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裁判例


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主文
1第1事件被告が第1,第2,第4事件原告に対して平成14年6月7日付け
でした納税者P1の滞納国税に係る第二次納税義務による納付告知処分(ただ
し,納付限度額について,同16年1月29日付け審査裁決により一部取り消
された後のもの)を取り消す。
2品川税務署長が第1,第2,第4事件原告に対して平成14年3月26日付
けでした同原告の同11年分の所得税についての更正処分のうち,総所得金額
11億3593万2077円,納付すべき税額22億5657万2600円を
超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,いずれも同16年1月29
日付け審査裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
3第3事件被告が第3事件原告に対して平成14年3月29日付けでした同原
告の同10年4月1日から同11年3月31日までの事業年度の法人税につい
ての更正処分のうち,所得金額555億2116万5839円,納付すべき税
額214億3803万6200円を超える部分,及び過少申告加算税賦課決定
のうち,169万1000円を超える部分(ただし,いずれも同16年1月2
9日付け審査裁決により一部取り消された後のもの)をいずれも取り消す。
4麹町税務署長がP1に対して平成14年3月29日付けでした同社の同10
年7月1日から同11年6月30日までの事業年度の法人税についての決定処
分及び無申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。
5第3事件原告のその余の請求を棄却する。
6訴訟費用は,全事件を通じて,第1,第2,第4事件原告と第1事件被告,
第2事件被告及び第4事件被告との間においては,その全部を同被告らの負担
とし,第3事件原告と第3事件被告との間においては,第3事件原告及び第3
事件被告に生じた費用の各200分の3を第3事件原告の負担とし,第3事件
原告及び第3事件被告に生じた費用の各200分の197を第3事件被告の負
担とする。
事実及び理由
第1請求
1第1事件
主文第1項と同旨。
2第2事件
主文第2項と同旨。
3第3事件
第3事件被告が第3事件原告に対して平成14年3月29日付けでした同原
告の同10年4月1日から同11年3月31日までの事業年度の法人税につい
ての更正処分のうち,所得金額554億7799万6885円,納付すべき税
額214億2112万6100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定
(ただし,いずれも同16年1月29日付け審査裁決により一部取り消された
後のもの)をいずれも取り消す。
4第4事件
主文第4項と同旨。
第2事案の概要
(1)第1事件
第1,第2,第4事件原告(以下「原告P2」という。)がオーストラリ
ア連邦法人であるP1からP3株式会社の株式(以下,同社を「P3」とい
い,その株式を「P3株式」という。)600株を譲り受けたところ,麹町
税務署長がP1に対して,上記P3株式の譲渡価額は時価に比し低額である
から,法人税法37条7項に基づき譲渡価額と時価との差額が寄附金の額に
参入されるとして,法人税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を行
い,さらに,第1事件被告(以下「被告国税局長」という。)が,原告P2
に対し,上記P3株式の譲受け価額は,国税徴収法(以下「徴収法」とい
う。)39条にいう著しく低い額の対価に当たるとして,第二次納税義務の
納付告知処分を行ったため,原告P2が,上記P3株式の譲渡は,株式の売
買という法形式が採られているものの,その実質は,第3事件原告(以下
「原告会社」という。)の株式公開の円滑な実現を目的とした,株式会社P
4の株式(以下,同社を「P4」といい,その株式を「P4株式」とい
う。)の一時的な預託行為の一部としての株式の返還にほかならず,このよ
うな株式の預託行為全体を一連の取引行為として見れば,上記P3株式の譲
受け価額は徴収法39条にいう著しく低い額の対価に当たらないなどと主張
して,上記第二次納税義務納付告知処分の取消しを求めている事案である。
(2)第2事件
品川税務署長が,原告P2に対し,P1から原告P2が前記(1)のとおり譲
り受けたP3株式600株の譲受け価額が時価に比し低額で,譲受け価額と
時価との差額が所得税法36条1項に規定する経済的利益に当たり,一時所
得に該当するとして,所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分
を行ったところ,原告P2が,上記P3株式の譲受け価額は時価に比し低額
ではないなどと主張して,これらの処分の取消しを求めている事案である。
(3)第3事件
第3事件被告(以下「被告江東西税務署長」という。)が,原告会社に対
し,原告会社が原告P2外4名からそれぞれ譲り受けたP3株式計700株
の譲受け価額が時価に比し低額であるとして,譲受け価額と時価との差額に
つき受贈益と認定し,法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分
をしたところ,原告会社が,上記P3株式の譲受け価額は通常の対価である
と主張して,これらの処分の取消しを求めている事案である。
(4)第4事件
P1からP3株式600株を譲り受けた原告P2が,麹町税務署長がP1
に対してした法人税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分に基づく滞
納国税につき,前記(1)のとおり,徴収法39条に基づく第二次納税義務の納
付告知処分を受けたため,上記P3株式の譲渡価額を時価に比し低額である
と認定した麹町税務署長の上記決定処分等は違法であると主張して,これら
の処分の取消しを求めている事案である。
1前提事実
本件の前提となる事実は,以下のとおりである。いずれも当事者間に争いの
ない事実又は証拠及び弁論の全趣旨等により容易に認めることのできる事実で
あるが,争いのない事実を除き,括弧内に認定根拠を付記している。
(1)当事者等
ア原告P2
原告P2は,コンピューター式パチスロ機の開発に初めて成功した技術
者で,パチスロ機についてプレーヤーの技術介入の影響を極力軽減するこ
とができる「前段判定方式」を考案して,特許を取得したものである。原
告P2は,原告会社の設立後,長くその代表取締役を務めていたが,平成
16年9月に代表取締役を辞任した。その後,同18年1月に再び代表取
締役に就任したが,同年6月に退任し,現在は代表権のない取締役会長を
務めている。(甲54,原告P2本人,弁論の全趣旨)
イ原告会社
原告会社は,パチスロ機の開発,製造及び販売等を目的とする株式会社
である。原告会社の以前の商号は「P5株式会社」であったが,平成10
年4月1日,株式会社P6と合併するとともに,商号を「P7株式会社」
に変更した。また,原告会社は,同年9月1日,P8株式会社(現在の株
式会社P9)の開設する株式店頭市場において株式を公開した。(甲54,
55,原告P2本人,弁論の全趣旨)
ウP1
P1は,平成7年12月22日にオーストラリア連邦ニューサウスウェ
ールズ州において設立された同国法上の株式会社である。P1の設立当初
の発行済株式総数は2株で,出資金の額は2オーストラリアドル(日本円
に換算すると約150円)であったが,同9年8月ころ,増資により発行
済株式総数が10株となった。その後,P1は,同14年3月ころ解散し,
清算手続が行われた。(甲51,54,58,61,69)
エP3
P3は,平成3年8月20日に設立されたパチスロ機の製造及び販売等
を営む株式会社である。P3の設立当時の資本の額は3000万円で,発
行済株式総数は600株であり,英国及びキプロス共和国の国籍を有する
P10が代表取締役を務めていた。
P3においては,平成10年1月15日に第三者割当増資が行われ,発
行済株式総数が700株,資本の額が4524万2900円となった。な
お,上記第三者割当増資により発行された新株100株は,P11に50
株,P12に22株,P13及びP14(以下これら4名の者を総称して
「P11ら」という。)に各14株がそれぞれ割り当てられた。
同11年5月31日,P10はP3の代表取締役を辞任し,代わって,
P15が代表取締役に就任した。
同12年4月10日,P3は,原告会社と合併して解散した。(甲54,
60,61,乙26,63,65の1,65の2,証人P10,弁論の全
趣旨)
(2)事実経過
ア原告P2からP3に対するP4株式の譲渡
原告P2とP3は,平成9年6月11日付けで,原告P2の保有するP
4株式3万6000株を代金9億0644万4000円で同月23日にP
3に譲渡する旨の契約を締結し,これに基づき,原告P2は,P3に対し,
P4株式3万6000株を譲渡した(以下,これを「本件P4株式譲渡」
という。)(甲20,54,61)。
イP1から原告P2に対するP3株式の譲渡
P1と原告P2は,平成11年1月12日付けで,P1が保有するP3
株式600株を代金13億8000万円で原告P2に譲渡する旨の契約
(以下「本件契約1」という。)を締結し,これに基づき,P1は,原告
P2に対し,P3株式600株を譲渡した(以下,これを「本件譲渡1」
という。)(甲25,乙4,証人P10)。
ウ原告P2から原告会社に対するP3株式の譲渡
原告P2と原告会社は,平成11年2月2日付けで,原告P2が保有す
るP3株式600株を代金121億9178万2800円で原告会社に譲
渡する旨の契約(以下「本件契約2」という。)を締結し,これに基づき,
原告P2は,原告会社に対し,P3株式600株を譲渡した(以下,これ
を「本件譲渡2」という。)(甲27,乙5の1)。
エP11らから原告会社に対するP3株式の譲渡
P11らと原告会社は,以下のとおり,いずれも平成11年2月2日付
けで,P11らがそれぞれ保有するP3株式を,いずれも1株当たりの代
金2031万9638円で原告会社に譲渡する旨の契約を締結し,これに
基づき,P11らは,原告会社に対し,P3株式をそれぞれ譲渡した(以
下,P11らが原告会社にP3株式合計100株を譲渡したことを総称し
て,「本件譲渡3」という。)(乙5の2から5の5まで)。
(ア)P11と原告会社間の契約
株式50株代金10億1598万1900円
(イ)P12と原告会社間の契約
株式22株代金4億4703万2036円
(ウ)P13と原告会社間の契約
株式14株代金2億8447万4932円
(エ)P14と原告会社間の契約
株式14株代金2億8447万4932円
(3)課税処分等の経緯
アP1に対する決定処分等(原告P2に対する第二次納税義務の納付告知
処分を含む。)
(ア)麹町税務署長は,本件契約1に基づくP1から原告P2に対するP
3株式600株の譲渡が低額譲渡に当たるとして,P1に対し,平成1
4年3月29日付けで,P1の同10年7月1日から同11年6月30
日までの事業年度(以下「平成11年6月期」という。)の法人税につ
いて,納付すべき税額を48億5227万0100円とする決定処分
(以下「本件決定処分」という。)及び無申告加算税の額を7億278
4万0500円とする賦課決定処分(以下,本件決定処分と併せて「本
件決定処分等」という。)を行った。なお,本件決定処分等の経緯につ
いては,別紙1の別表1−1記載のとおりである。
(イ)麹町税務署長は,P1が本件決定処分等に係る法人税をその納期限
までに完納しなかったことから,平成14年5月20日,P1に対し,
国税通則法(以下「通則法」という。)37条に基づき督促状を送付し,
同月28日,通則法43条3項に基づき,被告国税局長に対して,徴収
の引継を行った。
(ウ)被告国税局長は,平成14年6月7日,P1に属する財産が少額の
普通預金の払戻請求権のみであり,P1の滞納国税につき滞納処分を執
行してもなお徴収すべき額に不足すると認められ,また,本件譲渡1が
著しく低い額の対価による譲渡であり,かつ,その不足すると認められ
ることが本件譲渡1に基因すると認められるため,徴収法39条の要件
に該当するとして,原告P2に対し,徴収法32条1項に基づき,第二
次納税義務者として,納付限度額を128億8678万3000円とす
る納付通知書による告知(以下「本件納付告知処分」という。)を行っ
た。なお,本件納付告知処分の経緯については,別紙1の別表1−2記
載のとおりである。
(エ)P1は,平成14年7月22日,被告国税局長に対し,本件決定処
分等に不服があるとして異議申立てを行ったが,同年10月22日,被
告国税局長は,申立期間の徒過を理由としてP1の異議申立てを却下し
た。このため,P1は,国税不服審判所長に対し,本件決定処分等に不
服があるとして審査請求を行ったが,その後これを取り下げた。
(オ)原告P2は,平成14年8月6日,被告国税局長に対し,本件納付
告知処分に対する異議申立てを行うとともに,本件決定処分等に対して
も異議申立てを行った。
(カ)被告国税局長は,本件納付告知処分に係る異議申立てについて,平
成14年10月11日,納付限度額を107億9959万1800円に
減額する異議決定をしたが,本件決定処分等に対する異議申立てについ
ては,同月17日,不服申立期間は本件決定処分等がP1に送達された
日の翌日から起算して2か月を経過する同年6月3日までであり,異議
申立ては不服申立期間の経過後にされたものであるとして,通則法83
条1項に基づき,これを却下する旨の決定を行った。
(キ)そこで,原告P2は,平成14年11月8日,国税不服審判所長に
対し,本件決定処分等について審査請求をしたが(なお,同日,本件納
付告知処分についても審査請求をしている。),国税不服審判所長は,
同15年4月7日,本件決定処分等に対する異議申立ては不服申立期間
の経過後にされた不適法なものであり,本件決定処分等に係る審査請求
は適法な異議申立てを経ないでされた不適法なものであるとして,通則
法92条に基づき,これを却下する旨の裁決を行った。
(ク)原告P2は,上記(キ)の裁決の取消しを求める訴訟を提起し,平成
18年1月19日,最高裁判所第一小法廷において,徴収法39条所定
の第二次納税義務者は,主たる課税処分につき通則法75条に基づく不
服申立てをすることができるものと解するのが相当であり,その場合,
通則法77条1項所定の「処分があったことを知った日」とは,当該第
二次納税義務者に対する納付告知(納付通知書の送達)がされた日をい
い,不服申立期間の起算日は納付告知がされた日の翌日であると解する
のが相当であるとして,請求認容の判決の言渡しを受けた。
(ケ)また,国税不服審判所長は,平成16年1月29日,原告P2に対
し,納付限度額を107億9959万1100円に減額する裁決をした。
これを受けて,原告P2は,同年4月27日,上記裁決後の本件納付告
知処分について,なお不服があるとして,第1事件に係る訴えを提起し
た。(当裁判所に顕著な事実)
(コ)前記(ク)のとおり,最高裁平成18年1月19日第一小法廷判決に
より,前記(キ)の裁決が取り消され,原告P2の本件決定処分等に対す
る審査請求は,現在,国税不服審判所において審査中であるところ,当
該審査請求をした日の翌日から起算して3月を経過しても裁決がないこ
とから,原告P2は,通則法115条1項1号に基づき,同年5月18
日,第4事件に係る訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
(サ)なお,原告P2は,第二次納税義務に係る租税債務合計62億92
68万9700円(本税48億5227万0100円,無申告加算税7
億2784万0500円及び延滞税7億1257万9100円)を完納
している。
イ原告P2に対する更正処分等
(ア)原告P2は,平成12年3月14日,品川税務署長に対し,同11
年分の所得税について,総所得金額を11億3593万2077円,株
式の分離譲渡所得の金額を107億9959万1100円,納付すべき
税額を22億5657万2600円とする確定申告書(以下「本件所得
税申告書」)を提出して確定申告を行い,これに伴う税額を納付した。
(イ)品川税務署長は,平成14年3月26日,原告P2に対し,同11
年1月12日付けでされたP1から原告P2への本件譲渡1について,
その譲受け時点におけるP3株式の時価と譲受け価額との差額が一時所
得に当たるとして,総所得金額を75億8516万9077円,株式の
分離譲渡所得の金額を0円,納付すべき税額を24億8287万210
0円とする更正処分(以下「本件所得税更正処分」という。)及び過少
申告加算税の額を2262万9000円とする賦課決定処分(以下,本
件所得税更正処分と併せて「本件所得税更正処分等」という。)を行っ
た。なお,本件所得税更正処分等の経緯については,別紙2の別表記載
のとおりである。
(ウ)原告P2は,平成14年5月24日,被告国税局長に対し異議申立
てをし,同年12月13日に棄却決定を受けたため,同15年1月10
日,国税不服審判所長に対し,審査請求を行い,同16年1月29日,
本件所得税更正処分等につき,一部取消しの裁決がされた。この結果,
総所得金額を75億7787万7577円,納付すべき税額を24億8
017万4100円,過少申告加算税を2236万円と変更された。
(エ)原告P2は,平成16年4月27日,上記裁決後の本件所得税更正
処分等について,なお不服があるとして,第2事件に係る訴えを提起し
た(当裁判所に顕著な事実)。
ウ原告会社に対する更正処分等
(ア)原告会社は,平成11年6月30日,同10年4月1日から同11
年3月31日までの事業年度(以下「平成11年3月期」という。)の
法人税について,所得金額を554億7799万6885円,納付すべ
き税額を214億2112万6100円とする確定申告書(以下「本件法
人税申告書」という。)を提出し,確定申告をした。
(イ)上記確定申告に対し,被告江東西税務署長は,平成12年12月2
6日付けで,所得金額を565億2730万4839円,納付すべき税
額を215億4598万1900円とする更正処分及び重加算税を43
69万7500円加算税の賦課決定処分を行った。なお,原告会社に対
する更正処分等の経緯については,別紙3の別表記載のとおりである。
(ウ)被告江東西税務署長は,原告会社に対し,平成14年3月29日付
けで,所得金額を595億1968万7893円,納付すべき税額を2
27億1814万9300円,過少申告加算税を1億1721万600
0円とする増額再更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)及び
賦課決定処分(以下,本件法人税更正処分と併せて「本件法人税更正処
分等」という。)を行った。
(エ)被告江東西税務署長は,原告会社に対し,平成15年2月13日付
けで,所得金額を584億4772万4939円,納付すべき税額を2
25億8441万9000円,過少申告加算税を1億1632万800
0円とする減額再更正処分及び加算税の賦課決定処分を行った。
(オ)原告会社は,平成13年2月23日,国税不服審判所長に対し,前
記(イ)の更正処分等に不服があるとして審査請求を行い,また,同14
年5月24日,本件法人税更正処分等について,被告国税局長に対し異
議申立てを行い,その後,上記異議申立ては,国税不服審判所長に対す
るみなし審査請求に移行し,同16年1月29日,これらの更正処分等
について,一部取消しの裁決がされた。
この結果,原告会社の平成11年3月期の法人税については,所得金
額が584億3137万3639円,納付すべき税額が225億780
1万4200円,過少申告加算税が1億1568万8000円と変更さ
れた。
(カ)原告会社は,平成16年4月27日,上記裁決後の本件法人税更正
処分等について,なお不服があるとして,第3事件に係る訴えを提起し
た(当裁判所に顕著な事実)。
2被告らが主張する原告らの税額等
被告らが本件訴訟において主張するP1,原告P2及び原告会社の各所得金
額及び各納付すべき税額等は,それぞれ以下のとおりである。
本件の争点は,本件譲渡1が譲渡時におけるP3株式600株の適正な価額
より低い対価をもってする資産の低額譲渡に当たるかなど,後記3のとおりで
あり,これらに関連する部分を除き,原告らは,その余の被告ら主張の課税根
拠及び計算関係を争っていない。
(1)P1について
被告国税局長及び被告国が本訴において主張するP1の平成11年6月期
の所得金額及び納付すべき税額は,別紙4の別表2のとおりであり,その詳
細は,次のとおりである。
ア所得金額140億9033万1243円
上記金額は,次の(ア)及び(イ)の各金額を合計した金額である。
(ア)申告所得金額0

P1は,平成11年6月期に係る法人税の確定申告書を提出していな
い。
(イ)所得金額に加算すべき金額
140億9033万1243円
上記金額は,次のaの金額からb及びcの各金額を減算し,dの金額
を加算した金額である。
a有価証券売却収入として益金の額に算入されるべき金額
143億0284万9200円
上記金額は,平成11年1月12日時点におけるP3株式1株当た
りの適正な価額(時価)2383万8082円に,P1が原告P2に
譲渡したP3株式の数600株を乗じて算出した金額である。
b有価証券売却収入に係る原価として損金の額に算入されるべき金額
3415万9334円
上記金額は,P1がP3株式を取得するに当たって支出したと認め
られる金額であり,P3株式の金額41万1360オーストラリアド
ルに,平成8年3月末の電信売買相場のオーストラリアドル1ドル当
たりの仲値83.04円を乗じて邦貨換算した金額である。
c原告P2に対する寄附金として損金の額に算入されるべき金額
129億2284万9200円
上記金額は,前記aの有価証券売却収入として益金の額に算入され
るべき金額143億0284万9200円から,本件譲渡1に係る譲
渡価額13億8000万円を差し引いた金額である。
当該金額は,本件譲渡1に係る適正な価額(時価)と譲渡価額との
差額であり,P1が原告P2に対して実質的に贈与したと認められる
金額であるから,P1の原告P2に対する寄附金と認められ,P1の
平成11年6月期の所得の金額の計算上,損金の額に算入されるべき
ものである。
d寄附金のうち損金の額に算入されない金額
127億4449万0577円
上記金額は,前記cの原告P2に対する寄附金として損金の額に算
入されるべき金額のうち,法人法37条3項(平成14年法律第79
号による改正前のもの)の規定により,損金の額に算入されない金額
である。
イ所得金額に対する法人税額
48億6040万4195円
上記金額は,法人法66条1項及び2項の規定に基づき,前記アの所得
金額(ただし,通則法118条1項の規定に基づき1000円未満の端数
金額を切り捨てた後のもの)のうち,①800万円に100分の25の税
率を乗じて算出した金額200万円と,②140億9033万1000円
から800万円を減算した金額に100分の34.5の税率を乗じて計算
した金額48億5840万4195円との合計額である。
ウ確定申告に係る法人税額0円
P1は,平成11年6月期に係る法人税の確定申告書を提出していない。
エ差引納付すべき法人税額
48億6040万4100円
上記金額は,前記イの金額から前記ウの金額を差し引いた金額(ただし,
通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた
後のもの)である。
オ本件決定処分の適法性
本訴において被告が主張する平成11年6月期におけるP1の法人税に
係る所得金額及び納付すべき法人税額は,前記のとおりであり,本件決定
処分におけるP1の法人税に係る所得金額及び納付すべき法人税額は,い
ずれも,これらの金額の範囲内である。
カ無申告加算税賦課決定処分の根拠及び適法性
前記のとおり,本件決定処分は適法であるところ,P1は平成11年6
月期に係る法人税の確定申告書を提出していないことから,通則法66条
1項の規定により,本件決定処分によってP1が新たに納付すべきことと
なった税額48億5227万0000円(ただし,通則法118条3項の
規定により1万円未満の端数金額を切り捨てた後のもの)に100分の1
5の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税が課されることと
なる。そして,これにより算出される金額は7億2784万0500円で
あり,無申告加算税賦課決定処分によってP1が納付すべきこととなった
無申告加算税の額はこれと同額である。
(2)原告P2について
第2事件被告(品川税務署長事務承継者)(以下「被告渋谷税務署長」と
いう。)が本訴において主張する原告P2の平成11年分の所得金額及び納
付すべき税額は,別紙5の別表1のとおりであり,その詳細は,次のとおり
である。
ア総所得金額75億9710万6677円
上記金額は,所得税法22条2項の規定に基づき,次の(ア)から(エ)ま
での各金額を合計した金額である。
(ア)配当所得の金額7億9227万

上記金額は,本件所得税申告書の配当所得の金額欄に記載した金額と
同額である。
(イ)給与所得の金額3億2225万

上記金額は,原告P2が本件所得税申告書の給与所得の金額欄に記載
した金額と同額である。
(ウ)雑所得の金額2141万2077

上記金額は,原告P2が本件所得税申告書の雑所得の金額欄に記載し
た金額と同額である。
(エ)一時所得の金額64億6117万4600

上記金額は,原告P2が,P1からP3株式(時価143億0284
万9200円)を低額(13億8000万円)で譲り受けたことに伴い,
当該株式の時価と当該譲受け価額との差額(129億2284万920
0円)が所得税法36条に規定する経済的な利益に該当することから,
一時所得として算定したものである。
なお,上記金額は上記の経済的な利益の金額から所得税法34条3項
に規定する特別控除額50万円を控除した後の金額に,同法22条2項
2号の規定を適用した後の金額(一時所得の金額の2分の1に相当する
金額)である。
イ所得控除の合計額201万6704円
上記金額は,原告P2が本件所得税申告書の所得控除の合計額欄に記載
した金額と同額である。
ウ課税総所得金額75億9508万9000円
上記金額は,上記アの総所得金額から上記イの所得控除の合計額を控除
した後の金額(ただし,通則法118条1項により1000円未満の端数
金額を切り捨てた後の金額)である。
エ納付すべき税額24億8728万8800円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)から(エ)までの各金額を控除した
金額(ただし,通則法119条1項により,100円未満の端数金額を切
り捨てた後の金額)である。
(ア)課税総所得金額に対する税額
28億0769万2930円
上記金額は,上記ウの課税総所得金額に,所得税法89条に規定する
税率(経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の
負担軽減措置に関する法律(平成11年法律第8号,以下「負担軽減措
置法」という。)4条の特例を適用したもの。)を乗じて算出した金額
である。
(イ)配当控除3961万3500

上記金額は,所得税法92条の規定に基づいて計算した控除額であり,
原告P2が本件所得税申告書の配当控除欄に記載した金額と同額である。
(ウ)定率減税額25万円
上記金額は,負担軽減措置法6条の規定による定率減税額であり,原告
P2が本件所得税申告書の定率減税額欄に記載した金額と同額である。
(エ)源泉徴収税額2億8054万0580

上記金額は,原告P2が本件所得税申告書の源泉徴収税額欄に記載し
金額と同額である。
オ本件所得税更正処分の適法性
本訴において,被告渋谷税務署長が主張する原告P2の平成11年分所
得税の納付すべき税額は,上記のとおり24億8728万8800円であ
るところ,本件所得税更正処分により原告P2が納付すべき所得税額24
億8017万4100円(ただし,平成16年1月29日付け裁決により
一部取り消された後の金額)は,被告渋谷税務署長が本訴において主張す
る金額の範囲内である。
カ過少申告加算税賦課決定処分の根拠及び適法性
過少申告加算税賦課決定処分により,原告P2が納付すべき過少申告加
算税の額は,2236万円(ただし,平成16年1月29日付け裁決によ
り一部取り消された後の金額)であるところ,当該金額は,通則法65条
1項の規定により,本件所得税更正処分によって原告が新たに納付すべき
こととなった税額2億2360万円(ただし,平成16年1月29日付け
裁決により一部取り消された後の金額について,通則法118条3項の規
定により1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に100分の10
の割合を乗じて算出した金額と同額である。
(3)原告会社について
被告江東西税務署長が本訴において主張する原告会社の平成11年3月期
の所得金額及び納付すべき税額は,別紙6の別表1のとおりであり,その詳
細は,次のとおりである。
ア所得金額584億9823万5000円
上記金額は,次の(ア)及び(イ)の各金額を合計した金額(ただし,通則
法118条1項の規定により1000円未満の端数金額を切り捨てた後の
金額)である。
(ア)申告所得金額554億7799万6885

上記金額は,本件法人税申告書に記載された所得金額である。
(イ)所得金額に加算すべき金額30億2023万8854

上記金額は,次のa及びbの各金額を合計した金額である。
a受贈益として益金の額に算入されるべき金額
29億7706万9900円
上記金額は,平成11年2月2日時点におけるP3株式1株当たり
の価額2457万2595円に原告P2及びP11らから譲り受けた
P3株式の数700株を乗じて算出した価額172億0081万65
00円から,原告会社が上記譲渡人から譲り受けたP3株式の譲受け
価額の合計額142億2374万6600円を控除した金額である。
当該金額は,P3株式の低額譲受けに係る受贈益の計上漏れ相当額
であり,原告会社の平成11年3月期の所得の金額の計算上,益金の
額に算入されるべきものである。
b減価償却超過額4316万8954円
上記金額は,平成11年3月期の減価償却費の計算について,パチ
ンコ機及びパチスロ機の製造設備の耐用年数の適用誤りを是正して再
計算し,算出された減価償却の償却超過額であるから,原告会社の平
成11年3月期の所得の金額の計算上,損金の額に算入されないもの
である。
イ所得金額に対する法人税額201億8189万1075円
上記金額は,前記アの所得金額に,法人税法66条に規定する税率を乗
じて計算した金額である。
ウ課税留保金額122億5864万6000円
上記金額は,新たに留保金額となる前記(イ)の受贈益計上漏れ額及び減
価償却超過額の合計金額30億2023万8854円を,本件法人税申告
書に記載された留保所得金額543億7824万1357円に加算し,そ
の合計額である留保所得金額573億9848万0211円(別紙7の別表
2の①)を基に再計算した課税留保金額122億5864万6000円(た
だし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数金額を切り
捨てた後のもの(別紙7の別表2の⑯))である。
エ課税留保金額に対する税額24億4522万9200円
上記金額は,前記ウの課税留保金額に法人税法67条に規定する税率を
乗じて計算した金額(別紙7の別表2の<23>)である。
オ法人税額から控除される所得税額等2291万5083円
上記金額は,法人税法68条(ただし,平成15年法律第8号による改
正前のもの。)に規定する法人税額から控除される所得税額として本件法
人税申告書に記載された金額である。
カ納付すべき法人税額226億0420万5100円
上記金額は,前記イの金額に前記エの金額を加算し,前記オの金額を差
し引いた金額(通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金
額を切り捨てた後のもの)である。
キ確定申告に係る法人税額214億2112万6100円
上記金額は,本件法人税申告書に記載された法人税額である。
ク差引納付すべき法人税額11億8307万9000円
上記金額は,前記カの金額から前記キの金額を差し引いた金額である。
ケ本件法人税更正処分の適法性
本訴において被告江東西税務署長が主張する,平成11年3月期におけ
る原告会社の法人税に係る所得金額及び納付すべき法人税額は,前記のと
おりであり,本件法人税更正処分(ただし,平成15年2月13日付け更
正処分及び同16年1月29日付け裁決により一部取り消された後のもの。
後記コにおいて同じ。)における原告会社の法人税に係る所得金額及び納
付すべき法人税額は,いずれも,これらの金額の範囲内である。
コ過少申告加算税賦課決定処分の根拠及び適法性
上記のとおり,本件法人税更正処分は適法であるところ,通則法65条
1項の規定により,原告会社に係る本件法人税更正処分によって原告会社
が新たに納付すべきこととなった税額11億5688万0000円(ただし,
通則法118条3項の規定により1万円未満の端数金額を切り捨てた後の
もの)に対して,100分の10の割合を乗じて算定した金額は1億156
8万8000円であり,原告会社に係る賦課決定処分により原告会社が納
付すべき過少申告加算税の額は,これと同額である。
3争点
(1)第1事件について
ア本件譲渡1は,徴収法39条に規定する「著しく低い額の対価による譲
渡」に当たるか。
イP1の徴収不足が生じたのは,本件譲渡1に基因するか。
ウ本件納付告知処分は,本件所得税更正処分等とともに原告P2に対し実
質的な二重課税をして,課税権を著しく濫用したものとして,違法である
か。
(2)第2事件について
ア本件譲渡1は,譲渡の時におけるP3株式の適正な価額より低い対価を
もってする資産の低額譲渡に当たるか。
イ本件譲渡1の時におけるP3株式の評価においては,法人税額等相当額
を控除すべきか。
ウ本件譲渡1の時におけるP3株式の適正な価額と対価との差額は,所得
税法36条1項に規定する「経済的な利益」に当たるか。
エ本件所得税更正処分等は,本件納付告知処分とともに原告P2に対し実
質的な二重課税として,課税権を著しく濫用したものとして,違法である
か。
(3)第3事件について
原告会社が平成11年2月2日に原告P2及びP11らから譲り受けたP
3株式計700株の譲受け価額が,時価に比して低額か否かであり,具体的
には,以下のとおりである。
ア本件譲渡2及び本件譲渡3に際してP16税理士の作成したP3株式の
鑑定評価書(乙8。以下「P16評価書」という。)におけるP3株式の
評価額は,本件譲渡2及び本件譲渡3の時におけるP3株式の適正な価額
であるといえるか。
イ本件譲渡2及び本件譲渡3の時におけるP3株式の評価において,財産
評価基本通達(以下「評価通達」という。)174(1)のロではなくイを適
用して原告会社の株式を評価すべきか。
ウ本件譲渡2及び本件譲渡3の時におけるP3株式の評価においては,法
人税額等相当額を控除すべきか。
(4)第4事件について
本件譲渡1は,譲渡の時におけるP3株式の適正な価額より低い対価をも
ってする資産の低額譲渡に当たるか。
4当事者の主張の要旨
(1)第1事件について
(被告国税局長の主張)
ア本件譲渡1が徴収法39条に規定する「著しく低い額の対価による譲
渡」に当たること
(ア)本件譲渡1は,以下のとおり,原告P2が主張するところの再売買
予約付き譲渡契約に基づいてされたものとは認められず,原告P2は,
P3株式を,平成11年1月12日,適正な価額(時価)である143
億0284万9200円の1割にも満たない13億8000万円でP1
から譲り受けているものであって,本件譲渡1が徴収法39条に規定す
る「著しく低い額の対価による譲渡」に当たることは明白である。
(イ)P4株式の譲渡は原告P2とP3との取引であり,本件譲渡1は原
告P2とP1との取引であって,両取引は,売買の当事者も目的物も異
なるのであるから,原告P2が主張するところの再売買予約があったと
は認められない。
(ウ)「MEMORANDUM」と題する文書(甲21の1。以下「覚書1」とい
う。)は原告P2,P10及びP17との間で,「Agreement」と題する
文書(甲21の2。以下「覚書2」という。)は原告P2とP10との
間でそれぞれ交わされているのであって,いずれにおいてもP3又はP
1の法人としての意思表示はされていないから,覚書1又は覚書2の合
意が原告P2とP3又は原告P2とP1との間で有効に成立したものと
はいえない。
(エ)また,本件P4株式譲渡に係る売買契約書(甲20。以下「P4株
式売買契約書」という。)には,覚書1又は覚書2についての記載がな
い上,覚書1及び覚書2は,P4株式の売買の3か月後である平成9年
9月17日に作成されたものであって,本件譲渡1は,P1と原告P2
との間の取引であるところ,P4株式の売買契約並びに覚書1及び覚書
2がP1以外の者を当事者として締結されていることをも併せ考えれば,
原告らが主張するようにP4株式の売買契約が再売買予約付きでされ,
これが原告P2,P3及びP1の三者間で成立したとは解し得ない。
(オ)P1においては,名義上の取締役が必要だった合理的理由は存在し
ないのであるから,P10が本件譲渡1の時に,P1の事実上の業務執
行取締役であったと認めることはできない。また,P10がP1の実質
株主であることを明らかにする客観的な根拠は何ら示されていないばか
りか,P1の会社履歴情報抜粋の記載,P17とP13との間にP1株
式の売買契約が存在すること,P1からP17に平成10年9月に18
万オーストラリアドルの配当金が支払われていることなどを考慮すると,
P13とP11がいずれもP1の実質株主であると認められ,P10が
実質株主であったと認めることはできない。
したがって,P10が,本件譲渡1の時に,P1の実質株主ないし実
質的支配者であったとは認められない。
(カ)仮に,再売買予約が原告P2,P3及びP1の三者間で成立してい
たとしても,「Agreement」と題する文書(乙24。以下「覚書3」とい
う。)によれば,原告P2とP10は,覚書1等において合意したP3
株式の譲渡価額について,日本の国税当局に否認される可能性を予想し,
その場合にはその売買価格を変更して差額を支払うことを予定していた
ことが認められるから,P3株式の再売買価格なるものが,P4株式の
譲渡時点においてはもちろん,覚書1ないし覚書3の作成時点において
も13億8000万円に確定したものではなかったことは明らかである。
(キ)P3は,P4の発行済株式の100パーセントを保有しているので
あるから,P11らに対する第三者割当増資に伴い,P1が間接的に保
有するP4株式の割合も100パーセントから約85.7パーセントに
減少することとなり,本件譲渡1によっても,原告P2が間接的にP4
株式の全部を買い戻すことはできなくなる。
仮に,原告P2が,P1との間の取引によって,間接的にP4株式の
全部を買い戻すことができるとしても,それは,P1がP3の発行済株
式の100パーセントを保有していることが前提となる。
したがって,上記前提を欠いた本件譲渡1が,再売買予約付き譲渡契
約に基づく譲渡であると解することはできない。
イP1の徴収不足が生じたのは,本件譲渡1に基因すること
(ア)徴収法39条にいう徴収不足と無償譲渡等の処分との間の基因関係
については,その無償譲渡等の処分がなかったならば,現在の徴収不足
は生じなかったであろうという場合に認められるのであり,P1の滞納
処分においては,P1が国内財産として61万円余の銀行預金のほかに
財産を有していなかったことが認められ,主要な財産であるP3株式を
著しく低い額の対価によって譲渡したために,そのような財産状況に至
ったことが認められることから,P1の徴収不足は,P3株式の譲渡に
基因することが明らかである。
(イ)徴収法39条に規定する徴収不足が無償又は著しく低い額の対価に
よる譲渡に「基因すると認められるとき」とは,その無償又は著しく低
い額の対価による譲渡がなかったならば,現在の徴収不足は生じなかっ
たであろうということができれば足り,その判定は,第二次納税義務の
納付告知をする時の現況によるべきものであることから,無償又は著し
く低い額の対価による譲渡の行為の前に滞納国税が存在していたことを
要すると解すべき必然性はない。
そして,P3株式の譲渡がなかった場合とは,P3株式について無償
又は著しく低い額の対価による譲渡等がなかった場合を指すのであって,
P3株式の譲渡行為そのものがなかったとする場合だけではなく,P3
株式を著しく低い額の対価による譲渡ではなく,時価相当額で譲渡する
場合なども含むものである。
ウ本件納付告知処分は,本件所得税更正処分等とともに原告P2に対する
実質的な二重課税には当たらず,かつ,課税権の濫用でもないこと
(ア)本件において,原告P2に課せられた第二次納税義務は,著しく低
い額の対価による譲渡である本件譲渡1によって得た利益が存する限度
で,P1の滞納国税の納税義務について納付責任を負わせるものである
のに対し,本件所得税更正処分等は,原告P2自身の所得について税額
を確定する処分であって,全く別の法律関係に基づくものであることか
ら,何ら二重課税というべきものは存在しない。
このように全く異なる法律関係に基づいて,納付税額が多額に上った
からといって,これが課税権の濫用になるものではない。
(イ)また,第二次納税義務者が主たる納税義務者の滞納国税を納付した
場合,第二次納税義務者は,主たる納税義務者に対する求償権の行使を
認められていることに照らしても(徴収法32条5項),実質的な二重
課税であるといったことは存在しない。
(原告P2の主張)
ア本件譲渡1が徴収法39条に規定する「著しく低い額の対価による譲
渡」に当たらないこと
(ア)本件譲渡1は,その客観的な事実経過に照らすならば,株式の売買
という法形式が採られているものの,その実質が,原告会社の株式公開
の円滑な実現を目的とした,P4株式の一時避難的な預託行為の一部
(預託株式の返還)であることは明らかであり,これをその法形式に着
目して経済的取引行為ととらえたとしても,この株式預託行為全体を一
連の取引行為として見るべきことは当然である。
すなわち,原告P2は,自ら代表者を務める原告会社の株式公開の準
備をしていたところ,役員が公開予定の会社と同業のP4株式を保有す
ることは公開の支障となるおそれがあるため,P4株式を第三者に売却
すべきである旨を株式公開の専門家から助言されたが,将来の事業の拡
大を図る上でP4株式を手放すことは到底できないと考えたため,上記
専門家の助言に従いつつP4株式を手放さないで済む方法として,P4
株式を一時的に譲渡して原告会社の株式公開後に買い戻すことを考案し,
P3の代表者であるとともにP1の実質的な代表者であったP10に対
し,事情を説明して一時的にP4株式をP3において保有してもらうこ
とを依頼し,P10がこれを了解したことから,P1及びP3との間で
再売買予約付き譲渡契約を締結するに至ったものである。
したがって,本件P4株式譲渡とその返還方法として行われた本件譲
渡1は,原告会社の株式公開の円滑な実現を目的とした,P4株式の一
時避難的な預託行為であり,P4株式の譲渡と本件譲渡1は,正しく一
体的な取引行為である。
(イ)本件譲渡1は,再売買予約付き譲渡契約に基づいてされた契約履行
行為の一部分であり,より具体的にいうならば,主契約たるP4株式の
譲渡に付随してされた特約たる再売買予約等に基づいてされたものであ
る。
そして,本件譲渡1が再売買予約付き譲渡契約に包含される特約に基
づく法律行為であることは,契約を締結した当事者,とりわけ,契約を
申し込んだ原告P2の明確な意思より明らかであるが,その合意内容か
らも客観的に明らかということができる。
なぜならば,原告P2は,P4株式をP3に対して売却するに当たり,
将来,必ずこれを一定の金額で買い戻すことをP10との間で合意して
いるからである。すなわち,買戻しの金額や方法については,原告会社
及びP3の各株式公開の実現の有無によって変動する約定であったもの
の,再売買予約付き譲渡契約における特約は,あらゆる場合を網羅的に
定めたものであるから,各株式公開の実現いかんにかかわらず,将来必
ず買い戻すことが合意されていたということができるのである。
そして,現実には,原告会社が株式公開を実現させ,P3が株式公開
を断念したことから,再売買予約付き譲渡契約の特約②に基づき,これ
によって定められていた範囲内の譲渡価額にて本件譲渡1がされたので
ある。
したがって,本件譲渡1は,再売買予約付き譲渡契約に基づく義務の
履行行為としてされたものであり,原告P2にとっては上記買戻し義務
を履行するものとして,また,P1にとっては上記売戻し義務を履行す
るものとして,それぞれされたものである。
なお,再売買予約付き譲渡契約は,P3の代表者であるとともにP1
の実質的な代表者であったP10の地位に照らし,原告P2とP3とP
1との3者間で成立した契約と解すべきであるが,これを原告P2とP
3との間で締結された契約であり,その特約部分の一部に第三者のため
にする契約を包含するものと解したとしても,本件譲渡1が再売買予約
付き譲渡契約に基づく債務の履行行為としてされたものであるとの点に
変わりはないということができる。
(ウ)本件譲渡1が徴収法39条にいう「著しく低い額の対価による譲
渡」に当たるかどうかは,本件の取引の実態に即して契約の全内容から
判断すべきところ,上記(ア)及び(イ)のとおり,本件譲渡1は,合理的
かつ相当な再売買予約付き譲渡契約に基づいてされたものであるから,
「著しく低い額の対価による譲渡」に当たらないことは明らかである。
イP1の徴収不足が生じたのは,本件譲渡1に基因しないこと
(ア)徴収法39条にいう「基因する」とは,当該無償譲渡等がなかった
ならば,国税の徴収不足を生じなかったであろうことをいうものであり,
いわゆる条件関係があることを意味すると解される。このような条件関
係を要するという観点からも,「基因性」があるというためには,顕著
な低額譲渡が行われる前に,滞納者に納付すべき国税が存在していたか,
あるいは,その発生が見込まれる状況にあったかのいずれかの場合であ
ることを要するといわなければならない。
(イ)以上のような観点から本件を見ると,本件譲渡1がなかったならば,
P1に対する本件課税はなく,徴収不足となる国税も存在しないことに
なるから(外国法人であるP1の国内源泉所得は,本件譲渡1に係るも
ののみである。),上記条件関係が存在するという前提が欠けているこ
とになる。このような条件関係を肯定するためには,本件譲渡1がなか
ったならば,実際に時価による譲渡があったはずであることが認められ
るか,税法上の法理により,同譲渡を否認して時価による譲渡があった
ものとみなすことができるということが加わらなければならないが,本
件譲渡1をめぐるいきさつや事情に照らすと,原告P2がP1からP3
株式を時価で譲り受ける可能性は全くなかったし,同譲渡を否認して時
価による譲渡があったとみなし得る税法上の法理についての主張も被告
からされていない。
ウ本件納付告知処分は,本件所得税更正処分等とともに原告P2に対し実
質的な二重課税をして,課税権を著しく濫用したものとして,違法である
こと
(ア)原告P2は,P1に対しP4株式を売却して,代金9億0644万
4000円から取得価額2億5460万1000円及び有価証券取引税
190万3500円を差し引いた6億4993万9500円を得た。そ
して,P1からP3株式を買い戻して代金13億8000万円を支払っ
た。その後,原告会社に対してP3株式を売却して,121億9178
万2800円を得た。
したがって,上記一連の取引によって原告P2が得た収益は,合計1
14億4953万0600円である。
(イ)これに対して,原告P2は,原告P2に対する本件所得税更正処分
等,P1に対する本件決定処分等及び原告P2に対する本件納付告知処
分並びにこれに伴う住民税の納付により,上記収益額の84.89パー
セントに及ぶ97億1943万4700円を課税された。
このような不当な結果を生じた最大の原因は,本件譲渡1による1つ
の利益について,一方では原告P2の一時所得とし,他方では顕著な低
額譲渡による第二次納税義務の対象として,原告P21人に対して実質
的に二重に課税したことにある。しかも,本件譲渡1に係る利益は,P
1に対する寄附金課税の対象ともなっており,この意味で三重課税の実
体さえある。このような課税は,決して健全な納税者の理解を受けられ
ないというべきである。
(2)第2事件について
(被告渋谷税務署長の主張)
ア本件譲渡1は,譲渡時におけるP3株式の適正な価額より低い対価をも
ってする資産の低額譲渡に当たること
(ア)前記(1)の被告国税局長の主張アのとおり,本件譲渡1は,再売買予
約に基づいてされたものとはいえず,原告P2が時価143億0284
万9200円のP3株式を13億8000万円で譲り受けたことは適正
な価額よりも低い対価をもってする資産の低額譲渡に当たる。
(イ)仮に,原告P2の主張するような再売買予約が存在したとしても,
本件譲渡1が,時価143億0284万9200円の株式を13億80
00万円で譲渡したものには変わりはなく,原告P2がP3株式の時価
と譲受金額との差額相当額を所得税法36条1項に規定する経済的な利
益として享受したことは明らかである。
イ本件譲渡1の時点におけるP3株式の評価においては,法人税額等相当
額を控除すべきでないこと
(ア)原告らは,最高裁平成14年(行ヒ)第112号同17年11月8日
第三小法廷判決・裁判集民事218号211頁(以下「最高裁17年判
決」という。)及び最高裁平成16年(行ヒ)第128号同18年1月2
4日第三小法廷判決・裁判集民事219号285頁(以下「最高裁18
年判決」といい,最高裁17年判決と併せて「本件各最高裁判決」とい
う。)の判示は,平成12年通達改正前のすべての取引における取引通
念においても妥当することを明らかにしたものであり,平成11年に行
われた本件におけるP3株式の一連の取引にも妥当するものであるとし
て,P3株式の純資産価額の算定に当たっては,評価差額に対する法人
税額等相当額を控除すべきである旨主張する。
しかしながら,本件各最高裁判決は,純資産価額の算定に当たって法
人税額等相当額を控除すべきとする判断が,平成12年通達改正前のす
べての取引における取引通念においても妥当することを明らかにしたも
のではない。そして,本件各最高裁判決の判示に照らしても,本件譲渡
1の時点におけるP3株式の適正な価額(時価)は,法人税額等相当額
を控除しない純資産価額方式により算定すべきである。
(イ)本件各最高裁判決は,所得税基本通達については平成12年課資3
−8,課所4−29による改正により,法人税基本通達については平成
12年課法2−7による改正により,所得税及び法人税の課税における
1株当たりの純資産価額の評価に当たり法人税額等相当額を控除しない
ことが規定されるに至ったのであって,所得税又は法人税の課税処分の
起因となった株式の取引時点において,評価通達(平成12年課評2−
4,課資2−249による改正前のもの)185が定める1株当たりの
純資産価額の算定方式のうち法人税額等相当額を控除する部分が,所得
税課税あるいは法人税課税における評価に当てはまらないということを
関係通達から読み取ることが,一般の納税義務者にとって不可能である
旨判示した。
しかしながら,本件譲渡1がされた平成11年1月以前から,所得税
課税に関し,取引相場のない株式の売買を行う場合の適正な価額(時
価)の算定に当たって,法人税額等相当額を控除しないとする裁決例や
裁判例が公表されていたこと,さらには,所得税基本通達の一般的な解
説書である「所得税基本通達逐条解説」においても,所得税法36条2
項に規定する収入金額の算定について定めた所得税基本通達23∼35
共−9の解説の中で同様の裁決例を紹介する解説が記載されていること
から,本件譲渡1の時点において,法人税額等相当額を控除すべきでな
いと認識することが,一般の納税者にとって不可能ではなかったといえ
る。
そして,原告らが正当とするP16評価書においても,本件取扱いを
適用してP3株式の純資産価額を算定しているのであって,P16税理
士は,関係通達がそのように解釈されており,その解釈に従って課税実
務が行われていることを了知しており,本件の取引においても,法人税
額等相当額を控除しない意思であったことが示されているといわなけれ
ばならない。
(ウ)本件各最高裁判決は,法人税額等相当額を控除するに当たり通常の
取引における当事者の合理的意思を重視したものであるが,この当事者
の合理的意思は,その当時に公表されていた通達の定めを前提にして,
当該通達の定めとかけ離れたところに取引通念があるとは考えられない
ことを根拠に法人税額等相当額を控除するのが当事者の合理的意思であ
ると結論づけたものである。
しかしながら,P3株式は,P1から原告P2が譲り受けた平成11
年1月12日(本件譲渡1)に近接した時期(同年2月)に,本件取扱
いを適用して算定した同年1月7日付けのP16評価書による価額で,
原告P2から原告会社に譲渡されているところ(本件譲渡2),第3事
件の譲受人である原告会社の代表取締役は第2事件の譲受人である原告
P2であること,第3事件の譲渡人であるP13は,第2事件の譲渡人
であるP1の代表取締役であることに照らせば,第2事件の取引当事者
であるP1及び原告P2は,第3事件におけるP3株式の価額が本件取
扱いを適用して算定されることを認識し,法人税額等相当額を控除しな
い意思であったと認められる。
したがって,原告ら自身が,法人税額等相当額の控除をしない取扱い
をすべきことを認識し,この取扱いによる評価を適正な時価として取引
価格の基礎とする意思で取引をしたと認められる。
(エ)以上のとおり,所得税法36条2項所定の経済的利益を算定する際
の,本件譲渡1の時点におけるP3株式の適正な価額(時価)は,法人
税額等相当額を控除しない純資産価額方式により算定すべきである。
また,P3が間接保有する原告会社株式を評価通達174(1)ロを準用
して評価すべきことについては後記第3事件の場合と同様であり,原告
会社株式の適正な価額(時価)は,P18により公表されている本件譲
渡1時の取引価格となる。
したがって,本件譲渡1の時点におけるP3株式の適正な価額(時
価)は,別紙8の別表2のとおり,P3株式1株当たりの評価額は23
83万8082円となり,原告P2の平成11年1月12日時点におけ
る株式保有数は600株であるから,当該株式の評価額は143億02
84万9200円である。
ウ本件譲渡1の時点におけるP3株式の適正な価額と対価との差額は,所
得税法36条1項に規定する「経済的な利益」に当たること
所得税法36条1項は,人の担税力を増加させる経済的利得をすべて所
得として課税の対象とし,時価よりも低い価額で金銭以外の物又は権利そ
の他経済的な利益を得た場合についても,当該低額譲渡により得た時価と
の差額が課税の対象となるのである。つまり,原告P2は,P1が所有す
る時価143億0284万9200円のP3株式を13億8000万円で
譲り受けたのであるから,当該取引により,P3株式の時価と対価との差
額に相当する経済的利益を受けたのは明らかであって,P3株式の所有権
がP1から原告P2に移転し,その結果,原告P2に経済的利益が発生し
たことに変わりはない。
したがって,本件譲渡1の時点におけるP3株式の適正な価額と対価と
の差額は,所得税法36条1項に規定する「経済的な利益」に当たる。
エ本件所得税更正処分等は,本件納付告知処分とともに原告P2に対し実
質的な二重課税には当たらず,かつ,課税権の濫用でもないこと
前記(1)の被告国税局長の主張ウのとおり,原告P2に課された第二次納
税義務は,著しく低い額の対価による譲渡である本件譲渡1によって得た
利益が現存する限度で,P1の滞納国税の納税義務について納付責任を負
わせるものであるのに対し,本件所得税更正処分等は原告P2自身の所得
について税額を確定する処分であって,全く別の課税関係に基づくもので
あるから,何ら二重課税というべきものではないし,何ら課税権を濫用し
たものでもない。
(原告P2の主張)
ア本件譲渡1は,譲渡時におけるP3株式の適正な価額より低い対価をも
ってする資産の低額譲渡に当たらないこと
本件譲渡1は,合理的かつ相当な再売買予約付き譲渡契約に基づいてさ
れたものであるから,適正な価額より低い対価をもってする資産の低額譲
渡に当たらないことは明らかである。
イ本件譲渡1の時点におけるP3株式の評価においては,法人税額等相当
額を控除すべきであること
(ア)本件各最高裁判決によれば,評価通達(平成12年課評2−4,課
資2−249による改正前のもの)185にいう「課税上弊害」とは,
法人税額等相当額を控除することが,評価において著しく不合理な結果
を生じさせることである。具体的には,例えば,取引当事者双方が,当
該株式の価額は,法人税額等相当額を控除しないで算定しなければ適正
に評価できないことを認識しながら,意図的に法人税額等相当額を控除
して価額を決定したというような価額設定過程における積極的意思ない
し明白な認識がある場合に,そのような実情を無視して評価通達(平成
12年課評2−4,課資2−249による改正前のもの)185の規定
を機械的に適用して法人税額等相当額を控除して算定することは,当事
者の合理的意思からかい離しており,ひいてはその評価が著しく不合理
な結果を生じさせることとなり,所得税あるいは法人税の課税上弊害が
あることになると解される。
言い換えれば,当該取引についてこのような株式評価上の特別の事情
がない限り,法人税額等相当額を控除して算定された純資産価額が一般
に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するというのが,本件
各最高裁判決の判断の中核である。
(イ)本件譲渡1並びに本件譲渡2及び本件譲渡3の各取引において,原
告P2を始めとする当事者が,法人税額等相当額を控除しない意思があ
ったという事実はないし,法人税額等相当額を控除しないで算定した額
が適正額であることを認識していたということもない。
また,本件譲渡1におけるP3株式の譲受価格は,本件P4株式譲渡
の譲渡価格を基準として,覚書1及び覚書2により,その150パーセ
ント以内(最大額14億円)の範囲内で定められたものであり,本件譲
渡1においては,P1及び原告P2としては,結果において法人税額等
相当額を控除して算定した価額よりずっと低い価額で取り引きする意思
であったのである。そして,その価格決定の基になった税理士のP19
(以下「P19税理士」という。)が作成した鑑定評価書は,保有株式
の時価の算定につき,法人税額等相当額を控除した価格及び簿価で算定
している。
以上のとおり,本件譲渡1並びに本件譲渡2及び本件譲渡3の各取引
において,法人税額等相当額を控除した算定額で課税することが課税上
の弊害を生じさせることにはならない。
ウ本件譲渡1の時点におけるP3株式の適正な価額と対価との差額は,所
得税法36条1項に規定する「経済的な利益」に当たらないこと
前記(1)の原告P2の主張アのとおり,本件譲渡1は,合理的かつ相当な
再売買予約付き譲渡契約に基づいてされたものであり,その法律行為とし
ての意義は,本件再売買予約付譲渡契約に基づく債務の履行行為としてさ
れたものである。すなわち,取引当事者間には,一定の場合には最大金額
14億円でP1から原告P2に再売買すべき契約上の権利義務が生じてい
たところ,その権利義務に基づいてされたものであるから,譲渡価額と時
価との差額相当額は,「収入すべき金額」としての経済的利益の「価額」
には該当しない。
エ本件所得税更正処分等は,本件納付告知処分とともに原告P2に対し実
質的な二重課税をして,課税権を著しく濫用したものとして,違法である
こと
前記(1)の原告P2の主張ウのとおり,原告P2は,原告P2に対する本
件所得税更正処分等,P1に対する本件決定処分等及び原告P2に対する
本件納付告知処分並びにこれに伴う住民税の納付により,上記収益額の8
4.89パーセントにも及ぶ97億1943万4700円を課税されたも
のであり,このような不当な結果を生じた課税は,決して健全な納税者の
理解を受けられないというべきである。
(3)第3事件について
(被告江東西税務署長の主張)
アP16評価書におけるP3株式の評価額は,本件譲渡2及び本件譲渡3
の譲渡時におけるP3株式の適正な価額であるといえないこと
(ア)一般に財産の時価とは,一定時における客観的交換価値をいい,当
該財産につき,不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場
合に通常成立すると認められる価額をいうものと解され,法人税法上も,
同様に解される。
(イ)被告江東西税務署長が主張するP3株式の純資産価額方式による評
価額が,子会社株式(P4株式)のほか,前払費用,投資有価証券,出
資金,投資不動産の各科目を除いて,P16評価書による評価額と一致
していることからも明らかなように,被告江東西税務署長は,P16評
価書による評価方法の合理性を否定するものではない。
しかしながら,本件譲渡2及び本件譲渡3の各当事者は,利害関係の
相反する独立した第三者の関係にないこと,並びにP16評価書は,評
価時点を平成10年12月1日として作成されていることから,P16
評価書におけるP3株式の評価額は,本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡
時における適正な価額(時価)としては認められない。
イ本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡時におけるP3株式の評価において,
評価通達174(1)ロを準用して原告会社の株式を評価すべきこと
(ア)P3株式の価額を純資産価額方式で評価するに当たっては,評価通
達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前のもの)18
5の定めを準用し,P3株式の純資産価額を算定することとなる。そし
て,P3株式の純資産価額を算定するに当たっては,同通達の定めを準
用し,各資産の「この通達に定めるところにより評価した価額」を算定
することとなる。
そこで,P3が間接保有する原告会社株式の価額について,評価通達
の定めを準用し評価することとなるが,原告会社株式は,本件譲渡2及
び本件譲渡3が行われた当時,店頭銘柄として登録されていたから,本
件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡時における原告会社株式の価額は,評価
通達174の定めを準用して算定することとなる。
(イ)評価通達174は,気配相場のある株式の評価についての定めであ
り,評価通達の(1)イにおいては,登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価額に
ついて,P18により公表されている課税時期の取引価格によって評価
することを原則としつつ,そのただし書において「その取引価格が課税
時期の属する月以前3か月間の毎日の取引価格の各月ごとの平均額のう
ち最も低い価額を超える場合には,最も低い価額によって評価する」と
定めている。このただし書が設けられている趣旨は,偶発的な財産の無
償取得である相続や贈与においては,課税要件事実が臨時偶発的に発生
するため課税時期を選べず,株式の時々の値動きの影響が偶発的に作用
することに配慮し,一定の期間における取引価格の実勢をも考慮するこ
ととしたものである。
しかし,負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した登録
銘柄及び店頭管理銘柄の評価額については,負担付贈与等による財産の
取得は,一般の売買取引に準じた対価を伴う経済取引行為であり,一般
の相続や贈与による財産の取得のような偶発的な無償取引であること等
に配慮した評価上のしんしゃくは不要であると考えられることから,評
価上のしんしゃくを行わず,原則的な評価方法であるP18により公表
されている課税時期の取引価格によって評価することとしている(評価
通達174(1)ロ)。
(ウ)原告会社は,原告会社株式の適正な価額(時価)の算定に当たって
は,評価上のしんしゃく又は評価の安全性を考慮すべきであり,評価通
達174(1)イただし書により,本件譲渡2及び本件譲渡3を行った月以
前3か月間の毎日の取引価格の各月ごとの平均額のうち最も低い価額と
P18により公表されている課税時期の取引価格のうち低い価額により
評価すべきである旨主張する。
しかしながら,評価通達にただし書が設けられている趣旨は,前記
(1)で述べたとおりであり,本件譲渡2及び本件譲渡3のような一般の売
買取引については,評価通達(1)ロの場合と同様に,一般の相続や贈与に
よる財産の取得のような偶発的な無償取引であること等に配慮した評価
上のしんしゃくは不要であるから,原告会社の主張は理由がない。
したがって,原告会社株式の適正な価額(時価)の算定に当たり,評
価通達を準用するに当たっては,本件譲渡2及び本件譲渡3が一般の売
買取引であることにかんがみて,評価通達174(1)ロにより,原則的な
評価方法であるP18により公表されている課税時期の取引価格によっ
て評価すべきである。
(エ)また,原告会社は,第三者割当増資,株式交換及びTOB等を行う
場合の株式の価格決定に,一定期間の取引相場の平均値が用いられた事
例が存在することを根拠として,原告会社株式の評価方法として,3か
月間の取引価格の平均値を用いる方法,具体的には,平成10年10月
22日から,本件譲渡2及び本件譲渡3に係る取締役会決議の日の前日
である同11年1月21日までの3か月間の原告会社株式の取引価格の
平均値により評価すべきである旨主張する。
しかしながら,そもそも,本件譲渡2及び本件譲渡3は,本件各譲渡
人と原告会社との間の相対の売買取引であり,第三者割当増資等を行う
場合と同列に扱うべきではない。すなわち,第三者割当増資等を行う場
合の株式の価格決定に,一定期間の取引相場の平均値が用いられた事例
が存在し,仮に,それが,原告会社が主張するように,「株価は,会社
の業績のほか,為替や金利といった経済的要因,政局や天災といった経
済的要因以外の要因,そのほか市場関係者の思惑といった種々雑多なも
のの影響を受け,時に急激に値を上げ,あるいは値を下げることがある
ため,そのような不安定要素を排除する目的から,一時点ではなく一定
期間の平均値を用いることが一般化している」としても,これは,利害
関係の相反する当事者間の取引を前提としているのであって,そのこと
を根拠に,いわゆる特殊関係のある当事者間の相対取引における上場株
式の適正な価額(時価)を3か月の株価の平均によって算定すべきであ
るという結論は,直ちには導かれないのであるから,原告会社の主張は
理由がない。
そして,一定期間の株価の平均値は,飽くまでも,一定期間における
株式の取引価格の中間的な値でしかなく,取引時点の適正な価額(時
価)を表しているとはいえないから,本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡
時における原告会社株式の適正な価額(時価)の算定に当たり,3か月
間の取引価格の平均値を用いることはできない。
(オ)以上のとおり,法人税法上,本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡時に
おけるP3株式の評価においては,評価通達174(1)ロを準用して原告
会社の株式を評価すべきであり,P3が間接保有する原告会社株式の適
正な価額(時価)は,P18により公表されている本件譲渡2及び本件
譲渡3の譲渡時の取引価格に基づいて評価すべきである。
ウ本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡時におけるP3株式の評価において,
法人税額等相当額を控除すべきでないこと
(ア)関係会社間等において非上場株式の売買を行う場合における適正な
価額(時価)の算定に評価通達(平成12年課評2−4,課資2−24
9による改正前のもの)を準用する場合の留意点については,本件譲渡
2及び本件譲渡3が行われた当時,法人税基本通達の一般的な解説書に,
「合理的な理由があると認められるときを除き,評価差額に対する法人
税相当額を控除しないところで純資産価額を計算すべき」と解説されて
おり,関係会社間等において非上場株式の売買を行う場合における適正
な価額(時価)を純資産価額方式で算定するに当たり,法人税額等相当
額を控除しない取扱いは,課税実務として一般に定着していた。
また,上記当時の租税関係誌において,関係会社間等において非上場
株式の売買を行う場合における適正な価額(時価)を純資産価額方式で
算定するに当たり,法人税額等相当額を控除すべきでないとする記載が
散見されることからも,平成11年当時,法人税課税に関し,取引相場
のない株式の売買を行う場合の適正な価額(時価)の算定に当たっては,
合理的な理由があると認められない限り,法人税額等相当額を控除しな
い取扱いが,課税実務として一般に行われていたことは明らかである。
そして,これらの雑誌は一般に入手可能なものであることから,法人税
額等相当額を控除すべきでないとする課税実務の取扱いを認識すること
は,一般の納税者にとって不可能ではなかったといえる。
以上のとおり,本件譲渡2及び本件譲渡3が行われた当時において,
気配相場のない株式の売買を行う場合の適正な価額(時価)の算定に当
たって,評価通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正
前のもの)185を準用する際の留意点,すなわち,評価通達が定める
1株当たりの純資産価額の算定方式のうち法人税額等相当額を控除する
部分が,合理的な理由がない限り法人税課税における評価に当てはまら
ないということを認識することは,一般の納税義務者にとっては不可能
ではなかったのであり,本件各最高裁判決の判示に照らしても,本件譲
渡2及び本件譲渡3の譲渡時におけるP3株式の適正な価額(時価)を
純資産価額方式で算定するに当たり,評価差額に対する法人税額等相当
額を控除すべき理由はない。
(イ)P16評価書におけるP3株式の価額の算定においては,評価差額
に対する法人税額等相当額は控除されていない。そして,原告P2は,
専門分野については専門家に任せていた旨証言しており,原告会社及び
本件各譲渡人のいずれも,P3株式の評価について,評価差額に対する
法人税額等相当額を控除しない純資産価額方式で評価したP16評価書
を容認しているのである。
したがって,原告会社と本件各譲渡人は,本件譲渡2及び本件譲渡3
に当たり,評価差額に対する法人税額等相当額を控除しない純資産価額
方式で評価されたP3株式の価額により取引する意思を有していたもの
と認められる。
以上のとおり,本件においては,P3株式の適正な価額(時価)を純
資産価額方式で算定するに当たり,法人税額等相当額を控除しないこと
が,当事者の合理的意思と認められるのであり,取引当事者の合理的意
思を重視した本件各最高裁判決の判示に照らしても,本件譲渡2及び本
件譲渡3の譲渡時におけるP3株式の適正な価額(時価)を純資産価額
方式で算定するに当たり,評価差額に対する法人税額等相当額を控除す
べき理由はない。
(ウ)原告会社は,P3株式の価額を純資産価額方式で評価するに当たり,
評価通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前のも
の)185及び186−2に従って,P3が保有するP4株式の含み益
に対する法人税額等相当額をP3の純資産価額から控除すべきである旨
主張する。
しかしながら,P3は,子会社株式として,P4の全株式を所有して
いるところ,P4株式は,評価会社が有する取引相場のない株式に該当
するから,評価通達によれば,その評価は,評価通達186−3(評価
会社が有する株式等の純資産価額の計算)の定めによることとなる。そ
して,評価通達186−3によれば,当該株式については,評価差額に
対する法人税額等相当額は控除しない旨定められているから,本件にお
いても,当該通達を準用し,P4株式の価額の算定に当たっては,評価
差額に対する法人税額等相当額は控除されないこととなる。
(エ)以上のとおり,本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡時におけるP3株
式の適正な価額(時価)を純資産価額方式で算定するに当たり,評価差
額に対する法人税額等相当額を控除すべき理由はない。
このような考え方に基づき,平成11年2月2日時点におけるP3株
式の時価を算定すると,別紙9の別表3のとおり1株当たり2457万
2595円となり,その総額は,当該1株当たりの金額に原告会社が取
得した株式の数700株を乗じた172億0081万6500円となる。
(原告会社の主張)
アP16評価書におけるP3株式の評価額は,本件譲渡2及び本件譲渡3
の譲渡時におけるP3株式の適正な価額であること
(ア)原告会社は,P16評価書による評価額が適正価格であると判断し
て取引をしたものであり,原告会社株式が高騰した時を狙って取引をし
たものではなく,また,P16評価書も,故意に原告会社株式の時価の
低い時を狙って鑑定をしたものではなく,本件取引時点からかけ離れた
過去の時点をとらえて鑑定をしたものではない。そして,原告会社株式
の取引価格と被告江東西税務署長の認定した取引価格の差額は,わずか
2割にすぎないのである。
(イ)本件においては,独立第三者の関係にないことを意識して,特に低
額の譲渡をしたものではない。租税回避の目的を持って不公正な鑑定に
基づき,著しく低い額をもって不自然な代金額を定めたという特段の事
情があれば格別,そのような特段の事情が認められない本件のような事
例においては,私的自治を尊重し,売買当事者が定めた売買代金をもっ
て適正価格と認めるべきである。
イ本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡時におけるP3株式の評価において,
評価通達174(1)イを適用して原告会社の株式を評価すべきこと
(ア)P4が保有する原告会社株式については,評価通達174(1)イが適
用されるというのが素直な解釈であり,そうすると,「課税時期の属す
る月以前3か月間の毎日の取引価格の各月ごとの平均額のうち最も低い
価額を超える場合には,最も低い価額によって評価」されることになる。
しかるに,被告江東西税務署長は,評価通達174(1)ロを適用すべき
とし,平成11年2月2日の原告株式の高値3340円及び安値321
0円の平均値である3275円を一株当たりの評価額としている。
評価通達174(1)ロが設けられた趣旨は,3か月の各月ごとの平均額
のうちで最も低い価額によって評価され得ることを利用して,租税回避
を図る事案が出てきたことを受けて,そのような事案については通常の
評価額と異なる評価を可能とし,もって租税回避を防ぐことにあった。
すなわち,評価通達174(1)イを原則とし,その原則を不当な租税回避
に用いるケースについては,例外的に評価通達174(1)ロを適用するこ
ととしたのである。とすれば,評価通達174(1)ロが適用されるのは,
不当な租税回避が行われるケースに限定すべきであって,上記通達が適
用される範囲をむやみに広げ,本件のように法令を遵守して株式譲渡を
行ったようなケースにまでこれを適用することは認められてはならない。
(イ)上記のとおり,被告江東西税務署長の認定する価格は,誤った通達
の解釈に基づく点でも問題であるが,取引実務にも反するものであり,
およそ客観的交換価値すなわち時価とは認め難いものである。
実務の世界においては,株式の評価につき確立した評価方法が存在す
るわけではなく,不動産鑑定等と同じく,個々の専門家により評価額は
おのずと異なってくるものである。ただ,上場株式を評価するに際して
は,評価の安全性の観点から,一定期間の平均値を用いることが多い。
すなわち,株価は,会社の業績のほか,為替や金利といった経済的要因,
政局や天災といった経済的要因以外の要因,そのほかの市場関係者の思
惑といった種々雑多なものの影響を受け,特に急激に値を上げ,あるい
は値を下げることがあるため,そのような不安定な要素を排除する目的
から,一時点ではなく一定期間の平均値を用いることが一般化している
のである。
(ウ)被告江東西税務署長は,本件取引日である平成11年2月2日の株
価をもって原告会社株式を評価すべきであるとする。
しかし,株式の取引において,取引の日に株価を決めるということは,
通常では考えられない。株価は,契約に先立つ取引の交渉の中で決めら
れるのが一般的である。加えて,本件のように取引相場のない株式が取
引の対象となっている場合に,その鑑定評価には相当の時間を要するの
で,評価の時点は,取引日から見てある程度前の日とならざるを得ない。
したがって,仮に前述の3か月平均の方法を用いないという結論に至
ったとしても,株式の評価時点は本件取引の日としてはならず,原告会
社が依頼した鑑定において用いられた評価時点をもって税法上の評価時
点とすべきである。
ウ本件譲渡2及び本件譲渡3の譲渡時におけるP3株式の評価において,
法人税額等相当額を控除すべきであること
(ア)前記(2)の原告P2の主張イと同旨。
(イ)P3株式の価額を純資産価額方式で評価するに当たっては,評価通
達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前のもの)18
5及び186−2に従って,P3が保有するP4株式の含み益に対する
法人税額等相当額をP3の純資産価額から控除すべきである。
(4)第4事件について
本件譲渡1は,譲渡時におけるP3株式の適正な価額より低い対価をもっ
てする資産の低額譲渡に当たるか。
(被告国の主張)
前記(2)の被告渋谷税務署長の主張アと同旨。
(原告P2の主張)
前記(2)の原告P2の主張アと同旨。
第3争点に対する判断
1認定事実
前記前提事実に加えて,証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実を
認めることができる。なお,括弧内に認定根拠を付記している。
(1)原告P2とP10の交友関係並びにP3の設立及び事業拡大等
ア原告P2は,昭和48年ころ,英国で開催されたアミューズメント・シ
ョーにおいて,英国のゲーム機メーカーであるP20社の代表者であるP
10と知り合った。それ以来,原告P2は,海外におけるビジネスについ
てP10から協力を得たり,P10の経営するP20社が欧州における原
告会社の商品の取扱い代理店となるなど,P10と公私にわたり親密な交
友関係を続けてきた。(甲54,61,証人P10,原告P2本人)
イP10は,平成3年8月,資本金3000万円の全額を出資して,自ら
が代表取締役となって,パチスロ機の製造販売を目的とするP3を設立し
た。原告P2は,P3の設立に際して,英国在住のP10から,P3が日
本の閉鎖的なパチスロ市場に参入することができるように,指導及び支援
をすることを依頼され,これを了承した。(甲54,61,乙26,証人
P10,原告P2本人)
ウパチスロ業界においては,パテント・プール方式が採用されており,P
21協同組合(以下「P21」という。)に加入している数社が,特許管
理会社に特許権等を実施許諾し,同特許管理会社は,P21に加入してい
る約20社に限って,当該特許権等の再実施許諾をしていた。このため,
P21に加入しない限り,有用な特許権等の再実施許諾を受けることがで
きず,事実上,パチスロ機の製造及び販売はできない状態にあった。P2
1は,長年にわたり新規加入の申込みを拒否し続けており,このため,パ
チスロ市場は閉鎖的かつ排他的な市場となっていた。
原告P2は,平成4年の前半ころから,開発,製造,販売及び市場参入
等の全般にわたって,全面的にP3の指導及び支援を開始した。また,原
告P2は,P10との共通の知人であって,沖縄県内における原告会社の
機器の販売を行っていた株式会社P22の代表者を務めていたP17にも
協力を依頼し,これを受けて,P17は,P3の開発するパチスロ機が風
俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の規定に適合しているか
否かの検定を行う機関に対して,繰り返し陳情を行い,適合承認を得るな
ど尽力した。
原告P2の指導や支援の成果により,平成5年10月,P3はP21に
準組合員(外資系組合員)として加入が認められたが,加入の条件として
海外においてパチスロ機を製造することを求められたため,原告P2は,
P10の依頼に応じて,P3に対し,原告P2が代表者を務めるアメリカ
合衆国法人P23,Inc.グループのオーストラリア法人をP3のための製
造工場として提供した。(甲54,59,61,証人P10,原告P2本
人)
エまた,原告会社は,金融機関から容易に融資を受けることができなった
P3に対し,平成6年3月期までに26億円もの巨額の融資を行い,資金
面においてもP3を援助した(乙52,原告P2本人)。
オP3は,P21の準組合員となってから,原告P2の指導の下に本格的
な営業活動を開始し,原告会社と協力して他社の製品に対抗する新規パチ
スロ機種を開発して販売し,これを大ヒットさせるなどした。こうして,
P3は,平成9年3月期には経常利益が15億円を超えるようになり,こ
のころからは,安定して大きな利益を生む企業となった。(甲54,59,
61,70の1及び2,71の1から3まで,乙52,原告P2本人)
(2)P10からP1に対するP3株式の譲渡等
アP10は,平成7年12月22日,資本金2オーストラリアドルの全額
を出資して,オーストラリア法人であるP1を設立した(甲51,54,
58,61,乙53,証人P10)。
イ平成8年上半期に,P10は,P1に対し,自己が保有するP3株式6
00株の全部を代金3000万円で譲渡し,P1をP3株式の持株会社と
した。この時以降,P1は,商取引などをすることはなく,専らP3株式
を保有するための持株会社として運営されるようになった。
なお,上記P3株式の購入資金は,P10がP1のために,原告P2の
長男のP24及びP3の日本における責任者であったP11から借り入れ
たもので,P10は,平成10年7月ころ,上記両名にこれを完済した。
(甲58,61,証人P10)
ウP1の株主は,①設立当初は,P24及びP11がそれぞれ1株ずつの
名義株主となり,②平成9年8月6日,P24に代わってP17が名義株
主となったが,その際,P11名義の1株はP11が実質的に保有する株
式に変更されるとともに,P10の出資により8株が増資され,P17は
9株の名義株主となり,③同10年6月ころ,P17に代わってP13が
9株の名義株主となった。
また,P1の取締役については,①設立当初は,P24とP25O'kee
ffeが務めていたが,②平成9年8月6日,P24に代わってP17が取締
役となり,③同10年6月ころ,両名に代わってP13とP26が取締役
となった。なお,いずれの取締役とも,名目的な取締役であり,報酬も受
け取っていない。(甲54,58から61まで,69,乙53,証人P1
0,原告P2本人)
(3)原告会社の株式公開の準備とP4株式の取扱い
ア原告P2は,平成8年ころ,企業発展に必要な人材及び資金を確保する
ために資すると考えて,原告会社の株式をいわゆる店頭登録銘柄として公
開することを決意し,P27株式会社(以下「P27」という。)のOB
で,パチンコ業界大手の株式会社P28の株式公開を実現させた実績を持
つP12を原告会社の顧問に招き,そのアドバイスに従って原告会社の株
式公開の準備を進めた(甲54から56まで,原告P2本人)。
イところで,パチスロ機の製造及び販売を目的とする原告会社の代表取締
役である原告P2は,パチンコ機及びパチスロ機の製造を目的とする同種
の競争企業であるP4の全株式を保有しており,また,P4は,原告会社
の株式の約5パーセントを保有していた。
そこで,P12は,原告P2に対し,「株式公開ルールの審査基準を満
たすためには,P4を原告会社に合併するか,又はP4株式を第三者に売
却する必要がある。しかし,株式公開の申請を平成10年3月期にする場
合には,既に合併による株式の移動が制限される時期に入っているため,
P4を原告会社に合併する方法は採ることができない。したがって,第三
者にP4株式を売却するほかにはない。この意見は,株式公開の主幹事証
券会社であるP27の指摘と同じである。」旨指導し,原告P2は,P1
2の同指導に従うこととした。(甲54から56まで,原告P2本人)
ウところで,原告P2には,P4をどうしても手放し難い理由があり,仮
に,原告会社の株式公開のために一時的にP4株式を手放すとしても,同
株式公開後には必ずこれを買い戻したいと考えた。すなわち,当時,パチ
ンコ業界においても,パチスロ業界と同様に,パテント・プール方式が採
用されており,P29協同組合(以下「P29」という。)の組合員に限
って特許権等の再実施許諾が特許管理会社からされており,P29は組合
への新規加入を拒否していたため,排他的な市場となっていた。このよう
な状況の中で,原告P2が努力して交渉を行った結果,P4がP29から
新規加入を約束されたため,将来においてP4を原告会社に合併すること
により,原告会社がパチンコ業界にも進出する足掛かりを得ることができ
ることとなっていた。
このように,P4は,P29に新規加入することが約束されているとい
う,金銭に評価することができないほどの貴重な価値を有しており,原告
P2としても,P4を手放したくなかったため,P12に対し,いったん
P4株式を手放した上で原告会社の株式公開後にこれを買い戻すことに問
題がないかと尋ねたところ,P12から,特に問題がない旨の回答を得た。
(甲54から56まで,原告P2本人)
エそこで,原告P2は,P12の上記回答を受けて,P4株式を信頼する
ことのできる第三者に一時的に売却し,原告会社の株式公開後にこれを買
い戻した上,P4を原告会社に合併することを決めた。そして,原告P2
は,上記の信頼することのできる第三者としては,長年,公私にわたり親
密な交友関係を続けており,かつ,原告P2がP3を全面的に指導し,支
援して成長させたことに多大な感謝をしているP10が代表取締役を務め
ているP3以外にはあり得ないと考えた。(甲54,原告P2本人)
(4)平成9年2月の合意について
アP10は,当時,定期的に開催されるアミューズメント機器のショーの
見学と商用とを兼ねて,毎年2月と9月に来日していた。そこで,原告P
2は,平成9年2月16日にP10が来日した際に,東京都港区所在のP
3本社会議室において,P11及びP17の同席の下,P10に対し,原
告会社が株式公開の準備を進めていること,及びそのためには関係会社で
あるP4の全株式を一時的に売却する必要があることを説明した上で,原
告P2が保有するP4株式を一時的に買い受け,原告会社の株式公開後に
買戻しに応じてほしい旨の申入れをした。
そして,原告P2は,P10に対し,原告会社が株式を公開することが
できた場合には,原告P2は公開会社の代表取締役となるため,同業他社
であるP3に対する指導や支援を行うことはできなくなるので,その場合
には,①P3も株式を公開し,原告P2の指導や支援を受けることなく,
営業を続けていくか,②原告会社の株式公開後に,P1が原告会社に対し
P3の全株式を売却し,P3が原告会社の子会社となるかのいずれかを選
択する以外に方策はない旨を説明した。
これに対して,P10は,原告P2に対し,長年にわたる信頼関係と原
告P2がP3を全面的に指導し,支援して成長させたことへの感謝の念か
ら,原告会社の株式公開に協力しようと考えて,P4の全株式を一時的に
買い受けた上,買戻しに応ずることを承諾した。そして,P10は,原告
P2に対し,P3に対する原告P2の指導や支援がなくなった場合にP3
が経営不振に陥ることを懸念して,P3が株式を公開することができなか
ったときには,P4の全株式を保有することになるP3の全株式をP1か
ら買い受けてほしい旨要請し,原告P2はこれを承諾した。(甲54,5
7,61,72,証人P10,原告P2本人)
イさらに,原告P2とP10は,P3株式の譲渡代金の額について協議し,
要旨,次のとおり合意した。
(ア)P4株式の売買(以下「本件主契約」ということがある。)につい

原告P2は,P3に対し,P4株式3万6000株を,鑑定評価額を
基に確定した代金で売り渡し,P3はこれを買い受ける。
(イ)P4株式の再売買等の予約(以下「本件特約」ということがあ
る。)について
a原告会社とP3が共に株式公開をした場合には,原告P2は,P3
から,P4株式3万6000株を本件主契約の価格の110パーセン
トから130パーセントの範囲の価格で買い受けることができる。
b原告会社が株式公開をし,P3が株式公開を断念した場合には,原
告P2は,P1から,P4株式3万6000株を保有するP3株式6
00株を本件主契約の価格の50パーセントから150パーセントの
範囲の価格で買い受けることができる。
c原告会社が株式公開を断念した場合には,原告P2は,P3から,
P4株式3万6000株を本件主契約の価格で買い受けることができ
る。
原告P2は,P12から本件主契約の調印を急ぐようアドバイスを受け
ていたため,P10との間で,原告P2が依頼するP4株式の鑑定評価書
が提出され次第,代金額についてP10の了解を得た上で,本件主契約に
係る株式売買契約書に調印することを合意した。また,本件特約について
は,P10が次回に来日する平成9年9月に,同年2月の本件合意内容を
覚書に書面化することを合意した。(甲54,57,61,証人P10,
原告P2本人)
(5)本件主契約に係る株式売買契約書(P4株式売買契約書)への調印等
ア平成9年2月にされた前記合意に従い,原告P2は,顧問税理士であっ
たP19税理士にP4株式の鑑定評価を依頼し,同年5月26日,同税理
士から,P4株式3万6000株の価格を同月20日現在で9億644万
4000円(1株当たり2万5179円)とする鑑定評価書の提出を受け
た(甲9,37,54,原告P2本人)。
イ前記鑑定評価書が提出されたことを受けて,原告P2は,平成9年6月
上旬ころ,英国在住のP10に電話を架けて,鑑定評価額が9億0644
万4000円となったことを伝えて,本件主契約の代金額を上記鑑定評価
額と同額とすることについての了解を得た。これにより,本件主契約の内
容が確定し,また,本件特約の内容も確定した。(甲54,61,証人P
10,原告P2本人)
ウ平成9年6月11日,P3の日本における責任者であったP11が,P
10の指示を受けてP10の記名押印を代行し,原告P2と共に,「原告
P2は,P3に対し,P4株式3万6000株を代金9億0644万40
00円で,譲渡日を平成9年6月23日として売り渡し,P3はこれを買
い受ける。」旨の内容の本件主契約に係る株式売買契約書(P4株式売買
契約書)に調印した(甲20,54,61,証人P10,原告P2本人)。
エこうして,平成9年6月ころ,原告P2は,P3に対し,P4株式3万
6000株を代金9億0644万4000円で譲渡した(弁論の全趣旨)。
(6)本件特約に係る覚書の作成
P10は,平成9年9月14日に来日し,同月20日まで日本に滞在した。
この間,原告P2とP10は,同月17日,東京都港区所在のP3本社会議
室において,次のとおり,各覚書に調印した。(甲21の1から3まで,5
4,57,61,72,乙24,65の1及び2,証人P10,原告P2本
人)
ア覚書1(MEMORANDUM。甲21の1)
原告P2とP10及びP17は,平成9年9月17日付けで,要旨以下
のとおり記載されている覚書1を作成した。
(ア)原告P2は,原告会社が株式を公開した後,P10から,P4株式
を元の価格の110パーセントから130パーセントまでの価格で購入
する。
(イ)P10は,原告会社が株式を公開することができ,P3が株式を公
開することができなかった場合には,原告P2にP3株式とP4株式に
加えてP4が保有している原告会社の株式を元の価格の150パーセン
ト以内の価格で売却する(なお,訳文では「150パーセントの価格」
とされているが,「150パーセント以内の価格」が正しい)。
(ウ)原告P2は,原告会社が株式を公開することができなかった場合に
は,P4株式を平成9年6月23日に取引したのと同一の条件及び価格
で買い戻す権利を有するものとする。
イ覚書2(Agreement。甲21の2)
原告P2とP10は,平成9年9月17日付けで,要旨以下のとおり記
載されている覚書2を作成した。
(ア)P10は,9億644万4000円の価格でP4株式を取得する。
(イ)原告P2が原告会社の株式を公開することができ,P3株式を取得
するとの申出をした場合には,原告P2は,P1から,P4株式を保有
するP3株式600株を,原告P2がP4株式をP3に売却する価格の
50パーセントから150パーセントの範囲内(最大額は14億円とす
る。)で買い受けることができる。
ウ覚書3(Agreement。乙24)
原告P2とP10は,平成9年9月17日付けで,要旨以下のとおり記
載されている覚書3を作成した。
原告P2とP1は,覚書2の中の価格決定基準に従った価格でP3株式
を取得する選択権を持っている。しかし,P3株式について,日本の国税当
局が独自に決定した価値を主張し,原告P2が当該価値を採用することを
要求された場合には,P3株式の価値は下記のように再評価され,訂正さ
れる。
(ア)新たな価値は会計監査人により決定された価値であるものとする。
(イ)原告P2は,新たな価値を受け入れ,覚書2の価格決定基準に従っ
た価格と新たな価値との差額を早急にP1に支払うものとする。
(ウ)P1は上記の差額を受け取り,オーストラリアの税務署に差額の授
受を申告するものとする。
(7)P3の第三者割当増資
平成9年ころから株式公開を目指していたP3は,P11らをもって株式
公開のプロジェクトチームを編成し,同チームメンバーに対してインセンテ
ィブを与えるため,前記前提事実のとおり,同10年1月15日,P11ら
に対する第三者割当増資を実施した。
これにより,P3の発行済株式総数が700株,資本の額が4524万2
900円となるとともに,P11が50株,P12が22株,P13及びP
14が各14株のP3株式をそれぞれ取得した。(甲54,60)
(8)P1から原告P2へのP3株式の譲渡
ア前記前提事実のとおり,原告会社は,平成10年9月1日,当時のP8
株式会社の開設する株式店頭市場において,株式を公開した。他方で,P
10は,原告会社の株式公開が実現した同月ころまでに,P3株式公開を
断念した。(甲54,61,証人P10,原告P2本人)
イそこで,P1の実質的な代表者であるP10と原告P2は,平成10年
9月18日,本件特約に基づき,P1がその保有するP3株式600株を
代金13億8000万円で原告P2に売り渡す旨の株式売買契約書を作成
し,上記売買契約を締結した。
なお,上記代金額については,原告P2とP10が協議の上,本件特約
において定められた範囲内において,13億8000万円と合意したもの
である。(甲23,54,証人P10,原告P2本人)
ウそして,P1の名義上の代表者であったP13と原告P2は,平成11
年1月12日付で,上記イと同内容の株式売買契約書に調印した。(甲2
5,54,60,61,証人P10,原告P2本人)
エP3の定款においては,株式の譲渡制限の定めがされていたため,P1
は,P3の取締役会に対し,上記イの株式譲渡の承認を請求し,平成10
年12月22日,同取締役会はこれを承認した(甲26,54)。
(9)原告P2及びP11らから原告会社へのP3株式の譲渡
ア原告会社の管理本部は,原告P2及びP11らからP3株式を買い受け
ることを予定して,P16税理士に対し,同売買のための時価の算定を評
価の目的として,P3株式の鑑定評価を依頼した。
これを受けて,P16税理士は,P3株式の鑑定評価をした上で,原告
会社に対し,平成11年1月7日付けの鑑定評価書(P16評価書)を提
出した。P16評価書においては,同10年12月1日現在で,P3株式
が1株当たり2031万9638万円と評価されており,その概要は下記
のとおりである。(甲36,乙8,原告P2本人)

(ア)評価に当たっては,法人税法基本通達9−1−14「非上場株式で
気配相場のないものの価額」及び9−1−15「気配相場のない株式の
特例」によった。
(イ)P3は株式保有特定会社に該当するため,純資産価額方式による評
価額となる。
(ウ)時価評価額によると,P3の資産の総額は203億1269万30
00円,負債の総額は60億8894万6000円,純資産額は142
億2374万7000円である。なお,このうち,P4株式の時価評価
額は,133億0635万6000円である。
(エ)P4株式の評価方法は,純資産価額方式によるものであり,時価評
価額によると,P4の資産の総額は139億8230万4000円,負
債の総額は6億7593万9000円,純資産額は133億0635万
6000円である。
(オ)P3株式及びP4株式のいずれの評価においても,法人税額等相当
額は控除されていない。
イ原告P2が原告会社にP3株式600株を譲渡することは,会社と取締
役との間の利益相反取引に当たるところ,原告会社の取締役会は,平成1
1年1月22日,上記P3株式の譲渡について,P16評価書による鑑定
評価額が適正な範囲内にあると判断し,これを承認する決議をした(甲2
9,原告P2本人)。
ウ原告P2は,原告会社に対し,平成11年2月2日,P3株式600株
を,代金121億9178万2800円(1株当たり2031万9638
万円)で売り渡した(甲27)。
エ前記のとおり,P11らは平成10年1月15日にP3株式を取得して
いたところ,P3が同年9月までに株式公開を断念したため,P11らは,
同11年2月2日,P16評価書による評価額をもって,すなわち,P1
1は代金10億1598万1900円で,P12は代金4億4703万2
036円で,P13及びP14はいずれも代金2億8447万4932円
で,原告会社に対し,P3株式をそれぞれ売り渡した(乙5の2から5ま
で,弁論の全趣旨)。
オ前記のとおり,P3は株式の譲渡制限の定めを置いていたため,原告P
2及びP11らは,平成11年2月2日,それぞれP3の取締役会に対し,
上記株式譲渡の承認を請求し,同取締役会はこれを承認した(甲30)。
2認定事実の補足説明
(1)P1の取締役及び株主の状況について
被告らは,P1の会社履歴情報抜粋(乙53)によれば,P1の取締役は,
①設立当初は,P24とP25が務めていたが,②平成9年8月6日,P2
4に代わってP17が取締役となり,③同10年6月ころ,両名に代わって
P13とP26が取締役となり,④本件譲渡1の後である同11年4月1日
に,P10が取締役に就任したものであって,P1において名義上の取締役
が必要であった合理的理由は存在しないとして,P10が本件譲渡1の当時
にP1の事実上の業務執行取締役であったと認めることはできないとし,ま
た,P1の株主の状況についても,P10がP1の実質株主であることを裏
付ける客観的な根拠が見当たらないことなどから,P10が本件譲渡1の当
時にP1の実質株主又は実質的支配者であったとは認められないとする。
確かに,本件譲渡1の当時,P10がP1の実質株主又は実質的支配者で
あり,また,事実上の業務執行取締役であったことを裏付ける会社履歴情報
抜粋その他の客観的な証拠は見当たらない。
しかしながら,前記前提事実及び前記認定事実並びに弁論の全趣旨による
と,①P3株式は,第三者割当増資が行われるまではすべてP1が保有して
おり,同増資後も,本件譲渡1によりP1から原告P2に株式が譲渡される
まで,その大半をP1が保有していたこと,②P3は,平成3年の設立以来,
P10が代表取締役を引き続き務めており,本件譲渡1の後である同11年
5月になって,P10が代表取締役を辞任していること,③P10は,英国
のゲーム機メーカーであるP20社の代表者であり,P10が長く代表取締
役を務めていたP3(P3株式会社)においても「○○」という名称が使用
されていることからすると,P1についても,その名称からP10が実質的
な支配者であることがうかがわれること,④P1の実質的な支配者あるいは
事実上の業務執行取締役であったことをうかがわせる者は,P10以外には
見当たらないこと,⑤覚書1には,「P1の真の所有者であるP10は,P
1の真の権限者としての権利をもって」という記載や「P1の真の所有者で
あるP10は,P1の名義株主としてP17の名を使用する」という記載が
あること,⑥原告P2とP10がそれぞれ署名している覚書2及び株式売買
契約書(甲23)には,P1が保有しているP3株式を原告P2に売却する
際の価格等の売却条件に関する記載があるところ,原告P2とP10との間
で,P1が保有しているP3株式を売却する際の条件について記載したこれ
らの書面が作成されていることからすると,P10がP1の実質的な支配者
であるとうかがわれることを認めることができる。
これらの諸点を総合すれば,P1は,P10が資本の全部を出資して設立
した会社であって,本件譲渡1の当時においても,P10はP1の実質株主
及び実質的支配者であって,事実上の業務執行取締役でもあったと認めるの
が相当である。
(2)本件譲渡1が再売買予約付き譲渡契約に基づいて行われたものであること
について
被告らは,①本件P4株式譲渡は原告P2とP3との取引であり(甲2
0),本件譲渡1は原告P2とP1との取引であって,両取引は売買の当事
者も目的物も異なること,②いずれの覚書においてもP3又はP1の法人と
しての意思表示はされていないから,覚書1又は覚書2の合意が原告P2と
P3又は原告P2とP1との間で有効に成立したものとはいえないこと,③
P4株式売買契約書には,各覚書についての記載がない上,覚書1及び覚書
2は,P4株式の売買の3か月後である平成9年9月17日に作成されたも
のであること,④覚書3によると,P3株式の譲渡価額は13億8000万
円に確定したものではなく,原告会社株式の店頭公開に伴う値上がり益を反
映させて,譲渡価額を変更することが可能であったこと,⑤P3は,P4の
発行済株式の100パーセントを保有しているのであるから,第三者割当増
資に伴い,P1が間接的に保有するP4株式の割合も100パーセントから
約85.7パーセントに減少することとなり,本件譲渡1によっても,原告
P2が間接的にP4株式の全部を買い戻すことはできなくなることなどを挙
げて,本件譲渡1が再売買予約付譲渡契約に基づく譲渡であると解すること
はできない旨主張する。
しかしながら,本件譲渡1の当時,P10は,P3の代表取締役を務めて
おり,前記(1)において判示したとおり,P1の実質株主及び実質的支配者並
びに事実上の業務執行取締役でもあって,さらに,原告P2はこれらの事情
をいずれも認識していたこと(甲54及び原告P2本人の供述により認めら
れる。)からすると,P10が行ったこれらの意思表示は,P3又はP1に
対して直接に効力を生ずると認めるのが相当であるから(民法100条ただ
し書,99条1項参照),被告らの上記①及び②の主張はいずれも失当であ
る。
また,P4株式売買契約書は,前記認定事実のとおり,原告会社の株式公
開を進めている中で,P12からP4株式を処分するようアドバイスを受け
ていた原告P2が,顧問税理士のP19税理士からのP4株式の鑑定評価書
の提出を受けて,平成9年2月の合意に基づき,P3の日本における責任者
であったP11がP10の記名押印を代行する方式により調印したものであ
る。このような作成経緯に照らすと,P4株式売買契約書は,原告会社の株
式公開の支障となる事情を取り除くために,対外的に,P4株式を譲渡した
という形式を整えることを主な目的として作成された書面であると見るのが
相当であるから,P4株式の買戻しの合意などというような上記目的に反す
る事項が記載されていないのは,何ら不合理なことではなく,むしろ,上記
作成経緯に照らすと合理的なことであるとさえいうことができる。
さらに,覚書3によるとP3株式の売買価格は13億8000万円に確定
したものではなかったとされる点についても,覚書3の記載内容等を子細に
検討すれば,覚書3は,万が一にも国税当局からP3株式の譲渡が資産の低
額譲渡に当たるなどの指摘を受けた場合に備えて,上記売買価格の変更につ
いて定めたものであって,被告らの主張するように,原告会社株式の店頭公
開に伴う値上がり益を反映させて譲渡価額を変更することを予定したもので
はなく,国税当局からの指摘等がない限り,上記売買価格を変更することは
許されないものというべきであるから,覚書3が存在することを考慮に入れ
ても,P3株式の売買価格は13億8000万円に確定したものと認めるの
が相当である。
加えて,P3の第三者割当増資に伴い,P1が間接的に保有するP4株式
の割合が100パーセントから約85.7パーセントに減少した点について
も,上記第三者割当増資後においてもP1がP4株式の大部分を間接的に保
有するという状況に変わりはないのであって,本件譲渡1によりP1が保有
するP3株式を譲り受けることにより,原告P2はP4株式の大部分を取得
することができ,P4の支配権を回復することが可能になるのであって,上
記第三者割当増資により株式の割当てを受けた者がいずれも原告P2と親し
い関係にある者ばかりであることも考慮に入れると,上記第三者割当増資が
行われたことは,本件譲渡1が再売買予約付譲渡契約に基づく譲渡であると
認めることを妨げるものではないというべきである。
そして,前記認定事実のとおり,①P4は,原告P2の交渉により,P2
9に新規加入することが約束されているという,金銭に評価することが困難
なほどの貴重な価値を有しており,原告P2としてもP4を手放したくはな
かったこと,②P10は,平成9年当時,定期的に開催されるアミューズメ
ント機器のショーの見学と商用とを兼ねて,毎年2月と9月に来日していた
こと,③P10が同年9月に来日した際,原告P2からP3へのP4株式の
譲渡とその買戻しに関する覚書等が作成されていることなどを総合すると,
P10が同年2月に来日した際,P4株式の売買及びその再売買等の予約に
ついて口頭による合意が成立し,同年9月に来日した際に,その合意内容を
覚書等に記載して明確化を図ったものと認めるのが合理的である。
したがって,本件譲渡1は,再売買予約付き譲渡契約に基づいて行われた
ものであるというべきである。
3本件譲渡1は,徴収法39条に規定する「著しく低い額の対価による譲渡」
に当たるかについて(第1事件の争点ア)
(1)前記1の認定事実及び前記2において判示したところに照らすと,本件譲
渡1は,株式の売買という法形式が採られているものの,その実質は,原告
会社の株式公開の円滑な実現を目的とした,P4株式の一時避難的な預託行
為の一部としての,預託株式の返還と見ることができる。
すなわち,原告P2は,自ら代表者を務める原告会社の株式公開の準備を
していたところ,原告P2が原告会社と同業のP4株式を保有することは株
式公開の支障となるおそれがあるため,P4株式を第三者に売却すべきであ
る旨を株式公開の専門家であるP12から助言されたが,将来の事業の拡大
を図る上でP4株式を手放すことは到底できないと考えたことから,P4株
式を一時的に譲渡して原告会社の株式公開後に買い戻すことを考案し,P3
の代表取締役であるとともにP1の実質的な代表者であったP10に対し,
事情を説明して一時的にP4株式をP3において保有してもらうことを依頼
し,P10がこれを了解したことから,P1及びP3との間で再売買予約付
き譲渡契約を締結するに至ったものである。
したがって,本件P4株式譲渡とその返還方法として行われた本件譲渡1
は,原告会社の株式公開の円滑な実現を目的とした,P4株式の一時避難的
な預託行為であり,本件P4株式譲渡と本件譲渡1は,一体的な取引行為と
して評価するのが相当である。
(2)このように,本件譲渡1は,再売買予約付き譲渡契約に基づいてされた契
約履行行為の一部分であり,本件主契約たるP4株式の売買に付随してされ
た本件特約たる再売買予約等に基づいてされたものであるから,本件譲渡1
は,再売買予約付き譲渡契約に基づく義務の履行行為としてされたものとい
うことができる。
(3)そうすると,本件譲渡1が徴収法39条にいう「著しく低い額の対価によ
る譲渡」に当たるかどうかは,本件における一連の取引の実態に即して,取
引全体を総合的に検討して判断するのが相当であるところ,①上記のとおり,
本件譲渡1は,再売買予約付き譲渡契約に基づいてされたものであること,
②本件譲渡1の譲渡価額は,本件P4株式譲渡の譲渡価額の約1.5倍であ
ること,③P16評価書によると,P3の資産総額は203億1269万3
000円,負債総額は60億8894万6000円,純資産額は142億2
374万7000円であって,また,P3が保有するP4株式の価額は13
3億0635万6000円であり(いずれも時価評価額による。),本件譲
渡1当時のP3の資産の大半は,P4株式が占めていたということができる
こと,④前記認定事実のとおり,P3の成長は原告P2の指導及び支援によ
るところが極めて大きいから,原告会社の株式公開により原告P2からの支
援が受けられなくなるとP3が経営不振に陥る可能性が高く,このため,P
10としても,原告会社が株式公開をしたときには,P4株式の再譲渡に代
えてP3株式を譲渡する方が好都合であることなどの諸点を総合的に考慮す
ると,本件譲渡1の譲渡価額は,合理的かつ相当な理由に基づき決定された
ものというべきであって,「著しく低い額の対価による譲渡」に当たらない
と認めるのが相当である。
(4)以上のとおり,本件譲渡1は,徴収法39条にいう「著しく低い額の対価
による譲渡」には当たらないから,その余の争点について検討するまでもな
く,本件納付告知処分は違法であって,取消しを免れない。
4本件譲渡1は,譲渡の時におけるP3株式の適正な価額より低い対価をもっ
てする資産の低額譲渡に当たるかについて(第2事件の争点ア)
(1)前記3において判示したとおり,P4株式の譲渡とその返還方法として行
われた本件譲渡1は,原告会社の株式公開の円滑な実現を目的とした,P4
株式の一時避難的な預託行為であり,本件P4株式譲渡と本件譲渡1は,一
体的な取引行為として評価するのが相当であって,本件譲渡1は,本件再売
買予約付き譲渡契約に基づいてされた契約履行行為の一部分であり,本件主
契約たるP4株式の売買に付随してされた本件特約たる再売買予約等に基づ
いてされたものであるということができる。
(2)このように,本件譲渡1は,再売買予約付き譲渡契約に基づく義務の履行
行為としてされたものであって,これに加えて,前記3(3)の②から④までの
諸点も考慮に入れると,本件譲渡1の譲渡価額のみに着目して,原告P2が
P3株式の時価と譲受金額との差額相当額を所得税法36条1項に規定する
経済的な利益として享受したものと見るのは相当でない。
したがって,本件譲渡1は,譲渡時におけるP3株式の適正な価額より低
い対価をもってする資産の低額譲渡には当たらないというべきである。
(3)以上のとおり,原告P2が本件譲渡1によりP3株式の時価と譲受金額と
の差額相当額を所得税法36条1項に規定する経済的な利益として享受した
ものと認めることはできないから,被告渋谷税務署長が本件所得税更正処分
の適法性の根拠として主張する各金額のうち,一時所得の金額64億611
7万4600円は失当である。
そして,被告渋谷税務署長が主張するその余の課税根拠の金額は,前記の
とおり,すべて本件所得税申告書に記載した金額と同額であるから,その余
の争点について判断するまでもなく,本件所得税更正処分は本件所得税申告
書に記載された額を上回る部分につき違法であり,また,本件所得税更正処
分に係る過少申告加算税賦課決定処分も違法であって,いずれも取消しを免
れないというべきである。
5本件譲渡2及び本件譲渡3の時におけるP3株式の評価においては,法人税
額等相当額を控除すべきかについて(第3事件の争点ウ)
(1)事案にかんがみ,第3事件の争点ウについて判断する。
法人税額等相当額の控除の要否に関しては,①本件譲渡2及び本件譲渡3
の時点におけるP3株式の評価において,法人税額等相当額を控除すべきか,
及び②上記の時点におけるP3株式700株の評価に際し,P3が保有する
P4株式の評価において,法人税額等相当額を控除すべきかの2点が争点と
されているが,まず,①の点について検討する。
(2)法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−1
4(4)は,法人税法(平成17年法律第21号による改正前のもの)33条2
項の規定を適用して非上場株式で気配相場のないものについて評価損を計上
する場合に,当該株式に売買実例がなく,その公開の途上になく,その発行
法人と事業の種類,規模,収益の状況等が類似する法人がないときは,事業
年度終了の時における当該株式の価額は,当該事業年度終了の日又は同日に
最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当
たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額による旨を
定めている。
もっとも,このような一般的,抽象的な評価方法の定めのみに基づいて株
式の価額を算定することは困難であり,他方,評価通達の定める非上場株式
の評価方法は,相続又は贈与における財産評価手法として一般的に合理性を
有し,課税実務上も定着しているものであるから,これと著しく異なる評価
方法を法人税の課税において導入すると,混乱を招くこととなる。このよう
な観点から,法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)
9−1−15は,評価通達の定める非上場株式の評価方法を,原則として法
人税課税においても是認することを明らかにするとともに,この評価方法を
無条件で法人税課税において採用することには弊害があることから,1株当
たりの純資産価額の計算に当たって株式の発行会社の有する土地を相続税路
線価ではなく時価で評価するなどの条件を付して採用することとしている。
したがって,評価通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正
前のもの)185が定める1株当たりの純資産価額の算定方式を法人税課税
においてそのまま採用すると,相続税や贈与税との性質の違いにより課税上
の弊害が生ずる場合には,これを解消するために修正を加えるべきであるが,
このような修正をした上で評価通達所定の1株当たりの純資産価額の算定方
式にのっとって算定された価額は,一般に通常の取引における当事者の合理
的意思に合致するものとして,法人税基本通達(平成12年課法2−7によ
る改正前のもの)9−1−14(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌
して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきである。そして,
このように解される同通達9−1−14(4),9−1−15の定めは,法人の
収益の額を算定する前提として株式の価額を評価する場合においても合理性
を有するものとして妥当するというべきである。
ところで,評価通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正
前のもの)185が,1株当たりの純資産価額の算定に当たり法人税額等相
当額を控除するものとしているのは,個人が財産を直接所有し,支配してい
る場合と,個人が当該財産を会社を通じて間接的に所有し,支配している場
合との評価の均衡を図るためであり,評価の対象となる会社が現実に解散さ
れることを前提としていることによるものではない。したがって,営業活動
を順調に行って存続している会社の株式の相続及び贈与に係る相続税及び贈
与税の課税においても,法人税額等相当額を控除して当該会社の1株当たり
の純資産価額を算定することは,一般的に合理性があるものとして,課税実
務の取扱いとして定着していたものである。
法人税基本通達については,平成12年課法2−7による改正により,法
人税課税における1株当たりの純資産価額の評価に当たり法人税額等相当額
を控除しないことが規定されるに至ったのであって,この改正前の平成11
年2月ころに,評価通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改
正前のもの)185が定める1株当たりの純資産価額の算定方式のうち法人
税額等相当額を控除する部分が,法人税課税における評価に当てはまらない
ということを関係通達から読み取ることは,一般の納税義務者にとっては不
可能である。取引相場のない株式の取引は,法人税額等相当額を控除した純
資産価額を上回る価額でされることもあり得るが,一般にその取引の当事者
は上記関係通達の定める評価方法に関心を有するものであり,その評価方法
が取引の実情に影響を与え得るものであったことは否定し難く,これとかけ
離れたところに取引通念があったということはできない。
したがって,企業の継続を前提とした株式の評価を行う場合であっても,
法人税額等相当額を控除して算定された1株当たりの純資産価額は,平成1
1年2月当時において,一般には通常の取引における当事者の合理的意思に
合致するものとして,法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前
のもの)9−1−14(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常
取引されると認められる価額」に当たるというべきである。このように解釈
される上記「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認めら
れる価額」によって株式の価額を評価し,これを前提に法人の収益の額を算
定することは,法人税法の解釈として合理性を有するということができる。
そうであるとすると,平成11年2月当時におけるP3株式の1株当たり
の純資産価額の評価において,企業の継続を前提とした価額を求める場合で
あることのみを根拠として,法人税額等相当額を控除することが不合理であ
って通常の取引における当事者の合理的意思に合致しないものであるという
ことはできず,他に上記控除が上記の評価において著しく不合理な結果を生
じさせるなど課税上の弊害をもたらす事情がうかがわれない本件においては,
これを控除して1株当たりの純資産価額を評価すべきである(本件各最高裁
判決参照)。
(3)これに対して,被告江東西税務署長は,関係会社間等において非上場株式
の売買を行う場合における適正な価額(時価)の算定に前記通達を準用する
場合の留意点については,本件譲渡2及び本件譲渡3が行われた当時,法人
税基本通達の一般的な解説書に,「合理的な理由があると認められるときを
除き,評価差額に対する法人税相当額を控除しないところで純資産価額を計
算すべき」と解説されており,関係会社間等において非上場株式の売買を行
う場合における適正な価額(時価)を純資産価額方式で算定するに当たり,
法人税額等相当額を控除しない取扱いは,課税実務として一般に定着してお
り,上記当時において,気配相場のない株式の売買を行う場合の適正な価額
(時価)の算定に当たって,評価通達(平成12年課評2−4,課資2−2
49による改正前のもの)185を準用する際の留意点,すなわち,評価通
達が定める1株当たりの純資産価額の算定方式のうち法人税額等相当額を控
除する部分が,合理的な理由がない限り法人税課税における評価に当てはま
らないということを認識することは,一般の納税義務者にとっては不可能で
はなかったとし,また,原告会社と本件各譲渡人は,本件譲渡2及び本件譲
渡3に当たり,評価差額に対する法人税額等相当額を控除しない純資産価額
方式で評価されたP3株式の価額により取引する意思を有していたものと認
められるとして,本件においては,P3株式の適正な価額(時価)を純資産
価額方式で算定するに当たり,法人税額等相当額を控除しないことが,当事
者の合理的意思と認められるのであり,取引当事者の合理的意思を重視した
本件各最高裁判決の判示に照らしても,上記当時におけるP3株式の適正な
価額(時価)を純資産価額方式で算定するに当たり,評価差額に対する法人
税額等相当額を控除すべき理由はない旨主張する。
しかしながら,本件各最高裁判決の趣旨に照らすと,法人税基本通達の一
般的な解説書に上記のような記載があることを考慮に入れても,なお,平成
12年課法2−7による法人税基本通達の改正前の平成11年2月ころに,
評価通達185が定める1株当たりの純資産価額の算定方式のうち法人税額
等相当額を控除する部分が,法人税課税における評価に当てはまらないとい
うことを関係通達から読み取ることは,一般の納税義務者にとっては不可能
と認めるのが相当であり,また,本件において問題とされているのは,法人
税額等相当額を控除して算定された1株当たりの純資産価額は,一般に通常
の取引における当事者の合理的意思に合致するか否かであって,取引当事者
の具体的な意思を問題とするものではないから,被告江東西税務署長の上記
主張はいずれも失当というべきである。
(4)以上によれば,①評価通達174(1)のロではなくイを適用して原告会社
の株式を評価すべきか,及び②P4株式の含み益に係る法人税額等相当額を
控除すべきかの2点について,いずれも被告江東西税務署長の主張を採用す
るとしても,被告江東西税務署長の主張するP3の純資産価額(別紙9の別
表3参照)を基礎として(ただし,簿価純資産価額については,被告江東西
税務署長の主張からは明らかでないので,P16評価書記載の価額を採用し
た。),財産基本通達186−2の規定する割合(平成11年2月の時点に
おいては47パーセント)に基づき計算した法人税額等相当額を控除し,P
3株式1株当たりの純資産価額を算定すると,次のとおり,本件譲渡2及び
本件譲渡3の時点におけるP3株式1株当たりの適正な価額(時価)は,本
件譲渡2及び本件譲渡3におけるP3株式1株当たりの譲渡価額である20
31万9638円を下回るものと認めることができる。
ア時価純資産価額172億0081万7000円
イ簿価純資産価額17億5294万7000円
ウ評価差額154億4787万0000円
エ法人税額等相当額72億6049万8000円
オ法人税額等相当額控除後の額99億4031万9000円
カ発行済株式数700株
キ1株当たり純資産価額1420万0455円
そうすると,上記①及び②などの点について判断するまでもなく,本件譲
渡2及び本件譲渡3に係るP3株式計700株の譲受け価額が適正な価額
(時価)に比して低額であるということはできないから,本件法人税更正処
分において受贈益として益金の額に算入された金額である29億7706万
9900円は,益金の額に算入することができない。
(5)以上に述べたところに従い,原告会社の所得金額及び納付すべき法人税額
並びに過少申告加算税額を算定すると,次のとおりとなる。
ア所得金額555億2116万5839円
上記金額は,次の(ア)及び(イ)の各金額を合計した金額である。
(ア)申告所得金額554億7799万6885

上記金額は,本件法人税申告書に記載された所得金額である。
(イ)所得金額に加算すべき金額4316万8954

上記金額は,次のa及びbの金額を合計した金額である。
a受贈益として益金の額に算入されるべき金額0円
b減価償却超過額4316万8954円
イ所得金額に対する法人税額191億5480万1925円
上記金額は,前記アの所得金額(通則法118条1項の規定に基づき1
000円未満の端数金額を切り捨てた後のもの)に,法人税法66条に規
定する税率を乗じて計算した金額である。
ウ課税留保金額115億6324万7000円
上記金額は,新たに留保金額となる前記(イ)の金額4316万8954
円を,本件法人税申告書に記載された留保所得金額543億7824万1
357円に加算し,その合計額である留保所得金額544億2141万0
311円を基に,次のとおり再計算した課税留保金額115億6324万
7000円(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端
数金額を切り捨てた後のもの)である。
(ア)留保所得金額544億2141万0311

(イ)法人税額191億5480万1925

(ウ)控除所得税額2291万5083

(エ)住民税額39億6504万3998

(オ)当期留保金額313億2447万9471

(カ)所得金額総額564億6066万2679

(キ)所得基準額197億6123万1937

(ク)留保控除額197億6123万1937

(ケ)課税留保金額115億6324万7000

エ課税留保金額に対する税額23億0614万9400円
上記金額は,前記ウの課税留保金額に法人税法67条に規定する税率を
乗じて計算した金額である。
オ法人税額から控除される所得税額等2291万5083円
上記金額は,本件法人税申告書に記載された金額である。
カ納付すべき法人税額214億3803万6200円
上記金額は,前記イの金額に前記エの金額を加算し,前記オの金額を差
し引いた金額(通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金
額を切り捨てた後のもの)である。
キ確定申告に係る法人税額214億2112万6100円
上記金額は,本件法人税申告書に記載された法人税額である。
ク差引納付すべき法人税額1691万0100円
上記金額は,前記カの金額から前記キの金額を差し引いた金額である。
ケ過少申告加算税額169万1000円
新たに納付すべきこととなった税額1691万0000円(ただし,通則
法118条3項の規定により1万円未満の端数金額を切り捨てた後のも
の)に対して100分の10の割合を乗じて算定した金額は,169万10
00円である。
(6)したがって,原告会社に対する本件法人税更正処分等は,所得金額555
億2116万5839円,納付すべき税額214億3803万6200円及
び過少申告加算税額169万1000円を超える部分が違法であり,取り消
されるべきことになる。
6第4事件の当否について
前記4において判示したとおり,本件譲渡1は,譲渡時におけるP3株式の
適正な価額より低い対価をもってする資産の低額譲渡に当たらないというべき
であり,そして,本件譲渡1が上記低額譲渡に当たらない場合におけるP1の
課税関係及びその計算根拠についての被告国からの主張及び立証はないので,
P1に対する本件決定等については,いずれも取消しを免れないことになる。
第4結論
よって,原告P2の請求は,いずれも理由があるから認容し,原告会社の請
求は,主文第3項の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由が
ないから棄却し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,
64条本文,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
杉原則彦裁判長裁判官
市原義孝裁判官
島村典男裁判官

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今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
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