弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
被告人を懲役6年に処する。
未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1平成21年4月8日午後8時ころ,a市b町c番地d所在の被告人方におい
て,犯行当時の妻A(当時37歳)に対し,その顔面等を手拳等で数回殴打し,
その左大腿部等を数回膝蹴りし,さらに前記被告人方敷地内に逃げ出した同女
の頭部を特殊警棒で1回殴打するなどの暴行を加え,よって,同女に通院加療
約1週間を要する右側頭部挫傷・挫創,左大腿部挫傷,顔面挫傷等の傷害を負
わせ,
第2同年5月2日午前2時30分ころから午前3時ころまでの間,a市b町e番
地f運送駐車場において,同所に駐車中のB管理の普通貨物自動車から,軽油
約30リットル(時価合計約3000円相当)を抜き取って窃取し,
第3前記被告人方である木造スレート葺2階建家屋(床面積合計約116.77
平方メートル)に,犯行当時の妻Aと居住していたものであるが,同家屋を焼
損しようと企て,同日午前3時ころから午前5時ころまでの間,同家屋1階リ
ビングルームにおいて,カーペットや床上に積んだ衣類等に軽油を撒くなどし
た上,マッチで同衣類に火を放ち,その火を同リビングルーム内の床板等に燃
え移らせ,よって,同女が現に住居に使用している同家屋の床,内壁,天井等
約24平方メートルを焼損した
ものである。
(証拠の標目)〔省略〕
(法令の適用)
罰条
判示第1の事実刑法204条
判示第2の事実刑法235条
判示第3の事実刑法108条
刑種の選択
判示第1及び第2の各罪いずれも懲役刑を選択
判示第3の罪有期懲役刑を選択
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条
(最も重い判示第3の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1被告人は,元妻に対する傷害,元妻宅に放火するために軽油を盗んだ窃盗,元
妻宅への放火の3件の犯行を犯している。
2弁護人は,被告人の更生の可能性等から,保護観察を付した上,執行猶予にす
ることが相当であると主張する。しかし,本件においては,検察官が論告で主張
する各点はほぼ納得できる。そして,特に以下のような事情を考慮すれば,執行
猶予を付けることはできない。
()各犯行はいずれも,離婚の話を持ちかけてきた元妻に復縁を拒否されてもな1
お,未練を断ち切れない被告人が,恨みの感情をも抱き,元妻に対する当てつ
けなどの動機で犯したものであるが,これは子供じみた自己中心的な考えであ
る。被告人には,今後このような考えに基づき危険な行動を起こさないよう,
自分自身をしっかり見つめ直してもらう必要がある。
()傷害の犯行態様は,弱い立場の女性に対し,顔を多数回殴ったり,特殊警棒2
まで用いて殴るといった,執ようで危険なものである。窃盗及び放火の犯行態
様も,わざわざ軽油を盗んできて,これを部屋に撒き散らして火をつけたもの
で,悪質かつ非常に危険である。
()元妻が負った傷害の結果も軽いものではなく,放火による財産的損害も多額3
である。放火により近隣住民が感じた危険や不安感も軽視できない。
のみならず,元夫である被告人から,突然これらの暴挙を受けた元妻が被っ
た精神的ショックは相当大きい。元妻は,再び被告人が自分やその家族に接触
してくるのではないかと,今でも恐れている。
3そこで,懲役刑の実刑とした場合の刑期についてであるが,上記の事情を重視
すべきことからすれば,法定刑の下限を下回る刑に処することは相当でなく,酌
量減軽はできない。放火罪のみに着目した場合,幸い半焼にとどまり大火には至
らなかったことから,法定刑の下限に近い刑期も考えられるが,他の事件,特に
傷害事件の内容にかんがみれば,懲役5年よりも長期の刑が必要である。
検察官は,懲役7年が相当であると主張しており,論告で主張されている各事
情からすれば,そのような考えももっともといえる。しかし,他方で,被告人が
今回の事件を機に自己の弱さに目を向け,本件各犯行及びこれを招いた自己の問
題点について反省の態度を示していること,元妻との離婚に応じるなど,元妻の
恐怖心をやわらげるべく努力したものとも評価しうること,軽油については被害
弁償を済ませたこと,今後母親との関係が改善する可能性もあり,これまで刑務
所での立ち直りの機会を与えられた経験はなく,社会復帰後の被告人の更生に希
望がないわけではないことなどの事情も考慮する必要がある。当裁判所は,これ
らの事情をも考慮し,被告人に対し,しっかりとした真の意味での「大人」にな
って,立ち直って欲しいという期待をも込めて,被告人を懲役6年に処するのが
相当と判断した。
(求刑懲役7年)
平成21年9月17日
高松地方裁判所刑事部
菊池則明裁判長裁判官
武林仁美裁判官
荒木精一裁判官

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛