弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人田中廉吾の上告理由第一点について。
 記録によると、上告人は第一審では所論の如く被上告人が訴外Dから本件家屋を
買受け、その所有権移転登記手続を了したとの事実につき、不知を以て答えている
が、原審では昭和二四年九月五日の口頭弁論において被上告人及びD間の右売買に
関する事実及びこの売買に伴い右Dと上告人間の賃貸借を承継した事実等を認めた
ことを窺い知ることができる(記録一四四丁参照)されば原審が所論の事実を本訴
当事者間に争なきものと判示したからとて、これを目して違法ということはできな
い。論旨は理由なきものである。
 同第二点について。
 原審は、その挙示する証拠を綜合して「被上告会社の代表者E及び社員の多くは
海外引揚者で、その居住の場所を求めることが緊急の問題であつたので、被上告会
社は訴外Dから事務所用または営業用建物として、唐津市a町所在の現在事務所に
あてている家屋及び食堂を経営している家屋を買受けると共に右代表者及び社員の
一部の居住建物として本件家屋及びその裏隣の二階建家屋等を買受けたのであり、
右Eは現在右a町所在事務所の二階に家族と共に居住中であるが、右二階は事務所
用として必要であるばかりでなく社員数名との同居で窮屈をきわめておるし、社員
の大多数もそれぞれ不自由不便にたえておつて、被上告会社としてその業務の運営
上本件家屋を自ら使用することの必要は切実なものである。ところで右売買後、前
所有者のDは売主として上告人と善処方を懇談しておるし被上告人としても世話人
の言明に反し上告人において明渡に応じそうにもなかつたので同居等の方法で円満
解決をはかり、特に裏隣の二階建家屋を上告人に対し移転先として提供すべきこと
を告げ、調停の申立に際してもこの提供を申出で本件家屋の明渡を懇請したのに上
告人はただ右裏家での営業では取引上体面にかかわるとの理由ではねつけてきたの
である。そして現在においても右裏家は修理され上告人の移転先として空しく用意
されている」旨の事実を認定し、この事実関係に照らし、当事者双方の利益を対比
考量すれば被上告人は本件家屋を自ら使用する必要があり且つ買受けによる新家主
として従前よりの賃借居住者たる上告人に対しその居住の確保につき為すべきの処
置を為し払うべき考慮を払つたものというべく、本件解約の申入については正当の
事由があると判示したのである。右原審の事実認定はその認定資料たる証拠の内容
に照らし肯認することができ、その事実関係にもとずき本件解約の申入には正当の
事由があるとなした原判旨は首肯するに足る。論旨は縷々論難するが、原審の認め
ない事実を想定しこれを前提として原判旨を非難するに帰し採用に値しない。
 同第三点について。
 民法二九五条二項において、占有が不法行為に因つて始まつた場合に留置権を認
めなかつた所以のものは、かかる占有者はその占有が不法であるからその占有物に
関し生じた債権を有しても留置権を与えてこれを保護するに値しないと見たために
外ならない。されば占有が不法行為に因つて始まつた場合でなくても他人の物の占
有者がその占有を正当ならしめる権利を喪失し不法に占有をなすに至つた場合は、
爾後の関係においては、不法行為に因つて占有を始めた場合と何等選ぶところはな
いから、かかる占有者も亦前記法条により留置権を有し得ないものと解するのを相
当とする。原判決の確定したところによると上告人が壁の塗替その他本件家屋並に
敷地について工事をなしたのは本件賃貸借が解約の申入後六ヶ月を経過して既に終
了した後に属するものであること明白であるから、上告人は不法占有者として支出
した右工事の費用の償還請求権のために留置権を取得し得ないものといわざるを得
ない。されば原審が所論留置権の抗弁を排斥したのは当然であり、論旨は理由がな
い。
 同第四点について。
 所論解約の申入に正当の事由があるか否かは、その申入当時の事情によつて判断
さるべきであり、その後に生じた事情によつて決せらるべきでないことは、所論の
とおりである。しかし、原判決が所論裏隣二階建家屋を上告人の移転先として提供
し云々と判示したのは、所論のような意味ではなく、本件解約申入当時既に所論裏
隣二階建家屋の居住者に対しその明渡を要求し、遠からずこれが明渡を受け得べき
ことを予期していた被上告人において、上告人に対し該家屋をその移転先として提
供しても差支ない旨通告したとの趣旨であることは、原判決の行文の上からもまた
事実認定の資料とされた証拠(殊に被上告会社代表者の供述)の内容からも容易に
看取し得るのである。それ故所論は原判旨に副わない非難を試みるに帰し、原判決
には所論のような違法はない。論旨は理由なきものである。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとお
り判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛