弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告人八名代理人弁護士加藤五郎、上告人A1、A2、A3代理人弁護士佐藤久
四郎の各上告理由は、それぞれ末尾添付の別紙記載のとおりである。これに対し当
裁判所は次のとおり判断する。
 上告人八名代理人弁護士加藤五郎上告理由第一点について。
 原判決は、所論第二目録の一及び第三目録の一の土地合計一六筆について、乙第
一号証の一には、 「貴方の状態回復するか又はA2成年に達し相当と認むるとき
更に無償にて貴方に贈与するものなり」とあつてDは一旦A1から取戻したものの
将来事情によつては再びA1に贈与する意存であつたことをうかがわれるけれども、
この時贈与したものと認めることはできぬ他にこれを認むべき証拠がないと判示し
ており、原判決の右判示には何等違法の点は認められない。論旨は、同号証により
前記土地は上告人A1の経済状態が回復することを停止条件とし、又上告人A2が
成年に達することを期限として被上告人先代Dより上告人A1に贈与されたものと
認むべきであるというに帰し、原審の専権に属する証拠に対する判断を攻撃し、原
審の事実認定を争うものであるから上告理由として採用の限りでない。
 同第二点及び第四点について。
 原判決が、本件不動産は被上告人先代Dにおいて家産として所有し上告人A1夫
婦にその管理をさせていた旨判示していること所論のとおりであるが、右は本件不
動産が同人において、その先代より承継した財産を主としたものであるがため、そ
の散逸防止に意を用いる一面、当時同人が常時自から使用収益する必要のない状態
においてこれを所有し上告人A1夫婦にこれを管理させていたとする趣旨にすぎな
いこと判文上容易にうかがわれるところであつて、論旨は右にいわゆる家産又は家
産の管理につき独自の見解を述べ、これを前提として原審が適法に認定した事実即
ち被上告人が家督相続により本件不動産の所有権を取得した事実を争うか又は上告
人A1が所有の意思なく本件不動産を占有していた事実を否認するものにすぎず、
原判決には所論のような違法はない。
 同第三点について。
 理由書記載の事実は上告人等が原審において、少しも主張しないところである。
しかも記録によれば、上告人等がそれぞれ被上告人主張の耕地を占有していること
を原審において明らかに争わなかつたことが認められるから、原判決が上告人等に
対しそれぞれ被上告人主張の耕地の引渡を命じたからといつて原判決には所論のよ
うな違法はない。又被上告人が不在地主であつて農耕に従事する者でないにしても、
被上告人に対し所論農地関係法規に基く買収処分がなされたというのではない以上、
被上告人に本件耕地の引渡請求権を認めた原判決に所論のような違法があるとはい
えないのであつて、論旨は結局原審において主張しない事実を根拠として原判決を
非難するに帰するから上告適法の理由とはならない。
 上告人A1、A2、A3代理人弁護士佐藤久四郎上告理由第一点について。
 乙第一号証の一に関し原判示のような認定を妨げないこと前記加藤五郎上告理由
第一点について説明するとおりであつて、論旨は、昭和一〇年七月一三日上告人A
1から被上告人先代Dに対し所論不動産について贈与による所有権移転登記がなさ
れたこと当事者間に争なき事実と乙第一号証の一とにより、右不動産は前記七月一
三日上告人A1から右Dに対し、上告人A1の経済状態回復するか又は上告人A2
が成年に達するか何れかを解除条件として贈与されたものと認むべきであるという
に帰し、原審の証拠に対する判断を非難し、原審認定の事実を争うものであつて上
告適法の理由とならない。その他の論旨は、前記加藤五郎上告理由第一点において
主張するところと同一であるから右第一点について説明するとおり上告理由として
採用の限りでない。
 同第二点について。
 原判決は、所論の占有を権原の性質上所有の意思なきものと認定しているのであ
つて、右認定には経験則其の他の法則に反するところなく、何等違法の点は認めら
れない。所論は右と異る見解に立脚して原審における証拠の判断及び事実の認定を
非難するにすぎないから論旨は理由がない。
 同第三点について。
 論旨は、所論の不動産につき被上告人先代より上告人A1に対し条件附贈与がな
されたことを前提として右不動産管理に関する委任解約につき原審のなした判断を
非難するものであるけれども、所論のような条件附贈与である旨の上告人等の主張
の採用し得ないこと上告理由第一点について説明したとおりであるから、これを前
提とする論旨も亦採用すべき限りでない。
 よつて民訴第四〇一条、第九五条、第八九条に主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官全員の一致した意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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