弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄して、本件を津地方裁判所四日市支部に差し戻す。
         理    由
 弁護人森健、同伊藤嘉信、向鈴木匡の控訴趣意の要旨は次の諸点に帰着する。
 第一点 原判決は虚無の証拠を罪証に供し、判決に理由を附さない違法がある。
原判決はA提出の盗難届二通とBに対する司法警察員作成の第一回供述調書一通を
証拠に挙示しているが右各書類は記録を見るも全く存在しない。従つて原判決は虚
無の証拠を罪証に供し、判決に理由を附さない違法があると謂わねばならない。
 第二点 原判決は理由にくいちがいがある。即ち原判決第二事実において、被告
人がスフ白生地五十ヤールを買受けた旨認定し、その証拠として掲げたBの供述調
書と被告人の供述調書とを綜合すれば人絹白生地と認定すべきで、この点において
原判決は、理由にくいちがいがある。
 第三点 原判決は審理不尽の違法がある。被告人は、司法警察員及び検察官の取
調べ又は原審公判廷において、犯罪事実を自白したり、否認したりしている。かく
の如き事件については、関係者を証人として尋問し審理を尽くさねばならないのに
これを怠つたのは審理不尽である。原判決が証拠としているCことC外一名に対す
る公判調書を見るに、起訴状記載の公訴事実を認むるD相方で窃盗した旨の記載が
あるが、引用した起訴状が証拠に添付してないので右公判調書の内容は不明で原審
は、この点を明確にするため審理を尽すべきである。
 第四点 原判決は事実誤認の違法がある。原判決は被告人の自白を証拠としてい
るが右自白は、真意に出でたものでない。
 被告人は、当時肺を患い重態にあつたので一日も早く保釈になることを希望し、
心にもないことを自白したので、右自白で犯罪事実を認定したのは、事実誤認で
 第五点 原判決は刑の量定が不当である。仮りに被告人が有罪とするも被告人は
被害物件を被害者に還付したものであり利益どころか損失もしているし、目下謹慎
中であるからかかる被告人に原判決のような極刑をするのは、不当である。と謂う
にある。
 右第一点について。
 原判決は証拠としてA提出の盗難届二通を挙示しているが、右盗難届の原本が記
録に添附されて居らず、その写だけが添附されていることは所論の通りである。而
して原審第一回公判調書によれば検察官はA提出の盗難届二通の原本を証拠として
取調べることを請求した旨の記載があり同第二回公判調書の記載によれば右盗難届
二通を除いた他の証拠書類については検察官は裁判所の許可を得て原本に代え謄本
又は抄本を提出したが、前記Aの盗難届二通に付ては、何等の記載がないから原本
が提出されたものと見るの<要旨>外はない。然るに記録には前記の通り、その写し
か存在しないのである。刑事訴訟法第三百十条によれば、証拠調を終つた証
拠書類又は証拠物は遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならないのであつて原
本の提出が困難であるときは裁判所の許可を得て謄本を差出すことになつている。
原審が右盗難届の写を本件記録に添附したのは如何なる根拠に基くのか不明であり
原本をそのまま写し出したものであるかどうかの保証を為すこともできない。従つ
て本件記録を精査した結果右盗難届二通が現存していたものかどうか知ることがで
きないから原審が虚無の証拠を罪証に供したと謂う非難を甘受しなければならな
い。又原判決は、Bに対する司法警察員の第一回供述調書を証拠としているが記録
に添附してあるものは第二回供述調書であつて第一回供述調書は全く存在しない。
しかしこれは原審がその公判調書及び判決に誤記したものと認むるのが妥当であ
る。
 然れども、前記の通り存在しない盗難届二通を証拠に採用して、原判決認定の犯
罪事実を綜合認定しているから右は訴訟手続において判決に影響すること明かな法
令の違反があることになり破棄を免れたい。この点についての論旨は、理由があ
る。
 第二点について。
 原判決は第二点において被告人がスフ自生地五十ヤールを買受けたと認定してい
るが、原判決挙示のBに対する司法警察員の第二回供述調書と被告人に対するE司
法警察員の第二回供述調書によれば人絹白生地とあるから、原審がスフ白生地と認
定したのはその理由にくいちがいがあることになり論旨は理由がある。
 以上第一及び第二点において原判決は刑事訴訟法第三百九十七条により破棄すべ
きこと明白であるから爾余の論点に対する判断を省略し、原判決を破棄し、同法第
四百条により本件を原裁判所である津地方裁判所四日市支部に差し戻す。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 堀内齊 判事 鈴木正路 判事 赤間鎭雄)

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