弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人澤田隆義の上告趣意のうち、憲法三八条一項違反をいう点は、記録によれ
ば、Aらの所論各供述の任意性に疑いはないとした原判断は相当であるから、所論
は前提を欠き、その余の点は、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であつ
て適法な上告理由にあたらない。
 弁護人小林健治の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、所論引用の各判例は、
いずれも、交付罪のほかに供与罪の訴因が掲げられていて、供与罪の成否につき裁
判所の判断の機会があつた事案に関するものであるところ、本件は、被告人が交付
罪のみで起訴されていて供与罪の成否につき裁判所の判断の機会がない事案である
から、右各判例は、事案を異にし本件に適切でなく、その余の点は、事実誤認、単
なる法令違反、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な上告理由にあたらない。
 なお、選挙運動者たる乙に対し、甲が公職選挙法二二一条一項一号所定の目的を
もつて金銭等を交付したと認められるときは、たとえ、甲乙間で右金銭等を第三者
に供与することの共謀があり乙が右共謀の趣旨に従いこれを第三者に供与した疑い
があつたとしても、検察官は、立証の難易等諸般の事情を考慮して、甲を交付罪の
みで起訴することが許されるのであつて、このような場合、裁判所としては、訴因
の制約のもとにおいて、甲についての交付罪の成否を判断すれば足り、訴因として
掲げられていない乙との共謀による供与罪の成否につき審理したり、検察官に対し、
右供与罪の訴因の追加・変更を促したりする義務はないというべきである。従つて、
これと同旨の見解のもとに、被告人に対し交付罪の成立を認めた原判断は、正当で
ある。
 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、主文のとおり決定する。
 この決定は、裁判官谷口正孝の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によ
るものである。
 裁判官谷口正孝の補足意見は次のとおりである。
 弁護人小林健治の上告趣意第一点判例違反の主張について、些か私の意見をつけ
加えておく。
 一 所論引用の判例は、いずれも公選法二二一条一項一号の供与等いわゆる買収
を目的とする金銭又は物品を交付し、又はその交付を受ける行為は、右買収を共謀
した者相互の間で行なわれた場合でも、同条項第五号の交付又は受交付の罪を構成
するのに妨げないこと、そして右の場合において、共謀にかかる供与等が行なわれ
たときは、交付又は受交付の罪は、後の供与等の罪に吸収される旨を判示している。
すなわち、これらの判例は、右買収を共謀した者相互の間で行なわれた金銭又は物
品の交付又は受交付の各行為は、右共謀の実現としての供与等の罪と独立して交付
又は受交付罪を構成するものであり、交付又は受交付の各行為が更に発展した当初
の共謀の実現行為として供与等が行われたときは、前に成立した交付又は受交付の
罪は後に成立した供与等の罪に吸収される、という判例理論を展開したに止るもの
である。私は、これらの判例は、論旨に即していう限り、右の買収を共謀した者相
互の間で行なわれた交付又は受交付罪と供与等の罪の関係について抽象的・論理的
提言として、前者の罪が後者の罪に吸収されるゆえんを説示しただけのものである、
と理解している。
 二 ところで、右判例にいう「吸収関係」の意義・内容について、判例は直接明
言するところはないが、最高裁判所昭和四三年三月二一日第一小法廷判決(刑集二
二巻三号九五頁)を、そこで示されている裁判官長部謹吾の反対意見と対照して読
んでみれば、多数意見は、右「吸収関係」を専ら実体法上の問題として抽象的・論
理的にとらえているのに対し、反対意見は、これを訴訟の場でとり上げ、処罰上の
吸収関係として理解していることが判る。
 私は、右吸収関係は、法条競合の場合における一般法、特別法等の関係とは異り、
具体的場合において当該被告人について、二つ以上の罪が成立し、そのうち一つの
罪の可罰性が他の罪のそれを評価し尽している場合の右二つ以上の罪の関係をいう
ものと理解している。その限りにおいては処罰吸収関係をいうものである。従つて、
吸収すべき罪について、訴訟上の障害(審判の対象となつていないばあいもそれに
当る)あるいは責任阻却事由等が存するため、当該法規を適用し処罰しえない場合
には、吸収されるべき罪に対する法規が適用されることになると考える。前記事件
における裁判官長部謹吾の反対意見に賛成したい。
 然し、このことは本件事件の処理としては直接関係のないことで、所論引用の判
例は、買収を共謀した者相互の間で行なわれた交付又は受交付罪と供与等の罪がい
ずれも訴因として掲げられ審判の対象とされている場合についての両罪の関係につ
いて判示しただけのものであつて、所論の如く、両罪が抽象的・論理的に吸収関係
にあることを理由として、交付罪のみを訴因として起訴された場合、裁判所が供与
等の罪についても審理し、場合によつては交付又は受交付罪の訴因を供与等の罪の
訴因に変更すべきことを命じなければ審理不尽等の瑕疵があるといつた趣旨のこと
を毫も判示しているわけでない。本件が、右各判例と事案を異にするものであるこ
とは多数意見に示すとおりである。
  昭和五九年一月二七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    角   田   禮 次 郎
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    和   田   誠   一

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