弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人長谷山正観の上告理由第一点について。
 宗教法人法(以下、法という。)は、宗教法人の財産の保全を図り、それが不当
に処分されることを防止する目的で、二三条本文において、宗教法人が同条各号に
掲げる行為をしようとするときは、規則で定めるところ(規則に別段の定がないと
きは、法一九条の規定)による外、その行為の少くとも一月前に、その行為の要旨
を示してその旨を公告しなければならない旨規定している。換言すれば、法は、宗
教法人が、その財産の管理処分などに関して必要な規則を定めることを予定し(法
一二条一項八号参照)、規則に別段の定がないときは、宗教法人の事務は、責任役
員の定数の過半数で決することとして(法一九条)、濫りに不当な処分が行なわれ
ないように配慮するとともに、さらに右公告をも要求し、これによつて事前に信者
その他の利害関係人にも行為の要旨を周知させることとして万全を期しているもの
と解される。そして他方、法は、右のような規制にもかかわらず、所定の手続を踏
まないで処分が行なわれた場合を考慮して、法二四条の規定を置き、同条本文に掲
げる重要な財産について、右二三条の規定に違反してした行為は、法律上もその効
力を生じない旨規定し、もつて宗教法人の財産を保全する趣旨の徹底を期し、ただ
取引安全の見地から、善意の相手方または第三者に対しては、その無効をもつて対
抗できない旨規定している(二四条但書)のである。
 そうすると、宗教法人が、法二四条本文に掲げる財産を処分するに当たつてした
法二三条の公告が、その時期、期間などの点において、法および規則の定と相違す
るところがあるからといつて、直ちに当該行為が無効となると解することは、法の
趣旨に合致するものといえず、行為が有効か無効かを判断するに当たつては、公告
によつて行為の要旨を信者その他の利害関係人に周知させ、不当な処分を防止しよ
うとする法の趣旨が維持されているかどうかを考慮することを要するものというべ
きである。
 これを本件についてみるに、原判示によれば、上告人は、本件売買契約の締結に
ついて責任役員の承認を得、門徒總代に諮問したうえ、本件土地の処分について本
堂に法二三条所定の公告をし、かつ、その間、責任役員はもとより總代、門徒らか
らも何らの異議が存しなかつた事実を推認するに難くないというのであるが、その
意味は、上告人は右処分の要旨を信者その他の利害関係人に周知させるに足りる公
告をした旨認定しているものと解せられ、原判決挙示の証拠によれば、右認定判断
は首肯するに足りるのである。そうすれば、公告を規定した前示法の趣旨は、なお
維持されているとみられるから、右公告のされた時期について、右二三条の規定と
若干相違するところがあつたとしても、右処分行為の効力に影響を及ぼすものでは
ないというべきである。論旨は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するもので、
採用できない。
 同第二点および第四点について。
 所論は、本件売買契約は、總長の事前の承認がないから無効であるというべく、
被上告人は、右事前の承認がないことを知つていたのであるから、上告人は右無効
をもつて被上告人に対抗できる旨主張する。
 法二三条本文が、宗教法人は、同条各号に掲げる行為をしようとするときは、規
則で定めるところによるべき旨を規定していること、上告人が、その規則二八条二
項において、上告人の境内地および境内建物その他重要な財産を処分しまたは担保
に供しようとするときは、總長の承認を受けなければならない旨規定していること
は、所論のとおりである。しかし、前示法の趣旨によれば、所論のように、右總長
の承認は、必ず当該行為の前にこれを受けなければ、右行為は無効であつて、のち
に總長の承認があつても有効とならないと解すべき理由はない。けだし、行為のの
ちであつても、總長の承認があつた以上、宗教法人のためにこれを無効とすべき何
らの理由もなく、右承認のときから有効となると解するのを相当とするからである。
したがつて、事前の承認を前提とする所論は賛成できない。そして、原審の認定に
よれば、本件売買契約については、右總長の承認がないというのであるから、右契
約は無効であるといわざるをえないが、原判決が適法に確定した事実関係のもとで
は、被上告人は、上告人の總長に対する承認申請が許可にならなかつたことを知ら
ず、むしろ右總長の承認がされたものと信じていたのであり、また、かように信ず
るについて相当の理由があつたものである旨、したがつて上告人は右無効をもつて
被上告人に対抗できない旨の原審の認定判断は、是認できる。論旨は採ることがで
きない。
 同第三点について。
 所論は、法二四条但書は無効である。けだし、右二四条によれば、宗教法人は、
同条本文に掲げられた物件以外の物件についてした行為の無効は、これをもつて悪
意の相手方または第三者に対しても対抗できないから、宗教法人よりも悪意の相手
方または第三者を保護することになり、公共の福祉に反する旨主張する。
 しかし、元来同条は、右本文に掲げられた物件以外の物件に関してされた行為に
ついては適用がないと解すべきであるから、右行為が法二三条の規定に違反してさ
れた場合であつても、そのために無効となるものではなく、したがつて相手方らに
対し無効をもつて対抗するということもないのである。そうすると、右所論は、す
でにその前提において失当であるというほかはないから、理由がない。
 法二四条但書は無効であるとの論旨は、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    飯   村   義   美

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