弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
(当事者の求める裁判)
原告訴訟代理人は、
 被告が原告に対し昭和四二年四月二八日なした昭和四〇年九月一日より昭和四一
年八月三一日迄の事業年度分法人税額金一、四一一、七七〇円の更正決定および重
加算税金四二三、三〇〇円の賦課決定処分はこれを取消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求め、
被告指定代理人は、
 主文同旨
の判決を求めた。
(当事者の主張)
原告訴訟代理人
第一、請求原因
一、原告会社は、従前訴外Aが個人営業として経営していたM株式会社N地区販売
店を、税金対策等からそのままの形態で法人経営とするため、昭和三九年九月一六
日設立した会社であつて、以下の内容をもつものであるが、現実には牛乳等の販売
を業とし、採石業は行つていなかつたものである。
1 目的 牛乳・乳製品販売・食料品の販売・採石及びその販売・その他附帯事業
2 資本金 五〇万円 一口千円の出資
3 構成員 A(二〇〇口)同人妻B(二〇〇口)弟のC(一〇〇口)
二、訴外Aは、同人所有の千葉県安房郡<以下略>、山林一町二反九畝一五歩他四
筆合計一町三反八畝歩の山林を昭和四一年四月一五日訴外奥村興業株式会社に対
し、代金六五六万円で売渡し、同年四月一八日六五万円を、同年五月三一日三〇〇
万円を、同年一一月より翌四二年八月迄毎月三〇万円宛の割賦支払を受けた。
三、被告は、昭和四二年四月二八日付をもつて、上記Aの個人財産の売却を、原告
会社所有財産の売却と誤認し、これを原告会社の昭和四〇年九月一日以降昭和四一
年八月三一日迄の事業年度における利益金と算定し、右年度の利益金四、〇九七、
三二三円、本税一、四一一、七七〇円と更正し、重加算税四二三、三〇〇円の賦課
決定を通知した。
四、原告会社は、右決定等に対し、昭和四二年五月二五日被告に異議の申立をなし
たが、被告はこれに対し何等の決定を与えず、同年七月一五日に至り、原告会社所
有の土地家屋を差押え、公売しようとしているので、異議申立の決定又は裁決をま
つことなく、行政事件訴訟法第八条により、前記処分の取消を求める。
第二、被告主張の第二に対する答弁
(一) 被告主張の事実中
 一のうち原告が昭和四一年一〇月三一日主張の確定申告をしたこと、被告が主張
の更正、賦課処分をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。
 二は否認する。
 三は否認する。
 原告会社の設立手続は訴外D税理士が行つたものであるが、個人営業を法人営業
に切りかえるにあたり、帳簿上の経理をあわせるために、第一期の勘定元帳にA、
B所有の一切の土地を固定資産税評価価格に、雑種地は〇・三倍、田は〇・五倍、
畑は〇・七倍を加えた土地の価額として記載したまでのもので偽装のものであり、
これは同人等所有の財産中には農地も含まれており、本来商事会社である原告がか
かる農地を取得できる筈もなく、又当時の右全財産の価格は二千数百万円にも及
び、これを僅か四、一七七、八二〇円で原告に譲渡するいわれもなく右事実からも
貸借対照表上の土地勘定の記載は偽装計上にすぎないことは明白であり、又A、B
の個人財産を原告の所有として貸借対照表上に計上した結果D税理士はその固定資
産税を原告の損金として計上したが、本来本件山林はA個人の所有であり、原告の
所有となつたものではない。
(二) 原告は個人営業を法人経営に切かえるため設立された有限会社であり、原
告が不動産を取得するには、譲受けか買受けかの両者以外にはなく、その定款には
有限会社法第七条二号(現物出資)三号(財産引受)による記載はなく、更に会社
成立後に原告の代表者個人所有の財産を原告が譲受けるについては同法第三〇条に
よる社員総会の認許を要するところ、かかる法的手続は行われていないから、本件
山林が原告の資産となるいわれはない。
(三) 本件山林はAが昭和四一年度の個人所得について申告をした際、同山林の
譲渡について被告はこれを取調べ、右Aの所有と認めたものである。
第三、被告主張の第三に対する答弁
 同事実は否認する。
 原告会社設立にあたり、その手続を行つたD税理士は同会社所有の不動産の価格
を四、一七七、八二〇円として原告帳簿に記載したが、原告代表者はその明細を知
らず、第二年度に至り、A、B所有の全不動産が誤り含まれていることを知り、会
社が使用するに必要な土地五筆を有限会社法の手続により原告の所有として資産台
帳を作成したものである。
被告指定代理人
第一、請求原因に対する答弁
 一の事実のうち、訴外Aが原告主張の販売店を経営していたこと、原告会社が主
張の日に設立され、牛乳、乳製品の販売等を目的とし、主張の資本金、構成員であ
ることは認めるが、その他の事実は知らない。
 二は争う。
 三の事実のうち、原告主張の日に被告が主張の更正処分及び賦課決定処分をした
ことは認めるが、その他は争う。
 四の事実のうち、原告が主張の日に主張の異議申立をしたこと、これに対し決定
をしていないこと、主張の日に原告会社所有の不動産を被告が差押えたことは認め
るが、その他は争う。
第二、更正処分は次の理由によるものである。
一、原告は昭和四一年一〇月三一日、係争年度における所得金額は四二三、二一三
円の欠損であるとして確定申告をしたが、被告は原告の申告所得金額を左のとおり
修正した。
加算、山林売却収入計上もれ 五、四三五、二六〇円
同、仮払金に対する利子認定額 二四、二七六円
同、貸倒引当金勘定繰入額否認 六一、〇〇〇円
減算、借入金計上もれ 一、〇〇〇、〇〇〇円
差引所得金額 四、〇九七、三二三円
法人税額 一、四一一、七七〇円
二、このうち原告の争う山林売却収入計上もれは、五、九九五、二六〇円であり、
原処分認定の五、四三五、二六〇円を上回り、その算出根拠は以下のとおりであ
る。
 原告は千葉県安房郡<以下略>、山林一町二反九畝一五歩(本件山林)を所有
し、原告代表者A個人は同所<以下略>地所在山林ほか九畝七歩を所有していたと
ころ、原告及び右Aは、昭和四一年四月一五日、奥村興業株式会社に右山林を一括
して総額六五六万円で売却したものであり、右売却総面積は一町三反八畝二二歩
(坪数四、一六二坪)であるが、このうち原告所有分が一町二反九畝一五歩(坪数
三、八八五坪)であるから、右売却代金を山林面積により按分計算すると原告の収
入金額は六、一二二、七六〇円となり、右譲渡価格から当該山林の取得価額一二
七、五〇〇円を控除すると差引山林売却益金は五、九九五、二六〇円となる。
6,560,000円×3885坪/4162坪=6,122,760円-12
7,500円=5,995,260円
三、本件山林は原告の所有である。
 その認定の根拠は以下のとおりである。
(イ) 本件山林は原告の設立第一期末の貸借対照表に計上されていたものであ
る。
 即ち、法人税の確定申告書には貸借対照表、損益計算書のほかこれらの書類に係
る勘定科目内訳明細書を提出しなければならないこととされているところ、原告が
被告に提出した初年度分の法人税確定申告書に添付した貸借対照表には、土地勘定
として四、一七七、八二〇円の金額を計上しながら、その内訳明細書の提出がなか
つたので、原告の委任を受けてこれ等書類を作成した公認会計士兼税理士Dに説明
を求めたところ土地勘定は本件土地を含むもとA、B所有の一六筆の土地であり、
同各土地の固定資産税額に国税局長の定める一定の倍率を乗じて計算する「倍率方
式」により右各土地を評価し、その合計額を計上したことが判明し、本件山林は原
告の貸借対照表上に計上されていたものである。なお、同山林等の購入代金のうち
自己資金等で支払いきれない金額については未払金として代表者個人等に対する負
債を計上して代金の支払義務を明確にしてある。しかも被告に対する確定申告に係
る貸借対照表に原告の代表者自身捺印して右事実を確認している。
(ロ) 本件山林の固定資産税は原告の損金として計上されている。
 即ち、税法上会社が支出することの確定した固定資産税は、会社のコストを形成
するものとして所得金額の計算上損金に算入されることとなる。他人所有の不動産
に係る固定資産税を会社が代位納付しても当該納付金員は損金に算入されないとこ
ろ、原告が被告に提出した設立第一期及び第二期の法人税確定申告書において、前
項の一六筆の不動産に対する固定資産税につき、昭和三九年度四期分、昭和四〇年
一期、二期、四期分、昭和四一年度一期、二期分として各納入すべき固定資産税を
損金に計上し、本件山林が原告の所有であることを認めていたものである。
(ハ) 本件山林の売却代金のうち係争年度に入金した三〇〇万円は、原告が事業
資金操作のため使用していた訴外E(Aの長女)名義の預金口座に入金されたが、
原告の総勘定元帳には右金員が原告の仮受金と記載され、原告の資産として計上さ
れている。
第三、重加税の賦課決定処分は以下の理由によるものである。
 重加算税は原告が所得金額又は税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部
を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし又は仮装したところにもとづき申告書を提
出した場合に課せられるべきものであるところ(国税通則法第六八条)原告は本件
山林が原告の所有であり、当該山林の譲渡益は原告に帰属するものであることを知
悉しながら、原告の帳簿書類には何等反映させることなく、却つて税務署の係員に
より調査を受けるや、右の事実を隠ぺい又は仮装するため、原告会社代表者A、及
び同人妻Bの所有にかかる土地のうちから、前記山林を除いた土地計五筆を同人等
から原告会社に、既にその設立時に売買していたとする趣旨の臨時社員総会議事
録、売買契約書、固定資産台帳等を作成して被告に提出してきたものである。そこ
で、被告は法人税額一、四一一、七七〇円に一〇〇分の三〇の割合を乗じて計算し
た四二三、三〇〇円を重加算税として賦課したものである。
第四、原告の主張第二に対する答弁
(一) 第二(二)に対し、
 仮に本件山林を原告会社の資産とするについて原告主張の法定手続を欠くとして
も、本件山林と同時に引継が行われた訴外A、同B名義の家屋、個人営業当時の売
掛金、商品、車輛運搬具等についても当初から有限会社法所定の手続が行われてい
ないにもかかわらず、原告はこれ等の引継を有効と自認しており、法律上の手続を
履践していない引継はすべて無効とする原告の主張と相容れないものであり、本来
税法においては、無効な法律行為等にもとずく利得でも、すでにその経済的効果が
発生し、かつ存続している以上これ等が実質的には課税要件を充足し、課税所得を
構成するものとされている。これは所謂実質課税の原則及び法人税法第一一条に照
して明かである。
(二) 第二(三)に対し、
 昭和四二年三月一四日、Aは本件山林を自己の所有として、売却益を雑損失控除
を行つて納税額なしと申告したが、被告は本件山林が原告資産であるため、本件法
人税更正処分を行い、Aの申告譲渡所得につき昭和四二年八月二四日減額更正の処
分を行つたもので、同人の個人所有を容認したことはない。
(証拠関係)(省略)
       理   由
一、原告が昭和四〇年九月一日以降昭和四一年八月三一日迄の事業年度分の法人税
につき、昭和四一年一〇月三一日所得は四二三、二一三円の欠損である旨の確定申
告をなし、被告は昭和四二年四月二八日原告の所得金額を四、〇九七、三二三円本
税一、四一一、七七〇円と更正し、重加算税四二三、三〇〇円の賦加決定処分をし
たこと、原告は昭和四二年五月二五日右更正処分等につき被告に異議を申立てた
が、右異議について決定がなされず、昭和四二年七月一五日被告は原告所有の不動
産を差押えたことは当事者間に争いがなく、その後右異議申立に対し三ケ月以内に
決定がされず、審査請求がされたとみなされた日より六ケ月を経過しても決定がな
されていないことは、弁論の全趣旨より明らかである。
二、右更正決定は、千葉県安房郡<以下略>、山林一町二反九畝一五歩の土地の売
却益が原告会社の所得として計上もれとなつていることを骨子としてなされたもの
であり、原告は右山林は原告会社の代表者A個人の所有であり、同人が売却しその
収益は同人に帰属し、原告会社の所得となるものではない旨を主張するので、右山
林の所有権の帰属について判断する。
(イ) 原告会社は昭和三九年九月一六日牛乳、乳製品の販売等を目的として、資
本金五〇万円、社員はA、B、Cの三名として設立された有限会社であることは当
事者間に争いがない。
 成立に争いのない乙第一、第二号証の各一乃至四、同第二三号証、同第一九号証
の一、二、甲第一号証、同第五号証の三、同第七号証の一乃至三、同第一二号証、
証人Fの証言により真正に成立したと認められる乙第三、第四号証、証人Gの証言
により真正に成立したと認められる乙第五号証、証人H、D、F、Gの各証言、原
告代表者尋問の結果(第一回)の一部を総合すれば、Aは牛乳販売等の個人営業を
行つていたが、会社経営とする方が税金面において有利であり、かつ従前同人の経
理は疎漏社撰なものであつたため、これを解消し会社組織として一切を整理統合す
る目的で原告会社が設立されるに至つたこと、同人はその設立手続を訴外D税理士
に依頼し、その際、従前Aの経営していた個人営業上の資産、負債等の一切を引継
ぐと共に、新に社員となるA、同人妻B所有の土地建物全部を原告会社の所有とす
ることを指示したこと、右指示により同税理士は原告会社の設立手続を行つたが、
右不動産を原告会社の所有とするについて、現物出資又は財産引受等の法律的手続
を経ることなく、これ等の規定を設けずに定款(甲第一号証)を作成し、簡便に資
本金五〇万円として原告会社を設立したこと、翌四〇年五月過頃、原告会社の引継
ぐべき営業上の資産、負債、不動産の明細の資料が整つた為原告会社の関始貸借対
照表の作成に着手し、その後同表を完成したが、(乙第二三号証、乙第四号証)、
同表にはA、B所有の不動産を資産勘定に四、一七七、八二〇円と計上し、右不動
産および他の資産負債の買受について、合計三六四万円の未払金債務の負担を計上
し、実質的には財産引受の形式をとつたこと、これはもともと設立時において原始
定款に規定すべきところを、当時詳細な資料が整わないため設立業務を行つた税理
士の便宜からこのようなかたちとなつたこと、原告会社の資産となつた土地は固定
資産税評価額を基準とし、宅地はその一・三倍、田は一・五倍、畑は一・七倍、山
林はそのままとする評価方法を用いて評価された(同方法によれば個人から会社に
財産が移転した場合に課税しないとの取扱であるとのことから、このような評価が
行なわれた)ものであること、原告会社の設立後、被告に提出された第一期、第二
期の確定申告書に添付された決算報告書にも資産として本件土地を含む四、一七
七、八二〇円が計上され、右各不動産の昭和三九年度四期分、昭和四〇年度一期、
二期、四期分、昭和四一年度一期、二期分の固定資産税を原告会社において支出し
ていることが認められる。右認定に反する証人Bの証言原告代表者尋問の結果(第
一回)は上記証拠と対比して採用できない。
 もつとも成立に争いのない甲第四号証の一乃至四、甲第八、第九号証の各一乃至
五、甲第二一号証、証人Iの証言により真正に成立したと認められる甲第三号証、
および同証人の証言によれば、本件山林は原告会社の資産として計上された後にお
いてもAの個人所有名義のままとなつており、同人は昭和四一年四月一五日同人所
有として同山林を他の同人所有の山林とともに訴外奥村興業株式会社に代金五六五
万円で売却したことが認められるところである。而して本来会社の設立にあたり、
会社の成立後に譲受けることを約した財産は、原始定款に記載しない限りその効力
を生じないことは有限会社法第七条三号により明かであり、又原告会社の財産引受
につき事後設立の手続を経たと認めるに足る証拠もないから、本件山林は私法的に
は原告会社の所有に帰したものとは解せられない。然しながら、本来上記規定は、
資本充実の原則より定められたものであり、その観点よりみれば、本件山林の財産
の引受は同原則をやぶるものとは解されず、設立された会社が現実にこれ等資産を
同会社の所有財産として経済的にこれを帰属させ、利用収益している事実の認めら
れるときは、私法上の法律効果とは別個に事実上発生存続している経済的効果に対
し、税法上、税を課するのは、その実質主義の建前から許されなければならない。
 ところで、本件山林の写真であることに争いのない乙第二四、二五号証、成立に
争いのない甲第四号証の三、乙第二六号証、証人I、J、D、Fの各証言を総合す
れば原告会社はもともとAの経営していた牛乳販売店を引継ぐことを主目的として
設立されたものであるが、Aは、それのみではなく、当時鋸南町附近は採石ブーム
の状況にあり、同人所有の不動産中本件山林が石山であり、採石に適するところか
ら新に設立する会社の営業目的に特に採石及び採石の販売を加えることを希望し、
その結果、牛乳等の販売の他採石及び採石の販売を加えた上、これ等に附帯する業
務をもその目的として定款に規定して、原告会社は発足したこと、唯牛乳販売の営
業は直ちに開始したが、採石の事業は開始していなかつたのであるが偶々本件山林
の隣地で採石業を行つている上記奥村興業株式会社よりその業務上本件山林を譲受
けたいとのたつての要望をうけ、その結果昭和四一年四月、これを売却するに至つ
たものであることが認められる。
 以上のとおり、Aは、原告会社設立の際採石業をもくろみ、同事業に供する目的
で同人の所有していた本件山林を原告会社の資産として加えたものであり、原告会
社はその設立後直ちに採石業務を開始しなかつたとはいえ同業務に供する営業資産
として所有権を帰属させる意図をもつて管理支配し、その固定資産税をも支払つて
きたものであり、本来本件山林自体が石山であり、これを採石して石材として売却
せず、山林全部を売却したとしてもこれは採石の販売、これに附帯する業務の一端
としてなされたものと解せられ、本件山林は実質的には原告会社の所有財産として
経済的効果が帰属していたものであつてその譲渡所得は原告会社に帰属するものと
いうべきである。上記のとおりその売却にあたりA個人名義で行われた事実があつ
てもこれは登記名義が同人のものとなつていた経過からそのような形がとられたも
のと推測され、右事実をもつてしても上記認定を左右するには至らない。又甲第二
号証、乙第六乃至第九号証は証人Hの証言によれば、昭和四二年本件山林の問題が
生じた後に作成したものであることが認められ、同号証をもつても上記認定を覆す
には至らない。
(ロ) 証人Kの証言により真正に成立したと認められる乙第二〇乃至第二二号
証、成立に争いのない乙第二七号証の一、二、同第三〇乃至第三二号証と同証人の
証言を総合すれば、本件山林の売却代金のうち三〇〇万円は昭和四一年五月三一
日、Aの娘であるE名義の通帳(千葉相互銀行保田支店、口座番号五三二六―乙第
二二号証)に入金され原告会社作成の第二期総勘定元帳(乙第二七号証の二)に
は、上記通帳の金銭の出納が移記され、同日仮受金として三〇〇万円の入金が記載
され更に前記通帳から別のE名義の通帳(千葉銀行勝山支店、口座番号一八六八―
乙第三〇号証)に右三〇〇万円のうち金一九九万円が移し入金され、原告会社作成
の前記確定申告書添付の預貯金等の内訳書(乙第三二号証)には同通帳の昭和四一
年九月一日現在の預金高が記載され、同通帳が原告会社の使用している預金帳であ
ることが認められ、右事実からも本件山林は実質的には原告会社の所有資産と同様
の経済的効果をもつものであり、その譲渡所得は同会社に帰属することが推察でき
る。
(ハ) 原告は、本件山林がA個人の所有であることは被告について認めていた旨
を主張するが、同事実を認めるに足る証拠はなく、却つて成立に争いのない乙第二
八号証、証人Lの証言により真正に成立したと認められる乙第二九号証、同証人の
証言を総合すれば、右事実はなかつたことが認められる。
三、以上のとおりであるから、本件山林の譲渡益は原告会社の所得というべきもの
であるところ、上記甲第四号証の一乃至四、同第三号証によれば、本件山林の売却
はA個人所有と主張する(イ)公簿上の記載のない山林五畝歩(ロ)千葉県安房郡
<以下略>山林一畝一七歩(ハ)同所<以下略>の五山林二畝五歩(ニ)同所<以
下略>山林一畝一二歩以上合計一反四歩(三〇四坪)を一括して代金六五六万円で
売却されたものであることが認められ、本件山林は一町二反九畝一五歩(三、八八
五坪)であるから右売却代金を山林面積により原告会社に帰属する分について按分
計算すると、原告会社の収入金額は六、〇八三、九三四円となり、右譲渡価格から
同山林の取得価格(固定資産税評価額乙第三号証)一二七、五〇〇円を控除すると
差引売却益は五、九五六、四三四円となり、更生処分による認定額五、四三五、二
六〇円を上まわることとなる。
(6,560,000円×3885/総面積4189=6,083,934-12
7,500=5,956,434円)
 従つて被告が本件山林売却収入の計上もれを五、四三五、二六〇円として所得金
額に加算して算出したことは適法であり、尚本件更正処分につき、原告は本件山林
の売却収入を原告会社の所得としたことを違法と主張し、その余の点については特
段の主張がないから右収入に更に仮払金に対する利子認定額二四、二七六円、貸倒
引当金勘定繰入額否認六一、〇〇〇円を加算し、これより借入金計上もれ一、〇〇
〇、〇〇〇円を減じ、申告による欠損四二三、二一三円を差引き、所得金額を四、
〇九七、三二三円とし、これ等に対し法人税額を一、四一一、七七〇円とする本件
更正処分は適法といわねばならない。
四、原告会社は上記のとおり、昭和四一年一〇月三一日係争年度における所得は四
二三、二一三円の欠損であるとして確定申告をしたが、同代表者は自己の所有資産
であつた本件山林を原告会社の所有資産とすべくその法律手続を依頼し、右手続が
終了した後(法律的には不完全であつたが)同山林は同会社に帰属したものとして
管理占有してきたものであることは、上記設立の経過より明かであり、同代表者は
寧ろ原告会社の完全な所有と認識していたものと解せられ、上記乙第二二号証、同
第二七号証の一、二、同第三〇号証、同第三二号証、証人H、Dの各証言、原告代
表者尋問(第二回)の結果を総合すれば、原告会社は金銭の出入についてE名義等
の通帳を用い、本件山林の売却代金のうち三〇〇万円の入金も原告会社の総勘定元
帳には明示されず、預貯金等の明細欄に仮受金として記載されているに過ぎず、原
告会社の前記確定申告に際しては右売却の事実を隠ぺいして納税の申告をしたこと
が認められるので更正による税額に対し重加算税を賦課されてもやむをえないもの
といわねばならない。従つて被告のなした四二三、三〇〇円の重加算税の賦加決定
処分に違法はない。
五、以上のとおりであるから、原告の主張はいずれも理由がないからこれを棄却
し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決す
る。
(裁判官 渡辺桂二 大内淑子 川口春利)

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