弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成24年5月30日判決言渡
平成23年(行ケ)第10221号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成24年5月9日
判決
原告ライカミクロジュステムスツェー
エムエスゲーエムベーハー
訴訟代理人弁理士加藤朝道
内田潔人
青木充
被告特許庁長官
指定代理人川陽吾
神悦彦
田部元史
田村正明
主文
特許庁が不服2009-15839号事件について平成23年2月28
日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1原告が求めた判決
主文同旨
第2事案の概要
本件訴訟は,特許出願拒絶査定を不服とする審判請求を成り立たないとした審決
の取消訴訟である。争点は,進歩性の有無である。
1特許庁における手続の経緯
原告は,平成13年11月14日,名称を「走査型顕微鏡検査における照明用光
源装置,及び走査型顕微鏡」とする発明につき,パリ条約に基づく優先日を平成1
2年(2000年)11月14日,優先権主張国をドイツ連邦共和国として,特許
出願し(特願2001-348265号,請求項の数は6),平成21年3月13日,
特許請求の範囲の記載の一部及び発明の詳細な説明の記載の一部を改める旨の本件
補正をしたが,同年4月22日,上記補正を却下する決定を受けるとともに,拒絶
査定を受けたので,同年8月28日,不服審判請求をした(不服2009-158
39号)。
特許庁は,平成23年2月28日,上記請求につき「本件審判の請求は,成り立
たない。」との審決をし,この審決の謄本は同年3月15日に原告に送達された。
2本願発明の要旨
本願発明は,走査型顕微鏡及びこれに用いられる照明用光源装置に関する発明で,
本件補正後の請求項1の特許請求の範囲は以下のとおりである。
【請求項1(補正発明)】
「1つの波長の光線(17)を発する1つの電磁的エネルギー源(3)を有する
こと,
該電磁的エネルギー源(3)には,前記光線(17)を空間的に分割して少なく
とも2つの分割光線(19,21)を形成する手段(5)が後置されていること,
及び
前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の少なくとも1つの分割光線には,
波長を変化させるための中間素子(9,25)が配されていること,
前記中間素子(9,25)は,
前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,試
料(41)に直接投光され,そこで第一合焦領域(62)を光学的に励起し,前記
少なくとも2つの分割光線(19,21)の第2の分割光線(21)が,試料(4
1)の第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域(63)を形成し,該第1の分割
光線(19)のみによって照射された試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域
(63)において前記第1の分割光線(19)の光によって励起された試料領域が
誘導されて基底状態に戻されるように,当該中間素子(9,25)を通過する分割
光線の波長を変化すること,及び
前記第2の分割光線(21)には,合焦形態変化手段(61)が配されているこ

を特徴とするSTED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置。」(下線を付し
た部分が本件補正により補正された部分である。)
また,本件補正前の請求項1の特許請求の範囲(平成19年12月20日付け手
続補正書に記載のもの)は以下のとおりである。
【請求項1(補正前発明)】
「1つの波長の光線(17)を発する1つの電磁的エネルギー源(3)を有する
こと,
該電磁的エネルギー源(3)には,前記光線(17)を空間的に分割して少なく
とも2つの分割光線(19,21)を形成する手段(5)が後置されていること,
及び
前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の少なくとも1つの分割光線には,
波長を変化させるための中間素子(9,25)が配されていること
前記中間素子(9,25)は,
前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,試
料(41)に直接投光され,そこで第一領域(62)を光学的に励起し,前記少な
くとも2つの分割光線(19,21)の第2の分割光線(21)が,試料(41)
の第二領域に投光され,そこで重畳領域(63)を形成し,該第1の分割光線(1
9)のみによって照射された試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域(63)
において前記第1の分割光線(19)の光によって励起された試料領域が誘導され
て基底状態に戻されるように,当該中間素子(9,25)を通過する分割光線の波
長を変化すること
を特徴とするSTED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置。」
3審決の理由の要点
(1)補正発明は,本件優先日以前に頒布された下記引用文献1に記載された発
明に下記引用文献2に記載された発明を適用することで,本件優先日当時,当業者
において容易に発明することができたもので(特許法29条2項),特許出願の際,
独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は特許法17条の
2第5項において準用する同法126条5項に違反し,却下すべきである(同法5
3条1項)。
【引用文献1】米国特許第5731588号明細書(甲1)
【引用文献2】特開平10-142151号公報(甲2)
【引用文献1に記載された発明】
「第1のレーザー(2)からの励起光を反射し,試料(8)の一点に合焦させる,
2つのダイクロイックミラー(4,5)とレンズ(6)とからなる光学系と,試料
から放射された発光光(18)を検出する検出器(9)を備え,
第2のレーザー(3)からの,励起光とは異なる波長の誘導光を2つの誘導光に
分けるためのスプリッター(23)とミラー(24)を有し,
励起光と誘導光が一方のダイクロイックミラー(4)で合流し,他方のダイクロ
イックミラー(5)で反射した後にレンズを通過して,レンズの合焦領域で両光線
の強度分布が部分的に重なり,
第2のレーザーからの誘導光線(17)にり,励起光で励起された試料のエネル
ギー状態が誘導放出により緩和されるレーザー顕微鏡。」
【引用文献1記載発明と補正発明の一致点】
「電磁的エネルギー源を有すること,
少なくとも2つの光線の第1の光線が,試料に直接投光され,そこで第一合焦領
域を光学的に励起し,前記少なくとも2つの光線の第2の光線が,試料の第二合焦
領域に投光され,そこで重畳領域を形成し,該第1の光線のみによって照射された
試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域において前記第1の光線の光によって
励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻されるように,第2の光線の波長を
設定すること,及び
前記第2の光線には,合焦形態変化手段が配されている
STED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置」である点。
【引用文献1記載発明と補正発明の相違点】
(波長の異なる)2つの光線を,補正発明では,1つの波長の光線を発する1つ
の電磁的エネルギー源に,前記光線を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線
を形成する手段を後置し,前記少なくとも2つの分割光線の少なくとも1つの分割
光線に,波長を変化させるための中間素子が配することによって形成しているのに
対して,引用文献1記載の発明では,異なる波長の電磁的エネルギー源で形成して
いる点。
【相違点に係る構成の容易想到性等についての判断(11,12頁)】
「補正発明と引用文献2記載の発明を比較すると,引用文献2記載の発明の『Nd:YAGLaser』
は,DyeLaserを励起するための特定の光(電磁波)を発生するものであることから,補正発明
の『1つの電磁的エネルギー源』に相当する。
そして,引用文献2記載の発明においてYAGLaserから2つのレーザー光が照射されている
こと,及び,当該技術分野における技術常識を考慮すれば,引用文献2記載の発明が,『光線を
空間的に分割して少なくとも2つの分割光線を形成する手段』を有することは明らかである。
ここで,YAGLaserから2つのレーザー光を,YAGLaserからの1つの波長の光線を分割するこ
とにより形成することは,技術常識を踏まえれば,自明な事項である。
また,引用文献2記載の発明では『Nd:YAGLaserからの他方のレーザー光によるDyeLaserの
励起により,波長λ2光として波長400~500nmの光が発振される』ことから,引用文
献2記載の発明が『波長を変化させるための中間素子』を有することは明らかである。
してみると,引用文献2記載の発明は,上記相違点に係る構成を有している。
そして,引用文献1記載の発明と引用文献2記載の発明は同一の技術分野に属し,しかも,
異なる波長の2つのレーザー光を用いるという共通の構成を有するから,引用文献2記載の発
明を引用文献1記載の発明の,波長の異なる2つの光を形成する手段として採用することによ
って,補正発明を構成することに,格別の困難性はない。
なお,原告は,審判請求書において,補正発明の『1つの波長の光線を発する1つの電磁的
エネルギー源を用い,これを2分割し,少なくとも1つの分割光線には,波長を変化させるた
めの中間素子を配し,この中間素子として特定の中間素子を用いることが,それぞれ2以上の
レーザ光線の使用を不可欠とする全く異なった解決原理による引用文献2から,容易に導き出
しえない』旨主張している・・・。
しかしながら,上記のとおり,引用文献2記載の発明は,2つの分割光線を形成する手段と
して,1つの波長の光線を発する1つの電磁的エネルギー源を用いており,引用文献2記載の
発明の色素レーザーが,それ自体は発振のためのエネルギー源を有していないことを考慮すれ
ば,引用文献2記載の発明の『DyeLaser』は,当該中間素子に相当する。そして,補正発明は,
そのような発明を排除していない。
また,仮にそうでないとしても,本願明細書の段落【0018】には,『中間素子9(これは
光学パラメトリック発振器として構成されている)』と記載されており,引用文献2の『波長λ
1光と波長λ2光とを発振する光源としては,・・・波長可変のオプチカルパラメトリクオシ
レータレーザシステム等が備えられていてもよい。』と記載(上記摘記事項(2b)(判決注:
段落【0032】)参照)されているのであるから,引用文献2記載の発明の中間素子として,
光学パラメトリック発振器を用いることは,設計的事項である。
いずれにしても,原告の上記主張は,採用することができない。
そして,補正発明全体の効果も,引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明から当業
者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。
したがって,補正発明は,引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて当業
者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願
の際独立して特許を受けることができないものである。」
(2)上記のとおり本件補正は不適法なので,補正前発明について判断するに,
補正前発明は,本件優先日以前に頒布された前記引用文献1に記載された発明に前
記引用文献2に記載された発明を適用することで,本件優先日当時,当業者におい
て容易に発明することができたもので,進歩性を欠く。
第3原告主張の審決取消事由
1引用文献1記載発明と補正発明との一致点及び相違点の認定の誤り(取消事
由1)
(1)引用文献1の図1には,ビームスプリッター23とミラー24とが第2の
レーザー3からの光ビームを2つの誘導光ビームに分割・偏向する様子が図示され,
6欄20ないし22行にも同趣旨の記載があるし,6欄22ないし27行の記載は
これらの記載を受けたものとなっている。誘導光及び励起光の焦点面での強度分布
は図2のとおりであるところ,誘導光の焦点面での強度分布の各ピーク26,26
は,励起光のピーク25の中心に対して横方向に位置がずれているだけであり,焦
点の形態には変化がない(7欄30~47行参照)。
他方,補正発明にいう「合焦形態」とは文字どおり「焦点の形態」,とりわけ第2
の分割光線の「焦点の形態」を意味する(例えば,段落【0021】参照)。また,
補正発明にいう「合焦形態変化手段」も,この手段を通過する光線の焦点の形態を
変化させるものを意味する。
そうすると,引用文献1のスプリッター及びミラーは補正発明にいう「合焦形態
変化手段」に相当するものではないし,引用文献1の第2の光線には,補正発明に
いう「合焦形態変化手段」が配されているとはいえないから,これに反する審決の
一致点及び相違点の認定は誤りである。
(2)引用文献1記載発明では,焦点面における励起光のピーク25の両横部分
で誘導光の分割光線(2本)のピークが重なる領域(重畳領域)が生じ,焦点面に
おける誘導光の強度の分布を微妙に調整する必要があるが,補正発明では,1本の
誘導光の焦点と1本の励起光の焦点とを重ね合わせれば足り,焦点面における誘導
光の強度の分布を厳密に調整する必要がない(焦点合わせの簡素化)。したがって,
引用文献1記載発明と補正発明とが「第2の光線が,試料の第二合焦領域に投光さ
れ,そこで重畳領域を形成」する点で一致するとした審決の判断は誤りである。
(3)補正発明では,誘導光の分割光線の波長を変化させる中間手段を,「前記
少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,試料(4
1)に直接投光され,そこで第一合焦領域(62)を光学的に励起し,前記少なく
とも2つの分割光線(19,21)の第2の分割光線(21)が,試料(41)の
第二合焦領域に投光され,そこで重畳領域(63)を形成し,該第1の分割光線(1
9)のみによって照射された試料領域のみが検出されるよう,該重畳領域(63)
において前記第1の分割光線(19)の光によって励起された試料領域が誘導され
て基底状態に戻されるように,当該中間素子(9,25)を通過する分割光線の波
長を変化すること,」との特定の構成を有するものに限定しているのであって,これ
を単なる「中間素子」としてしまうのは誤りである。したがって,補正発明が「前
記少なくとも2つの分割光線の少なくとも1つの分割光線に,波長を変化させるた
めの中間素子が配することによって形成しているのに対して,引用文献1記載の発
明では,異なる波長の電磁的エネルギー源で形成している点」を相違点とする審決
の判断は誤りである。
2引用文献1記載発明と補正発明との相違点に係る構成の容易想到性の判断の
誤り(取消事由2)
(1)引用文献1記載発明では,1本の誘導光ビームを2本のビームに分割し,
2本のビームを,励起光ビームの焦点面における焦点の強度分布の両裾の部分で励
起光ビームと誘導光(分割光)ビームとが重なり合うように照射する構成が採用さ
れているのであって,かかる重なり合いを生ずるためにはビームの強度分布を微調
整しなければならず,複雑であった。補正発明は,かかる複雑な微調整の必要が生
じるという問題を踏まえ,1本の誘導光ビームの焦点と1本の励起光ビームの焦点
とを重ね合わせれば足りるようにし,焦点面における誘導光ビームの強度分布の調
整を簡素化したものであって,補正発明と引用文献1記載発明とでは,解決すべき
技術的課題が異なる。
(2)前記のとおり,引用文献1記載発明は,誘導光(分割光)ビームの焦点面
における焦点を横にずらして,励起光ビームの焦点面における強度分布の両裾の部
分で重なり合うようにするというものであるところ,引用文献2記載の光学顕微鏡
は,1本のレーザーを2本のレーザーに分割して,うち1本を第1波長の励起光源
として,他の1本を第2波長の励起光源として用い(色素レーザー),これら2本(第
1波長及び第2波長)の励起光レーザーを合一して,焦点面における第1波長の励
起光レーザーの強度分布の裾部分(両側周辺部)で第2波長の励起光レーザーを重
畳させ,励起光レーザーによる解像度を向上させようとするものである。ここで,
引用文献2の第1波長の励起光レーザーは焦点面で焦点を結ぶが,第2波長の励起
光レーザーは焦点面で焦点を結ばず,焦点面に集光されるのみで,1点に収束せず,
広がった状態で焦点面に入射される。したがって,引用文献2の光学顕微鏡では,
焦点面における励起光ビームの強度分布(曲線)の中心に誘導光ビームが明確な焦
点を結ぶものではなく,焦点面の励起光ビームの強度分布(曲線)の中心に誘導光
ビームが明確な焦点を結ぶ補正発明とは課題解決原理が異なる。
また,引用文献2の第2波長の色素レーザーは,レーザー光源の出力光の分割光
を入力光として発振する構成のもので(引用文献2のDyeLaserは入力レーザー光
による励起を受けて別個のレーザー光を発振,出力するもので,単にレーザー光の
波長を変化させているわけではないし,入力レーザー光も単にDyeLaserを通過し
ているわけではない。),単にレーザーの波長を変化させる中間素子を利用するもの
ではなく,むしろ2つのレーザー光源を利用する顕微鏡の変形例である。このとお
り,引用文献2の光学顕微鏡と引用文献1記載発明とは2つのレーザー光源を用い,
また2つの波長の異なるレーザーを用いるものであって,1つのレーザー光源しか
用いない補正発明とはその技術的性格が異なる。
したがって,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用しても,引用文献
1記載発明と補正発明の相違点に係る構成に想到する動機付けを欠き,当業者にお
いてかかる構成に想到することは容易でない。
(3)補正発明は,1つのレーザー光源からのレーザー光線をビームスプリッタ
ーで分割して2本の分割光線(励起光レーザー及び誘導光レーザー)を生成し,中
間素子でこれを通過する分割光線の波長を変化させた後,励起光レーザーと誘導光
レーザーの焦点を一致させるとともに,誘導光レーザーの焦点の形態を変化させて
重畳領域を形成し,この重畳領域で誘導放射を生じさせて,励起光レーザーで励起
された試料を基底状態に戻すという簡潔な構成のもので,引用文献1記載発明のよ
うに,複数のレーザー光源を用いたり,スプリッター及びミラーを用いて誘導光(レ
ーザー)自体を分割したり,誘導光が焦点を結ぶ位置を微調整したりする必要がな
い。また,補正発明では,励起光レーザーの焦点と誘導光レーザーの焦点が一致す
れば足り,両焦点の位置が僅かにずれていても,走査型顕微鏡の動作に支障がない。
そして,励起光レーザーの焦点と誘導光レーザーの焦点とで,中空の焦点形態を成
す場合には,高い分解能を発揮することができる。
これらのとおり,補正発明は,引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明から
は当業者が予測し得ない格別有利な効果を奏することができるものである。
(4)以上のとおり,本件優先日当時,引用文献1記載発明に引用文献2記載発
明を適用しても,当業者において補正発明と引用文献1記載発明の相違点に係る構
成に容易に想到できたものではないし,補正発明は,引用文献1記載発明及び引用
文献2記載発明からは当業者が予測し得ない格別有利な効果を奏することができる
から,補正発明は進歩性を欠くものではない。
なお,従前,「引用文献1記載発明の『スプリッターとミラー』によって,誘導光
が2つの誘導光に分けられ,レンズの合焦範囲で励起光ビームと部分的に重なるよ
うなビームの強度分布とされることから,当該『スプリッターとミラー』は,補正
発明の『合焦形態変化手段』に相当する。」などとの解釈・認定を示してこなかった
にもかかわらず,審決は抜打ちでかかる判断をしたもので,原告は意見を述べる機
会を付与されなかったから,審決のかかる判断は手続上の違法を構成する(特許法
50条,159条2項)。
第4取消事由に対する被告の反論
1取消事由1に対し
(1)本願明細書の段落【0021】,【0023】によれば,補正発明の「合焦
形態」とは,光線が最も絞り込まれた位置ないし回折限界によりビームウエストを
形成している位置である合焦位置における光線の配置を意味し,「合焦形態変化手
段」も,合焦位置における第2の分割光線の配置を内側が空の形態に変化させる手
段を意味する。
他方,引用文献1記載発明においても,誘導光がスプリッター及びミラーによっ
て2つに分割され,中心軸から互いに反対方向に同じ距離だけずれるように対称に,
すなわち内側が空の形態になるように,合焦位置における光線の配置を変化させて
いるから,スプリッター及びミラーは「合焦形態変化手段」に相当する。
したがって,引用文献1記載発明にいうスプリッター及びミラーが補正発明にい
う「合焦形態変化手段」に相当し,引用文献1記載発明においても「合焦形態変化
手段」が配されているとした審決の一致点の認定に誤りはない。
(2)審決は,引用文献1記載発明にいう「誘導光」が「第2の光線」である旨
を認定し,「第2の光線」である「誘導光」が試料の第2合焦領域に投光され,重畳
領域を形成する旨を認定したのであって,審決がした一致点の認定に誤りはない。
また,補正発明における「第2の分割光線」に関する発明特定事項は,「第2の分
割光線」が1本か複数本かを特定してされたものではなく,「第2の分割光線」が2
本の引用文献1記載発明の構成も,補正発明の構成に含まれる。したがって,引用
文献1記載発明と異なり,補正発明においては,1本の励起光の焦点に対して1本
の誘導光の焦点を重ね合わせるのみであるとする原告の主張は,補正発明の特許請
求の範囲の記載に基づかないものにすぎない。
(3)出願当初の明細書の請求項2,3の特許請求の範囲の記載及び段落【00
15】の記載に照らしても,分割光線が「中間素子」を通過することや,「中間素子」
を通過する分割光線の波長が変化することは記載も示唆もされていないのであって,
補正発明にいう「中間素子」は単に入射された光の波長を変化させて出射する部材
にすぎない。したがって,補正発明においては「中間素子」を介して入射光の波長
を変化させているとした審決の認定に誤りはない。
2取消事由2に対し
(1)補正発明にいう「中間素子」は波長を変化させるために用いられるもので,
DyeLaserを有する構成を排除していない。また,引用文献記載2発明のDyeLaser
は,励起光が入射されることにより励起され,励起光とは異なる波長の光を発振す
るもので,それ自体が自発的に発振するものではないから,電磁エネルギー源に当
たらない一方,入射光の波長を変化させるためのものであるから,補正発明にいう
「中間素子」に当たる。
したがって,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用できるとした審決
の判断に誤りはない。
(2)補正発明において誘導光と励起光の重なり合いのずれが許容される範囲
は,「合焦形態変化手段」によって内側が空の形態に変化させられることにより形成
された第2の分割光線の中空部が第1の分割光線の合焦領域内に収まっている程度
をいうところ(本願明細書の段落【0023】,図4,5参照),引用文献記載1発
明においても,誘導光の内側の空の領域が励起光の合焦領域内に収まっている範囲
内で,ずれが許容されるものである。そうすると,ずれの許容の点において,引用
文献1記載発明は補正発明と異なるものではない。
(3)補正発明にいう「合焦形態変化手段」は,合焦位置における「第2の分割
光線」の配置を内側が空の形態に変化させる手段であって,当業者である原告にお
いても,2つの誘導光を中心軸上に配置されている状態から,互いに反対方向に同
じ距離だけずれるよう,対称に配置されている状態に光線の配置が変化し,内側が
空の形態となるように変化させる引用文献1のスプリッター及びミラーが補正発明
にいう「合焦形態変化手段」に相当することを容易に認識できたものである。
したがって,審決がした認定に原告に対する不意打ちはなく,手続の違法はない。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(引用文献1記載発明と補正発明との一致点及び相違点の認定の
誤り)について
(1)ア原告は,審決には補正発明にいう「合焦形態変化手段」の有無に関し,
引用文献1記載発明と補正発明との一致点,相違点の認定の誤りがある旨主張する
ところ,補正発明の特許請求の範囲では,「合焦領域」及び「合焦形態変化手段」に
関し,「前記少なくとも2つの分割光線(19,21)の第1の分割光線(19)が,
試料(41)に直接投光され,そこで第一合焦領域(62)を光学的に励起し,・・・
第2の分割光線(21)が,試料(41)の第二合焦領域に投光され,そこで重畳
領域(63)を形成し,」,「前記第2の分割光線(21)には,合焦形態変化手段(6
1)が配されている」と記載されているのみであるから,上記「合焦形態変化手段」
は,「第2の分割光線(21)」の光路の途中に設けられ,分割光線の焦点が合う形
態を変化させるための手段程度の意味合いであることは理解できるものの,特許請
求の範囲の記載のみからは,その具体的な構成も,補正発明の作用効果に対して果
たす機能も,当業者において理解することができない。そこで,本願明細書(甲3,
6,10)の発明の詳細な説明の記載をみるに,上記「合焦形態変化手段」に関し,
次のとおりの記載がある。
・段落【0004】
「特に共焦点走査型顕微鏡の場合,被検物の走査は,三次元での光線の合焦のよ
り行われる。」
・段落【0008】
「共焦点走査型顕微鏡の分解能は,とりわけ照明光線の合焦(スポット)の強度
分布及び空間的広がりによって与えられる。蛍光の利用に関して分解能を大きくす
るための装置が,・・・既知である。その装置では,第二レーザ光源から放出される
異なる波長のレーザ光によって照明合焦空間の辺縁領域が照明され,そこで第一レ
ーザ光源の光によって励起された試料領域が誘導され基底状態に戻る。この場合検
出されるのは,第二レーザ光によって照明されない領域から自発的に生じる光のみ
であり,そのため分解能は全体として改善される。この方法を行うために,STE
D(誘導放射空乏:StimulatedEmissionDepletion)が一般に使用されてきた。」
・段落【0009】
「STED顕微鏡の分野では,通常,2つのレーザが使用されるが,一方のレー
ザは試料領域を励起するためのものであり,他方は誘導放射を惹き起すためのもの
である。」
・段落【0019】(以下は実施例に関する記載)
「図2に共焦点走査型顕微鏡として構成されている本発明の走査型顕微鏡を示す。
ここに示した実施例では,光源装置1は,分割光線23の光路に,光学パラメトリ
ック発振器9に続いて,合焦形態に影響を与える手段(これは,λ/2プレート6
1として構成されており,かつ分割光線23の断面の中央部分のみによって通過さ
れる)を含む。・・・λ/2プレート61を通過した分割光線23は,ダイクロイッ
ク光線結合器13に達し,そこで分割光線27と結合し,光源装置1から射出する
照明光線29を形成する。」
・段落【0021】
「図3に非走査型構成及び多光子励起の形態をとる本発明の走査型顕微鏡を示し
た。照明には,基本的には,図1に示した光源装置1が用いられるが,合焦形態に
影響を与える手段(これはλ/2プレート61として構成され,かつ分割光線53
の断面の中央部分のみのよって通過される)を更に含む。λ/2プレート61を通
過した分割光線53は,ミラー55によって反射されダイクロイック光線結合器3
1へ向かい,そこで分割光線19と結合し,光源装置1から射出する照明光線51
を形成する。試料41の照明は,図2の装置と同様にして行われる。試料41の領
域の励起は,照明光線51の一成分(これは分割光線19の波長を有する)によっ
て惹き起される。誘導放出(射)は,照明光線51の別の成分(これは分割光線2
3の波長を有する)によって惹き起される。λ/2プレート61によって,照明光
線51の後者の成分は,内側が空(中空)の(中央に光の成分を持たない)合焦(形
態)を持ち,そのためその空間の全方向において(誘導)放射空間(ボリューム)
が制限(ないし削限)され,従って軸方向及び横方向の分解能は大きくなる。」
・段落【0023】
「図4は,検査されるべき試料41の内部又は表面における,第一分割光線19
及び第二分割光線23の空間配置を明確に示している。第二分割光線23の直径(又
は太さ)は,第一分割光線19より大きく,そのため第一分割光線19は,第二分
割光線23によって合焦領域内において完全に取囲まれている。第二分割光線23
は,内部が空の合焦形態を持つ。第一及び第二分割光線19及び23の重畳によっ
て,合焦領域において,三次元の重畳領域(図4ではハッチングが付された断面部
分として描かれている)63が画成される。第一分割光線19の合焦領域でかつ第
二分割光線23の中空部分内に在る領域は,放射空間65を画成する。」
・図4
そうすると,補正発明にいう「合焦形態変化手段」は,分割光線を形成する手段
(5)によって分割された分割光線のうち第2分割光線(21)が試料表面上又は
試料内部で成す焦点の形態を変化させる手段,例えば,前記図4のように,外側を
環状の第2分割光線(21,誘導光)の焦点(照射部分)が取り囲み,内側が空に
なるように,第2分割光線(21)の焦点の形態を変化させる手段を意味するもの
というべきである。
この点,被告は,補正発明にいう「合焦形態」は光線が最も絞り込まれた位置に
おける光線の配置を意味する等と主張するが,上記のとおり,補正発明にいう「合
焦形態変化手段」は焦点(照射部分)の配置(位置)のみならずその形(形態)を
も変化させる手段を意味するから,被告の上記主張を採用することはできない。
イ他方,走査型顕微鏡の励起光及び誘導光の試料表面に対する照射に関し,
引用文献1には次のとおりの記載がある。
・5欄35ないし50行
「Anotherimprovementinthelocalresolutionofthedevicecanbeachievedby
arrangingafilterelementpermeableforthewavelengthofthestimulatinglightbetweenthe
lightsourceandthelensthathasanimpermeablemiddleareaandapermeableouterarea
forthewavelengthofexcitationlight.Suchafilterelementmoveslightfromthemain
maximumintothebendingauxiliarymaximaintheintensitydistributionoftheexcitation
lightinthefocalrange,whereinthemainmaximumismadeclearlynarrower.Thisleadsto
anothernarrowingoftheeffectivepoint-imagingfunction.Theincreaseintheintensityof
theauxiliarymaximaoftheintensitydistributionoftheexcitationlightis,inthiscase,not
disturbing,sincetheyaresuppressedbecauseoftheintensitydistributionofthe
simulationlightintheeffectivepoint-imagingfunction,sincetheintensitydistributions
partiallyoverlap.」
(光源とレンズの間に,励起光の波長を,その中心部は透過しないが周囲部分は
透過し,誘導光の波長を透過するフィルターを置くことで,装置の局所的解像度の
向上が図れる。このようなフィルターによって,合焦領域における励起光の強度分
布の主たる極大値の光を従たる極大値の方に移動させることができる。そこでは,
主たる極大値は,明らかに狭くなっている。その結果,有効点像関数の狭窄化が起
こる。この場合,励起光の2つの従たる極大値の強度は増加するが,有効点像関数
における誘導光の強度分布が部分的に重なり,それらが抑制されるから問題となら
ない。)
・5欄65行ないし6欄27行
「DETAILEDDESCRIPTION
FIG.1shows,thearrangementofarastermicroscopeasanexampleofembodimentof
thedeviceintheinvention.
Therastermicroscopeincludesalightsource1withalaser2toemitexcitinglightand
alaser3toemitstimulatinglight.Therearealsodichroiticmirrors4and5andalens6,
withwhichtheexcitinglightandstimulatinglightcomingfromlasers2and3aredeflected
orfocusedononepoint7ofthesample8.Thepoint7hasalocalexpansionwhichisan
expansionofthesurfacehere.Adetector9isarrangedtodetecttheemissionlight
emittedbythesample8whichisseparatedfromtheexcitationlight18withthedichroitic
mirror5.Thesampleisarrangedonapositioningtable10.Betweenthelightsource1and
thelens6isabeam-rasterdevice11forcontrolledscanningofthesample8withthe
excitinglightandthestimulatinglight.Thelightsource1includes,inadditiontothe
lasers2and3,lenses12and13andafilter14.Withthelenses12,thelaserbeamcoming
fromthelaser2isfocusedonthefilter14.Thelens13isusedtoadjustthedivergenceof
theexcitinglightbeamandthestimulatinglightbeams,sothattheycanbefocusedinthe
sameplaneusingthelens6.Aperturesareusuallyusedasfilters.Behindthelaser3,there
isabeamsplitter23andamirror24fordividingupthebeamcomingfromthelaser3into
twostimulatinglightbeams17.Thearrangementisselectedsothattheexcitinglightbeam
andthestimulatinglightbeamsmeetonthemirror4insuchawaythatafterdeflectionat
themirror5andpassagethroughthelens6,theintensitydistributionsofthebeams
partiallyoverlapinthefocalrangeofthelens6.」
(詳細な説明
図1は,この発明の一実施例のレーザー顕微鏡の配置を示している。
レーザー顕微鏡は,励起光を放射するレーザー2と,誘導光を放射するレーザー
3を備える光源1を含む。レーザー2と3からの励起光と誘導光を反射し,試料8
の一点に合焦させるダイクロイックミラー4,5とレンズ6も備えられている。点
7は局所的に広がった表面を有する。検出器9が,試料8から放射され,ダイクロ
イックミラー5によって励起光18から分離された発光光を検出するように,配置
されている。試料は,位置決めテーブル10に配置されている。光源1とレンズ6
の間に,励起光と誘導光を試料8に走査するためのビーム走査装置11が配置され
ている。光源1はレーザー2と3に加え,レンズ12,13とフィルター14を備
えている。レンズ12で,レーザー2からのレーザービームがフィルター14上に
合焦される。レンズ13は,レンズ6を用いて2つの励起光と誘導光が同一平面上
に合焦するように,発散を調節するために用いられる。アパーチャーは,通常フィ
ルターとして用いられる。レーザー3の後ろに,レーザー3からの光線を2つの誘
導光に分けるためのスプリッター23とミラー24が配置されている。各要素は,
励起光と2つの誘導光がミラー4で合流し,ミラー5で反射した後にレンズ6を通
過して,レンズ6の合焦領域で光の強度分布が部分的に重なるように配置されてい
る。)
・7欄30ないし57行
「FIG.2showstheintensitydistribution25oftheexcitinglightbeamandtheintensity
distributions26oftwostimulatinglightbeams17.Theintensitydistribution25ofthe
excitinglightbeam16hasamainmaximumandsymmetricalauxiliarymaximainthelateral
direction.Theintensitydistribution26ofthestimulatingbeams17areGaussian.The
maximaoftheGaussdistributionsofthestimulatinglightarestaggeredlaterallyinrelation
tothemaximumoftheintensitydistribution25oftheexcitationlight.Asymmetrical
arrangementischoseninwhichthetwostimulatinglightbeamsaremovedintheopposite
directionatthesamedistanceinrelationtothecentralaxisbytheintensitydistribution
25oftheexcitinglight.Theintensityofthestimulatinglightisclearlygreaterthanthe
intensityoftheexcitationlight.Theintensityofthestimulatinglightbeamischosenso
thatthereisanonlinearconnectionbetweenthatintensityandtheoccupationofthe
energystateofthesample.
FIG.3showstheeffectivepoint-imagingfunctioninthefocalplaneofthelens,inwhich
theintensitydistributionsinFIG.2go.Theeffectivepoint-imagingfunctiondetermines
thelocalresolutionofarastermicroscope.Ascanbeseeninthefigure,theresulting
effectivepoint-imagingfunctionhasamaximumwhosehalf-widthvalueisclearlynarrower
thanthehalf-widthvalueoftheintensitydistributionoftheexcitinglight,seeFIG.2.Also,
throughtheoveralleffectoftheintensitydistributionsshowninFIG.2,theauxiliary
maximacontainedintheexcitationlightareeliminated.」
(図2は,励起光線の強度分布25と2つの誘導光線17の強度分布26を示す。
励起光線16の強度分布25は,1つの主たる極大値と,横方向に対称な従たる極
大値を有する。2つの誘導光線17の強度分布26はガウス形状である。誘導光の
ガウス分布の極大値は,励起光の強度分布25の極大値に関連して,横方向にずら
してある。2つの誘導光線は,励起光の強度分布25の中心軸から反対方向に同じ
距離だけずれるように対称に配置されている。誘導光の強度は,明らかに励起光の
強度より大きい。誘導光線の強度は,試料のエネルギー状態の占有と強度の関係が
非線形になるように選択される。)
・図1
・図2
ウそうすると,引用文献1記載発明においては,レーザー(2)から照射
される励起光が試料表面(又は試料内部)で成す強度分布25のピーク(極大部)
の両横の裾の部分に,同ピークから横方向に対称にずれて2つの分割光線(誘導光)
のピークが来るようにするべく,ダイクロイックミラー(4,5)及びレンズ(6)
を操作するものであるが,上記図2の記載からも明らかなように,誘導光のピーク
は励起光のピークの一部と概ね一直線上に並び,励起光のピークの裾の部分と誘導
光のピーク(2つ)が一直線上に重なり合うだけで,誘導光の焦点の形態が変化し
ているものではない。
一方,前記のとおり,補正発明においては,「合焦形態変化手段」が,第2分割光
線(21)が試料表面上又は試料内部で成す焦点の形態を,例えば,外側を環状の
第2分割光線(21,誘導光)の焦点(照射部分)が取り囲み,内側が空になるよ
うに変化させるから,補正発明では第2分割光線(21),引用文献1記載発明では
誘導光の各光路上に設けられた機器が,焦点の形態を変化させるか否かにおいて互
いに異なるというべきである。
したがって,引用文献1記載発明の「『スプリッターとミラー』は,補正発明の『合
焦形態変化手段』に相当する」とした審決の判断(11頁)は誤りであるし,審決
がした引用文献1記載発明と補正発明の一致点の認定のうち,「前記第2の光線には,
合焦形態変化手段が配されている」との部分は誤りである。
(2)なお,原告は,審決が「第2の光線が,試料の第二合焦領域に投光され,
そこで重畳領域を形成」する点も引用文献1記載発明と補正発明の一致点であると
した認定には誤りがあると主張するが,審決は,「引用文献1記載の発明の『誘導光』
が,2つの誘導光に分けられ,レンズの合焦範囲で励起光線と強度分布が部分的に
重なる誘導光ビームにより,励起光で励起された試料のエネルギー状態が誘導放出
により緩和されることは,補正発明の『試料の第二合焦領域に投光され』ると,『そ
こで重畳領域を形成し,該重畳領域において第1の光線の光によって励起された試
料領域が誘導されて基底状態に戻される』ことに実質的に等しい。・・・引用文献1
記載の発明と補正発明とは,ともに,『重畳領域において前記第1の光線の光によっ
て励起された試料領域が誘導されて基底状態に戻されるように,第2の光線の波長
を設定する』点で共通する。」(10頁)と説示しており,補正発明にいう「第2の
分割光線」,引用文献1記載発明にいう「誘導光」の本数を捨象して,当該「第2の
分割光線」等の機能に着目し,上記一致点の認定をしたにすぎないことが明らかで
ある。他方,審決は,引用文献1記載発明と補正発明の相違点の認定において,補
正発明にいう「第2の分割光線」と引用文献1記載発明にいう「誘導光」の本数が
異なることを前提とした認定を行っている。したがって,原告の上記主張は理由が
ない。
(3)以上のとおり,審決がした引用文献1記載発明と補正発明の一致点及び相
違点の認定には,相違点の看過がある。原告はこの相違点看過を前提として取消事
由2を主張し,被告もこの点について反論しているので,前記(1)の相違点が存する
ことを前提として,引用文献1記載発明と補正発明の相違点に係る構成の容易想到
性に関する取消事由2について,次に判断する。
2取消事由2(引用文献1記載発明と補正発明の相違点に係る構成の容易想到
性等の判断の誤り)について
(1)引用文献2(甲2)には,次のとおりの記載がある。
・段落【0001】
「この発明は,光学顕微鏡に関するものである。さらに詳しくは,この発明は,
第2励起状態からの発光収率が小さい分子により構成されている試料に対しても高
い空間分解能で,高画質の発光像を得ることができる,高性能且つ高機能な,新し
い光学顕微鏡に関するものである。」
・段落【0006】
「このように,従来の光学顕微鏡では,得られる像のコントラスト等の画質や情
報量が不十分であり,観察が不安定であるといった問題があった。」
・段落【0007】
「このような従来の光学顕微鏡の欠点を克服するために,この発明の発明者は,
新しい光学顕微鏡として,像のコントラストの制御を行うことができ,さらに試料
の化学分析をも行うことのできる高性能且つ高機能な光学顕微鏡をすでに提案して
いる。この新しい光学顕微鏡は,お互いに異なる波長を有する複数の光を試料に照
射して二重共鳴吸収過程を引き起こすことにより,特定分子の光学遷移に起因する
吸収像や発光像を得るものである。」
・段落【0012】
「このように,新しく提案された多波長光光学顕微鏡は,分光された各光の波長
を調整することにより,コントラストを調整して,高コントラストの像を得ること
ができ,さらに化学組成や配向方向の同定などのような多くの情報量を得ることが
できる。しかしながら,このような多波光光学顕微鏡では,分子によっては第二励
起状態からの発光収率が必ずしも大きくなく,蛍光や燐光の発光が極めて弱くなっ
てしまうことがあり,この場合では,得られる像のS/N比が悪く,感度が不十分
になるといった問題があった。このような画質の劣化は,特に暗視野型の蛍光顕微
鏡に適用する場合において顕著となる。」
・段落【0013】
「そこで,この発明は,以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり,第二励
起状態からの発光収率が小さい分子に対しても,非常に高い空間分解能で,画質の
優れた発光像を得ることができる,高性能且つ高機能な,新しい光学顕微鏡を提供
することを目的としている。」
・段落【0014】
「この発明は,上記の課題を解決するものとして,試料を構成する基底状態の分
子を第1励起状態へ励起させる波長λ1光の光源と,第1励起状態の分子を第2励
起状態へ励起させる波長λ2光の光源と,波長λ1光と波長λ2光とを試料に集光
させる集光光学系と,試料からの発光を検出器に集光させる発光検出光学系とを有
し,各励起状態に励起された分子が基底状態へ脱励起する際の発光を検出器により
検出する光学顕微鏡であって,波長λ1光の照射領域と波長λ2光の照射領域とを
一部分重ね合わせる重ね手段を備え,この重ね手段を通して波長λ1光と波長λ2
光とを試料に照射することにより,第1励起状態から基底状態へ脱励起する際の発
光の領域を抑制することを特徴とする光学顕微鏡(請求項1)を提供する。」
・段落【0015】
「また,この発明は,上記の光学顕微鏡において,重ね手段が,入射光を波長的
且つ空間的に分離して透過する光学瞳を有していること(請求項2)や,重ね手段
として,波長λ1光に対する透過率が高く且つ波長λ2光に対する透過率が低い輪
帯と,波長λ2光に対する透過率が高く且つ波長λ1光に対する透過率が低い輪帯
とによりなる輪帯構造を有する光学フィルタが備えられていること(請求項3)や,
重ね手段として,波長λ1光に対する透過率が高く且つ波長λ2光に対する透過率
が低い材料もしくは誘電体多層膜と,波長λ2光に対する透過率が高く且つ波長λ
1光に対する透過率が低い材料もしくは誘電体多層膜とが,表面にコーティングさ
れた集光レンズが備えられていること(請求項4)等をその好ましい態様としてい
る。」
・段落【0016】
「また,この発明は,上記の光学顕微鏡において,集光光学系が,2枚以上の集
光ガラスレンズにより構成されていること(請求項5)や,集光光学系が,反射光
学系であること(請求項6)や,集光光学系と発光検出光学系とが,結像性能が等
しい共焦点光学系であること(請求項7)等をもその好ましい態様としている。」
・段落【0027】
「この図7に例示した光学顕微鏡では,波長λ1光および波長λ2光の光源とし
て,Nd:YAGLaser(7)とDyeLaser(8)とが組み合わせれた光源系が備えられて
おり,Nd:YAGLaser(7)により,たとえばトリプトファン含有サンプル分子(1
7)を基底状態から第1励起状態へ励起させる波長λ1光として波長266nmの
4倍波光が発振され,Nd:YAGLaser(7)励起のDyeLaser(8)により,第1励起
状態のサンプル分子(17)を第2励起状態へ励起させる波長λ2光として波長4
00~500nmの光が発振される。トリプトファン含有サンプル分子(17)は,
第2励起状態の蛍光収率が小さい分子である。もちろん,様々なサンプル分子(1
7)の種類によって,波長λ1と波長λ2の共鳴波長は異なった波長帯域に存在す
るため,各分子における共鳴波長に従ってレーザの発振波長も調整する必要があ
る。」
・段落【0028】
「Nd:YAGLaser(7)により発振された波長266nmの4倍波光とDyeLaser(8)
により発振された波長400~500nm光とは,ダイクロックミラー(9)によ
り同じ光軸上に合わされ,前述のような波長λ1帯域と波長λ2帯域とで同じ結像
性能を持つ2波長帯光学系である第1集光レンズ(10)により,重ね手段である
ピンホール(11)に集光される。」
・段落【0029】
「このピンホール(11)は,前述の図6に例示したように,たとえば波長26
6nmの4倍波光を透過する輪帯と波長400~500nmの光を透過する輪帯と
により構成されており,このようなピンホール(11)に集光された各波長光は,
それぞれを透過する輪帯を透過して,2波長帯光学系である第2集光レンズ(12)
によりサンプル分子(17)表面に集光される。第1集光レンズ(10)と第2集
光レンズ(12)との2枚の集光ガラスレンズにより集光光学系が構成されている。」
・段落【0030】
「このようにサンプル分子(17)に集光された各波長光の照射領域は,ピンホ
ール(11)により一部分重なり合ったものとなっており,重なり合った部分では,
分子が第2励起状態へ励起するために蛍光の発光が抑制されるため,蛍光の発光領
域は,波長λ1光である波長266nmの4倍波光のみが照射される領域に限定さ
れる。つまり,この領域においてのみ,分子が第1励起状態から基底状態へ脱励起
する際に波長λ3の強い蛍光が発光される。」
・段落【0032】
「もちろん,波長λ1光と波長λ2光とを発振する光源としては,Nd:YAGLaser
(7)とDyeLaser(8)とが組み合わせれた光源系だけでなく,たとえば,チタン
サファイアレーザ,CW半導体レーザー,波長可変のオプチカルパラメトリクオシ
レータレーザシステム等が備えられていてもよい。また,この発明の光学顕微鏡に
おいて,蛍光集光用レンズを,第3集光レンズ(14)と同じ結像性能を持つ共焦
点光学系に設計して配置させ,さらに,図9に例示したように,ピンホール(20)
を検出器である第2フォトマル(16)の直前に配置させることにより,深さ方向
を含む3次元解析をも行うことができる。」
・図6(重ね手段としてのピンホールの一例を示した構造図)
・図7(光学系及び各波長光の結像パターンを例示した概念図)
・図8(要部構成図)
そうすると,引用文献1記載発明の顕微鏡と同様に,励起光(レーザー)を試料
に照射して励起状態にすると同時に,誘導光(レーザー)を試料に照射して基底状
態に脱励起する照明用光源装置を備える引用文献2記載発明の光学顕微鏡において
は,レーザー光源であるNd:YAGLaser(7)から2本のレーザー光(波長λ1)が
発振され,うち1本のレーザー光がDyeLaser(8)に入射されて別の波長λ2のレ
ーザー光(誘導光)が発振された後,ダイクロックミラー(9)を経て,DyeLaser
(8)を経ない上記波長λ1のレーザー光(励起光)と同一の光路に至る構成を有
するものである。そして,引用文献2記載発明においては,波長λ1の励起光と波
長λ2の誘導光が同一の光路に至った後に,内側の輪帯は波長λ1の光の透過率が
高いが波長λ2の光の透過率が低く,外側の輪帯は逆に波長λ2の光の透過率が高
いが波長λ1の光の透過率が低い同心円状の構造を有するピンホール(11)によ
って(請求項2ないし4,段落【0015】,【0029】),試料表面又は内部にお
いて,内側は励起光(波長λ1光)が焦点を結び,外側は誘導光(波長λ2光)が
照射されて,両光線が重なり合う外側部分は蛍光が抑制され(段落【0014】,【0
030】),専ら励起光のみが照射される内側部分が蛍光(又は燐光)を発して明る
くなるという構成を有するものである。
したがって,引用文献2からは,励起光(波長λ1光)と同一の波長のレーザー
光をもとに,これと異なる波長の誘導光(波長λ2光)を生成し,上記の励起光と
誘導光を重ね合わせるとの技術的事項を読み取ることができるが,試料におけるレ
ーザー光の焦点の形状に影響を与えるピンホール(11)は,励起光と誘導光が重
なり合った後の光路に設けられているものであって,励起光と重なり合う前の,誘
導光の光路の途中に「合焦形態変化手段」が設けられている補正発明とはその構成
が異なる。そうすると,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用したとし
ても,本件優先日当時,当業者において補正発明をすることが容易であったとはい
い難い。
(2)また,補正発明は1つの電磁的エネルギー源(3)のみを用いて発振され
たレーザー光を2つに分割し,うち1つのレーザー光をそのまま励起光(第2の分
割光線(19))として用い,うち1つのレーザー光(第1の分割光線)は中間素子
(9,25)を経て波長を変化させて誘導光とし,さらに「合焦形態変化手段(6
1)」によりその焦点の形態を変化させることによって,従来技術では通常2つの高
価なレーザー発振器が必要であり,正確な調整が必要であったのを(本願明細書の
段落【0009】),1つの電磁的エネルギー源で足りるようにするとともに,顕微
鏡の照明装置の構成を単純,低価格で,調節が容易で安定的に動作するものとし(段
落【0014】,【0025】),また高解像度を実現でき(段落【0025】),さら
に上記電磁的エネルギー源(レーザー光源)をパルスレーザーとするときには光源
間の同期化を省略できる(段落【0016】)という作用効果を奏することができる
ところ,特に誘導光(第1の分割光線)の焦点の形態を外側を環状の第2分割光線
(21,誘導光)の焦点(照射部分)が取り囲み,内側に略円状の第1分割光線(1
9,励起光)の焦点(照射部分)が位置するように変化させるときは,かような簡
素な構成でも,より解像度を上げることができる。他方,引用文献1記載発明にお
いては2つのレーザー光源(2),(3)を用い,うちレーザー光源(3)から発振
されるレーザー光線を2つに分割して2本の誘導光としていること,引用文献2記
載発明においても,レーザー光線発生装置であるNd:YAGLaser(7)は1つである
ものの2本のレーザー光線が発振されて,うち1本がその後に誘導光とされている
ことからすると,顕微鏡の照明装置の構成の単純化,低価格化が図られているとは
いい難い。また,引用文献1記載発明等が上記のとおりの特徴を有することからす
ると,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用しても,従来技術に係る照
明装置より,調節が容易で安定的に動作するものとすることができるかどうかは不
明であるといわざるを得ない。そうすると,補正発明は,引用文献1記載発明及び
引用文献2記載発明からは当業者が予測し得ない格別有利な作用効果を奏すること
ができるものであるということができる。
(3)結局,補正発明によって奏される格別有利な作用効果にもかんがみれば,
本件優先日当時,引用文献1記載発明に引用文献2記載発明を適用することによっ
ても,当業者において,補正発明をすることが容易であったとはいえないから,補
正発明は進歩性を欠くものとはいえない。
(4)審決は,「引用文献2記載の発明においてYAGLaserから2つのレーザー光
が照射されていること,及び,当該技術分野における技術常識を考慮すれば,引用
文献2記載の発明が,『光線を空間的に分割して少なくとも2つの分割光線を形成す
る手段』を有することは明らかである。ここで,YAGLaserから2つのレーザー光
を,YAGLaserからの1つの波長の光線を分割することにより形成することは,技
術常識を踏まえれば,自明な事項である。また,引用文献2記載の発明では
『Nd:YAGLaserからの他方のレーザー光によるDyeLaserの励起により,波長λ2
光として波長400~500nmの光が発振される』ことから,引用文献2記載の
発明が『波長を変化させるための中間素子』を有することは明らかである。してみ
ると,引用文献2記載の発明は,上記相違点に係る構成を有している。そして,引
用文献1記載の発明と引用文献2記載の発明は同一の技術分野に属し,しかも,異
なる波長の2つのレーザー光を用いるという共通の構成を有するから,引用文献2
記載の発明を引用文献1記載の発明の,波長の異なる2つの光を形成する手段とし
て採用することによって,補正発明を構成することに,格別の困難性はない。」(1
1,12頁)と説示するところ,引用文献2のNd:YAGLaser(7)からの2本のレ
ーザー光線を,発振装置(レーザー光線発生装置)からの1本のレーザー光線を例
えばスプリッターで2本に分割することで生成し,分割後のレーザー光線のうち1
本をDyeLaser(8)に入射して波長が異なるレーザー光線を発振させることとすれ
ば,補正発明にいう「当該中間素子(9,25)を通過する分割光線の波長を変化
させる」に想到することができ,さらにNd:YAGLaser(7)をパルスレーザーとす
れば,補正発明の作用効果のうち,光源の同期化を省略することができるともいい
得る。しかしながら,その後に誘導光レーザーとして用いられるレーザー光線の波
長を変化させる手段に係る構成の違いの問題を解消することができるとしても,前
記のとおり,補正発明の「合焦形態変化手段」の構成に想到することは容易ではな
く,補正発明の格別有利な作用効果を否定することもできないから,上記の「中間
素子」の構成の容易想到性を肯定するだけで,補正発明の進歩性を否定することは
できない。
なお,本願明細書の段落【0015】には,「第二分割光線の波長は,中間素子に
よって変化させられる。この中間素子は,好ましくは,光学パラメトリック発振器
(OPO)である。」との記載があるのみであって,補正発明においては,中間素子
(9)は入射(入力)されるレーザー光線と発振(出力)されるレーザ光線との間
で波長を変化させる機能を果たす点に意味があることは明らかであるから,引用文
献2発明の「DyeLaser(8)」と補正発明の「中間素子(9)」の相違をもとに補正
発明の「中間素子(9)」の想到が困難であるとする原告の主張は採用することがで
きない。
(5)また,審決は,引用文献1記載発明も補正発明もずれの許容の点において
異なるものではないなどとして,補正発明の格別有利な作用効果を否定するが,補
正発明では出発点となるレーザー光源を1つのものとすることで,光軸等の調整を
容易にしたもので(パルスレーザーを用いるときには,複数の光源間の同期調整も
不要になる。),2つのレーザー光源を用いる引用文献1記載発明と調整の容易さを
同等視することはできない。
(6)以上のとおり,補正発明は進歩性を欠くとはいえないから,これに反する
審決の判断は結論において誤りであるというべきである。したがって,原告が主張
する取消事由2は理由がある。
第6結論
以上によれば,原告が主張する取消事由はいずれも理由があるから,主文のとお
り判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
塩月秀平
裁判官
真辺朋子
裁判官
田邉実

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛