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平成22年1月25日判決言渡東京簡易裁判所
平成21年(少コ)第3065号敷金返還等請求事件(通常手続移行)
口頭弁論終結日平成22年1月6日
判決
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,原告に対し,10万5000円及びこれに対する平成21年4月2
0日から支払済みまで年6パーセントの割合による金員を支払え。
2被告は,原告に対し,7万5670円及びこれに対する平成21年5月10
日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,被告の負担とする。
4仮執行宣言
第2事案の概要
1請求の原因の要旨
(1)原告は,下記のとおり被告から下記記載の物件を借り受けた(以下「本件
賃貸借契約」という。)。

契約日平成20年5月22日
賃借物件の所在地東京都中央区a町b番c号
建物名称X
住戸番号d号室(以下「本件住居」という。)
家賃月額30万2600円
敷金90万7800円
期間平成20年5月29日から平成21年5月28日まで
(2)原告と被告は,家賃の支払方法について,平成20年5月22日,1年分
(373万4000円)を前払いする旨合意し,同日,原告は,被告に対し,
同額を支払った。
(3)エアコンの設置
本件建物は,地上22階のいわゆるタワーマンションで,築年数5年程度
と新築に近いものであったが,本件建物の各住居の標準装備として,エアコ
ンが設置されていなかった。
そこで,原告は,本件住居に入居すると同時に,3つのエアコン(A社製
eee−fff,B社製ggg−hhh,C社製iii−jjj)(以下「本件エアコン」とい
う。)を持ち込み,本件住居に取り付けた。
(4)原告の退去等
ア原告は,被告に対し,平成21年4月2日,本件賃貸借契約を同月19
日付けで解約する旨の意思表示をした。
イ同月14日,被告は,本件住居を訪れ,敷金から控除すべき損害がない
か査定したが,そのような損害はないとの結論になった。
ウ同日ころ,被告との賃貸借契約書を確認した原告は,造作買取請求権に
ついて特約で排除されていないことに気づき,被告のDに電話し,同請求
権を行使する意思表示をした。
エ同月19日の明渡し期限を迎えた原告は,本件エアコンとそのリモコン
のみを残して本件住居を明け渡した。
オ原告は,同月27日,内容証明郵便にて造作買取代金の支払を催告し,
同書面は同月30日に被告に到達した。
(5)請求額
ア造作買取代金各下取り額に取り外し費用2万5000円を加えた
合計10万5000円
この債権は,本件契約が終了した平成21年4月19日が弁済期となり,
その翌日である20日から被告は遅滞に陥っている。
イ不当利得
本件エアコンは,原告の造作買取請求権の行使により,被告所有になっ
たものであるが,被告は,これを自らの意思で撤去したにもかかわらず,
これにかかった費用を原告の負担に帰せしめ,原告に返還すべき敷金から
7万5670円を控除した。この控除は,法律上の原因がないものであり,
同額について,原告の損失によって被告が利得を得ていることは明らかで
あり,不当利得となる。この不当利得返還請求権は,少なくとも敷金が返
還されるべき契約解除日たる平成21年4月19日から3週間後の5月1
0日から被告は遅滞に陥っている。
(6)よって,原告は,被告に対し,造作買取代金として10万5000円及
びこれに対する平成21年4月20日から支払済みまで商事法定利率年
6分の割合による遅延損害金の支払を求め,不当利得返還請求権として7
万5670円及びこれに対する同年5月10日から支払済みまで民法所
定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2被告の主張の要旨
(1)被告がエアコンを設置していない事実は認めるが,原告が入居と同時に
3台のエアコンを取り付けたことは知らない。
(2)原告が,エアコンについて造作買取請求権を行使する旨の意思表示を行
ったことは認める。これに対し,被告担当者は,エアコン3台が設置された
箇所にはエアコン設置のためのスリープ,コンセント,補強板が既に取り付
けられており,そこに設置したエアコンについては容易に取り外しができる
ものであるから造作買取請求権の対象ではない旨説明している。被告は,本
件エアコンの設置について許可しているが,造作買取請求までも認めてはい
ない。
(3)被告は,本件住宅についてはエアコン設置のためのスリープ,コンセン
ト,補強板が既に取り付けてあり,このような住宅にあっては,設置は勿論
のこと,取り外しについてもエアコンを毀損せず容易にできるものであるか
ら,これは借地借家法33条の造作にあたるとはいえない。
原告の造作買取請求は理由がなく,原告は原状回復としてエアコン3台を
取り外さなければならないにもかかわらず,それをせず放置したのであるか
ら,被告がそれらの撤去に要した費用を敷金から控除するのは適法なことで
あり,何ら不当利得となるものではない。
3争点
エアコンは造作買取請求権の対象となる造作か否か
第3判断
1証拠及び弁論の全趣旨から次の事実が認められる。
(1)本件エアコンは,一般家庭用ルームエアコンであり(乙2),本件建物に
は,エアコン取り付け箇所が用意されており,そこにはコンセント及びスリ
ープが設置されていること(乙3)。
(2)本件賃貸借契約には,造作買取請求に関しての定めはされていないこと
(甲2)。
(3)証人Eの証言によれば,乙3号証の写真に示される部屋は,原告が使用
していた部屋と同型のものであるが,室内の壁面にコンセント,その隣に丸
い取り外し可能なスリープが設置されており,エアコンを取り付けるときに
は室内機の裏側を補強板に取り付けるが,ビスで取り付けるだけであるから,
何ら建物を毀損するということはないこと,また,これまでエアコンの件で
買取請求されたケースは記録上もないこと等の事実
2ところで,建物賃貸借において,賃貸人の同意を得て建物に附加した造作に
ついては,賃貸借終了時に賃貸人に対し,これを時価で買い取ることを請求で
きる(借地借家法33条)。ここにいう造作とは,建物に附加された物件で賃
借人の所有に属しかつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいい,賃借人が
その建物を特殊の目的に使用するため,特に附加した設備の如きを含まない
(最高裁判所昭和29年3月11日判決民集8巻3号672頁,最高裁判所昭
和33年10月14日判決民集12巻14号3078頁)。附加とは,建物の
構成部分となったものでもなく,家具のように簡単に撤去できるものでもなく,
その中間概念であり,賃借人の所有に属し,賃借人が収去することによって,
そのものの利用価値が著しく減ずるものであると解される。
3そうすると,本件エアコンは,上記認定事実によれば通常の家庭用エアコン
であって,本件建物専用のものとして設えたものではなく汎用性のあるもので
あり,これを収去することによって,本件建物の利用価値が著しく減ずるもの
でもなく,また,取り外しについても比較的容易であるものと認められること
から,本件建物に附加した造作と認めることは難しく,造作買取請求の対象と
ならないものとみるのが相当である。
4よって,原告の請求は,その余を判断するまでもなく理由がなく,主文のと
おり判決する。
東京簡易裁判所民事第9室
裁判官野中利次

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