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平成13年(行ケ)第92号審決取消請求事件
平成13年9月18日口頭弁論終結
         判     決
      原        告  日立建機株式会社
      原        告  日進基礎工業株式会社
      両名訴訟代理人弁理士  永  井  冬  紀
      被        告  三菱重工業株式会社
      訴訟代理人弁理士    藤  田  考  晴
      同           志  賀  正  武
      同           高  橋  詔  男
      同           青  山  正  和
         主     文
 特許庁が無効2000-35185号事件について平成13年1月16
日にした審決を取り消す。
 訴訟費用は原告らの負担とする。
         事実及び理由
1 原告らの請求
 特許庁が無効2000-35185号事件について平成13年1月16日にし
た審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
2 原告らの主張
(1)特許庁における手続の経緯
 原告らは、発明の名称を「回転式ケーシングドライバの回転反力取り方法」
とする特許第2806922号の特許(昭和63年1月11日に実用新案登録出願
したものの一部について平成9年2月10日実用新案登録出願,平成9年10月3
1日出願変更,平成10年7月24日設定登録)の特許権者である。
 被告は,平成12年4月11日,上記特許中の請求項1の発明に係るものを無効
とすることについて審判の請求をし、特許庁は,これを無効2000-35185
号事件として審理した結果、平成13年1月16日,「特許第2806922号の
請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,平成12年2
月5日,その謄本を原告に送達した。
(2)本件決定の理由の要旨
 審決の理由は、要するに、特許第2806922号発明のうちの請求項1に
係る発明(以下「本件発明」という。)は,特許法29条1項2号に該当するの
で、特許を受けることができない、とするものである。
(3)原告らは、本訴係属中の平成13年6月6日、本件特許の出願の願書に添付
された明細書の訂正をすることについて審判を請求し、特許庁は、これを訂正20
01-39091号事件として審理した結果、平成13年7月23日に上記訂正を
することを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、これが確定し
た。
(4)本件訂正審決による訂正の内容
(ア)本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲請求項1は、次のとおりであ
る。
「回転式ケーシングドライバにより発生する回転反力を受止める方法にお
いて、前記ケーシングドライバに設けた回転反力取り装置を構成するビームの反力
受け部に、作業機のクローラを当接して、前記回転反力を前記作業機の自重で受け
止めるようにしたことを特徴とする回転式ケーシングドライバの回転反力取り方
法。」
(イ)本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲請求項1は、次のとおりであ
る(下線部が訂正された箇所である。)。
「回転式ケーシングドライバにより発生する同転反力を,前記ケーシング
ドライバに設けた回転反力取り装置を構成するビームを介して受止める方法におい
て、
 前記ビームは長尺構造物であり,
 前記ビームの一端は前記ケーシングドライバに連結され,前記ビームの
他端側には反力受け部が設けられ,
 その反力受け部において,作業機のクローラをピン等の連結を伴わない
ように当接して、前記回転反力を前記作業機の自重による前記作業機と地面との摩
擦力を用いて受け止めるようにしたことを特徴とする回転式ケーシングドライバの
回転反力取り方法。」
(5)上記のとおり、本件特許については、特許法29条の規定に違反してなされ
た特許であることを理由に特許を無効とした審決の取消しを求める訴訟の係属中
に、その目的に当該特許に係る特許請求の範囲の減縮を含む訂正の審決が確定した
ので、審決は、結果として、判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったもの
となり、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって、
審決は、取消しを免れない。
(6)訴訟費用の負担についての被告の主張については、争う。
3 原告らの主張に対する被告の認否
(1)(1)ないし(4)は認める。
(2)訴訟費用の負担について
 原告らは、従前、本件審決がその認定判断を誤っており違法であることを理
由に審決の取消しを求めていた。ところが、その目的に特許請求の範囲の減縮を含
む訂正の審判を請求し、この審決が確定したことを受けて、従前の取消事由を撤回
して、訂正審決が確定したことに基づく取消事由を新たに主張するに至った。この
ことは、取りも直さず、審決時の特許請求の範囲のままで訴訟を進行すれば、原告
ら敗訴となることを原告ら自身が認めざるを得なかったことを自白するものであ
り、審決に誤りがないことを認め、ひいては、原告らが、特許庁における無効審判
の審理の手続において、原告らの権利の伸張もしくは防御のための適切な対応をし
なかったことを認めたことにほかならない。原告らが、特許庁における無効審判の
審理において、今般の訂正審判請求のような適切な訂正請求を行っていたならば、
本訴が提起されることもなかったのであるから、本訴は、原告らの権利の伸張若し
くは防御に必要でない行為によって生じたことが明らかである。
 したがって、訴訟費用は、民事訴訟法62条の規定を適用し、原告らの負担とす
べきである。
4 理由
 原告らの主張(1)ないし(4)は当事者間に争いがなく、同争いのない事実によ
れば、本訴請求は理由がある。そこで、これを認容し、訴訟費用の負担について
は、原告らに負担させるのを相当と認め、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法62
条,65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
        裁判長裁判官  山  下  和  明
           裁判官  設  樂  隆  一
  
           裁判官  宍  戸     充

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