制調査会答申の上記の被告引用部分については,非課税所得に
関する当時の規定に関し,「たとえば,現在の技術水準のもとでは防止しえない事
由による汚水の流出や鉱害の発生等によって,他人の財産に損害を与えたような場
合も,この規定に該当し,その賠償金が課税の対象となるものと解釈されうるが,
このような事故が突発的に起った場合でも,それが企業として不可抗力のものであ
ったという理由で課税することができるかどうかについては,社会常識的に疑問が
ある。」との記述に引き続いて,「このような場合,それが課税所得を構成するか,
あるいは非課税所得とすべきかという点の判断の基準は,その損害の発生が不可抗
力ないし不可避的なものであったかどうかということよりも,むしろそれが突発事
故,つまり相手の合意をえない予想されない災害であったかどうかというところに
基準を置くほうが,常識的に妥当と思われる。」と述べられたものである(上記の
うち「このような場合,それが」を除いた部分が被告引用部分である。)。すなわ
ち,被告引用部分は,一定の類型に属する事故を前提として,その場合に非課税所
得とすべきであるかどうかのあるべき判断基準を述べたにすぎないのである。むし
ろ,税制調査会答申は,その結論として,「物的損害に対する補償については,そ
れが不法行為その他突発事故による損失であるか,それ以外の損失,すなわち契約,
収用等による資産の移転ないし消滅に基づく損失であるかによって区分するととも
に,さらに,その対象となる資産が生活用資産であるか,又はそれ以外の資産であ
るかどうかによって区別してその取扱いを定めるのが適当である。」と述べている
のであって,そこでは「不法行為その他突発事故による損失」と「契約,収用等に
よる資産の移転ないし消滅に基づく損失」とを区分しているものの,不法行為を,
突発的な事故ないしそれと同様の態様によるものかそれ以外の態様によるものかで
区分する考え方は何ら示されていないのである。
したがって,税制調査会答申は,施行令30条2号にいう「不法行為」を被告が
主張するように限定的に解すべき根拠にはならないというべきである。
ウ以上のとおり,施行令30条2号にいう「不法行為」は,突発的な事故ない
しそれと同様の態様によるものに限られると解することはできない。これと異なる
被告の主張は,採用することができない。
本件和解金がA商事の原告に対する不法行為に基づく損害賠償金に当たるもので
あることは,前述のとおりであるから,本件和解金は,施行令30条2号にいう
「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損
害賠償金」に当たるというべきである。
(3)ア被告は,本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得と
はならないと主張する。
施行令30条柱書きの括弧書きは,損害賠償金等の額のうちに損害を受けた者の
各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含ま
れている場合には,当該金額を控除した金額に相当する部分を非課税所得とする旨
規定している。同括弧書きの趣旨は,損害賠償金等の額のうちに損害を受けた者の
各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含ま
れている場合には,当該金額を非課税所得となる金額から控除しなければ,当該金
額につき非課税所得と必要経費の控除という二重の控除を認めることとなってしま
うため,これを防ぐことにあるものと解される。
原告は,本件先物取引による売買差益と委託手数料,取引所税及び消費税を差引
き計算すると,1281万5795円の損失を被っており,本件和解金は,これを
原告の損害とみて,その一部を不法行為に基づく損害賠償金として支払うこととし
たものということができるところ,本件の事実関係の下では,本件和解金の中に,
これを非課税所得とした場合に上記のような必要経費としての控除との二重の控除
を認めることとなる金額が含まれているとは認められない。そうであるとすれば,
本件和解金が施行令30条柱書きの括弧書きにより非課税所得には当たらないとい
うことはできず,被告の上記主張は採用することができない。
イまた,被告は,本件和解金が施行令94条1項2号所定の補償金等に当たり,
施行令30条2号括弧書きにより非課税所得から除外されると主張する。
施行令94条1項柱書きは,「不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生
ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので,その業務の遂行により生ず
べきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これらの所得に係
る収入金額とする。」と定め,同項2号は「当該業務の全部又は一部の休止,転換
又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他こ
れに類するもの」と定めているから,同号所定の補償金等に該当するものは,休業
補償,収益補償等の事業の遂行による得べかりし利益に代わるものであって,実損
害を補てんするための損害賠償金がこれに含まれると解することはできない。
本件和解金は,原告に生じた実損害を補てんするための損害賠償金であるから,
施行令94条1項2号所定の補償金等に当たるということはできず,被告の上記主
張は採用することができない。
(4)そうすると,本件和解金は法9条1項16号,施行令30条2号により所得
税を課すことができない所得であるというべきであるから,別表1の「雑所得がゼ
ロの場合」欄記載のとおり,原告の平成15年分の所得税の納付すべき税額は84
万4100円とすべきであり,過少申告加算税は0円とすべきである。
したがって,原告の平成15年分の所得税の納付すべき税額を184万1400
円とした本件更正処分は,納付すべき税額84万4100円を超える部分について,
過少申告加算税11万4000円を賦課する旨の本件賦課決定処分は,その全部に
ついて,取り消されるべきである。
第4結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるから認容することとし,主文の
とおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
増田稔裁判長裁判官
前田郁勝裁判官
杉浦一輝裁判官
(別紙1)
関連法令
1所得税法
9条1項次に掲げる所得については,所得税を課さない。
16号損害保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これら
に類するものを含む。)で,心身に加えられた損害又は突発的な事故によ
り資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるも
の
2所得税法施行令
30条法第9条第1項第16号(非課税所得)に規定する政令で定める保険
金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は,次に掲げるものそ
の他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた
者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするため
の金額が含まれている場合には,当該金額を控除した金額に相当する部
分)とする。
1号損害保険契約に基づく保険金及び生命保険契約に基づく給付金で,身
体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき
支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業
務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受
けるものを含む。)
2号損害保険契約に基づく保険金及び当該契約に準ずる共済に係る契約に
基づく共済金(前号に該当するもの及び第184条第4項(満期返戻金等
の意義)に規定する満期返戻金等その他これに類するものを除く。)で資
産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故
により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのう
ち第94条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するも
のを除く。)
3号心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第
94条の規定に該当するものその他役務の対価たる性質を有するものを除
く。)
94条1項不動産所得,事業所得,山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行
なう居住者が受ける次に掲げるもので,その業務の遂行により生ずべきこ
れらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これらの所得に
係る収入金額とする。
2号当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当
該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの
(別紙2)
被告の主張する税額
1総所得金額(別表1の⑤の「被告主張額」欄)1286万2287円
上記金額は,下記(1)ないし(4)の各金額の合計額である。
(1)不動産所得の金額(別表1の①の「被告主張額」欄)200万0181円
(2)給与所得の金額(別表1の②の「被告主張額」欄)214万4000円
(3)雑所得の金額(別表1の③の「被告主張額」欄)456万0455円
上記金額は,本件和解金に係る雑所得(総合課税分)の金額であり,下記アから
イを控除した後の金額である。
ア総収入金額457万0455円
上記金額は,本件和解金の金額である。
イ必要経費の額1万円
上記金額は,原告が平成15年2月22日に浅井岩根法律事務所に支払った弁護
士費用であり,本件和解金,すなわち雑所得の総収入金額を得るために要した費用
である。
(4)一時所得の金額(別表1の④の「被告主張額」欄)415万7651円
2商品先物取引に係る雑所得等の金額(申告分離課税分)(別表1の⑥の「被
告主張額」欄)71万3175円
3所得控除の額(別表1の⑦の「被告主張額」欄)167万5962円
4課税総所得金額(別表1の⑧の「被告主張額」欄)1118万6000円
上記金額は,上記1の総所得金額から,上記3の所得控除の額を差し引いた金額
(1000円未満切捨て)である。
5商品先物取引に係る課税雑所得等の金額(申告分離課税分)(別表1の⑨の
「被告主張額」欄)71万3000円
上記金額は,上記2と同額(1000円未満切捨て)である。
6納付すべき税額(別表1の⑬の「被告主張額」欄)194万5300円
上記金額は,下記(1)の金額から下記(2)及び(3)の各金額を差し引いた金額(1
00円未満切捨て)である。
(1)算出税額(別表1の⑩の「被告主張額」欄)223万2750円
上記金額は,上記4の課税総所得金額に所得税法89条1項の税率(経済社会の
変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律
《以下「負担軽減法」という。》4条の特例を適用した後のもの)を乗じて算出し
た金額212万5800円と上記5の商品先物取引に係る課税雑所得等の金額(申
告分離課税分)に平成16年法律第14号による改正前の租税特別措置法41条の
14第1項の税率を乗じて算出した金額10万6950円の合計額である。
(2)定率減税額(別表1の⑪の「被告主張額」欄)25万円
上記金額は,負担軽減法6条2項かっこ書の規定により算出した金額である。
(3)源泉徴収税額(別表1の⑫の「被告主張額」欄)3万7400円
(別紙3)
受託業務管理規則(抜粋)
10条自社又は他の商品取引員において商品先物取引を3か月以上取引したこ
とのある者及び金融・証券の先物取引を行ったことのある者以外は,未経験者とし
て扱う。
11条当社は,商品先物市場に参入するにふさわしい健全な委託者層の拡大を
図るため,商品先物取引の経験のない委託者,又はこれと同等と判断される委託者
については,3か月を限度とする習熟期間を設け,次に掲げる保護育成措置を講ず
るものとする。
(1)略
(2)取引にあたっては,特に委託追証拠金及び損失が発生した場合についての理
解を求め,余裕資金を保持した取引を励行させるとともに,当該委託者の資金力,
取引経験等からみて,明らかに不相応と判断される取引については,これを抑制す
る等の措置を講ずること
(3)商品先物取引の経験のない新たな委託者からの受託にあたっては,委託者保
護の徹底とその育成を図るため,当該委託者の資質・資力等を考慮のうえ,相応の
建玉枚数の範囲内においてこれを行うこととする。
(4)第3項の相応の建玉枚数の範囲については,別に定めるものとし,一定期間
(習熟期間中)は,その建玉枚数の範囲を超えないこととする。
(5)略
(別紙4)
管理部内規
受託業務管理規則第11条第4項に定める相応の資金量の範囲はつぎによるもの
とする。
1第1分類(建玉枚数50枚超∼100枚まで)
担当者の申請に基づき,管理室責任者がつぎの基準により審査を行い,その適否
について判断し,妥当と認められる範囲内において受託をする。
(1)年収500万円以上,有価証券・預貯金合計が500万円以上と推定される
こと
(2)商品取引に対する知識・理解度が深いこと
2第2分類(建玉枚数100枚超)
担当者の申請に基づき,統括責任者がつぎの基準により審査を行い,その適否に
ついて判断し,妥当と認められる範囲内において受託をする。
(1)年収800万円以上,有価証券・預貯金合計が1000万円以上と推定され
ること
(2)商品取引に対する知識・理解度が深いこと
3第3分類(建玉枚数50枚以下)
1,2に規定する以外のもの
別表1)課税の経緯,被告主張額,雑所得をゼロとした場合の税額(
(単位:円)平成15年分
雑所得が確定本件異議異議審査裁決被告
ゼロの場合区分申告各処分申立決定請求主張額
平成16年平成18年平成18年平成18年平成18年平成19年項目
−−3月12日2月10日4月5日6月30日7月25日7月3日
2,254,2522,000,1812,254,2522,000,1812,000,1812,000,181①不動産所得の金額
2,144,0002,144,0002,144,0002,144,0002,144,0002,144,000②給与所得の金額
04,570,455004,560,4550③雑所得の金額棄棄
4,157,6514,157,6514,157,6514,157,6514,157,6514,157,651④一時所得の金額
8,555,90312,872,2878,555,9038,555,90312,862,2878,301,832⑤総所得金額
(①+②+③+④)
⑥商品先物取引に係る雑所得の
713,175713,175金額(申告分離)−−−却−却
1,675,9621,675,9621,675,9621,675,9621,675,9621,675,962⑦所得控除の額
⑧課税総所得金額
1,0006,879,00011,196,0006,879,0006,879,00011,186,0006,625,000(⑤−⑦円未満切捨て)
⑨商品先物取引に係る課税雑所
713,000713,000得等の金額(申告分離)−−−−
(⑥の金額円未満切捨て)1,000
1,045,8002,128,8001,045,8001,045,8002,232,7501,101,950⑩算出税額
1,045,8002,128,8001,045,8001,045,8002,125,800995,000内(⑧に対する税額)
106,950106,950訳(⑨に対する税額)−−−−
209,160250,000209,160209,160250,000220,390⑪定率減税額
37,40037,40037,40037,40037,40037,400⑫源泉徴収税額
⑬納付すべき税額(円未満切100
799,2001,841,400799,200799,2001,945,300844,100捨て)(⑩−⑪−⑫)
114,00000114,0000⑭過少申告加算税−
(注)一時所得の金額は,所得税法22条(課税標準)2項2号の規定による2分の1に相当する金額である。
(別表2)預託返戻一覧表
年月日預託金返戻金
平成13年4月18日E建設株式
1,000株
4月19日900,000円
4月23日1,000,000円
5月23日1,000,000円
6月6日1,200,000円
6月13日500,000円
6月21日22,420円
6月21日432,240円
8月2日4,500,000円
8月21日500,000円
8月27日800,000円
9月4日800,000円
9月10日1,000,000円
9月26日1,900,000円
10月3日1,030,000円
10月10日1,000,000円
10月12日270,000円
12月4日500,000円
平成14年4月8日1,000,000円
4月15日500,000円
4月16日1,000,000円
平成15年3月14日E建設株式
1,000株
3月14日70,455円
合計(現金分)16,370,455円3,554,660円
差引預託金12,815,795円
(別表3)特定売買一覧表
仕切特定売買特定売買
件数直し途転日計り両建て手数料合計の割合
不抜け(%)
白金47−12−1222648.9
(12)(9)(2)(23)
コーン2−−−−−−0.0
灯油6−1−−−116.7
(1)(1)
関西粗糖2−−−−−−0.0
東京粗糖32−12−912259.4
(12)(6)(1)(19)
ガソリン13−131−538.5
(1)(3)(1)(5)
小豆5−−−1−120.0
(1)(1)
全商品107−2632335545.8
(26)(3)(17)(3)(49)
※特定売買の件数のうち,かっこ内の数字は,特定売買が重複して行われた場合
に,直し,途転,日計り,両建て,手数料不抜けの順で1回とカウントしたも
のである。
※特定売買の割合は,上記の重複を修正した後の特定売買の件数を,仕切件数で
割ったものである。
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激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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仕事がない弁護士は無力です。
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