弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人中山義郎上告趣意第一点について。
 本点所論第一については、原判決挙示の証拠中の(三)及(四)を綜合すれば、
被告人の賍物知情の点は優に之を認定することができるのである。所論は右両証拠
の価値判断に対する独自の見解を主張するものであつて、論旨は到底採るを得ない。
次に所論知情の点の如き犯罪の主観的要件については、自供の外に直接な補強証拠
を必要としないことは、当裁判所屡次の判例とするところであるから、(昭和二三
年(れ)第一八五一号同二四年四月七日第一小法廷判決判例集三巻四号四八九頁。
昭和二三年(れ)第七七号同二四年五月一八日大法廷判決判例集三巻六号七三四頁。
各参照)此点の論旨も採るを得ない。
 所論第二については、所論指摘の原審第四回公判調書における「当審に於ける公
判調書」中には、被告人と審理を分離したAに対する原審第二回公判調書をも包含
する趣旨と解すべきことは、被告人に対する原審第四回公判調書の趣旨、就中再び
右Aをも併合審理の上従来の全手続を更新した、原審第五回公判調書の全趣旨に徴
し明らかである。所論は調書辞句の末節に泥み根幹を外にした論議と云うの外なく、
到底採るを得ない。
 所論第三については、原判決が所論指摘の原判示第一事実に対する(二)の証拠
を掲げたのは、その前段(一)の証拠において「、、、、、原審(第一審)判決書
理由第一に記載の物品を盗んだことは間違ない旨の記載」とあるため、右「原審(
第一審)判決書理由第一」の記載内容を明瞭ならしめる以上之を挙示した関係にあ
ることは明瞭であつて、所論主張のように「第一審判決の認定事実を控訴審(原審)
において証拠に採用」したものでないことは明らかである。されば原判決には毫も
所論の違法はなく論旨は理由がない。
 同第二点について。
 第一点の第一後段における説明により、所論の理由のないことは自ら明らかであ
る。
 同第三点について。
 原判決がその擬律の条において、刑法施行法第三条第三項の適用を明示していな
いことは所論指摘のとおりである。しかし原判決の処断刑は右刑法施行法の条項を
適用した結果であることは、原判文上自ら窺知されるところであるから、右適条を
欠くの一事をもつて原判決に法令違背ありと云うことはできない(昭和二二年(れ)
第二二二号昭和二三年四月八日第一小法廷判決参照、判例集二巻四号三〇七頁三一
一頁以下所掲)。論旨は理由がない。
 仍つて刑訴施行法第二条旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は全裁判官一致の意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二五年九月八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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