弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 仙台高等検察庁検事長堀忠嗣の上告趣意について。
 原判決が論旨指摘のAの検察官に対する供述調書及びBの答申書の各記載内容を
以つて、被告人のした自白の補強証拠とするに適しない理由として説示していると
ころは、その趣旨必ずしも明確ではなく、且つ、妥当を欠くと思われる点もないで
はないが、しかし、原判決には、所論のごとく補強証拠が自白にかかる犯罪事実の
全部に亘つてもれなくこれを裏付けするものでなければならないとか、自白の各部
分について一々補強証拠を要するというような、論旨引用の判例に反する判断が示
されているとは解されない。その他、論旨引用の各判例を仔細に検討してみても、
原判決の判示各書面がいずれも自白の補強証拠とするに適しないとして判示した判
断が、右各判例に相反していると解することはできないばかりでなく、右各判例と
は事案を異にし、本件に適切でない。
 次に原判決は、Cの検察官に対する供述調書の記載は同人が被告人から聞いた事
実を供述しているのであるから、右はとりもなおさず被告人の自白と同視せらるべ
きものであると判示していることは所論のとおりであるが、その趣旨とするところ
は、被告人はその自白だけでは有罪とされず、必ず自白を補強する証拠がなければ
ならないのであるが、被告人の犯罪事実に関する供述を内容とするCの供述は、右
の関係においては被告人の自白を補強する証拠となるものではなくて、却つて、補
強証拠を必要とする被告人の自白と同視さるべきものであるというに過ぎないので
ある。他方、論旨引用の東京高等裁判所の判例を見ると、所論のとおり「公判準備
又は公判期日における被告人以外の者の供述で被告人の自白、自認をその内容とす
るものは、証拠法上被告人の自白そのものと同一であるとの趣旨に解すべきではな
い」との判示がある。そしてこの説示は刑訴三二四条一項の趣旨を説明したもので
あることは判文上極めて明らかである。而して同条項が、被告人以外の者の公判準
備又は公判期日における供述で被告人の供述を内容とするものについては同法三二
二条の規定を準用する、と定めているに過ぎないから、被告人以外の者の供述で被
告人の自白、自認を内容とするものは、証拠法上すべての関係において被告人の自
白、自認と同一であるということを規定したものでないことも明瞭であり、右東京
高等裁判所の判例の趣旨もこの関係を説示したものにすぎないのである。従つて、
原判決の説示は右判例と全くその論点を異にするものであつて、互に相矛盾するも
のではないばかりでなく、右判例においては、賍物牙保罪における賍物知情の点の
立証関係が問題となつたものであつて、本件とは事案を異にし、本件に適切でない。
その他原判決のした判断が論旨引用の判例に反する点は認められない。従つて所論
判例違反の主張はその理由がない。
 また記録を調べ、諸般の事情を勘案してみても、本件につき刑訴四一一条を適用
すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官小谷勝重の少数意見を除くほか裁判官全員一致の意見である。
 裁判官小谷勝重の少数意見は次のとおりである。
 以下詳しい意見は省略して、結論的な意見に止める。
 記録を見ると、被告人は第一審において何れも適式な証拠調を経ておる(且つ証
拠とすることにも同意しておる)被告人の司法警察員に対する第四回供述調書と検
察官に対する第二回供述調書において、D方において、同人より本件選挙運動の報
酬として本件一万円の供与を受けた事実の全部を自白しており、次に第一審第四回
公判廷において裁判官の「その一万円の金はどの様に使つたか」との問に対し、被
告人は「其の金の内Aに九百円をやりました」と答え、また「右Aにやつた他どう
したか」との問に対し、「私の家の畳の表替の費用としてBに三千円払いました。
それはDより金を貰つた一週間位後です」との各供述記載がなされている。
 そして他方上告論旨指摘のAの検察官に対する第一回供述調書によれば、「九月
三十日に私がE方に行つた時にEは足代として上げると云つて九百円をよこしまし
た。」との供述記載、及び同指摘の司法警察員に対するBの答申書によれば、「E
さんの工場事務所の二階六畳間と四畳間の室の畳を表替してやつたのでありますそ
して代金はみなで三千三百四十円でありましたが内金として三千円貰つた丈でまだ
残金は受取つて居りません」との記載がなされており、そして右調書及び答申書は
何れも第一審公判廷において適法な証拠調を経ておるものである。
 してみれば、以上A調書及びB答申書はすべて右被告人の自白に対する補強証拠
たり得ることは、本件上告論旨指摘の各最高裁判所の判例に照し疑を容れないとこ
ろである。されば右調書及び答申書をもつて補強証拠たり得ないと判断した原判決
は右判例に反すること明らかであるから、論旨指摘中のCの検察官に対する第一回
供述調書の問題点を外にするも、本件検察官の上告論旨は理由があるものといわな
ければならない。
 よつてわたくしは、刑訴四一〇条四一三条に則り原判決を破棄するを正当とし、
且つ当審において自判するを相当と信ずるものである。
 附記。以上判例違反とする点については、詳しく意見を述べたいのであるが、要
は具体例が同一でなくても、同一に近い類似例の場合である以上、判例違反は成り
立つものとわたくしは信ずるものである。
 なお仮に同一例説によるとしても、本件の場合は刑訴四一一条一号に該当し、し
たがつて職権調査により原判決を破棄するを正当と信ずるものである。したがつて
何れにするも「上告棄却」の本件多数説には到底左袒することができないのである。
  昭和三〇年六月一七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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