弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 被告人の上告趣意について。
 論旨は、要するに原審の事実認定を争い、本件賍物罪について、被告人は、賍物
たるの情を知らなかつたのであるから、無罪であると主張するのであるが、かかる
主張は、上告の適法な理由とすることはできない。
 弁護人田野井子之吉の上告趣意第一点について。
 (一) 原判決が証拠とした司法警察官の被告人訊問調書中の被告人の供述が、
所論のように強制にもとづくものであるという証跡は、本件において認めることは
できない。(原審において、被告人側から右のような主張のなされた形跡もない)
 (二) 被告人の申請した証人訊問を採用するかしないかは事実審たる原審に任
されているところである。原審はその裁量にもとずき右証人の訊問を必要のないも
のとして、申請を却下したのであつて所論のような違法は認められない。
 (三) 賍物罪において、本件のように寄蔵、牙保等の客観的事実が他の証拠に
よつて確認される以上、賍物たるの情を知つていたかどうかに関する事実は、たと
えこれを認める直接の証拠は、司法警察官に対する被告人の自白のみであつても、
結局、如上各証拠を綜合して、犯罪事実の全部が認められるかぎり、刑訴応急措置
法一〇条三項にも、憲法三八条三項にも違反するものでないこと、しかして、右客
観的事実に対する証拠が被告人の原審公判廷における自白であつてもその理は同一
であることは当裁判所の判例の示すところである。(昭和二四年(れ)第八二九号
同二五年一一月二九日大法廷判決)されば論旨は理由がない。
 同第二点について。
 被告人は、被害者に返す目的で所論賍物を保管していたのであるという事実は、
原判決の認定しないところであつて、この事実を前提とする論旨はすべて採用の限
りでない。又司法警察官の訊問調書について、所論のような理由でその証拠能力を
否定すべき法律上の根拠はないのであるから、この点に関する論旨も採用すること
はできない。
 よつて、旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 右は裁判官塚崎直義、沢田竹治郎、井上登、小谷勝重、島保、穂積重遠を除く他
の裁判官の一致した意見である。裁判官塚崎直義、沢田竹治郎、井上登、小谷勝重、
島保、穂積重遠の少数意見並に裁判官真野毅、斎藤悠輔の補足意見は前記大法廷判
決並に同判決引用の大法廷判決に記載のとおりである。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二六年一月三一日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官穂積重遠は差し支えにつき署名捺印することができない。
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎

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