弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 抗告代理人は、原決定を取消す、との裁判を求め、その理由は別紙記載の通りで
ある。
 よつて按ずるに記録によれば、抗告人は、その申請にかかる旭川地方裁判所昭和
二十九年(ヨ)第五四号処分禁止の仮処分申請事件について同年四月一日同裁判所
より、本件電気器具等の動産に対する被申請人Aの占有を解き、申請人の委任する
旭川地方裁判所執行吏Bに占有保管せしめる、との及びその他の趣旨の仮処分決定
を得て同日同執行吏にその執行を委任したところ、同執行吏において同日右仮処分
の執行をなし、訴外西倉合資会社倉庫内にある右動産の占有をなしたが、本件動産
は電気器具等の数百点の商品であつてそのままこれを同倉庫内に於いて保管するの
を適当とするのでその保管の方法としてこれを同会社に寄託して保管せしめたこ
と、而して同執行吏は右動産の保管料として同会社に対し毎月金二万四千円を支払
わなければならないので抗告人に対しこの費用の予納を命じたが抗告人は全くこれ
を予納しないので、やむなく同裁判所において民事訴訟法第七百五十四条第二項の
規定を準用して同年十一月二十四日本件仮処分の執行を取消す旨の原決定をなした
ものであることが明らかである。
 而して同条同項の規定は仮処分の執行についてもこれを準用すべく此の場合には
仮処分裁判所が執行裁判所としてその取消を命ずべきものと解せられるところ、本
件仮処分の執行について前記の様な事情がある以上同条同項の規定による執行取消
の要件を具備しているものと認められる。
 <要旨>抗告人は一、動産に対する仮処分の執行は執行吏の権限に属するからその
取消は執行吏がこれをなすべきであると主張するが仮処分の執行を続行する
につき特別の費用を要し且つそのため必要な金額を債権者が予納しないときは、前
記の通り執行裁判所が共の取消の裁判をなすべきこと民事訴訟法第七百五十六条第
七百五十四条の規定上明白であつて、殊に、仮処分命令の執行についてはその目的
物が動産であつても、執行吏は原則的な執行機関ではなく、ただその命令の内容の
実現に要する個々の処分について一時的、個々的な権限を有する場合があるにすぎ
ない。本件のように目的物を執行吏の保管に委ねる仮処分の執行に於いては、執行
吏が民事訴訟法第七百三十条によりその占有を取得すれば、仮処分の執行は継続す
るが、執行吏の執行機関としての権限は消滅し、その後は保管人としてこれを保管
しているにすぎない従つて仮処分の執行全体にわたる権限は執行裁判所に存するも
のと言わなければならない。而して前記のように保管人が目的物を保管するについ
て特別の費用を要する場合も仮処分執行の続行につき特別の費用を要する場合に該
当するものと解すべきであるから原決定には抗告人主張の抗告理由一、の点につい
て別に違法はない。
 次に抗告人の抗告理由二、の主張は、本件仮処分の執行につき特別の費用を要し
抗告人においてそのため必要な金額を予納しなかつたこと以上説示の通りである以
上やはり理由なきこと明かである。
 されば本件仮処分裁判所が執行裁判所としてなした原決定は相当であるから同法
第四百十四条第三百八十四条第九十五条第八十九条により主文の通り決定する。
 (裁判長裁判官 原和雄 裁判官 臼居直道 裁判官 松永信和)

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