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平成24年2月3日判決言渡
平成23年(レ)第566号放送受信料請求控訴事件(原審・松戸簡易裁判所平
成23年(ハ)第1032号)
口頭弁論終結日平成23年12月9日
判決
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,1万1160円及びこれに対する平成23年1
0月1日から,支払済みの日が奇数月に属するときはその月の前々月末日まで,
支払済みの日が偶数月に属するときはその月の前月末日まで2か月あたり2パ
ーセントの割合による金員を支払え。
3控訴費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,控訴人が,被控訴人との間の放送受信契約に基づき,被控訴人に対
し,平成17年2月1日から平成23年3月31日までの放送受信料10万7
110円及び約定遅延損害金(上記金額に対する,平成23年8月10日付け
訴えの変更申立書が送達された日(同日)の属する月の翌々月の初日である平
成23年10月1日から支払済みの日が奇数月に属するときはその月の前々月
末日まで,支払済みの日が偶数月に属するときはその月の前月末日まで2か月
あたり2パーセントの割合による金員)の支払を求める事案である。
原審は,控訴人の本訴請求のうち,9万5950円及びこれに対する遅延損
害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却したところ,控訴人が,敗訴
部分の取消し及び同部分の請求の認容を求めて控訴した。
2前提事実,争点及び当事者の主張は,原判決中の「第2事案の概要」の2
及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1争点(本件受信契約における放送受信料と遅延損害金)及び(本件受信
契約が終了したか否か)について
原判決中の「第3争点に対する判断」の1及び2に記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
2争点(放送受信料が民法169条所定の債権に該当するか否か)について
甲6ないし10号証及び弁論の全趣旨によれば,控訴人の放送受信料債権
は,受信者との放送受信契約に基づいて,放送受信契約者に対して発生する
ものであり,その具体的金額は放送受信契約の内容となっている日本放送協
会放送受信規約の規定により確定し,年又はこれより短い時期ごと(被控訴
人については2か月ごと)に所定の方法で支払われるものである。
このような控訴人の放送受信料債権は,基本権たる定期金債権から派生す
る支分権として,民法169条所定の債権に当たると解するのが相当である。
ア控訴人は,民法169条が適用される債権については,その基本権部分
に民法168条が適用されることが前提となっているところ,放送法64
条1項は,控訴人と受信設備を設置した者が放送受信契約を締結すること
を強制していることからすれば,放送受信料の債権の基本権部分は,20
年間の不行使により時効消滅しないから,民法168条が適用されないと
主張する。しかし,民法168条が適用されない永小作料,賃借料債権も
民法169条の適用は認められており,民法168条の適用がないからと
いって当然に民法169条を適用する余地がないと解することはできず,
上記主張は採用できない。
イ控訴人は,放送受信料債権には,民法169条の立法趣旨が当てはまら
ないから同条の適用はないと主張する。しかし,同条が,年又はこれより
短い時期によって定めた金銭等の給付を目的とする債権について5年間の
短期消滅時効を定めた趣旨は,①弁済がないと直ちに債権者に支障が生ず
る債権であるから速やかに請求され弁済されるのが通常であること,②通
常それほど多額でないため受取証の保存が怠られがちであって後日の弁済
の証明が困難であること,③定期金は長年放置された後に突然支払の請求
をされると多額になって債務者が困窮することにあると解されるところ,
これらの趣旨が,民法169条が適用されると解されている各債権と比し
て,放送受信料の債権に明らかに妥当しないとはいえず,控訴人の上記主
張は採用できない。
控訴人は,上記③につき,債権者の債権不行使の懈怠に対するサンクシ
ョンという趣旨が含まれているところ,控訴人の放送受信料債権について
は,支払がない場合に,債権者である控訴人に,放送受信契約を解除した
り,先取特権等により優先弁済を得たりするという保護の手段が与えられ
ていないことから,放送受信料の債権を行使しないことは懈怠に当たらな
いと主張する。しかし,放送法により規定された放送受信契約や放送受信
料の債権の性質上,債権者である控訴人が上記手段を採り得ないとしても,
控訴人は,訴訟提起等により未払受信料を回収すること自体は当然に可能
であり,かつ,民法169条が適用されている他の債権の中にも,上記の
ような保護手段を与えられていないものも存することからすれば,上記主
張は理由がない。
ウ控訴人は,放送受信料は「控訴人の豊かで,かつ,良い放送番組による
国内放送」を行うこと(放送法15条)と対価性のない特殊な負担金であ
るから,民法169条を適用することは実質的に不当であると主張する。
しかし,民法169条適用の前提となる定期金債権とは,年金債権のよ
うに,一定の金銭その他の代替物を定期に給付させることを目的とする債
権をいうのであり,何らかの対価を要するものではないから,放送受信料
の上記性格を前提としても,このことをもって,放送受信料に民法169
条を適用することが不当であるということはできない。
3争点(時効の中断)について
争点に対する判断は,原判決中の「第3争点に対する判断」の4及び
に記載のとおりであるから,これを引用する。
4時効に関する判断のまとめ
上記2のとおり,控訴人の放送受信料債権の消滅時効期間は5年間と解すべ
きところ,被控訴人は,平成23年7月6日原審第2回口頭弁論期日において,
控訴人に対し,本訴放送受信料債権につき,5年の消滅時効を援用する旨の意
思表示をした。他方,上記3のとおり,本訴放送受信料債権については,平成
22年11月18日,時効中断が生じている。したがって,本訴放送受信料債
権のうち,同日の時点でその支払期限から5年が経過していない平成17年1
0月分以降の債権については消滅時効が完成していないが,同年9月分以前の
債権は,時効により消滅したというべきである。
5結論
以上によれば,控訴人は被控訴人に対し,放送受信料合計9万5950円
(平成17年10月から平成20年9月までの36か月における放送受信料5
万0220円及び同年10月から平成23年7月までの34か月における放送
受信料4万5730円)及びこれに対する各支払期限後である平成23年10
月1日から支払済みの日が奇数月に属するときはその月の前々月末日まで,支
払済みの日が偶数月に属するときはその月の前月末日まで,2か月あたり2パ
ーセントの割合による約定遅延損害金の支払を求めることができる。
よって,控訴人の本訴請求のうち,9万5950円及びこれに対する遅延損
害金の支払を求める限度でこれを認容し,その余を棄却した原判決は相当であ
り,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
千葉地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官白石史子
裁判官村松悠史
裁判官酒井直樹

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