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平成27年4月30日判決言渡
平成27年(行コ)第14号不動産取得税賦課処分取消請求控訴事件
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2処分行政庁が控訴人に対して平成25年3月7日付けでした原判決別紙物件
目録記載2の土地の取得に係る不動産取得税賦課処分を取り消す。
第2事案の概要(用語の略称は原判決に従う。)
1本件は,α地区市街地再開発事業(本件再開発事業)の施行者であるα地区
市街地再開発組合(本件組合)の参加組合員であった控訴人が,処分行政庁か
ら原判決別紙物件目録記載2の土地共有持分(本件共有持分)について不動産
取得税賦課処分(本件処分)を受けたことに対し,控訴人は本件再開発事業に
係る権利変換計画の変更の認可に伴い参加組合員の地位を失ったことにより当
初から本件共有持分を取得しなかったとして,本件処分の取消しを求めた事案
であり,原審は,控訴人の請求を棄却したので,控訴人はこれを不服として控
訴した。
2関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点についての当事者の主張は,原
判決4頁26行目の「取得につき,」の次に「平成22年1月19日を取得年
月日とする」を加え,後記3のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理
由」中の第2の2ないし4に記載のとおりであるから,これらを引用する(た
だし,「原告」を「控訴人」と,「被告」を「被控訴人」と,それぞれ読み替
える。以下,原判決引用部分について同じである。)。
3当審における控訴人の主張
(1)ア本件共有持分は施設建築物の敷地となるべき土地の共有持分であるとこ
ろ,その対象である施設建築物は権利変換計画の変更により机上で消滅し
存在していないから,本件共有持分も存在しておらず,本件共有持分取得
の経過的事実はない。
イ権利変換計画の変更により施設建築物は全く異なっているから,本件共
有持分と現実に建設された施設建築物に対応する土地共有持分とは別の不
動産であり,本件共有持分が実質的にA社に譲渡されたとはいえない。
ウ本件共有持分の対象である施設建築物は,権利変換計画の変更により建
築に着手されることなく終わり,使用・収益・処分の余地はなかったので
あるから,本件共有持分取得の経過的事実があったとはいえない。
(2)本件処分は,当初の権利変換計画に基づいて算定された本件土地の共有持
分100万分の66万4244を基準としてされたものであるが,権利変換
計画の変更により別の施設建築物が建設された以上,上記持分は何ら法的な
根拠がない数値であるから,上記持分に基づいてされた本件処分は違法であ
る。
(3)A社の本件土地の共有持分の取得は,権利変換期日における原始取得であ
り,同一権利変換期日におけるA社による本件土地の共有持分の取得に対す
る不動産取得税の賦課処分がされているのであるから,控訴人に対して本件
処分をするのは実質的な二重課税であって不合理である。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の請求を棄却すべきであると判断する。その理由は,次
のとおり補正し,後記2のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」
中の第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これらを引用する。
(1)原判決12頁11行目の「であること」の次に「(2条)」を加える。
(2)同頁15行目の「支払うこと」の次に「(3条)」を加える。
(3)原判決16頁11行目の「ウ」を「エ」と改める。
(4)原判決18頁26行目の「29日」を「19日」と改める。
(5)原判決19頁6行目の「認可されたことにより,」の次に「遡及的に」を
加える。
(6)同頁19行目の「施行者」を「本件組合」と改める。
(7)原判決20頁6行目の「より,」の次に「遡及的に」を加える。
(8)同頁10行目の「24日)」の次に「に本件共有持分を取得し,同日」を
加える。
(9)原判決21頁7行目の「これは,」から16行目末尾までを「上記更正登
記は,A社が本件土地の共有持分を原始取得したことの根拠となり得るもの
の,控訴人が地方税法73条の2第1項の「不動産の取得」,すなわち本件
共有持分を取得したか否かについては,前記のとおり,経過的事実に則して
所有権取得の有無を考慮すべきであり,更正登記という形式が採られている
こと及びその内容から控訴人が地方税法上も本件共有持分を取得していない
ということはできない。」と改める。
2当審における控訴人の主張について
(1)同(1)アないしウについて
ア施設建築物の有無にかかわらず,施設建築敷地の共有持分を譲渡するこ
とが可能であることは前記説示(原判決引用及び補正部分。以下同じ)の
とおりであり,施設建築敷地の共有持分は,施設建築物とは別に観念され
るものであるから,施設建築物が権利変換計画の変更によって存在しない
ことになったとしても当該施設建築物の敷地の共有持分も存在しなかった
ことになるものではない。したがって,控訴人の主張(1)アは採用できな
い。
イ権利変換計画の変更により施設建築物は変更されており,法律効果とし
ては現実に建設された施設建築物に対応する本件土地の共有持分について,
A社が原始取得したというべきであるが,経過的事実に則してみれば,控
訴人が権利変換期日において本件共有持分を取得したともいえることは,
前記説示のとおりであるから,控訴人の主張(1)イは採用できない。
ウ不動産取得税は,いわゆる流通税に属し,不動産の移転の事実自体に着
目して課せられるものであって,不動産の取得者がその不動産を使用・収
益・処分することにより得られるであろう利益に着目して課せられるもの
ではないことに照らすと,地方税法73条の2第1項にいう「不動産の取
得」とは,不動産の取得者が実質的に完全な内容の所有権を取得するか否
かには関係なく,所有権移転の形式による不動産の取得のすべての場合を
含むものと解するのが相当であるから(最高裁判所第二小法廷昭和48年
11月16日判決・民集27巻10号1333号参照),本件共有持分の
対象である施設建築物が権利変換計画の変更により建築に着手されること
なく終わったことにより,控訴人が実質的に使用・収益等をすることがで
きなかったとしても,本件共有持分の取得がなかったとはいえず,また,
土地区画整理事業における保留地予定地等の場合と同視することも相当で
ない。したがって,控訴人の主張(1)ウは採用できない。
(2)同(2)について
本件処分は,当初の権利変換計画に基づいて算定された本件土地の共有持
分100万分の66万4244(本件共有持分)を基準としてされたもので
あるところ,権利変換計画の変更により別の施設建築物が建設されたとはい
え,経過的事実に則してみれば,当初の権利変換計画の認可に基づき定めら
れた権利変換期日において,控訴人が本件共有持分を取得したといえること
は前記説示のとおりであるから,上記持分に基づいてされた本件処分が違法
とはいえず,控訴人の主張(2)は採用できない。
(3)同(3)について
A社の本件土地の共有持分の取得は,法律効果としては権利変換期日にお
ける原始取得といえるものの,経過的事実に則してみれば,権利変換期日に
おける控訴人の本件共有持分の取得の事実と,権利変換計画の変更が認可さ
れた平成22年1月19日におけるA社の本件土地の共有持分の取得の事実
とが観念されるから,実質的な二重課税であるとはいえず,控訴人の主張
(3)は採用できない。
(4)控訴人は,その他にも,本件処分が違法であるとしてるる主張するが,地
方税法73条の2第1項の「不動産の取得」に関する独自の見解を述べるも
のであって採用できない。
第4結論
よって,控訴人の本訴請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であ
り,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第4民事部
裁判長裁判官田村幸一
裁判官浦野真美子
裁判官西森政一は転補のため署名押印できない。
裁判長裁判官田村幸一

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