弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人安田純治、同宮沢洋夫、同大学一、同鵜川隆明、同小野寺信一、同佐
々木新一、同山田忠行の上告理由第一の一について
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和五二年法律第八〇
号による改正前のもの。以下「規制法」という。)二四条一項四号は、原子炉設置
許可の基準として、原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質(使用済燃料を
含む。)、核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含む。)又は原
子炉による災害の防止上支障がないものであることと規定しているが、それは、原
子炉施設の安全性に関する審査が、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専
門技術的知見に基づいてされる必要がある上、科学技術は不断に進歩、発展してい
るのであるから、原子炉施設の安全性に関する基準を具体的かつ詳細に法律で定め
ることは困難であるのみならず、最新の科学技術水準への即応性の観点からみて適
当ではないとの見解に基づくものと考えられ、右見解は十分首肯し得るところであ
る。しかも、同条二項に、設置許可に当たっては、申請に係る原子炉施設の位置、
構造及び設備の安全性に関する審査の適正を確保するため、各専門分野の学識経験
者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を聴き、これを
尊重するという、慎重な手続が定められていることを考慮すると、右規定が明確、
適正な許可基準を定立していないとの非難は当たらないというべきである。したが
って、右規定が不明確、不適正であることを前提とする所論憲法三一条違反の主張
は、その前提を欠く。
 また、行政手続は、憲法三一条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、刑
事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多
様であるから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与
えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではないと解するのが相当で
ある。そして、原子炉設置許可の申請が規制法二四条一項各号所定の基準に適合す
るかどうかの審査は、原子力の開発及び利用の計画との適合性や原子炉施設の安全
性に関する極めて高度な専門技術的判断を伴うものであり、同条二項は、右許可を
する場合に、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の意見を聴き、これ
を尊重してしなければならないと定めている。このことにかんがみると、所論のよ
うに、原子力基本法(昭和五三年法律第八六号による改正前のもの)及び規制法が、
原子炉設置予定地の周辺住民の同意、公聴会の開催、周辺住民に対する告知、聴聞
の手続及び安全審査に関する全資料の公開に関する定めを置いていないからといっ
て、右各法が憲法三一条の法意に反するものとはいえない。以上のことは、最高裁
昭和六一年(行ツ)第一一号平成四年七月一日大法廷判決(民集四六巻五号四三七
頁)の趣旨に徴して明らかである。
 論旨は、いずれも採用することができない。
 同第一の二及び第二の一ないし三について
 規制法は、その規制の対象を、製錬事業(第二章)、加工事業(第三章)、原子
炉の設置、運転等(第四章)、再処理事業(第五章)、核燃料物質等の使用等(第
六章)、国際規制物資の使用(第六章の二)に分け、それぞれにつき内閣総理大臣
の指定、許可、認可等を受けるべきものとしているのであるから、第四章所定の原
子炉の設置、運転等に対する規制は、専ら原子炉設置の許可等の同章所定の事項を
その対象とするものであって、他の各章において規制することとされている事項ま
でをその対象とするものでないことは明らかである。
 また、規制法第四章の原子炉の設置、運転等に関する規制の内容をみると、原子
炉の設置の許可、変更の許可(二三条ないし二六条の二)のほかに、設計及び工事
方法の認可(二七条)、使用前検査(二八条)、保安規定の認可(三七条)、定期
検査(二九条)、原子炉の解体の届出(三八条)等の各規制が定められており、こ
れらの規制が段階的に行われることとされている(なお、本件原子炉のような発電
用原子炉施設について、規制法七三条は二七条ないし二九条の適用を除外するもの
としているが、これは、電気事業法(昭和五八年法律第八三号による改正前のもの)
四一条、四三条及び四七条により、その工事計画の認可、使用前検査及び定期検査
を受けなければならないこととされているからである。)。したがって、原子炉の
設置の許可の段階においては、専ら当該原子炉の基本設計のみが規制の対象となる
のであって、後続の設計及び工事方法の認可(二七条)の段階で規制の対象とされ
る当該原子炉の具体的な詳細設計及び工事の方法は規制の対象とはならないものと
解すべきである。
 右にみた規制法の規制の構造に照らすと、原子炉設置の許可の段階の安全審査に
おいては、当該原子炉施設の安全性にかかわる事項のすべてをその対象とするもの
ではなく、その基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解す
るのが相当である。右のように解しても、規制法は、右にみた各章別、段階的規制
により右規制の全体を通じて原子炉施設の安全性を確保することとしているのであ
るから、所論の違憲主張は、その前提を欠く。
 また、右によれば、所論の廃棄物の最終処分の方法、使用済燃料の再処理及び輸
送の方法、廃炉、マン・マシーン・インターフェイス(人と機械との接点)、SC
C(応力腐食割れ)の防止対策の細目等にかかわる事項は、原子炉設置許可の段階
における安全審査の対象にはならないものというべきであり、原判決に所論の違法
はない。
 論旨は、いずれも採用することができない。
 同第二の四について
 原審の適法に確定した事実関係の下において、本件原子炉設置許可処分を適法で
あるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法は
ない。論旨は、採用することができない。
 同第三について
 本件記録によれば、原審の措置に所論の違法はない。論旨は、採用することがで
きない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷         裁判長裁判官    三  
 好       達
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    橋   元   四 郎 平
            裁判官    味   村       治
            裁判官    小   野   幹   雄

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