弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       原判決を破棄する。
       被上告人の控訴を棄却する。
       控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人山崎潮,同石井忠雄,同畠山稔,同永井行雄,同西謙二,同大須賀滋
,同藏重有紀,同菊地敬明,同石塚孝,同清瀬和彦,同高藤喜史,同西山茂樹,同
高橋忍,同英直彦の上告受理申立て理由について
 1 本件は,群馬県知事が都市計画法(平成11年法律第87号による改正前の
もの。以下同じ。)59条1項に基づいてした都市計画事業の認可の取消しを求め
る被上告人の審査請求について,建設大臣が,行政不服審査法14条1項所定の審
査請求期間は同認可の告示の日の翌日から進行すると解した上で,その徒過を理由
に審査請求を却下する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をしたので,被上告
人が,本件裁決の取消しを請求する事件である。
 原審の適法に確定したところによれば,群馬県知事は,平成8年9月5日,都市
計画法59条1項に基づいて前橋都市計画道路事業3・4・26号県庁群大線の認
可(以下「本件認可」という。)をし,同月13日,同法62条1項に基づいてそ
の告示をしたところ,被上告人は,同年12月2日,上告人に対し,本件認可の取
消しを求める審査請求をしたというのである。
 2 第1審は,本件裁決を適法と認めて,被上告人の請求を棄却した。これに対
し,原審は,行政不服審査法14条1項本文の「処分があったことを知った日」と
は,処分の効力を受ける者が処分のあったことを現実に知った日を意味し,都市計
画事業の認可についてはその告示の日とする旨の特別の規定はないから,上告人は
,被上告人が本件認可を現実に知った日を認定して審査請求の適否を判断すべきで
あり,本件裁決は違法であると判断して,第1審判決を取り消した上,本件裁決を
取り消した。
3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次の
とおりである。
 (1) 都市計画法は,同法59条1項に基づく都市計画事業の認可がされた場合
に,認可をした都道府県知事等において施行者の名称,都市計画事業の種類,事業
施行期間及び事業地を告示しなければならないものとした(同法62条1項)上で
,この告示があった後においては,事業地内において事業の施行の障害となるおそ
れがある土地の形質の変更,建築物の建築等を行うには知事の許可を受けなければ
ならないものとする(同法65条1項)とともに,都市計画事業の認可をもって土
地収用法20条の規定による事業の認定に代え,同認可の告示をもって同法26条
1項の規定による事業の認定の告示とみなす(都市計画法70条)などと規定して
いる。
 このように,都市計画事業の認可は,事業地内の土地につき所有権等を有する者
に効力の及ぶ処分であるが,都市計画法は,これらの関係権利者に個別に同認可の
通知をするものとはせず,同認可の告示を行うものとするにとどめている。これは
,都市計画事業を円滑に進めるためには,その認可の効力を関係権利者の全員に同
時に及ぼす必要がある一方で,一般に,その全員を確実に把握して同時期に個別の
通知を到達させることが極めて困難であり,かつ,同認可が特定の事業地を対象と
して行ういわば対物的な処分の性質を有することから,これを特定の個人を名あて
人として行わないものとした上,告示という方法により画一的に関係権利者等にこ
れを告知することとしたものと解される。
 このような同法の趣旨からするならば,告示の時に関係権利者にその内容が告知
されたとみるべきであり,個々の関係権利者が告示の内容を現実に知るまでは告知
があったものとはいえないとすると,その趣旨は全うされないこととなる。そして
,このような告知の方法を採ることには,都市計画事業の認可の性質に照らして,
相応の合理性がある上,同法は,告示に加えて,市町村の事務所において事業地を
表示する図面等を縦覧に供させる(同法62条2項,同法施行規則49条)ととも
に,施行者において速やかに都市計画事業の概要について事業地及びその付近地の
住民に説明するなどの措置を講じなければならないものとして(同法66条),同
認可の周知を図ることとし,関係権利者の保護にも配慮しているものである。
 (2) 行政不服審査法14条1項本文の規定する「処分があったことを知った日」
というのは,処分がその名あて人に個別に通知される場合には,その者が処分のあ
ったことを現実に知った日のことをいい,処分があったことを知り得たというだけ
では足りない(最高裁昭和26年(オ)第392号同27年11月20日第一小法
廷判決・民集6巻10号1038頁参照)。しかし,【要旨】都市計画法における
都市計画事業の認可のように,処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係
権利者等に画一的に告知される場合には,そのような告知方法が採られている趣旨
にかんがみて,上記の「処分があったことを知った日」というのは,告示があった
日をいうと解するのが相当である(原判決掲記の最高裁昭和60年(行ツ)第20
7号同61年6月19日第一小法廷判決・裁判集民事148号239頁は,建築基
準法46条に基づく壁面線の指定及びその公告につき,同旨をいうものである。)。
 (3) 以上によれば,前記のとおり,本件認可の告示がされたのは平成8年9月
13日であり,被上告人がこれに対する審査請求をしたのは同年12月2日であっ
たというのであるから,被上告人が本件認可を現実に知った日がいつであるかにか
かわりなく,同審査請求は行政不服審査法14条1項本文の期間を経過した後にさ
れたものであることが明らかであり,論旨は理由がある。これと異なる原審の前記
判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を
免れない。そして,同項ただし書に規定するやむを得ない理由につき何らの主張,
立証のない本件においては,同審査請求は同項に違反する不適法なものであるとい
うべきであり,本件裁決には違法がないから,第1審判決は正当として是認するこ
とができ,被上告人の控訴は,棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横尾和子 裁判判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 町
田 顯 裁判官 深澤武久)

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